呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる 作:ジェネリックたい焼き
「――領域展開」「領ォ域展開!!」
浦原が施無畏与願印を組み、マユリが合掌印を組む。
彼らは術式は疎か呪力すら所持していない。その者が領域を展開する素振りを見せた事実に、宿儺は激しく困惑していた。
――本来ならば有り得ない現象。だが心のどこかで否定できない自分が居た。
――そして二人を中心に領域が展開される。
「――補陀落紅姫――」「――救世疋殺地蔵!!――」
浦原を中心に黒い結界と共に天に青空が広がり、大地には何処までも続く草原。空高く見上げても頂上が見えない果てしなく大きい山が出現する。
そして何より存在感を放つのは浦原の背後に居る大きな目を閉じた観音像だろう。
その像は神々しさをこれでもかと醸し出しており、その姿を見ただけで畏怖の念を抱かずにはいられないほどだった。
そしてそのすぐ横では、浦原同様黒い結界が辺りを覆う。
マユリを中心に、浦原とは対照的な禍々しい暗い空、草木が一切生えていない荒地。そして底が一切見えぬ暗く深い暗黒の谷が出現する。
そしてこちらには巨大な赤子の地蔵像がそびえ立っており、その地蔵は天から注ぐ一筋の光に照らされていた。その重厚な様は見る者全てにプレッシャーを与えている。
その2つの対照的な領域はまるで極楽浄土と地獄のようだった。
――だが、彼らの領域はここでは終わらない。
「「――習合」」
その言葉の後、宿儺は信じられぬものを見た。
二つの領域の外郭が混ざり合い、溶け合い、やがて一つの領域となる。
――無
その領域内にはただただ
何も無い空間に存在する術者を除き、巨大な観音像と、巨大な地蔵像のみが存在していた。
心做しかその仏像らは宿儺を凝視しているように感じられた。
その信じられない領域をその身で体感した宿儺は暫し呆然としてした。時間にして0.1秒にも満たない刹那の時間――だがその時間さえあれば領域の必中効果は発動する。
「……チッ」
己の右上腕の指先が突如として裂け始めたのを見て宿儺は舌打ちしながら下両腕の手の平を合わせ、握る。
――
領域の必中命令を打ち消す結界。これを張った宿儺の指先が裂けるのが止まった。
――だが宿儺はある違和感を覚える。
「(何だ……?反転術式が効かん…………)」
「何で傷が治らないか不思議な顔してるっスね、簡単っスよ、貴方のその傷は――「貴様のその傷、いや傷では無いネ…………貴様のその指先はもう、その状態が正しいという事になったのだヨ!――だから君の指は生まれた時から裂けていた……先天的なモノなら再生のしようもないからネ」――という訳っスお分かりいただけました……か!」
その言葉を皮切りに浦原とマユリが突貫する。彼らの斬魄刀は領域展開時に触媒となった事で消えている。
――だが今の彼らは斬魄刀が無くとも様々な能力を使える。
規則的で澄んだカチカチカチカチッという音が二人の身体から鳴ったと思うと、突如としてその身体から呪力が吹き出した。
「(――なぜ奴らから呪力を感じる……!!呪術師でもないというのに何故…………)」
宿儺はこちらに突貫してくる二人の死神に目を剥く。
二人の身体からは呪力が滾っており、特に拳からゆらゆらと煙のように立ち上る呪力を宿儺は確かに確認した。
「アタシらの領域の能力は『全てのものをなんにでも作りかえる能力』――貴方の使う
「その通り!浦原喜助と共闘するのは癪だが、それも貴様の死体を手に入れられるとなれば安い事…………おとなしく死んでくれたまえヨ!!」
二人の拳が宿儺の腹に突き刺さる。普段なら食らうことの無い一撃――だが今の彼は想定外の事象の連続で混乱している。
ただそれも先程までのこと――
「(所詮は先程得たばかりの力、お粗末な呪力操作だ!!!)」
二人の伸びた腕を宿儺が上腕で掴み取りそのまま万力の如き力を込めて握り潰す。
だが、その握り潰して離れた腕が宿儺を巻き込み大爆発を起こす。
それには少しでも殺傷力を上げようと無数のまきびしが込められており、それが宿儺の身体に突き刺さる。
「その程度の小細工で俺を殺せると思うか!!」
爆発の影響で出た白煙をかき消しながら吠える宿儺に、浦原はあくまでも冷静に返す。
「勿論そんなこと思ってないっス」
その言葉を聞いた宿儺の視界に映る二人の姿がボヤける。焦点が合わない中チクリと痛む目頭を押さえる。
そして己の異変の正体に勘づく。
「(これは…………)――毒か!!」
宿儺の膝がぐらつき頭痛を起こす。思わず膝を着きそうになるが己の矜恃で踏ん張り、持ちこたえる。
だが毒はその間も全身を駆け巡っており、不快感は消えた様子はなく、だんだんと吐き気を催してきたようで口元を手で押えた。
「カハッ」
思わず咳き込むと、口から出てきたのは鮮血であり汚れた口元を乱雑に拭う。
「(気を抜きすぎだな……奴らほどの者であれば第2第3の手を用意しているのは当然の事――先の爆破は
浦原が打ち込んだ毒は、一見無害な性質を持つ物質だが、その正体は猛毒であり、これを死神が、虚が、人間が摂取すれば確実に死に至るであろう最凶の毒。
使う機会は無いだろうと開発してすぐ丁重に破棄したが、この領域の能力によって蘇った。
猛毒に犯された状態でも敵は待ってくれない。
その言葉の最中また二人の身体からカチカチカチカチッという音が響く。
「(今度は何が…………)」
ボヤける視界の中、宿儺が捉えたのは爆破したはずの腕が再生しているのと、その手に握る見覚えのある斬魄刀だった。
「「――卍解――――残火の太刀」」
何も存在しない空間に突如太陽の如き灼熱の炎が湧き出る。
彼らが使ったのは山本元柳斎重國の物であるはずの”残火の太刀”
焼け焦げた刀を握る二人の姿はゆらゆらと陽炎のようにブレていた。
それが周囲の熱による影響なのか、毒による影響なのか、はたまたその両方なのか分からないが、その卍解は正しく”残火の太刀”そのものであった。
宿儺はそんな光景を眺めながら、「所持者以外が何故使える……」と内心で毒づきながらも口は緩やかな弧を描いていた。
「驚いたかネ?まぁ、その様子を見るにそうでないと思えるが…………何か聞きたいことがあったら聞いてくれたまえヨ」
「……では聞かせてもらおう、――カフッ、なぜ貴様らが奴の卍解を所持している?それも二振りもだ」
「言ったはずだヨ、この領域の能力は『全てのものをなんにでも作りかえる能力』何故他人の斬魄刀が使えないと思い込んでいたのかネ?」
「――それもそうか、すまんな下らんことを聞いて」
「仕方の無いことだヨ、凡人が天才の考えを理解出来んのは当然の摂理なのだヨ」
マユリの言葉に耳を傾けているように見える宿儺だが、その実何も聞いてはいなかった。
今彼の脳内は、あの卍解をどう攻略するかで支配されている。
「(毒を解毒するにはしばしの時間を要するな……そんな中、得物を持たん状態であの斬魄刀とやり合うのは少々面倒だ…………展延は彌虚葛籠を解かねば使えんし……)」
宿儺が思考に浸っている最中――二人は一つの技を解放する。
「「東――
それを発動した瞬間、空間を埋めつくしていた爆炎が二人の身体に吸い込まれるようにして消失した。
「(これは……奴らの炎が持つ熱の全てを鋒に集中させる技、だったか……まぁ、刃先に触れなければどうということは無い……)――来い」
宿儺のその挑発を待たずに、二人が間髪なしに強襲をかける。
呪力を練り上げるのは継続中のようで、斬魄刀に呪力を流し込むことで殺傷力を増幅させている。
二人が刀を振るう直前、宿儺は後ろに飛ぼうと足に力を溜める。が――その瞬間、足に鎖のようなものが巻き付き行動を阻害される。
「(先程までは何も無かったはずだ…………ッ!)――そうか!霊子を組み替えたか!!」
体の不調でろくに回らない脳で導き出した答え――その回答に浦原は斬魄刀の柄を強く握り答える。
「その通りっス!!」
左右から同時に放たれた二人の横一閃の一振は、惜しくも空振りに終わる。
宿儺が鎖を無理やり引きちぎりながらバク転で回避したためだ。
ただ、二人の一閃は大気を大きく切り裂く。その一撃で周囲に凄まじい暴風が吹き荒れた。
二人の髪と衣服が暴風で激しく靡く。二人はすかさず追撃の一手を放つ。
その追撃に対し宿儺はまたもやバク転で綺麗に回避する。
だが二人の攻撃はまだ終わらない。――バク転の着地地点目掛けて刀を一振――しかし、もう一度バク転した宿儺に躱される。
二人が宿儺との距離を詰めながら連続して刀を振るう。――宿儺はその無数の剣閃をバク転を繰り返すことで躱す。
そんなやり取りが数秒続いた後、宿儺が上腕に力を込め地面を突き放すように押し、一際大きく飛ぶ。
「カフッ…………(毒はもう間もなく解毒できる……だが術式だけはまだ掛かるな……無理に治癒することも出来るが、これからの戦いを考えればリスキーな選択は取りづらい…………)」
口に溜まった血を吐き捨て、二人を見据える。
だが落下している最中、突如下に無数の槍が剣山のように出現した。
「(やはり彌虚葛籠の範囲内は改変できんようだな、この程度距離があれば来ると分かっていれば対処は容易い)」
空を蹴り宿儺は空を駆ける。複雑で立体的な起動を描きながら二人との距離を確実に縮めていく。
その最中、突如として観音像と地蔵像の視線が宿儺を捉える。
そしてその眼から純白と漆黒の極太の光線が放たれた。
「(チィッ!!あれは見せかけだけのシンボルでは無かったか……)」
己に迫り来る光線を躱すため、一度地に降りソレから逃れようと駆け回る。
だが光線は逃げても逃げても宿儺の後を追ってくる。
それにうんざりした宿儺は突如進行方向を90度曲げ、マユリにミサイルを彷彿とさせる速度で突貫した。
当然光線もそれを追いマユリの方へ向かう。
――だが彼は引かない。
「馬鹿め!これで終わりだヨ!両面宿儺!!」
マユリが刀を振り下ろし消し飛ばさんとする。正面に残火の太刀、背後には正体不明の光線。だが彼には秘策があった。
上右腕を弓のように引き絞り力を溜め――一気に解放した。
それでも、宿儺の一撃が届くよりも早く、マユリの一振が彼の身体を消し飛ばすか、光線が宿儺を丸ごと呑み込むだろう。
流石の宿儺も、残火の太刀の――カウンターによる一撃を喰らえばその箇所が消滅するし、どうなるか分からない光線を受けるほど考え無しではない。
だが宿儺は己の命が危機に晒されているにも関わらず、ニンマリとほくそ笑んだ。
「ッッ!!――待ってください!涅サン!!」
横から見ていた浦原は宿儺のその微笑み気付き、声を荒らげて静止する。――だが少しばかり遅かった。
「あと少し早く気付いていたら止められたやもしれんな」
上左腕で斬魄刀の峰を、手首を九十度曲げ小突き、起動を逸らす。
縦一閃――上から下に振り下ろされた刀は、側面からの攻撃に弱い…………。しかも宿儺は熱が込められた刃先の一筋を器用に避け、峰の部分のみを器用に狙い圧倒的破壊力を持つ攻撃を無力化する。
――黒閃!!!
「ガハァッ!!!」
腹に突き刺さった拳は深く深くマユリの腹を抉った。
汚らしく血を撒き散らし、結界の縁まで吹き飛ばされ外郭に叩き付けられる。
そしてマユリが制御していた地蔵像の光線が途切れて消滅した。残るは観音像による光線だが、地蔵像のものが途切れると同時にそれも消失した。
良くも悪くも二つで一つの領域展開。此度はそれが裏目に出てしまう。
――そして宿儺は6度の黒閃を経た7度目の黒閃を放つ。
その威力はもはや計り知れないものとなっている。
「(片方の領域はこれで潰した……であればこの面倒な能力も失われるだろう)」
宿儺は、ゆっくりと振り向きながら次の獲物である浦原を視界に収めていた。
「(解毒も大方済んだ、後は確実に一人一人潰す――――奴は……流石に取り乱しはせんか)」
――違和感
冷徹な目でこちらを見つめる浦原をこちらも静かに見つめる。
彼程の者が仲間一人やられたくらいで動揺するとは微塵も思っていない宿儺は、浦原を殺す方法を着実に構築し始める。
――違和感
「(片方の領域が維持できなくなればもう一つの領域も共に崩れるのかは知らんが、あらゆる物を作り変える能力は無い――よって確実に叩く)」
――違和感
宿儺の警報が最大限音を鳴らす。この感覚は過去ユーハバッハと戦った時にもあった。
己の命に直接触れられているような……そんな感覚…………。
「さらばだ!!!」
後ろから心臓目掛けて放たれた斬魄刀による刺突を上体を左に逸らし躱し、その伸びきった腕をガッチリ脇に挟み掴み取る。
「チィッ!!」
腕を固く握られた者――浦原マユリは舌打ちを吐き、脱出しようと己の身体を改造するが――それよりも早く、宿儺が腕を砕き折り腰をひねって裏拳を打つ。
「――ゴフッ!」
顎下吸い込まれるように当たり、よろめくマユリに追撃となる拳を繰り出す。
空気を掻き分け、重く鋭い一撃がマユリの頭部に迫る。――しかしその拳が到達するよりも早く、マユリの身体から時計の針が高速で進んだかのようなカチカチカチカチッという澄んだ音が発せられ、彼の身体が変質する。
――刹那、彼の頭部に無数に枝分かれした青白い紋様が現れる。
周囲に鐘を鳴らしたような鈍い音が響き渡る。
「チッ(
滅却師の基礎技能である”
その効力によりマユリに対してダメージは入らず後ろに吹き飛ばすだけに終わる。
マユリの眼球がギョロリと動き、鋭い眼光で宿儺を睨みつける。
「勘だけは鋭いようだネ……まぁ貴様が私に
「そんな事はどうだっていい、貴様の事は確実に潰したはずだ……何故生きている……?」
「貴様も分かっているのではないかネ?それともまさか分からないとでも言うつもりかネ?」
小馬鹿にしたように上から目線で物を言うマユリを完全に無視し、思考に耽る宿儺は一つの考えに至る。
「そうか……完全なる実体を持つ分身体か」
「その通り!!先程貴様が倒したのは私ではなく分身だったというわけだヨ!!」
両手を仰々しく広げ、天を向き狂気の笑みを浮かべながら語るマユリの姿は勝利を確信しているようにも見えた――そしてその根拠となるものが今実現される。
「涅サンの言う通りっス」「アタシらは無限に分身体を生み出せるんス」「つまり貴様はもう詰んでいるという訳だヨ!」「こんな勝ち方をするのは少々心苦しいっスけど仕方ないっスよね」「あぁ、今から貴様の隅々まで研究できると思うと脳が蕩けてしまいそうだヨ」「さぁ、大人しくしていてください、アタシはイタズラに人を傷つける趣味は無いので」「諦めたまえヨ、貴様にもう勝機は無い」「抵抗しないでくれると助かるのだがネ、不用意に傷が付けば品質が落ちる」「――――――」「――――――」「――――――」「――――――」…………………。
己を囲むように虚無の空間から次々と生み出される浦原とマユリ。
その者ら全員が必ず斬魄刀を所持しており、その種類は様々だ。
一対無限。そう呼ぶに等しい数まで二人が増え、斬魄刀を構え皆それぞれが卍解をする。
全員の全身から膨大な霊圧が発せられ、周囲の空間が嫌な音を立てながら軋み、歪む。
――そして卍解が解放された後の光景は幻想的で美しいものとなっていた。
様々な箇所で様々な色の卍解が光り輝き、虚無の空間を彩る。
――この美しくも絶望的な光景を前に宿儺は笑った。
「フンッ、気でも狂ったのかネ。ではさっさとトドメを刺すとするかネ」
「待ってください涅サン、何か嫌な予感がします…………」
「黙れ、もう貴様に命令される筋合いなど――――ッッッッ!!!」
マユリは寒気を感じ弾くように宿儺を凝視する。己の全身の身体にはもうできるはずのない鳥肌が立っているように感じられた。
二人は懐に手を伸ばし漆黒の球体を手にする。
「――領域展開」
その球体に思い切り霊力を込める。そして己を青く薄いドーム状の膜で覆う。
「――伏魔御廚子」
オリジナルの領域については優しい目で見守ってください。
それと設定などで矛盾している箇所があれば教えていただけると幸いです。
追記
誤字報告ありがとうございます