呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる 作:ジェネリックたい焼き
………長い期間開けてすみません
それではどうぞ
「――伏魔御廚子」
宿儺の領域が展開される瞬間、彼らは青白く薄いドーム状のもので己を覆い尽くす。
――その判断は正解だった。
瞬きの間に領域の外郭が崩れ二人の領域が崩壊する。
宿儺は二人の領域の外郭をギリギリ覆い尽くせるほどの大きさ――半径五十メートルまで領域の範囲を狭め、斬撃の出力を格段にはね上げていた。
彼の背後に牛の頭蓋骨が飾られた御堂が現れる。
そして領域が崩れた瞬間、分身体達は皆ボロボロと崩れ、斬魄刀も全て幻だったかのように淡い粒子となって空気と混ざり合う。
――彼らの奥義は一瞬にして破られた。
だがこんな状況に陥って尚、科学者達は焦らない。
「アタシらにもう一度領域を展開する霊力は残っていません、だからここからは短期決戦で行きます」
「同感だヨ、領域を破られた以上私達の最高火力は失ったと考えていい、まぁ負けるつもりは微塵も無いがネ」
擬似簡易領域が凄まじい速度で削られている中、二人は気軽に言葉を交わす。
その視線の先には、足を前に一歩出し後ろ足に力を込めている宿儺の姿があった。
「来るか……」
「来ますね」
爆発的な力が解放され、踏み込みと同時に大地が大きく抉れ、初めの三歩で最高速度に到達する。
二人の間を閃光のような速度で通り抜け、すれ違いざまに腹に一撃を入れる。
「カハッ!」
「グッ……」
瞬間の内に凄まじい衝撃に襲われた両者は思わず呻き声を上げる。だがそれだけだ――彼らは即座に懐から注射器を取りだし、それを己の首に刺して何かを注入した。
「(奴らは何を入れた……?――大方、動体視力を向上させるものだろうな……まぁ良い、早急にあの領域を剥がし微塵に切り刻む)」
再び片足を前に出し、地面を翻しながら突貫する。
先程同様残像しか見えない速度で走る宿儺の姿を、二人は捉えられないと思われたが彼らの目はしっかり宿儺に向いていた。
宿儺の上腕の拳が二人の顔面に当たる直前、それぞれが首を傾け躱す。
「(やはり動体視力を強化する類のものだったか……!!)」
浦原とマユリの鋭い突きが宿儺の脇下を襲う。
「徒手空拳は得意じゃないんスけどね!」
「つべこべ言わずに手を動かしたまえヨ!!」
今度は顔面を狙った追撃の突きは、宿儺の手の平に打ち付けるだけに終わり掴み取られる。
そして宿儺は二人の間にあり、そのまま伸ばしていた上腕を思い切り広げ、鋭い裏拳を二人の頬に打つ。
「ブフッ……!!」
「ガッ……!!」
小さな動きの裏拳だったが、この拳に秘められた威力は想像を絶する。
二人は奥歯が折れ、血と一緒にそれが吐き出される。
そして宿儺は未だ掴み取ったままの二人の拳を握り潰そうと加える力を増やしていく。
――二人の擬似簡易領域も、もう既に殆どが剥がれていた。
思いのほか裏拳の威力があったのか、二人の体は拳を掴み取られたまま傾く。
――それが二人の狙いだった。
倒れかけた体勢のまま、二人は瞬きの間に懐から注射器のようなものを取りだし、宿儺の腹部目掛けて腕を振るう。
その僅かな光が注射器の針に反射し、その光が宿儺の視界に収められる。
「(注射器?――今更何を……いや、油断はできんな。奴らは呪力の解析に成功したと言っていた……故になんらかの異常をきたす可能性もある)」
その圧縮された思考の中宿儺が選択したのは――迎撃――今から上に跳ぶのでは間に合わないと判断した彼は、両上腕を注射器を握っているそれぞれの腕に寸分違わず拳を振り下ろす。
丁度肘を打ち抜かれ、握力が弱まり注射器を地面に落とす。
ガラスの破片と共に飛び散った青い液体は、大地に染み込み消え失せる。
――グシャッ
注射器が割れると同時に二人の拳も握り潰された。
「チッ」
「不味いっスね」
焦燥した表情の彼らの簡易領域が悲鳴を上げなが、とうとう崩壊寸前まで削られる。
そして――
――パリンッ
辺りにガラスが割れたような高い音が響き渡り、簡易領域が崩壊する。
そして即座に彼らの肉体を斬撃の嵐が襲う。
「(ほう、素の肉体強度のみでこの領域を耐えるか……)」
その身が刻まれ続けているというのに倒れない二人に少し感心しながら追撃の一手を加える。
その場で空気を切るような回し蹴りを放つ。
「チィッ!」
「くっ……」
その剛脚を二人はそれぞれ反対方向に後退し、躱した。
――そして再び簡易領域を張る。
「(破られてもまた張り直せるのか……そして動き回ることも可能だとはな……)」
後退した二人だったが間髪入れずに踏み込み、大地を駆けて宿儺に突貫する。
浦原らが使う擬似簡易領域は、媒介となる漆黒の球体を中心に結界が構築されているため、特異な縛りなどは一切無い。
そして二人はそれぞれ別の注射器のような何かを取り出し己の身体に注入すると、みるみるうちに深い切り傷だらけだった肉体が再生し、元通りになる。
「アタシに合わせてください涅サン!!」
「私に命令するな!!」
二人はまるで疾風のように大地を駆けながら、拳に力を込める。
そして宿儺との距離があと数歩まで縮まった時、溜めていた力を解放した――――かに思えた。
「ッッッ!!」
その秘められた力は解き放たれることなく、二人は拳を打つフリをしてそのまま宿儺の横を素通りし、それぞれが反対方向に背を向けて走り出す。
「(チッ、今まで逃亡を選ばなかったのは、より確実に領域から脱する為のブラフ――まんまと嵌められたな…………さて、どちらを追うか――)」
彼らは正反対の方向に駆け出しており、逃走に切り替えた瞬間爆発的に加速している為どちらか片方を追えばもう片方を逃す事は確定的――故に迅速な判断が要求される。
そしてこのまま放置していても、簡易領域を剥がす前に領域の範囲から外れるだろう。
凝縮された思考の中、宿儺が選択したのは領域を解除するという愚策――
「は?」
「何を……」
唐突に領域を解除した宿儺に対し、二人の目が弾けるように向けられた。
そんな二人の脳内は驚愕の色に染まっていた。
それほどまでにありえない選択――だが二人はその天才的な頭脳によって、瞬時にある答えに辿り着く。
「まさか……!!」
「そう来るんスか…………」
マユリは驚いたような表情を見せ、浦原は苦笑いを浮かべながら冷や汗を垂らす。
「――領域展開」
宿儺が帝釈天印を結ぶ。
それを見た二人は再び全速で宿儺から離れるように瞬歩を用いて駆け出した。
――それと同時に宿儺から言葉が紡がれる。
「――伏魔御廚子 」
此度のものは今までの領域とは一味違い、この領域は周囲が外殻で覆われている。
逃げ道を与える代わりに領域の効果範囲を広げる縛りが消え、本来の形である――相手を閉じ込める領域が展開された。
「くそっ!!」
領域の範囲ギリギリで領域に閉じ込められたマユリが苛立ちを隠さず外郭を殴り付ける。彼の足を持ってしても、この領域からは逃れられなかった。
一方でマユリの反対側に居る浦原は困り顔を見せながらも、その目は静かに宿儺を捉えていた。
「(こんな大技を連発したら身体に何らかの異変が起こるはず……その隙を見つけて叩くしかないっスね)」
そしてその考えはマユリも同じであった。
「(必ず消耗している筈だ、後はその揺らいだ部分を執拗に攻め続ければ崩れる――――あぁ、貴様を
心を落ち着かせたマユリはこの戦いのその後に思いを馳せながら宿儺を見つめる。
一方で、この領域を展開した宿儺の思考は冷静そのものであった。
「(奴らを逃がせばまた何か対策を考えてくるやもしれん……故にこの領域内で確実に仕留める)」
一度脳を破壊し、その直後に再生させ術式を回復させる荒業――これをすれば確実に脳に負担がかかるが、今はこの研究者達を仕留める事が最優先事項であった。
宿儺を真ん中にし、一直線に並ぶ三者はピクリとも動かず互いに牽制しあっている。
その間にも二人の簡易領域はどんどん削れているが、すぐに張り直せるので然程問題ではなかった。
――その静寂を破ったのは浦原の小さな動作だった。
中指を親指に引っ掛け勢いよく弾き、極小の針を飛ばす。その針は小さな青いドーム状のものに覆われており、斬撃の必中効果が失われる。
「――ッ」
その小さな針を宿儺の高性能な目はしっかりと捉えていた――捉えてしまっていた。
何が仕込まれているか分からない二人の攻撃は受ける訳にもいかず、確実に避けなければならない。
小さな針に意識が持っていかれたその僅かな時間に、マユリは瞬歩を用いて宿儺に肉薄する。
左右から同時の攻撃、一気に懐に入ったマユリは拳を振りかぶり思い切り振り抜く。
その突きを宿儺は軽く弾くことでいなし、回避する。
そして髪の毛より細い針も紙一重で躱す。
そして拳を逸らされ前のめりになったマユリは流れのまま回し蹴りを宿儺の顔面に放ち、それを命中させる。
「グッ……!」
鼻から勢いよく血を吹き出し若干仰け反る。そして背後からは浦原が迫ってきていた。
「涅サン!このまま畳み掛けましょう!!」
「言われなくても分かっているヨ!!」
浦原が空気を穿つような正拳突きを放つ。そしてそれに合わせるかのようにマユリも正拳突きを放ってみせた。
「中々いい拳だ!!」
そう言った宿儺は、足をしならせ弧を描くように浦原の顔目掛けて蹴りを放った。
「うおっと!」
その流麗な蹴りを膝を曲げ身を低くすることで躱す。その際蹴りの風圧で下駄帽子が飛びそうになるが、慌てて手で押えて難を逃れる。
意識が浦原に向いた隙にマユリが指を真っ直ぐに伸ばし、手刀の形をとり刀のようにして宿儺の首目掛けてソレを振るう。
その手刀を宿儺は地を軽く蹴ることで宙に跳び躱す。
足元では、マユリの手刀が空気を鋭く切り裂いていた感覚があった。
「(やはりあの手刀は受けないで正解だったな、俺の術と似た様なものを感じる――大方対象の状態に合わせ、その性質を変化させる斬撃と言ったところか)」
「チィッ!」
一方手刀を躱されたマユリは忌々しそうに舌打ちを一つ零し――
「チッ」
――凄まじい速度で己の目の前に迫り来る足の甲を前に舌打ちするしかなかった。
「ガッ……!!」
顔面に直撃した鋭い蹴りによって前歯が折れ、鼻が潰れ、美しい放物線を描きながら領域の外郭に打ち付けられる。
「(これで一人目……)」
――だが未だ敵はもう一人いる。
未だ滞空している宿儺に対し、浦原はしゃがんだ体勢から勢い良く膝を伸ばし、強烈な直拳を腹にぶち込んだ。
「がはっ!!」
マユリと全く同じ軌道を描き吹き飛ばされる宿儺。
そしてその外殻には、蜘蛛のようにマユリが張り付いていた。
マユリの姿を確認した宿儺は無理やり体勢を立て直しマユリに向き合う。
だが勢いは殺し切れず、そのままマユリの方へと突き進む。
「存外頑丈なものだな!貴様は!!」
「当たり前だヨ!この身体は誰が
「クハッ、それもそうか!!」
重々しい風を全身で受けながらマユリとの距離は確実に縮まる。
そしてマユリも宿儺を迎え撃つ為外郭を思い切り蹴り飛ばし、勢い良く宿儺に突貫した。
――両者の拳が激しくぶつかり合う。
本来ならば成立しないやり取り――だがマユリはドーピングし、身体能力を極限まで高めているが為に宿儺と張り合えている。
そしてこれは浦原も同様であった。
普通に考えても、宿儺との殴り合いは余程フィジカルが無いと成立しない。
それ故の苦肉の策――二人が使っている薬剤は、使用後に全身の筋肉が硬直する。
規格外の一撃により、領域の外殻にヒビが入る。これは本来有り得るはずがない現象――宿儺程の傑物の領域を内側から傷付けるなど相当な偉業だ。
――両者同時に拳が弾け、後ろに仰け反り重力に従い落下する。
その落下地点には浦原が走り込んでいた。
「クハッ」
身体のを捻り下を向く。そして全身の筋肉を使い思い切り拳を放った。
「ちょ!?」
拳の衝突点の大地が大きく捲れ、爆発したような轟音を周囲に轟かせ、飛び散る瓦礫と共に浦原を吹き飛ばす。
「ぐぅっ……」
全身に歪な形の瓦礫が無数に命中し、所々に傷を負う。
「相変わらず規格外な威力っスね……」
煙が晴れたその地を見てそう感じる浦原……爆炎から出てきたのは腕を組み、堂々たる態度で立っている宿儺。
そんな浦原の傍に降り立つマユリも所々に傷を負っていた。彼も瓦礫の嵐に巻き込まれたのだろう。
「それで、貴様はとのくらい力が残っている?」
「まぁ、誇張無しに言うと後三割ってとこっスかね」
「ほう!私は後四割は残っているヨ!」
「オーーサスガッスーー」
わざとらしく拍手しながら褒める浦原にマユリはジト目を向ける。
「…………まぁ良い、それよりこの領域をどう攻略するのかネ?私にも手はあるが、これは少々時間が掛かり過ぎるのだヨ」
「アタシに一つ秘策があるっス」
そう言って浦原が取り出したのは小さな小瓶。その中には毒々しい紅い液体が入っており、見方によっては血液にも見えなくはないものだった。
「ほう!それな一体何なのなかネ?」
「これは――――――――――」
「…………貸したまえ」
ただ一言、そう言ったマユリは浦原から小瓶を受け取り、その中身の液体を一気に飲み込んだ。
「これは別に貴様の研究を認めた訳ではない、ただ少々興味深かったから協力してやってるに過ぎん、そこを勘違いしないでくれ給えヨ」
唇に付いた僅かな液体を舌で妖艶に舐め取りながら指を指し勘違いを正す。
「分かってますよ涅サン」
「ふんっ、それなら良い――さて、狩りの再開だヨ」
死神が領域展開した後、斬魄刀は一定時間消えます。
後、残り1、2話で戦闘は終わります。
追記
誤字報告ありがとうございます
追追記
誤字報告ありがとうございます