呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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それではどうぞ


VS死神達・・・⑫

「〖行くぞ!!〗」

 

 その言葉と共に宿儺は180度身体の向きを変え、真逆の方法に駆け出した。

 その途中で二本の腕を地面に突き刺し、大地を、まるで地面をひっくり返すように捲った。

 

 それにより無数の瓦礫を日番谷に殺到させる。

 彼の視界は大小様々な瓦礫で覆われ、前方が完全に閉ざされる。

 

「最初から俺が居る場所を見切ってやがったか……声か、それとも空気の流れか……」

 

 宿儺はこの瓦礫に乗じてこの場から姿を消す。

 

 初手で視界を潰された日番谷は、目を閉じ思考に集中する。

 

「(奴は俺との戦いでほぼ確実に背後に現われる……今回もそれだとしたら)」

 

 先程までのの戦いから宿儺が出現する地点を予測する。

 

 その思考僅か0.5秒――その間にも己の肉体に瓦礫が衝突するが、接触した瞬間に速度も威力も停止し、重力に従い地に落ちる。

 

 そして日番谷が導き出した答えは――

 

「残念だったな、てめぇの動きはもう読めてんだよ」

 

 日番谷は振り向き横一閃に刀を振るう。

 

 ――そして彼の予測は当たっていた。

 

 ただ一点――宿儺の姿勢が異様に低いことを除いて。

 

「な!?」

 

「〖その言葉、そっくりそのまま返させてもらおう〗」

 

 日番谷の刀は空を切り裂き宿儺には当たらない。

 

 刀を振りぬいたままの日番谷は、無防備に胴体を晒す。

 

 そこに、宿儺の鋭い拳が確かな衝撃を伴って突き刺さる。

 その影響で軽く後ろに下がらされる。だがダメージを負った様子は見られなかった。

 

「(やはり展延では中和しきれんか、だが奴の霊圧は尽きかけている……このままいけば先に崩れるのは奴だ)」

 

 宿儺は続け様に別の腕で突きを放つ。だがそれは斬魄刀に受けられる。

 宿儺の腕が凍る――彼は即座に腕をに力を込め氷を砕き割るとそのまま押し込み、天高くに吹き飛ばす。

 

 ――宿儺はそれを追う。

 

 風そのもののように大地を駆け抜け、空を舞う日番谷から視線を一時も離さない。

 

 ――両者の視線がかち合う。

 

 互いに悪戯な笑みを浮かべ、全身に力を込める。

 

 大地を、空を蹴り日番谷の居る所まで駆け昇る宿儺。

 そしてそれを迎え撃たんとする日番谷の氷塊が、宿儺の瞳に映る景色を白銀色に染めた。

 

 天から墜ちる太陽の如き巨大な氷塊――その圧倒的質量で、世界の時が止まったと錯覚してしまう程。

 

 周囲の音が消え、呼吸をする度に凍てついた空気が肺を刺激する。

 

 ――一瞬の静寂

 

 だが次の瞬間、その静寂は凶悪な笑みを浮かべた宿儺の咆哮によって掻き消された。

 

「〖見事だ日番谷冬獅郎!!――これ程までの規模の術!認めよう!だが――〗」

 

 空一面を覆う隕石の如き氷塊を前にしても宿儺は不敵な笑みを浮かべた。

 その瞳には、目の前の氷塊しか写っていなかった。

 

 鼻から血を流しながらも気にすること無く、下両腕で閻魔天の印を組み、一つの腕を氷塊、もといその先に居る日番谷に向ける。

 

 ――そして口から溢れんばかりの呪詞を零す。

 

「〖龍鱗〗――〖反発〗――〖番の流星〗――」

 

 その呪いの言葉が紡がれるにつれて、辺りの音、光、空間が宿儺の突き出した指先一点に収束しているような、そんな錯覚が起こる。

 

 ――そしてその力は静かに、唐突に解き放たれた。

 

 ――

 

 刹那――世界に一筋の美しい線が入る。

 

 その線上にあるものは全て斬れた――いや斬れたなどという次元では無かった。

 元々そうであったかのように、宿儺に道を捧げるかのように、星の様な氷塊が真っ二つに断たれた。

 

 ――日番谷まで一直線の道が出来る。

 

 その道の先で、日番谷が想定内とばかりに不敵に笑っていた。

 

 彼は大気中の水分を凍らせ、傲慢にも宿儺を見下し天に立ち、彼を待っている。

 

 

 

◇◈◇

 

 

 

 一方その頃、物陰に巧妙に隠れていた平子。彼は一連のやり取りを間近で見たせいか、目ん玉が飛び出でるほど驚いていた。

 

「なんやねん!あんなデカイ氷の塊降らすなんて聞いてへんで!?最初に忠告しとけや!!――それにそれを斬る方も斬る方や!なんであんな真っ二つに斬れんねん!頭おかしなるわこんなん!!」

 

 地団駄を踏み己の思っていた事を全て吐き出す。幸い周りには誰もおらず独り言で終わったが、もし聞かれていたらドン引いた目で見られていたことだろう。

 

 そんな彼はもう一度上を見上げると、そこには驚きの光景が広がっていた。

 

「ちょ待てや!!あのデッカイ氷の塊どうすんねんアイツは!!このままやと瀞霊廷に落ちるで!?」

 

 両断された巨大な氷塊は、綺麗に宿儺を避けて瀞霊廷へと墜落していた。

 あの質量の氷塊がこの高度から一つでも墜ちたら人も建物も全てのモノが吹き飛ぶ。

 

 平子は思い切り息を吸い込み肺に空気を溜め、日番谷に届くように大声を発した。

 

「オ〜〜〜イ!!!あの氷塊そのままやったら瀞霊廷がぺしゃんこに潰れるで〜〜〜〜!!!聞こえてんねやったら何とかしいや〜〜!!!!」

 

 その大きな声は、静寂に包まれた世界によく響いた。

 すべき事を終えた平子は、ただじっと上空を見つめる。

 

「ハァ〜〜……俺の斬魄刀もあそこまでいったらイミ無いやろな……まぁ、降りてきたらまた気合い入れて頑張ろか」

 

 二人の様子をボーッと見つめる平子の瞳には、確かな闘志が宿っていた。

 

 

 

◇◈◇

 

 

 

 宿儺は軽やかに空を駆け、天で待つ日番谷に真っ直ぐに向かう。

 彼の左右には、両断された氷塊が地に吸い寄せられるように墜ちていた。

 

 ――両者の視線が交差する。

 

 目が合ったその一瞬、火花が散るような錯覚が起きた。

 

 宿儺は更に足を回転させ昇る。

 

 そしてとうとう日番谷と同じ高度に到達した。

 

「〖俺の斬撃を受けて右腕一本で済むとは……よくぞ反応したものだ〗」

 

「はん、てめぇに褒められたって嬉しくねぇよ」

 

 日番谷の切断された右腕は、今は氷腕となっている。

 右足もそうだが、今までと寸分違わず動かす為には緻密な操作が必要となる。

 

 それを日番谷は、この土壇場で今までの経験と才能(センス)のみでこなしていた。

 

「〖貴様の力はまだこんなものでは無いはずだ。くれぐれも興を削ぐような真似はしてくれるなよ〗」

 

「関係ねぇな、俺達は勝てればそれで良いんだ。てめぇの願いなんざ知ったこっちゃねぇよ」

 

「〖ククッ、それもそうか〗」

 

 両者軽口を叩き合い、宿儺は顔に笑み浮かべる。

 

 日番谷は氷のような表情を作り出していたが、その瞳の奥には隠し切れない熱い炎が滾っていた。

 

 ――そして唐突に事態は動き出す。

 

「〖お?〗」

 

 宿儺が異変を感じ取った次の瞬間――天空に氷の戦場が突如として生み出された。

 

 そしてそれと同時に、宿儺の首に咲いた紫陽花を押し潰しながら首の治癒を完了させる。

 

「気が利くではないか、これで心置き無くやり合える」

 

 氷の台地を踏み締め、意気揚々と戦闘の構えを取る。

 その大地に触れた足裏は常に凍るが、即座に砕き割り通常時の動きを可能にした。

 

「勘違いすんなよ、俺が動きやすいから作っただけだ。少なくともてめぇの為じゃねぇからな」

 

 日番谷が己の右腕を降り、異常がないかを探った。そして手を握っては開き、細かな動作も念入りに確認する。

 

「よし」

 

 最低限の動きが出来ることを確認し、己も構えを取った。

 

 ――二人とも神経を研ぎ澄ませ長く鋭い息を吐く。

 吐いた息が白く染まり空気と溶け合って消える。

 

 その静寂を破ったのは一筋の線だった。

 

 なんの予兆もなく放たれた不可視の斬撃が日番谷に迫りくる。

 

「――ッッ!!」

 

 辛うじて反応した日番谷は斬魄刀で防ぐ。

 

 その斬撃がゴング代わりとなり、宿儺は氷の大地を駆け出した。

 

 斬撃を防いだ事により一手出遅れた日番谷は、その場で宿儺を迎え撃つ事に決める。

 

「(やっぱ速ぇな……)」

 

 閃光のようにこちらに向かってくる宿儺が速すぎて、輪郭を捉えきれない。

 ただ大まかな位置はしっかりと映し出されている。

 

 宿儺が日番谷の間合いに入った瞬間――彼は反射的に刀を振るう。

 宿儺の首に吸い寄せられる斬魄刀――それが首に触れるよりも早く、腕を力任せに叩き落とされた。

 

 その流れのまま宿儺は日番谷の胴体に手を伸ばす。

 

 対する日番谷は身体ごと持っていかれそうになる衝撃と重圧に襲われる。

 しかし日番谷にとってこの攻撃が対処されるのは想定の内。

 

 若干崩れた体勢から美しい軌道を描いたハイキックが宿儺の頭部に命中した。

 

「グッ……」

 

 宿儺の頭に鈍い衝撃が走り、接触地点から氷が急速に広がる。

 その足を無理矢理剥がし、伸ばしていた腕で日番谷の腹部に優しく触れると冷たさが皮膚を指した。

 

 そしてその一瞬――ほんの僅かに宙に浮き、展延を解く。

 

 ――

 

 宿儺が日番谷の腹を刻んだのと同時に、胴体に触れた腕と、足を掴んでいる腕両方を、氷が目にも止まらぬ速さで侵食していく。

 

 それに対し宿儺はその二つの腕を切り落とすことでこれ以上の侵食を止めていた。

 

 日番谷は腹を斬られた瞬間にその傷口を凍らせ、これ以上の失血を防ぐ。

 そして己の眼前に居る宿儺目掛けて斬魄刀を振るう。

 

 再度展延を纏った宿儺は、更に前に踏み出し日番谷の懐に入り込み、体をなぞるように回避し背後に回り込む。

 

 そのまま後ろ襟を掴み、手に血管が浮きでるほど力を込め、短く息を吐く。

 

「チッ!」

 

 己の未来を幻視した日番谷は舌打ちを零す。

 背後に回られた状態では対処に時間が取られてしまう。

 

「折角の空だ――広く使おう!」

 

 踏ん張る暇もなく圧倒的な速さで投げ飛ばされ、空気を切る音が耳を刺す。

 

 視界の端に映った宿儺は既に凍った箇所氷が砕けていた。

 

 そんな中、己目掛けて無数の不可視の斬撃が身を襲う。

 

「クソっ」

 

 その事を空気の変化で感知した日番谷は、己と斬撃との間に分厚い氷壁を生み出す。

 

 斬撃が氷壁にぶつかる音がして安堵したのも束の間、突如その氷壁を粉砕し、己を追う宿儺の姿を捉えた。

 

「やっぱそう来やがるか……けど……」

 

 その小さな呟きの後日番谷が刀を一振すると、冷気が溢れ出し、氷の大地を突き破りながら氷の牙が波のように突き出る。

 

 そしてそれらが日番谷の意思に従い宿儺を襲う。

 

「一度生み出した氷は触れずとも自在に操れるのか」

 

 宿儺が感心したように呟き、地面を蹴り軽やかに上に跳ぶ。

 それを見た日番谷は、口角を僅かに上げながら宿儺を目で追う。

 

「そう来ると思ったぜ」

 

 日番谷は吹き飛ばされながら進む先に、氷壁を瞬時に立ち上げ、勢いを止めてその氷壁に手を付く。

 

 その刹那――空中に居る宿儺の目の前に、巨大で分厚い氷壁が立ち塞がった。

 

 その壁の表層は無数のトゲで覆われており、そのトゲが宿儺を殺さんと爛々と輝いていた。

 

「まだこれ程の余力があるか!いいぞ、もっと、もっとだ、もっと魅せてみろ!――日番谷冬獅郎!!」

 

 ――通常、この分厚い氷壁を宿儺が破るのは不可能に近い――触れた瞬間拳が凍結し、威力と速度が殺される。そもそもこの分厚さだ、砕くのは難しい。

 

 ――ただそれは通常の話。

 

 全身の力を腕に集中させ、身体を弓の様に反らす。

 

 そして渾身の拳が炸裂した。

 

 ――黒閃ッッ!!!!!

 

 拳を受けた箇所から亀裂が走り出す。やがてそれは氷壁全体に伝播し、その重厚な壁が崩れ落ちた。

 

 だが己に迫り来るは第二の氷の牙の波――それを前に宿儺は、拳を振り抜いた体勢のままその波に呑み込まれてしまう。

 

 

 

 

 

 日番谷は凍てつくような風をその身で浴びながら氷波に呑まれた宿儺を静かな目で見つめていた。

 その高純度の氷は中まで透き通っており、氷中で固定されている宿儺の姿もしっかりと確認することが出来た。

 

「流石にあいつもただじゃすまねぇだろ……結局、浦原の奴が言ってた面白いものがなんだったのか分からなかったが、まぁいいか」

 

 浦原の秘訣の事を頭の片隅に追いやると、少し眉を顰めながら手を幾度も開閉する。

 

「そろそろ時間か……」

 

 日番谷が大きく息を吸い込んで、それを一気に吐き出す。

 すると純白の息を吐き出し、それは留まることなく勢いが増していき、まるで意志を持っているかのように日番谷の身体を包み込む。

 

 やがて白い吐息は冷たい風の流れと共に、薄れていく。

 

 そして完全に晴れた箇所から出てきたのは小さくなった日番谷――というより元の背丈に縮んだ彼の姿があった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 息が荒く、呼吸する度に氷気を帯びた吐息が漏れ、その疲労度を明確に表す。

 その表情には明らかな疲労の色があった。

 

 日番谷は目を細め自身の手を見つめグッと固く握りしめる。

 

「時間切れ……まぁあの状態から見ればよく持った方か……それより――」

 

 顔を上げ宿儺を真っ直ぐに見つめ、彼の元まで駆け足で近付く。

 氷波にゆっくりと優しく触れるとヒンヤリとした感覚が手の平に伝わった。

 

「後はこいつを慎重に瀞霊廷まで運べば”無間”に投獄されるだろうな――けどどうやって運ぶか……」

 

 日番谷が頭を捻り運送方法に悩んでいると、ふと小さな揺れが起こっていることに気付く。

 

「空なのに揺れ……?」

 

 本来ありえない揺れに疑問を持つが、今は霊王が居なくなり、世界そのものが揺れているのだと納得し、思考を打ち切った。

 

 日番谷は胸の奥に僅かな違和感を覚えながらも、再び宿儺をどう運ぶかについて思考を巡らせていた。

 

 

 

 

 

 ――ピシッ




やべぇ12話も続いてる……


因みに、宿儺が真っ二つにした氷塊は途中で粉々に消えてます。今頃瀞霊廷には氷の欠片が雪のように静かに降り注いでいます。

追記
誤字報告ありがとうございます
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