呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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それではどうぞ


VS死神達・・・⑥

「――――『伏魔御廚子』」

 

 領域を展開している宿儺はとある違和感を感じていた。

 本来ならば、この領域内で死神共を微塵に切り刻むはずであった。だが彼が感じているのは何かに阻まれるような感覚。

 

 それで周囲を確認しようにも此度の領域内は、刻まれた瓦礫がまるで竜巻にでも巻き込まれたかのように舞い散っている為、周囲の視認ができない。

 

 その守りを少しずつ崩している感覚はあったが99秒で丁度壊し切れるといったところだろう。

 

 だが、前述した違和感の正体など宿儺には全く興味がなかった。

 

 ――これより『伏魔御廚子』が崩壊した後、この地に最凶最悪の一撃が放たれる。

 

 

 

 

 

薄い青色の膜に覆われた中で、日番谷冬獅郎は絶え間なく降り注ぐ斬撃の嵐に思わず息を呑む。

 

「(なんつー技だよ……)」

 

 恐らくこれは皆が思っている事だろう。

 

「(もし涅のやつのコレが無かったら即死だったかもな…………こればかりは奴に感謝しねェと――)」

 

 日番谷は手に握りしめた漆黒の球体を見て感謝した。これに霊力を込めた瞬間、自身とネリエルを薄い青色の膜が覆い、この斬撃の雨を防いでくれていたのだ。

 

「(けど――この瓦礫が入ってくるのだけはめんどくせぇな……)」

 

 今この膜外では、大小様々な凄まじい数の瓦礫が飛び交っており、それがこちらまで容赦なく襲いかかってくる。

 勿論、そばに居るネリエルはしっかり氷のドームで覆っている。

 本当は己も氷の壁で覆いたかったが、いつ敵が動くか分からない為、視界を遮るような真似はできなかった。

 

 ――――ピシッ

 

 しかし、唐突に安全だと思っていた領域に鋭い亀裂が入り始める。

 

「なっ!?安全じゃなかったのかよコレ!?ちくしょう………!!」

 

 思わずそうボヤいた日番谷が球体に霊力を更に込める――――が、領域のヒビ割れは止まらない

 

「耐えろ……耐えろ……耐えろ!!」

 

 ――――パリンッ!!

 

 宿儺の領域が崩壊したのと日番谷達を覆っていた膜が剥がれたのは同時だった。

 

「耐えッ――――ッッッ!!!!」

 

「耐えきった」と安堵の声を漏らしかけた日番谷の言葉が止まり、焦燥した表情で大量の冷や汗を流す。

 そして問答無用で己と、そばに居る未だ気絶中のネリエルごとドーム状の極厚な氷で覆い尽くした。

 

 そしてドームが閉じきる寸前、彼は聞いた――――

 

「――――”(カミノ)”」

 

 

 

 

 

「――――『(フーガ)』」

 

 宿儺の残り一つの手に全てを焼き尽くす灼熱の炎が宿る。その炎はそこにあるだけで周囲の空間を歪ませ、大地を…大気を焼き焦がす。

 

 そして宿儺は原作同様自身に縛りを科した。

 

 ”領域展開中を除く多対一での『竈』の実行禁止”

 

 この縛りにより術式を拡張し、粉塵化した全ての物質が「竈」同様爆発性の呪力を帯びる。

 更に宿儺は結界の仕様を一時的に変更し、生物以外の出入りを制限『伏魔御廚子』の出力を下げずに効果範囲内を密閉した。

 

 

 

 

 

「私たちの勝ちだ――」

 

 

 

 

 

 サーモバリック爆薬と化した粉塵は、領域の隅々に散らばり『竈』の熱により爆轟遷移、刹那の高温、衝撃波、減圧と超加圧で領域内の生物を死に至らしめる最凶の一撃となった。

 

 

 

 

 

 ――彼らの戦場となっていた”第三枝街(ドライ・アスト)”。そこの地面は両面宿儺が領域を展開していた地点を中心に、半径二百メートルにある範囲の全てのものが消滅し、見渡す限り更地の平面になっていた。

 辺りにはまだ凄まじい温度の熱気が充満している。

 

 そんな灼熱の平野の中に一際目立つ氷のドームがあった。

 やがてそれはヒビ割れ音を立てて崩れ始める。

 

「――オイ言ったよな…………俺はテメェを殺すって」

 

 そしてその中から冷淡な声と共に一つの影が伸びる。

 その人物とは、四肢が氷に覆われ急激に成長し、少し老けた日番谷冬獅郎だった。

 

 宿儺は牽制のために『神武解』を振るうも、それは呪具ごと綺麗に凍りつき、機能が停止した。

 

 それを成した張本人は、そのことを気に止める素振りすらなく、悲しみと怒りが混ざったような表情を眼前の宿儺にぶつける。

 

「――――掛かってきやがれ、格の違いってやつを教えてやる!!!」

 

 自身の氷結系の能力に似合わない感情を顕にそう叫んだ日番谷。その慟哭に共鳴するように彼を中心に大地が凍り、周囲の空間に極寒の冷気が立ちこめる。

 

 彼は、先の火山が噴火したような大爆発の中、己が生き残れたのは奇跡だろうと感じていた。そして同時に己以外が生存している事が絶望的なことも理解していた。

 だが彼は仲間が生きているという一縷の希望に賭け立ち上がる。

 

 そんな彼の剥き出しの感情を受け、宿儺は凍った”神武解”をどこかへ放り投げ笑みを浮かべる。

 

「それが貴様の真の力か……中々楽しめそうだ……!!」

 

 笑みを浮かべながら宿儺は日番谷に向けて駆けだす。

 だが四歩足を進めた時、唐突に嗤ったままの彼の全身が凍った。

 

 そして日番谷の口が開かれる。

 

「――――『四界氷結(しかいひょうけつ)』――この技は四歩の内に踏みしめた空間の地水火風全てを凍結する…………」

 

 一瞬にして氷像と化した宿儺を何とも言えぬ目で見詰める彼。

 仇を取れたと喜ぶべきか、何の苦痛も与えず殺したことを悔やむべきか彼には判断が付かない。

 

 だがその葛藤の最中――彼の目と耳が到底ありえない情報を捉えた。

 

「――なッ!?」

 

 氷像が音を立てながらヒビ割れ、やがてその亀裂から生きた宿儺が姿を現す。

 

 日番谷は宿儺に信じられない表情を向けながら声を絞り出した。

 

「――氷結すれば「――全ての物質の機能は停止する――だったか…………?」――何でテメェがソレを…………」

 

 己が言おうとしていた事を先読みされて鋭く睨みつける。

 

 そもそも彼は先程戦った敵とは違い、元素に囚われない等の特殊能力は持っていなかったと思案する。

 

「(――そもそも奴の能力は不可視の飛ぶ斬撃や灼熱の炎を出す物だったはずだ…………その力だけで俺の氷から脱出できるとは思えねぇ…………)」

 

 先程の激情が嘘のように冷め、冷徹で鋭い眼光で宿儺睨みながら、正体不明の術に対する情報を少しでも得ようと問いを投げかけた。

 

「――――何しやがったテメェ」

 

 素直にそう問いかける日番谷だったが、彼は当然答えてくれるとは思っておらず、半ばヤケクソ気味の問いだった。

 しかし予想に反し宿儺の口から冷静に答えが出る。

 

「…………貴様は”領域展延(りょういきてんえん)”というものを知っているか?」

 

「…………?」

 

 一拍置いて急に出てきた”領域展延”という単語が分からず、眉を顰める日番谷に宿儺が笑ってこう続ける。

 

「まぁ貴様が知らぬのも無理はない。――――端的に言えばこの術を使っている間は、敵の術が中和されるというわけだ」

 

 そう放たれた言葉に日番谷は即座にこう返す。

 

「いやそれは有り得ねぇ、俺の氷はその機能すら停止させる。――だからテメェの理屈には筋が通っちゃいねぇんだよ」

 

「だろうな、だが俺は僅かな可能性に賭けた。――――貴様の全ての物質の機能を停止させる氷結と、俺の全ての術を中和する”領域展延”――――どちらに転ぶかは分からなかったが、俺はその賭けに勝ったというだけだ」

 

 堂々とそう言い切る宿儺に日番谷は目を見開いた。

 彼の緻密な計算もそうだが、そこまで思考しても尚、最後は賭けに出るという豪胆さに驚愕する。

 

「結局は運だったって訳か…………」

 

 日番谷はその答えに辿り着き苦い顔をするが宿儺は笑ってそれにに返してみせた。

 

「その通りだ、戦いにおいて実力も然る事ながら”運”という要素も必要となってくる時がある――――その事をよく脳に刻んでおくんだな」

 

「…………忠告感謝するぜ……じゃあとっとと死にやがれ」

 

 先程まで激昂していた日番谷はもう居ない。冷たい声でそう言い放った日番谷が駆けだす。

 彼が一歩踏み出す度に、身体から滲み出る身を切るような冷たい霊圧が大地を凍らせる。

 

 やがて足の回転速度は増していき、目にも止まらぬ速さで宿儺の懐に潜り込む。

 

 そして逆袈裟斬りを放った。

 

 しかしその斬撃は、肘から先がない左下腕に阻まれる。

 その腕は一瞬にして凍結したが、次の瞬間には氷が砕け散っていた。

 

 すかさず宿儺は残る上右腕で日番谷の顔面に鋭い一撃を放つが、頭部に拳が触れた瞬間凍り付き勢いが完全に殺されてしまう。

 

 そして一瞬の時間、実質全ての腕の機能を失った宿儺の首に研ぎ澄まされた一振りが放たれる。

 

「終わりだ――――」

 

 その刃が今まさに宿儺の首に触れんとした刹那、刺々しい殺気が氷結の首に向けられる。

 

「チッ……」

 

 その殺気に嫌なものを感じ取った日番谷は、舌打ちをこぼしながら斬魄刀を止めてすぐさま後ろに飛び退いた。

 

 そして彼の頭があった箇所には、下からまるで刃物のように振り上げられた脚が空気を斬り裂きながら過ぎ去っていた。

 

 ――あのまま行けば良くて相討ち、最悪こちらだけが傷を負う事態となっていた筈だと日番谷は考える。

 

「(――あの蹴り…………恐らく当たってさえいれば、例の黒い稲妻が出る一撃に成っただろうな…………)」

 

 宿儺の一挙一動を隅々まで観察して次の動きを予測する。

 彼の凍結は既に砕け散っおり、今は愉しそうな目でこちらを見据えている。

 

 そんな中、宿儺の脚に力が入った事を捉えた。

 

「(――――来るッ!)」

 

 日番谷の予測通りに宿儺がその場から姿を消し、その場に僅かに舞った砂埃だけが日番谷の視界に入っていた。

 

「(何処だ……何処から来やがる…………)」

 

 日番谷は顔と目を忙しなく動かし周囲の状況を認識する。

 時折聞こえる足音と僅かな砂埃、その情報のみが脳内に刻まれていく。

 

 しかしその時は唐突にやってきた。

 

「――あめぇって言ったろ」

 

 突如として日番谷が何も無い左側に刀を横に一閃。

 するとそこから高い金切り音が鳴り響く。

 

「良い洞察力だ」

 

 横一閃の鋭い剣撃を、肘から先がない左上腕で受け止めながら褒める宿儺。

 

「――テメェに褒められても嬉しくはねぇよ」

 

 その賛美を日番谷は真顔で跳ね飛ばす。

 

 そして当然、宿儺の腕は凍るが、即座に氷を砕く。

 

 ――そしてそこから両者の激しい打ち合いが始まった。

 

 日番谷が刀を振るえば宿儺が即座に腕で防ぐか往なし、触れただけで凍るその能力も、即座に破れるから問題にはならない。

 そして反撃といわんばかりに残った腕で殴り付けるが、それは日番谷の身体に触れた瞬間凍り付き、勢いが殺されてろくなダメージすら入らない。

 

 そんなやり取りが数秒の間に数十、数百と繰り広げられていた。

 

「(ダメだな………いくら展延で中和しようにも俺の拳の威力を殺せる程度には出力が保たれている………………ならば――――奴に黒閃を決めるしかない)」

 

 より一層深い笑みを浮かべる宿儺の猛攻が激しくなる。

 二人の攻防で周囲の凍った大地は剥がれ、こちらも凍った足元が悲鳴を上げながらヒビ割れ続けていく。

 

 ――――カァンッッ

 

 瞬間、一際大きな金属音辺りに鳴り響いた。

 

 その音の発生源を見ると、脚を振り上げた体勢のままの宿儺と、斬魄刀を両手で握ったままの体勢で刀ごと後ろに大きく弾かれ、無防備に胴体を晒す日番谷の姿があった。

 

 その大きな隙を宿儺が見逃すはずが無い。

 

「(罠の可能性は無い――――この一撃で確実に奴の腹を打ち貫く――――――)」

 

 罠の可能性を切って捨てた宿儺だったがこの判断は正しい。

 

 ――だが彼は気付かなかった……気付けなかった。

 

 周囲の気温が下がった事により嗅覚がろくに機能していなかった事、そして日番谷が数秒前から呼吸を止めていた事に………………

 

 ――――黒閃ッ!!!!

 

 己でも100%成ると確信した黒閃。だが黒い火花は、勝利の女神は、この瞬間だけは彼に微笑まなかった。

 

「――――チッ!!」

 

 彼の拳が日番谷の腹に当たった瞬間、宿儺の拳に返ってきたのは肉を突き破る感触ではなく――――空を切った感覚のみであった。

 

 そんな理解し難い現象が己の身に降りかかり困惑する彼だが、ここで一人の影が脳裏に浮かぶ。

 

 そしてそれと同時にその影の正体とも言える者の声が背後から届いた。

 

「残念やったなァ、両面宿儺――――俺はまだ生きてンで」

 

 その声を聞きギリィッッと顔を激しく歪めながら歯噛みした宿儺は、即座に例の声が聞こえた背後に鋭い裏拳を放つ。

 

 しかしそこに居たのは平子真子では無く――――

 

「――ようやく隙を見せやがったな」

 

 背後に姿を現した日番谷が宿儺の鋭い裏拳に左手で優しく触れ、凍らせる。

 そして残る右腕で斬魄刀の柄を強く握り締め、追い打ちをかけるように再び宿儺の心臓に剣を突き立てた。

 

「――――『四葩氷咲(よひらひさき)』」

 

 日番谷のその冷たい言葉と共に、斬魄刀が心臓を巻き込み背中から胸にかけて貫通した。

 

「……カハッ!」

 

 心臓を貫かれたことで大量に吐血し、そしてすぐその刀を思い切り引き抜かれたことでまたもや吐血する。

 

 しかしこの技『四葩氷咲(よひらひさき)』の能力はこれからだった

 

「何が…………!」

 

 次の瞬間、唐突に刀を突き刺した箇所と突き出た箇所から透き通った氷で出来た紫陽花が咲き誇った。

 

 そして日番谷が宿儺に聞こえるようにこの新たな能力の説明を始める。

 

「――――この技は、この一撃で付いた傷口から咲き誇った紫陽花が、テメェの血液を養分にして永遠に咲き誇る――――それにその領域展延とやらも体表にしか纏えねぇんだろ?――俺の紫陽花の根は体内の深くまで根付く、だから――」

 

 宿儺が視線を自身の胸によこし淡く輝く紫陽花を指で軽く撫でた。

 そして最後に付け加えるように日番谷がこう告げた。

 

「――――もう間もなく、テメェは死ぬ」

 

 己の死期を言い渡された宿儺は、「下らん」とばかりに口角を緩く上げ、自身の心臓に貫手の形で狙いを定めた。

 

 そして――――

 

「こんなもの壊せばいいだけだろう」

 

 何でもないようにそう言い放ち、自身の心臓に腕を突き刺し根ごと紫陽花を引き抜く。

 これで技の効果が失われたかに思えた――

 

 ――だが、瞬く間に傷口から複数の紫陽花が狂い咲く。

 その花の数は先程より増し、先程よりも生き生きと咲いているようにも見えた。

 そして日番谷が宿儺のそんな行動をした宿儺に冷静に教える。

 

「――無駄だ、この技を食らった時点で詰みなんだよ。幾ら花を壊そうが引き抜こうが、テメェの身体に血が流れている限りその花は枯れねぇよ――つまりテメェは死ぬまで血を吸い取られ続けるって訳だ」

 

 日番谷が宿儺にとって絶望とも言える宣告を下す。

 だが彼にとってこの程度の技では絶望する理由にはならない。

 それ故に宿儺は悠然とした笑みを浮かべ、眼前の日番谷と、何処かに潜んでいるであろう平子に向けて語り掛ける。

 

「――これで勝ったと思っているなら大言壮語も甚だしい――不愉快だ」

 

 どこまでも上から目線で物を言う宿儺。実際今の彼の覇気は先程までと比べ全く衰えていない。

 その事実があるからこそ、日番谷と平子にとってこの言葉は重い。

 

 ――故に日番谷は覚悟を決めた。

 

 身体の正面に斬魄刀を構え大きく深呼吸をする。

 彼の胸が大きく膨らみ、彼の吐いた純白の息は空気と溶け合う。

 

 二人の空間は静寂が支配していた。両者の視線が視線が交差する。

 

「――行くぞ」「――行くぜ」




涅マユリが作ったのは『簡易領域』風の技です。宿儺が使う領域を頑張って解析した結果、コレが生まれました。
コッチは分かりやすく青い膜張ってますが、本家様は多分張ってないんで”風”ですね。


オリ技
四葩氷咲(よひらひさき)
詳しい性能は次話あたりに書くと思います。

この作品は1話大体5000文字位なのですが、どの位の文字数が皆様にとって丁度いいのか教えて頂きたいです。それを目安に執筆します(アンケート結果によって投稿頻度も変わります)

  • 1000文字前後
  • 2000文字前後
  • 3000文字前後
  • 4000文字前後
  • 5000文字前後
  • 6000文字前後
  • 7000文字前後
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  • 9000文字前後
  • 10000文字以上
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