呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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それではどうぞ


VS死神達・・・⑧

 三者の空気が極限まで張り詰める。

 

 ――そしてその時は唐突に訪れた。

 

 突如として糸が弾けたように宿儺の姿がその場から掻き消え、その場から姿を消す。

 

「(――ッッ消えっ!?)」「(――ッッどこ行きよった!!?)」

 

 僅かな砂煙すら残さず消え失せた宿儺の姿を二人は完全に見失う。

 そして彼の影はすぐ側まで迫っていた。

 

「(どこに――)」

 

 ――黒閃ッ!!!

 

「――ゴフッ!!」

 

 不意に姿を現した宿儺の黒閃が平子の鳩尾に突き刺さり、数百メートル吹き飛ばされ丁度あった建物の外壁にめり込みそのまま意識を失った。

 深く深く入ったその一撃は貫くには至らなかったものの、幾つかの内蔵を潰し彼を吐血させるに至る。

 

「(これで厄介な……あべこべ小僧は潰した)」

 

 平子の吐血した血液が顔に掛ることも厭わず、すぐ横の日番谷に狙いを定め視界に収める。

 

 その視線を向けられた日番谷は全身に鳥肌が立ち、即座に己と宿儺との間に氷壁を生成する。

 

 これも当然全ての物質の機能を停止させる氷だ。

 その厚さ何と三十センチ超え。

 

 それだけの氷壁を破る事は不可能だと考えていた日番谷。

 だが今の宿儺に先程までの常識は全く通用しない。

 

 限界まで引き絞られた宿儺の拳は爆発的に加速し、極厚の氷壁と衝突した瞬間――黒い火花を撒き散らす。

 

 ――黒閃ッ!!!

 

 展延を纏いながら分厚い氷壁を一瞬で割り砕き、二度の黒閃を経た宿儺は遂に反転術式を取り戻す。

 

「クハッ!!」

 

 邪悪に嗤い、瞬きの間に『四葩氷咲』の影響で咲いた紫陽花ごと心臓を治癒し、失っていた残り三本の腕も再生させる。

 当然残りの細かな傷も治し、全快の状態となった宿儺の下左腕が日番谷に牙を剥く。

 

「(これはマズっ……!!)」

 

 ――黒閃ッ!!!

 

「ガハッ……」

 

 上に飛ばすようにアッパーに似た動作で放たれた黒閃は、日番谷の鳩尾に吸い込まれるように激突した。

 拳が彼に触れた瞬間、腕が凍り付き拳の威力が殺されたかに思えたが、その氷結すら無視してその一撃が深く重く突き刺さる。

 衝突の瞬間、ズンッと音がしたかと思うと拳の衝撃波が目に見える形で日番谷の背から漏れていた。

 

 そのまま数十メートル程吹き飛ばされる日番谷だが、しっかりと地面に両の足をつけて立つ。

 

 彼の前が開いた衣服から見えたのは、濁った青紫色に変色した腹部だった。

 それだけで先の拳の威力が伺える。

 

「(コイツ……さっきより膂力が上がってやがるな……それにあの黒い火花が散る一撃は俺の氷結でも防ぎきれねぇ……何度も食らったらやべぇかもな……)」

 

 日番谷は内心そんな事を思いながら無表情で宿儺を観察する。

 

 気配が変わったと思ったら、敏捷性も膂力も見紛う程に跳ね上がり、ものの数秒で隊長を一人落としたと考えればその振れ幅が大きいのが分かるだろう。

 

「来ないのならばこちらから行かせてもらうぞ」

 

 その言葉と共に再び宿儺の姿が掻き消えた。

 

 だが一度経験したものに動揺するほど日番谷も弱くない。

 

「(奴が来るとしたら――――ここッ!!)」

 

 日番谷はパッと膝を曲げしゃがみ、背後に現れた宿儺の裏拳を回避する。

 そして流れのまま左足を軸に時計回りに回転し、右足を伸ばし宿儺の両足を払う。

 

 ――そして左逆袈裟斬りを放つ。

 

「――お?」

 

 体勢を崩した宿儺は己に迫り来る凶刃から逃れる術は無い――

 

 ――かに思えた…………。

 

「――な!?」

 

 だが彼は己の意思で素早く背中から地面スレスレまで倒れ込み、その左逆袈裟が己に到達するよりも早く回避した。

 踏ん張りが効きにくい体勢での回避行動に日番谷は驚きの声をあげる。

 

 だがこれでも護廷十三隊の隊長を任された身。即座に心を鎮め、冷静に刃の向きを変えて地面スレスレで倒れ込む宿儺の首目掛けて刀を振り下ろす。

 

「クハッ」

 

 ――宿儺は己の首に迫り来る刃を前に嗤った。

 

 次の瞬間、脳に響くような高い金属がぶつかり合う音が周囲に響いた。

 そしてその音の正体に日番谷は驚愕で目を見開く。

 

「(こいつ……加速しきる前の刃を額で受け止めやがった…………なんつー硬さだよ……)」

 

 宿儺の顔を覆う氷が風船が割れた時のように砕け、弾け飛び、そこから笑みを浮かべた宿儺がゆっくりと上体を起こす。

 

「温いな、この程度の太刀では俺に傷一つ与える事はできん」

 

 その言葉を静かに聞いていた日番谷は激情が心内を蠢きまわるが、それを冷徹に制御し己の力に変える。

 

「そうかよ、だったら受けてみやがれ」

 

 次の瞬間日番谷の腕が霞のようにぶれたかと思えば宿儺の頬に僅かな切り傷をつける。

 その傷口からは血が溢れることなく患部が凍てつく。

 

「――傷一つ付いたな」

 

 勝ち誇るまでもなく、だが確かに宿儺を煽るような物言いに彼は凶悪な笑みを持って返す。

 

「ククッ」

 

 傷口を軽く撫でると腕が通過した瞬間には、傷が綺麗さっぱり消え去る。

 

 ――次の瞬間、周囲の音と光が消えた。

 

 互いの神速の一撃が衝突し合い、全ての音も光も消した。

 遅れて激突地点を中心に衝撃が吹き荒れ、二人の立つ大地が巨大な半球状に凹む。

 

 そんなやり取りが幾度も行われ、周囲の瓦礫が重力に逆らうかの様に浮かび上がり、いよいよ周囲が目も当てられるほど荒れ果てた時――宙に浮く瓦礫の陰から一つの大柄な影が浮び上がる。

 

「――――ッッ!」

 

 それを見た宿儺は口角を吊り上げて不気味な程に嗤った。

 これを隙とみた日番谷が斬魄刀を振り下ろしてくるが最早そんなもの眼中に無い。

 

「――なっ!?」

 

 振り下ろされる斬魄刀を無手で掴み取る。

 

 当然今は”領域展延”を使用しているので術式が使えず、掌から血が吹き出るがそれも無視して日番谷の腹を再び殴り付ける。

 

 ――――黒閃ッ!!!

 

「グゥッ……!!」

 

 黒い火花はまだまだ宿儺に微笑む。

 

 幸い片足を折り曲げ腹と拳の間に滑り込ませ、なんとか内蔵の損傷は避けたが間に割り込ませた片足が無惨にも折れ、骨が剥き出しとなる。

 

 そして衝撃を一身に受けた日番谷は足の激痛を感じながら吹き飛ばされ、ツヴァイ・アスト(第二枝街)の方向に放物線を描きながら落ちていった。

 

 そして両者の激しい攻防が落ち着いた為、宙に浮いていた瓦礫が重力に従い落ち、辺りに砂煙が立ちこめる。

 

 宿儺はそのとある一点を見つめていた。

 

「――殺した……と思っていたのだがな、あの科学者共かゾンビの女か分からんが面倒なことをしてくれる」

 

 その言葉とは裏腹に宿儺は悠然な笑みを浮かべる。

 そして砂塵が晴れ、そこに居たのは宿儺によって両断されたはずの更木剣八であった。

 

「もう遊びはせん、速やかに貴様を殺す――更木剣八」

 

「ハッ!やってみやがれ!できるモンならなァ!!」

 

 ――卍解

 

領域展開――――伏魔御廚子

 

 宿儺の背後に牛の頭蓋骨に彩られた御堂が出現する。

 対する更木は元々赤黒く濁っていた肌が赤色が強めになる。そして額からは二本の角が生え、鬼のような形相になった。

 

 斬撃の嵐が更木を呑み込む。

 

 だが更木は関係ないとばかりに吠えて見せた。

 

「オ゙オ゙ォォォオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!!!」

 

 その咆哮と同時に更木が足元の地面を割り砕く勢いで宿儺に突貫した。

 それを彼は余裕そうな笑みで迎え撃つ。

 

 更木の身には絶え間なく斬撃が浴びせられ、深い切り傷が付いていた。

 更木の防御力でも防ぐことの出来ない斬撃。宿儺の呪術は四度の黒閃を経て、過去最高ともいえるまでに冴え渡っている。

 

 だが更木もゾンビとしての肉体としての能力で、切り傷が即座に再生する為傷を無視し宿儺に切り掛る。

 

 無骨で巨大な戦斧が宿儺の頭蓋骨目掛け振り下ろされた。

 彼はそれを左足を後ろに引くことで半身逸らし、躱してみせる。

 

 対象が居なくなった戦斧は地面に激突し、その斜線上に沿って深く長い亀裂を作る。

 

「…………………………」

 

 そんな彼を宿儺は冷徹な目で観察していた。

 その表情には僅かな失望の色があった。

 

 更木が戦斧を振り下ろした体勢のまま横一文字に戦斧を振りかざす。

 宿儺はそれをしゃがむ事で回避し、お返しとばかりに拳を叩き込む。

 

 ――黒閃ッ!!!

 

 黒い火花が更木にも襲いかかる。

 

 その拳は彼を数メートル後退させ、距離を生み出す。

 

 畳み掛けるように更木との距離を狭めようと一歩踏み出す。

 

「――ガァッ!!」

 

 更木は小さく雄叫びを上げながら戦斧を横に一閃。

 

「――つまらんな」

 

 己の首に迫る一撃に対してそう評した宿儺は、大地と水平になっている戦斧の下から思い切り殴り付け、軌道を上に逸らす。

 

「貴様はゾンビとなったまま来るべきではなかったのだ、俺の斬撃で血を流し動きを鈍らせたお前の姿は見るに耐えんものだった――せめてもの手向けだ受け取れ」

 

 ――黒閃ッ!!!

 

 その拳は無防備な更木の顔面に吸い込まれ顔を陥没させる。

 地面を数回バウンドしながら吹き飛び、瓦礫の山に激突する。

 既に卍解は解けており、意識はあるものの血が足りず身体が一切言う事を聞かないようだった。

 

「こんなんで終われるかよ……俺はまだ殺り合える」こんな事を口にしながら必死に身体を動かそうと試行錯誤しているようだが、如何せん血を流しすぎた。

 彼はもう動けないだろう。

 

「呆気ない幕引きだったな――さて、次は誰を殺すか……」

 

 彼は更木を一瞥し領域を解いた後、新世界城内に残る気配を探り始めた。

 そんな彼のセンサーに二つの気配が反応した。その者達はすぐ目の前まで迫ってきている。

 

「ククッ、奴らから寄ってくるとは好都合だ――先ずはこちらに向かってくる奴らを殺し、その後順次刻んでいくとしよう」

 

 そう言い視線を向けた先は更木が衝突した瓦礫の山。

 その頂上から姿を現したのは謎のメイクを施されている変人と、下駄帽子を目深に被った怪しげな男。

 

 その者らが頂上から宿儺を見下している。

 

「さァ涅サン、さっさと終わらせちゃいましょう、霊王が死んだ今三界が崩壊するまで時間がありません――アタシらがここで倒さないと世界は終わります」

 

 声を掛けられた涅だが反応が無い。

 

 すると突如火山が噴火したかのように涅の口から憎悪の言葉が溢れ出す。

 

「――黙れ!――そんな事貴様に言われずとも分かっている!そもそも貴様と共闘するなどという反吐が出る様な事をしてやっているのだ!その上、私に指図をするなど不愉快極まりない事だヨ!!」

 

 そんな暴言を吐きながらも視線は一切宿儺から逸らさず警戒を続ける。当然浦原もマユリの言葉を聞き流しながら、宿儺の一挙一動を見逃さんと目を凝らす。

 その最中、唐突にマユリが腕を伸ばし、倒れた更木を回収して何かを取り付けどこか遠くへ投げ飛ばす。

 

「涅サン、今のは何を?」

 

「フン!なぜ貴様に教える必要があるネ!」

 

 終始苛立ちを隠さないマユリだったが、これは更木をゾンビにした直後に浦原と交したやり取りが主な原因となっている。

 己の自尊心を叩き折られ、ましてやそのことを気にも留めない目の前の男に大層腹が立つが、すぐに越してやるという気持ちの方が大きい為何時もより過激な暴言を吐く程度で留まっている。

 

「それもそうっスね――では涅サン、さっきアタシが教えたのを分かってますよね?」

 

「――誰にモノを言っている!私を舐めるんじゃないヨ!」

 

「なら良かったっス――奴の領域は恐らく連続で使うと脳に多大なダメージが蓄積される筈っス。だから奴はこの先まだ多数の敵が残っている状況で安易にその手段を取れない――畳み掛けるなら今っスよ涅サン」

 

 そんな二人のやり取りを見ていた宿儺は次の行動を見て言葉を失う。

 

「(有り得ん……有り得るはずがない。術式も、まして呪力すら持たん者共がまさか――)」

 

「――領域展開」「――領ォ域展開!!」

 

 浦原は真剣な顔付きで施無畏与願印を結び、マユリは狂気の笑みを浮かべ合掌印を結ぶ。

 

「(――領域を展開するか!!)」




2人の領域の能力を宿儺みたいに術式の延長線上のものにするか、五条みたく全く別系統のを生やすか悩んでます。まぁ簡単なのは宿儺系統だからそっちにする可能性が高いです。(そもそもどういう感じにするか決めてないんですけど……)
印はなんか観音様と地蔵様が良くやってるイメージがあるやつにしました。イメージと違うと思われたら申し訳ありません。

それと更木には謝っとく。君の戦いはもう散々やったから作者はお腹いっぱいなんです。

追記
誤字報告ありがとうございます
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