呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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それではどうぞ


VS死神達・・・⑦

 苛烈な戦闘跡が痛々しく残る地にて、そこに奇妙な格好をした男が一人やって来ていた。

 その者は何かを探しているようで、一度立ちどまり様々な場所に目を動かしていた。

 やがて目当てのものを見つけたのか再び歩みを進める。

 

 暫く辺りをを歩き周り、目当てのもの―更木剣八の元まで来ると、懐から赤い液体の入った試験管を一つ取りだした。

 そしてその栓を取り、あくどい笑みを浮かべる。

 

「死体になっているものだと思っていたが、卯ノ花烈――奴も最後に良い仕事をするじゃないかネ――――さぁ、お前にはまだまだ働いてもらわねばならんのだヨ、早く起きたまえ」

 

 そう言って試験管を傾け、中に入っている赤い液体を更木の身体にかける。

 

「――くっくっくっくっ」

 

 狂気の笑みを浮かべながらかけていき、全てをかけ終えると試験管をどこかへ投げ飛ばし、更木の容態を確認する為ジッと見つめる。

 

 ――――シーンッ

 

 だが変化は見られない。その事実に舌打ちし、追加で懐から先程同様の試験管を取りだし、それも全て更木にかける。

 

 ――――シーンッ

 

 だがそれでも変化は無く、もう一本分赤い水を懐から取り出しそれも全てかけた。

 

 ――――シーンッ

 

 しかしまたもや変化は見られず、その事実にこめかみをピクピクさせながらもう一本ぶっかける。

 

 ――――シーンッ

 

「――これでも足りんのかネ貴様は!!」

 

 とうとう堪忍袋の緒が切れた不審な男は、次々に赤い液体を乱雑にかけていった。

 そして9本かけた所で、漸く更木の身に変化が起こる。

 

「――――おや?」

 

 液体をかけた箇所から肌が赤黒く濁っていき、やがてそれが全身まで侵食すると更木の指がピクリと動いた。

 

「――――これは…………」

 

 肉体が動きを示したことに喜色を浮かべ、興味深そうに観察する。

 そうしてしばらく観察していると、更木が生きた人間のような動きで立ち上がった。

 

「――おお!!成功だヨ!!」

 

 己の実験が成功したことで狂気の笑みを浮かべるが、こいつを復活させるのに貴重なサンプル9本も使った事を思い出し顔を顰める。

 

 そして嫌味ったらしく眉間に皺を寄せながら更木にこう命令した。

 

「――私の貴重な実験材料を9つも消費したのだ精々その分は私の役に立ちたまえヨ――さぁ、行け!」

 

「――あァ?なに命令してやがるんだテメェ……」

 

 ぶっきらぼうに「行け!」と命令された筈の更木は、本来有り得ないはずの命令無視を起こす。

 その想定外の事態に驚く不審者だったが、直ぐにあることを思い出し更木にとって魅惑の言葉を口にする。

 

「――私の命令に従えば再び奴と斬り合――――」

 

 その言葉を全て聞く前に更木は勘が導く方向へとい脇目も振らず駆け出した。

 そしてその様子を見た不審者は予想通りとばかりにいやらしい笑みを浮かべる。

 

「――全く、これだから単細胞の扱いはラクで助かるヨ、さて私はそろそろ「ねぇ涅サン」…………なんだネ…浦原喜助」

 

 何かを言いかけた最中、背後から幽霊のように声を掛けてきた下駄帽子の男―浦原喜助に嫌悪感を隠さず言葉を返し、さらにこう続ける。

 

「もう貴様との付き合いは先程終えたはずだが、まだ何か用があるのかネ」

 

「ええ、涅サンも知りたくありません?」

 

「勿体ぶらずに早く言いたまえヨ」

 

 言葉を溜める浦原の事を横目で睨みつけるマユリに、参ったとばかりに両手を上げおどけてみせた浦原は扇子を広げ口元を隠し、真剣な表情でこう告げた。

 

「――あの両面宿儺が使う――”領域展開”について」

 

 

 

◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇◈◇

 

 

「――行くぞ」「――行くぜ」

 

 二人の男は同時に声を発し、思い切り踏み込みまっさらな大地を駆け出した。

 二人は閃光と化し両者の刀と拳が正面でぶつかり合う。

 その衝突で凄まじい轟音と共に周囲の地面は捲れ上がり、瓦礫が中に舞い上がる。

 

 そんな中でも両者の視線がぶつかり、宿儺が笑みを浮かべる。

 その最中にも彼はある事を思案していた。

 

「(優先すべきはあべこべの小僧だな……だが奴はあれっきり姿を見せていない――前後左右上下は傷の位置や周囲の情景などを注視していれば対処は可能だ…………だが――――)」

 

 日番谷の真向斬りに対しこちらも拳で応戦するが、その拳が受けたはずの衝撃、ダメージは全て反対の背後に返ってくる。

 

「(――このダメージを受ける方向を逆さにする攻撃だけは対処できんな)」

 

 もう既に宿儺は平子の術中に嵌っている為、この逆さま地獄からは逃げられない。

 

 背後からの衝撃により前に倒れかけるが、足で踏ん張りを効かせ無理やり体勢を立て直し追撃の一撃を防ぐ。

 

 だがかなり無理をした体勢のため衝撃をモロに受け地面に足がめり込む。

 

 そんな中でも宿儺は平子の位置を捉えようと周囲に気を配っていた。

 

 そして唐突に宿儺が笑みを深める。

 

「――見つけたぞ」

 

 その呟きと共に身体の向きを百八十度変え後ろを向いたかと思うと、爆発的な速力で平子の元まで駆け出した。

 

「ッ――待ちやがれ!」

 

 日番谷も即座にそんな彼の背を追う。

 

「(速ぇ……!!チッ!――追い付けねぇ…………)」

 

 こちらも全力で走ってはいるが宿儺との差は縮まらず、それどころかどんどん距離が開いているようにも見えた。

 

「止まりやがれ……!」

 

 宿儺の脚を潰そうと斬魄刀を振るい氷を先に進ませるが、それですら宿儺には追い付けず彼との距離はどんどん離れていく。

 

 

 

 

 

 一方で、凶悪な笑みを全面に浮かべた宿儺に迫られている平子はというと、落ち着いて宿儺の事を観察していた。

 

「(マズイなァ……こっちに来るまで後数秒言うたところか…………)」

 

 冷静に宿儺の速度と、こちらまでの距離を目測で測り、こちらに到達するまでの時間をはじき出した平子は宿儺の正面に立つ。

 

 そして眼前の敵に向かって両手を突き出しこう唱える。

 

「破道の九十一――『千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)』」

 

 その破動を唱えた瞬間、突き出した腕から無数の光線が飛び出し宿儺を全身に直撃した。

 着弾箇所からは黒煙が巻き起こり、宿儺の姿を完全に覆い隠す。

 

 だが、その煙を突っ切るようにして身体の所々に煤を付けた宿儺が狂気の笑みでこちらに向かってきていた。

 

 その身体に新たにできた傷は見受けられない…………

 

「無傷かいな!?」

 

 流石の平子も僅かな傷は負わせられるだろうと考えていた為に驚きで声を上げる。

 だがそんな暇もなく、もうすぐ側まで宿儺が迫ってきていた。

 

 そして宿儺が右上腕を振りかぶる。

 

「(上下左右前後の入れ替えは無い……!!!)」

 

「――マズっ!!」

 

 宿儺が平子の脳を狙った貫手に対し、平子は慌てて回避行動を取る。

 その貫手はまるで空間を穿つ一撃のようで、躱した際に凄まじい風圧が平子の自慢の金髪を靡かせる。

 

「――ほう……!」

 

 そんな中、殺す気で放った貫手を躱されたことにより若干目を見開く宿儺。

 

 そしてその直後、宿儺の背後から猛追していた日番谷の一文字斬りが宿儺を襲うが、それは斜め前上空に軽く跳ぶ事で回避する。

 

 そんな中、己に来たかもしれない追撃の一手を阻止してくれた日番谷に感謝する平子。

 

「感謝するで、あのままやったらヤバかったかもしらん」

 

「良いんだ、忘れろ――――それより来るぞ…………」

 

 日番谷が目線を向けた先には未だ元気ピンピンの宿儺が立っていた。

 

「――てかなんでアイツはあんなダメージ負ってんのに倒れへんねん!――ちゃんとダメージ入れたんか??」

 

「――あぁ、確かにあいつの心臓は確実に機能してねぇ筈だ…………」

 

「じゃあ心臓抜きでこの強さっちゅう事かいな…………」

 

「そういうことになる…………」

 

 二人とも心中では認めたくは無かったが、心臓機能停止、腕四本のうち三本欠損、という大きなハンデを負っている眼前の敵を倒しきれないという現実を認めなければならなかった。

 

「オイ、お前の能力はどこまで奴に通用する?」

 

 そんな中、ここで日番谷が宿儺から視線を逸らさないまま平子に疑問を投げかける。

 自身も何となく理解はしていたが、能力を持つ張本人にも意見を聞いておきたかったのだ。

 

 そしてこの問いに平子はやってられないとばかりにボヤいた。

 

「ダメージを受けとる方向を逆にするのしか通用しぃひんと思うわ――他は全部ダメ。カンペキに対応されるやろな、やっても意味無い」

 

「やっぱりか…………」

 

 自身の推測と平子の見解が合致した事で眉間にシワを寄せる。

 眼前の敵に対して自分らでは決定打が無い。平子の斬魄刀は攻撃系では無いし、九十番台の破道も宿儺に対したダメージは負わせられない。それに己の氷結も直ぐに破られる。

 

 そんな八方塞がりの中、二人は頭の中で何とか突破口を探そうと必死に頭を回転させていた。

 

 だがそんな中、二人は同時に目を限界まで見開いた宿儺の姿を捉える。

 

「「……?」」

 

 その見たことも無い姿に眉をしかめながら疑問符を浮かべる二人。

 そんな二人の様子に気付くこともなく今宿儺の心はある感情が支配していた。

 

 

 

 

 

 二人の隊長と睨み合っていたはずの宿儺はいつの間にか辺りが真っ白い空間に佇んでいた。

 

 そんな場所に囚われた彼は冷静に辺りを見渡す。

 そんな中、ある一点に見覚えのある姿を捉える。

 そしてその者はこちらを真っ直ぐ見つめ、口を開いた。

 

『すまぬ宿儺……どうやら私はここまでのようだ…………道半ばで倒れることも無念だが、何より友であるお前を置いて逝くことの方が心残りだ…………』

 

 その声も表情も、今の冷徹な皇帝としてのものではなく、心做しか千年前のものに戻っているかのように宿儺は感じられた。

 

『そうか…………』

 

 そして宿儺はユーハバッハに告げられた言葉の意味をゆっくりと咀嚼する。

 

 ――分かっていた事だった。

 

 この物語の結末を知りながら友の思いを尊重し、こうなる道を共に歩んだのは彼自身なのだから。

 

 勿論、友として止めようとしていた。

 

 だが親友の固い意思が、強い思いが、一番近くにいた宿儺だからこそ心の奥底に響いたのだ。

 

 そんなユーハバッハは、何に驚いたのか分からないが若干驚きで目を丸くしていた。

 

『まさかこのような反応をされるとは……我が眼でも見通せなかったぞ宿儺』

 

『…………一言余計だということが分からんのかお前は…………』

 

 こんな時にも関わらず無駄口を叩くユーハバッハに呆れて溜め息が漏れる宿儺。

 そんな二人が不意に目を合わせ吹き出した。

 

『『――ククッ、クハハハハハハッ!!』』

 

 まるで千年前に戻ったかのような感覚を二人は同時に味わっていた。

 こんな時間が永遠に続けばいいとさえ両者は思っている。

 

 だが、ユーハバッハに残された時間は少ない。

 

 ユーハバッハは己の限界を悟り笑うのを止め、無理に勝気な顔を浮かべて宿儺と目を合わせ、最期の言葉を口にする。

 

『…………そろそろか――――さらばだ両面宿儺――我が宿敵(ライバル)にして、我が唯一の友よ』

 

 その宿敵(ライバル)という言葉を聞いて宿儺は若干目を見開く。

 

『……貴様、俺のことを宿敵(ライバル)だと思っていたのか…………』

 

 またまたユーハバッハに呆れて、手を額に当て溜め息を吐く宿儺だったが、大きな手で隠された口は緩やかな弧を描いていた。

 そして彼も強気な表情を浮かべ、正面からユーハバッハに向き合い最後に別れの言葉を口にする。

 

『……じゃあなユーハバッハ――――また何処かで会おうではないか』

 

『――――ッッ』

 

 心底穏やかな笑みを浮かべながらまた会おうと宣言する宿儺。

 そんな友の言葉にユーハバッハは顔を逸らすかのようにして背を向ける。

 

『…………あぁ、また会おう――――いつの日か必ず』

 

 そう言い残し、宿儺から遠ざかる様に歩みを進めるユーハバッハ。

 その声質はどこか震えているようにも感じ取れた。

 

 そんな彼が歩いた軌跡には、所々に光り輝く雫が落ちていた。

 

 

 

 

 

 一方現実では顔を強ばらせた平子と、僅かに眉を顰める日番谷の姿があった。

 

 宿儺が動きを止めてから数秒。彼らは静止画のように動かない宿儺を攻撃し放題なはずなのに、その場から一歩も動かずただ見つめているだけだった。

 

 何故動けないのか、それは宿儺が漂わせる異様な雰囲気に呑まれた為だったからだ。

 

「(なんつー気配漂わしてんだアイツは…………兎に角動け俺の足、今が奴を仕留めるチャンスだ)」

 

「(なんちゅーオーラ出してんねんあのバケモンは!?足がその場から一歩も離れへん……!――あんな無防備な体勢やっちゅうのに何でや!!)」

 

 大方似た様なことを考えていた両者だが、二人とも何故が足裏が地面から離れない。

 そんな摩訶不思議な現象に見舞われていた。

 

 そして必死に足を繰り出そうと試行錯誤するも結局一ミリも動かずじまいであった。

 

 そして彼らにとって体感で数分が過ぎた頃、呪いの王が目を覚ます。

 

「さらばだ――我が友よ……」

 

 天を仰ぎ見て親友に別れを告げる宿儺。その行為は、目尻に溜まった滴を零さんとしているようにも見えた。

 

 そしてゆっくりと辺りを見渡した彼は、視線を硬直したままの二人に移す。

 

 そんな彼は二人を見ながらゆっくりと口を開いた。

 

「――――成り行きではなく、今この瞬間己の意思で全て刻む事を決めた。まずは貴様らを斬り刻み、その後ここ(新世界城)にいる者共を全員殺す――そしてその後は下に降り、残る死神共も殺す――そして最後に出張ってきた零番隊共も皆斬り刻むとしよう」

 

 宿儺のその宣言を聞いて二人の怒気が強まる。

 

 彼らには大切な友や仲間が居るのだ。そんな彼らを殺すと宣言されたら黙っていられるはずが無い。

 

 先程まで身体が動かなかったのが嘘かのように二人の体は容易に戦闘の構えをとった。

 

「俺らの仲間まで手を出すっつーなら――」「――俺らはアンタを殺すで」

 

 怒気を滲ませた声色で宿儺に凄む。そんな彼らの目は宿儺をしっかりと射抜いていた。

 

 だが宿儺はその殺気のビンビンの刺すような視線をそよ風のように流し、彼も戦闘態勢を取った。




因みに宿儺とユーハバッハが話した場所は原作で宿儺が漏瑚の最期、会話していた場所を想像していただけると分かりやすいです。

なんか久しぶりに出てきて急に退場させちゃってユーハバッハさんすみません。
彼関係については、完結させて良いアイデアが思い浮かんだら瀞霊廷での戦いを書こうかなと思ってます。

『VS死神達』が7話も続いて長いので、完結後に書こうと思ってた番外編的なのを先に少し書いて投稿した方が良いですか?

  • そのまま続けた方が良い
  • 少し番外編を挟んだ方が良い
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