悲しみなんて、ないセカイ   作:ヅダ推しのミドリムシ

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相も変わらず深夜テンションで書き進めております。ご了承ください。


君は叫んだ

 

──────◆◆◆

 

ポインターを走らせながら、周囲の警戒をする。アビドス自治区は管理が行き届いていないせいか、スケバンやヘルメット団のようなならず者傭兵部隊が他の自治区に比べて多い。

 

どうも、管理の行き届いてない状況に住民の過疎化がマッチしてしまったようで、放置された空き家なんかを利用して雨風を凌いだりしているようだ。

 

そんな中、ポインターのような目立つ車両で走っていれば当然狙われる。まあ、コイツの性能的に不意打ちでグレネードでも使われない限りダメージは入らないと思うが。

 

以前こちらまで来た時は正直とても面倒だった。不良一人とエンカウントしたと思ったらそこからズルズルと増えていき、最終的に一個小隊くらい集まってた。めんどすぎて光波バリヤー展開しながら突進して薙ぎ倒したわ。

 

「...にしても、意外と道覚えてるもんだな」

 

俺がこの辺りまで来たのは二年前が最後。流石にここまで時間が経てば一部の道は使えなくなっていたが、昔の記憶を頼りにしていると意外にもすんなり進めている。

 

あれ以来アビドスの様子なんて確認してないし、内心まだ残ってたのかとしぶとさに感服している。

 

余程期待の新入生が入ったのか、それとも既に"堕ちて"しまっているのか。

 

「...まあ、俺の知るところじゃないか」

 

最優先事項は先生の安否確認。いなかった場合は捜索の協力を取り付けること。彼女たちの()()は二の次だ。

 

警戒は怠らず、遠目から確認した校舎に向かって走らせる。

 

地獄のような光景が広がっていないことを期待しながら。

 

──────◆◆◆

 

銀髪ケモ耳の生徒、シロコに連れられ無事にアビドス高等学校へと辿りつくことが出来た。

 

まあ、体勢はあまりよろしくないのだが。

 

「"ごめんね、シロコ。おぶってもらう形になって"」

 

「問題ない。むしろ、先生はもっと食べた方がいい」

 

そう、私ことシャーレの先生は今、シロコにおぶってもらっている。

 

何故こんな情けない絵面になっているのかというと、私の体力の問題だ。

 

砂漠地帯という過酷な環境、デスクワークばかりの生活による体力の衰え、危機的状況からの救援。それらの要因が重なった結果、緊張のほぐれと肉体の限界で動かなくなってしまったのだ。自身の感覚としては、『腰が抜けた』ようなものか。

 

いやホント、適度な運動というのはしなければならないと再認識させられる。生徒をおぶる先生はいても、生徒におぶってもらう先生など一体何処にいるというのか。

 

しかも内心、情けないと思っていると同時に『懐かしい』なんて感覚がある。おい"感覚(デジャヴ)"、今じゃないだろ。

 

「着いたよ。此処が、私達が通ってるアビドス高等学校」

 

シロコがそう言い、校舎へと入っていく。私も中に入っていく。

 

そういえば、こうしてキヴォトスの学校に訪れるのは初めてだったな。

 

そう思うと、自然と色んなところに目がいってしまう。私自身、最後に校舎を見たのは高校卒業以来だ。

 

自分が通っていたわけ母校、というわけでもないが。こうして校内を歩いているとなんだか懐かしい気分になる。こう感じるのは、歳なのか。それとも──────

 

それにしても、平日昼間だというのに人の気配が少ない。いや、授業中なら当たり前なのか?

 

物珍しさと、芽生えた疑問を抱えながらシロコについていくと、彼女が一つの教室の前で立ち止まり、扉を開く。

 

「ただいま」

 

「おかえり、シロコ先輩――うわっ!? 何!? そのおんぶしているの誰!?」

 

「わぁ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」

 

「拉致!? もしかして死体!? シロコ先輩、ついにヤっちゃったんですか……!?」

 

「皆落ち着いて、バレなきゃ犯罪じゃないわ! 死体を隠す場所を探すわよ、体育倉庫にシャベルがあるから、それで――」

 

「"えっ、私処理される?"」

 

 

 

「死体が喋った!?」

 

「"生きてるよ?まだ瞳孔開いてないよ!?"」

 

 

如何にも文芸部室と云った部屋の中には、ホワイトボードと長机、スチール棚にぎっしり詰まったファイルが並んでいた。テーブルの上に見える弾薬や銃器など物騒なものがあるものの、キヴォトスではこれが一般的なのだろう。

 

部屋の中に居たのは、黒髪赤眼鏡の少女と、猫耳にツインテールの少女、そしてベージュロングの明るい雰囲気の少女。どうもおぶられた私を見てシロコが拉致してきたと思ったようだ。...いや、おかしくない?おぶられた大人を見て拉致とか死体とかの発想が先に出るの?もしかしてキヴォトスじゃそれが普通だったりするの?

 

 

 

 

──────軽いと思いますよ、先生にとっては。

 

以前、アスムが言っていた『命の軽さ』。それってこういうことなのか?いや絶対違うよね?

 

「いや...普通に生きている大人だから、うちの学校に用があるって云われて」

 

そう言いながら、シロコがおぶっていた私を下ろす。大分体力も戻ってきたので、普通に地に足を付け立つ。

 

「えっ、死体では、なかったのですか……?」

 

「拉致じゃなくて、お客さん?」

 

「そうみたい」

 

「"どうも、死体と間違われた情けない大人です"」

 

ジョークを交えて挨拶をすると、どうも反応が悪い。バツの悪そうな顔、苦笑い、ファーストコンタクトはスベり倒したようだ。

 

「まぁ、それは置いておいて、お客様がいらっしゃるなんて、とっても久々ですね!」

 

「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってありましたっけ?」

 

おや、どういうことだろう?確かにアビドスからの手紙だったはずなのだが。...名乗ったら思いだしてもらえるか?

 

「"ごめんごめん、まだ名乗ってなかったね。私は連邦捜査部 シャーレの担当顧問、先生です。こちらの学校から手紙...救援要請を受け出張して参りました。よろしくね"」

 

自らの腕章とIDカードを見せ、本人証明をする。それを見た少女たちは一様に驚き、次いで両手を上げて歓声を上げた。

 

「……え、ええっ! まさか!?」

 

「連邦捜査部シャーレの先生!?」

 

「わぁ、支援要請が受理されたのですね! よかったですね、アヤネちゃん!」

 

「はい! これで……弾薬や補給品の援助が受けられます!」

 

互いに手を取り、喜び合う少女たち。ああ、よかった。この光景だけで、ここまで来た甲斐があったというものだ。この部屋の隅の方、そこに置いてあるコンテナや弾薬箱は既に底が尽きかけている。手紙には、『地域の暴力組織に追い詰められている』とあった。

 

このギリギリの状態で、彼女たちは自分の学校を守ろうと必死に、懸命に戦っている。その手助けが出来た。なら、私が此処に来たことに意味はあったのだ。...?

 

「あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ、ホシノ先輩は?」

 

「委員長は隣の部屋でお昼寝中、私が起こしてくるから」

 

「お願いします、セリカちゃん!」

 

セリカと呼ばれた猫耳の少女が教室を出る。その時──────

 

「ッ、銃声!?」

 

外から発砲音が響く。そしてそのあとすぐに、声が響く。

 

「ヒャッハー!」

 

「今度こそ終わりにしてやるぞ! 奴らは既に弾薬の補給すら受けられていない! 押しまくれ! 数で押し続けろ! 学校の占領までもう少しだッ! あッ! 校舎には余り撃ち込むなよ! 私達の住処になるんだからなッ!」

 

窓から外を覗くと、ヘルメットを被った集団が銃を空に向け乱射しながら校舎の方に向かって来ているのが見えた。

 

「わわっ、武装集団が学校に...! あれは、カタカタヘルメット団です!」

 

「あいつら...性懲りもなく!」

 

セリカが何者かを抱えながら教室内へ飛び込んでくる。他の面々は自らの愛銃を手に、戦闘準備を始めている。

 

「ホシノ先輩連れて来たよ! ほら先輩っ、寝ぼけていないで、起きて!」

 

「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよぉ」

 

抱えられたピンク髪の少女は起床したばかりなのか、はたまた元からこういう感じなのか分からないが、のんびりとしている。

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!それとこちらはシャーレの先生です!」

 

「ありゃ~そりゃ大変だね...あ?先生?よろしく~」

 

「"あっ、うん、よろしく"」

 

ピンク髪の少女、ホシノは眠たそうに目を擦りながら準備を進める。...気のせいだろうか、こちらを見る眼が一瞬だけ鋭いものだったような。

 

「ふぁぁぁ...おちおち昼寝も出来ないじゃないか、ヘルメット団め~」

 

「すぐに出るよ。先生のおかげで、弾薬と補給品は十分」

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

準備を済ませ、すぐさま飛び出していく少女達。教室に残ったのは黒髪眼鏡の少女、アヤネだけだ。

 

「私がオペレーターを担当します。申し訳ありませんが、先生にはサポートをお願いします!」

 

「"分かった。出来ることは少ないけれど、任せて"」

 

彼女たちの戦闘スタイル、細かな癖、集団での立ち回りなど。まだ彼女たちについて何も知らない。だからこそ、いきなり彼女たちの指揮を行うことは出来ない。学校が懸かっているのなら尚更素人の私が不用意なことは言えない。

 

──────今はまだ、足りない。

 

その事実に歯がゆさを覚えながらも、中で押し殺し彼女達の動きに注視する。足りないからこそ、足していくために。彼女達の力になれるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────◆◆◆

 

 

 

「おかしい...」

 

相も変わらず車を走らせている俺は違和感を感じる。別にコレといって何かがあったわけじゃない。むしろ順調にアビドスまで向かえている。そう、()調()()()()()()()

 

アビドス自治区に到着してから今に至るまでの30分、一度も不良と接敵していない。たったの30分と思うかもしれないが、二年前は5分に一回のペースで接敵してた。いくらなんでも静かすぎる。

 

勿論、この二年で不良がいなくなった可能性もある。しかし、あの後のアビドスに不良たちを退ける力があったとはとても思えない。

 

「...もしかして、ハメられたか?」

 

可能性はある。だが高いとも言えない。キヴォトスにおいて先生はまだ『様子見』の段階だ。下手に刺激するような真似をする組織はいないだろう。

 

「...となると、人質?」

 

これも可能性としては考えられる。だがもっと低いだろう。先生を人質にするのは理解できる。あれだけの権限を持った大人だ、連邦生徒会に対して恨みを持っているやつなら考えもするだろう。

 

しかし、わざわざアビドスを指定する理由がない。というか誘いこむとしてこんな離れた場所に一人で来ることなんて普通ない。おいそこ、現在進行形でそうなってるとか言わない。予想外なんだから仕方ないでしょうが。

 

「いずれにせよ、早く確かめねぇと...ん?」

 

アクセルを強めに踏んだところで、正面──────アビドス高等学校から銃声が聞こえる。これはいよいよ不味いかもしれない。全力で踏み込み、ポインターを加速させる。

 

「見えてきた...!」

 

目視でも確認出来た。校門付近、ヘルメットを被った集団が校舎の方に向けて乱射している姿が。

 

 

 

 

──────ああ、なんだ。そういうことか。

 

つまり、道中で不良に会わなかったのはここに集中していたからと。いやぁ、よかったよかった。

 

うん、よかった。よかった、んだけどなぁ...

 

「なんか、馬鹿らしくなってきたなぁ」

 

大真面目に遭遇しない理由を考えて、無駄に道中警戒して、何故俺がこんなに考え込んでいるんだろう?

 

おかしいよなぁ。おかしいはずだよなぁ!!清々しい朝を迎えて、気分が良かったのにいつの間にかこんなところにいる。なんでだ?何でこんな目にあってる?そうか、先生か。あの人のせいかよぉ~しぶっ飛ばすッ!!

 

見つけたらまず社会人の基本をキッチリ頭に叩き込んでやろうそうしよう。

 

でも、まずはあいつらだ。

 

「光波バリヤー展開」

 

車両内のスイッチを押し、バリヤーが展開される。これで反撃の心配はない。

 

クラクションを鳴らし、こちらの存在に気付かせる。流石に完全な不意打ちは可哀想だ。せめてチャンスくらいはやらなくては。残り200メートル。

 

別に恨みがあるわけじゃない。ただ、お前らは間が悪かった。それだけだ。まあ運が悪かったと思って諦めてくれ。残り150メートル。

 

こちらに気付いた奴が撃ってくる。しかし、このバリヤーを破るには火力が足りない。戦車でも持ってこないとコレは割れんよ。残り100メートル。

 

無理だと判断したやつが逃げだす。さて、間に合うかな?残り50メートル。

 

 

 

──────ああ、哀れなヘルメット団。こうしてこの場に居なければこんな目に遭わないで済んだだろうに。安心していい。直撃したってヘイローが欠けたりしてなきゃ死にゃあせん。

 

ま、全治どんくらいかは知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 

「どぉらっしゃぁいッ!!!!」

 

 

間に合わなかったヘルメット団は、ボーリングのピンのように吹き飛んだ。

 

 

──────◆◆◆

 

「ん、ヘルメット団を目視した」

 

「なんか、いつもより多くない?」

 

全員が配置に着き、敵を確認する。目視だけでも20人近くはいる。武装車両やヘリ、戦車などは確認出来ない。しかし、確認出来ないだけでいないという保証はない。アヤネちゃんのドローンが偵察の結果を出すまでは動かない。

 

『偵察結果、出ました!敵性反応は...50人!?』

 

「うへぇ。ホントに多いや」

 

「大人気ですね、私たち~」

 

「言ってる場合!?」

 

こういう言い方はアレだが、私たちとヘルメット団の戦いは長く続いている。お互いに手の内は知れていると思っていたが、まさかまだこんなにも数を残しているとは。

 

どうする?こちらはオペレーター込みの5人に対し敵は50人。10倍の差だ。そう簡単に覆せるものでもない。

 

「ヒャヒャヒャヒャ!!無駄な抵抗はやめて、大人しく此処を明け渡しな!!」

 

「お前たちの弾薬が尽きかけてるのはとっくにお見通しなんだよ!!」

 

こちらに向かって乱射しているヘルメット団がそう言ってくる。どうやら、補給が来たことは知らないらしい。

 

「アイツら...!言わせておけば!!」

 

『待ってセリカちゃん!ヘルメット団の後ろから、何か物凄いスピードで突っ込んできてる!!』

 

「はぁ!?今度は何!?」

 

「うへぇ、まだ増えるの~?」

 

『"確認出来た!これは...車!?普通じゃありえないスピードでこっちに来てる!!みんな気を付けて!"』

 

通信越しから聞こえるアヤネちゃんとあの大人、シャーレの先生だったか。その二人が信じられないといった感じの声をあげている。

 

そして、私たちの方にもクラクションの音が聞こえてきた。

 

「なんだあの車、こっちに来るぞ!」

 

「アビドスの仲間か!?とにかく撃て、撃てぇ!!」

 

車両の存在に気付いたヘルメット団達は、反対方向に向き直り銃を乱射する。どうやら、あの車両とヘルメット団は無関係らしい。

 

「ダメだ効いてない!!退避退避ィ!!」

 

「ちょ、早く動け!突っ込んでくるぞ!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!もうダメだぁぁ!!」

 

 

 

「どぉらっしゃぁいッ!!!!」

 

とんでもないスピードで突っ込んできた車両は、逃げ遅れたヘルメット団をピンのように弾き飛ばした。

 

勢いよく正門から突っ込んできたその車両は、勢いを完全に殺し止まる。辺りに砂煙を撒き散らした。

 

「──────あれは」

 

ああ、私はアレを知っている。あの車を、その持ち主を。

 

銀色の車体に、各種武装を搭載した専用車両。そんなのを乗り回す男など1人しかいない。ドアが開かれ、運転手の姿が露になる。

 

「あれは...」

 

「男の人、でしょうか?」

 

ああ、何故お前が今更、ここにいるんだ。2年前にお前は言っただろう、『もうここには来ない』と。なあ──────

 

「遥先、アスム...!」

 

 





アスム「ものすごいスピードだ!!」
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