呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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期間が空いてゴメンなさい。

それではどうぞ


VS死神達・・・⑭

 先に動いたのは眼鏡の滅却師――石田竜弦。

 

 彼が腕を前に出し、口を開く。

 

「――炸裂ベルステン

 

 その言葉と同時に指先を弾き、乾いた音を鳴らす。

 すると、宿儺の肉体に突き刺さっていた複数の矢が爆破し、辺りに閃光と爆音を撒き散らす。

 

「カハッ……」

 

 身体を内側から破壊された宿儺の口から乾いた音が漏れ出る。

 

「(血が流れるからと抜かないのが仇となったか……!!)」

 

 俯き、一瞬意識が飛びそうになるも、気合いで意識を保つ。

 そして笑みを浮かべながら視線をはね上げた。

 

 その目の前には、こちらまで後数メートルの距離まで引き締まった顔付きで迫る死神――黒崎一心。

 

 一心は駆けている最中、己の斬魄刀を解放する。

 

「――燃えろ――剡月えんげつ!!!

 

 その叫びと共に、刀身ら炎が吹き出し大気を焼き焦がす。

 

 ――そして渾身の一撃を放った。

 

「――月牙天衝!!!

 

 業火の如く放たれた炎を纏う斬撃は、一心の熱い意志に呼応するように燃え上がる。

 

 そして、宿儺が防御しようと前に出した腕ごと焼き斬り、両断する。

 

「ッ゛……!」

 

 ――宿儺が苦痛で顔を歪めた。

 

 神経を直接焼かれ焦がされる痛みは想像を絶するものだ。

 

 これで宿儺に残された腕は1本のみ。

 

 ――だが彼の目はまだ死んでいない。

 

 宿儺が残る腕をギロチンのように一心の首に振り下ろす。

 

 そんな中、一心は慌てず冷静に手刀の動きを目で追う。

 

 ――宿儺の完璧なカウンター――その正確な一人 振りは、視認していたとしても躱すことは不可能に思えた。

 

 だが彼は仲間を信用している。

 

「させる訳が無いだろう」

 

 その冷たい一言と共に、竜弦の矢が宿儺の腕を穿つ。

 その矢の勢いは凄まじく、矢の軌道に合わせ腕が後ろに持っていかれてしまう。

 

「チッ」

 

 宿儺は舌打ちを一つ零し、矢を引き抜いて砕き割る。

 そして一瞬周囲を見渡し、状況を把握する。

 

 ――その目に写ったのは、他の者達全員が宿儺を倒すという強い意志の元、己目掛けて疾走している光景。

 

 そしてその隙に竜弦が第二の矢を番えるのを、宿儺の広い視界が捉えた。

 

「――光の雨リヒト・レーゲン

 

 無数の光矢が、再び視界を白く塗りつぶす。

 だが宿儺は微動だにせず、薄く笑みを浮かべた。

 

「……芸が無いな」

 

 此度は発動の瞬間を確実に捉えたことで、回避が間に合う。

 己に到達するよりも前に身を逸らそうと足に力を込めるが――竜弦の行動の方が一歩早かった。

 

「――炸裂ベルステン

 

 冷ややかな表情で指を鳴らすと、宿儺へ到達する前の光矢が一斉に爆ぜる。

 閃光と衝撃が空間を覆い、宿儺は面倒くさそうに顔を歪めた。

 

「……視界が塞がれたか。厄介だな」

 

 矢の爆発で出た白煙が宿儺の元まで届き、彼の視界を白で覆う。

 

 宿儺の首が忙しなく回り、前後左右の攻撃に対応できるよう神経を研ぎ澄ます。

 

 ――だが辺りにそれらしい気配は無い。

 

「(何故だ……あの速度ならもうとっくにこちらに到達していてもおかしくは無い。炎を使う死神も追撃をせず姿を消した……奴らの狙いはなんだ)」

 

 宿儺が訝しげな表情を作っていると、気配を感じた。

 

「――上かっ!!」

 

 宿儺は弾かれたように顔を上げ、その先を注視する。

 

 白煙を突き破り姿を見せたのはグリムジョー・ジャガージャック。

 

 ――彼は既に帰刃解放していた。

 

「大人しく死にやがれ!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべたグリムジョーの鋭い爪による引っ掻き。

 ただの引っ掻きと侮ることなかれ、その爪は宿儺の顔面を抉り、血肉を露出させた。

 

 ただ、宿儺も黙ってやられるはずがなく、その腕を掴み取り足を大きく蹴り上げる。

 

「ぶっっ……!!」

 

 グリムジョーの頬に突き刺さった蹴りは彼を吹き飛ばし、地面に転がす。

 数度地面に打ち付けられるも、彼は凶暴な笑みを浮かべ、再び立ち上がる。

 

「さっきより蹴りの威力が弱くなってやがる……もう限界なんだろ!!だったらさっさとくたばりやがれ!!」

 

 己の昂る感情のまま地面蹴り、宿儺に肉薄するグリムジョー。

 

 瞬きの間に接近してきたグリムジョーに、宿儺は若干驚愕する。

 

「(ボロボロの体でまだ速度が上がるか!――いや違う……!!――これは俺の動体視力が低下しているのか……!!)」

 

 己の弱体化具合に驚愕しながらも、先頭と並行して毒の解析を進める。

 

 すると突如、彼の背後から白煙を突き破るように、新たな敵が現れる。

 

「グリムジョー!合わせなさい!!」

 

「断る!てめぇが俺に合わせやがれ!!」

 

 互いに軽口を叩きながら繰り出される、帰刃解放状態のネリエルのランスと、グリムジョーの爪牙による刺突。

 

 宿儺は即座に二人を視界に収め、どちらを防ぐか思考する。

 

「(傷口が広がるのはランスだ。だが俺の体に深く刺さるのは爪牙だろう……ならばどちらを取るか……)」

 

 0.1秒にも満たない刹那の時間で宿儺が選択したのは――ネリエルのランスを受けるという判断。

 

 ランスが己の肉体に突き刺さり、貫手を腕で掴み取る。

 当然傷口からは血が流れるが、今は気にしている場合では無い。

 

「こんなもんじゃ俺は止められねェぞ!!」

 

 グリムジョーが凶悪な笑みを浮かべながら腕に力を込める。

 

 ネリエルも更に突き刺そうと、静かな顔のままランスを押し込む。

 

 どんどんと押し込まれる中、宿儺が放ったのは無数の不可視の斬撃。

 

 ――その全てが二人の体を斬り刻む。

 

 だが二人の力は弱まらないどころか更に増す。

 

「どうした!!斬撃の威力がかなり弱まってやがるぜ!!」

 

「このまま押し込むわよ!」

 

 二人の勢いが更に増し、身から吹き出る感情激な霊圧が宿儺の身体を刺激する。

 

「舐めるなよ――破面共!!」

 

 宿儺もまた鋭く呪力を練り上げ押し返す。

 

 ――三者の力がせめぎ合い白熱しているこの空間に、新たな声が響き渡る。

 

「良くやった2人とも!後は儂らに任せろ!!」

 

 その宣言と共に、冷たい強風に白煙が流され、視界が開ける。

 

 ――それと同時に宿儺は見た。

 

 それぞれの戦形の瞬閧を発動させた夜一と砕蜂の姿を――

 

「いきます!夜一様!」

 

「おう!」

 

 その掛け声と共に2人が3人の固まる場所に腕を伸ばす。

 それを見たグリムジョーとネリエルは即座に飛び退く。

 

 ――それと同時に技が放たれた。

 

「――風神旋ッ!!!

 

「――雷神閃!!!

 

 砕蜂の頭上に展開された風袋。その一本の縄が解き放たれ、宿儺へと絡みつく。瞬く間に竜巻が立ち上がり、彼の身体を飲み込んだ。

 

 続いて、夜一の背にある太鼓が眩い光を放ち、雷撃となって落ちる。雷は渦へと吸い込まれ、風と雷が融合する。

 

 ――二人で一つの合わせ技。

 

 雷と融合した竜巻の牢獄は宿儺の身体を抉り焦がす。

 

 その渦の中心で宿儺は薄く笑みを浮かべた。

 

「(あの破面共は足止めか!)」

 

 ――拳を握り、呪力がその拳一点に集束していく。

 その圧力に耐えきれず、拳からギチッと軋むような音が漏れる。

 

 そして刹那――その力が解放される。

 暴威は大気を穿ち、轟音と共に竜巻と衝突した。

 

「ほう!硬いな!」

 

 ――宿儺に驚きと興味が入り混じった笑みが浮かぶ。

 

 拳と暴風雷が衝突し、火花を散らしながら互いの力が拮抗する。

 

 ――宿儺は今、その場のノリと感情で呪力操作が多少マシにはなってる。

 呪力という力が感情由来だからなのかは定かではないが、この感情の昂りが収まった時――宿儺は敗北する。

 

 

 

 

 

「ククッ……クハハッ……クハハハハハッ!!」

 

 力が拮抗したその只中で、宿儺は愉悦に満ちた笑いを竜巻内に響かせた。

 

「(何時ぶりだ……俺の命に手がかかるのは……!!)」

 

 宿儺は過去に思いを返しながら今この瞬間の緊迫と興奮を存分に楽しんでいた。

 

 ――傍から見れば狂ったとも思うだろう――実際そうなのかもしれない。

 彼は一度転生を経験したことにより、死に対する恐怖は若干薄れている。

 ――それ故に宿儺が選択したのは、純粋にこの命の取り合いを愉しむという道。

 

 

 

 

 

 ――パァンッッ!!!

 

 突如、風船が割れたような音が鳴り響き、それと同時に竜巻の檻が崩壊する。

 その残滓は、空気に溶けていった。

 

「破っ――」

 

 嗤みを浮かべながら発した言葉は、視界に入ってきた情報で断ち切られる。

 

「――この無数の刀は……!!」

 

 愉快な敵が来たとばかりに嗤い、ゆらりと振り向く。

 

 その間も、彼の目に映ったのは己を囲う桜色の刀の数々。

 そのどれもが、鋒を宿儺に向け宙に浮いていた。

 

「ククッ」

 

 宿儺は笑みを零し、刃の檻の中をぐるりと見渡す。

 

 ――前後左右あらゆる方向から鋭い眼光と刃が己を射抜いている。

 

「貴様らも逃げるつもりは無いという訳か」

 

 宿儺が少し愉悦を含んだ声で呟くと、こちらに向く切っ先が僅かに揺れる。

 

 ――今の宿儺にとってこの状況はプラスでしか無い。

 

 己が身に打ち付けられる殺気の奔流も、彼にとってはそよ風同然。

 

「来い、これで最後だ――今一度、貴様らを刻んでやる」

 

 言い切ると同時に、浦原と竜弦を除く全員が駆け出す。

 唯一、足音が完全に無い夜一と砕蜂の方を注視し、その他の者は足音で何処に居るのかを判断する。

 

 その内の一人、グリムジョーが夜一と砕蜂を凌駕する速度で一番に宿儺の背後に到達した。

 

「てめぇをブッ倒すのは俺だ!」

 

 一声放つや否や、腕を鞭の様にしならせ肉を切り裂く勢いで振るわれた。

 

 空気の流れなどで感知した宿儺は一歩も動くことなく上体を少し前に倒し、軌道から外れる。

 

 ――このままいけばグリムジョーの一撃は空を切る。

 だがこれも彼の想定通り。

 

 グリムジョーが口元を開け大きく笑う。

 

「――豹王の爪デスガロン!!!

 

「(ッ――予備動作無しで……!!)」

 

 ――宿儺が驚きを見せるがもう遅い。

 

 急激に鋭利に伸びた爪は、宿儺が回避する暇なく後頭部を切り裂く。

 鮮血が舞い散り、グリムジョーの身体を濡らす。

 

「まだ終わっちゃいねェぞ!!」

 

 グリムジョーは怒号と共に、逆の腕もしならせる。

 

 それを空気の動きで察知した宿儺は、膝を落とし屈む。

 これにより、グリムジョーの爪が宿儺の眼前まで接近していた夜一と砕蜂に振るわれる。

 

「チッ、馬鹿者が」

 

 うんざりしたように舌を鳴らした砕蜂が、夜一を庇うように爪を蹴り上げる。

 

 それを見て夜一は満足気に口角を上げた。

 

「ようやった砕蜂!!」

 

 喜色が溢れた声と共に、夜一の腕に雷が走る。

 

「――雷王拳ッ!!!

 

 研ぎ澄まされた貫手は、空気を切り裂き宿儺の腹を貫通する。

 

「ぐっ……!!」

 

 宿儺に肉を焼かれ刺されたような痛みが広がる。顔を顰めながらも、雷を纏う腕を握りしめた。

 

 ――だが次の瞬間、暴風を身に纏う拳が宿儺の頬に突き刺さる。

 

「貴様!夜一様を離せ!!」

 

 その者は憤怒に染まった表情で怒号を上げた。

 

 ――鼓膜が破れると思うほどの声量。頬の肉を抉られ、甲高い大声で鼓膜を揺らされ、よろめく宿儺。

 

 彼は苛立ちと煩わしさを感じ、顔を歪めて吼える。

 

「――図に乗るなよ小娘共!!」

 

 夜一を掴んでいる腕を振り上げ大地に叩き付けようとした刹那――背後からグリムの爪が、左からネリエルのランスが、右から砕蜂の貫手がそれぞれ宿儺の肉体に突き刺さる。

 

「ぐっ……!!」

 

 宿儺は顔を歪め、口の端から血を滴らせる。

 それでも尚、その手を――夜一を――決して離そうとはしなかった。

 

「夜一様!!」

 

 砕蜂は深手を追わせれば夜一のことを離すと踏んでいた。

 だがその予想は裏切られ、彼女の喉から悲鳴にも似た声が出る。

 

 ――もう間に合わない。誰もが思った時、この戦場に冷たい声が響く。

 

「遅れてすまぬ――後は私が片付ける」

 

 夜一が地面に叩き付けられる寸前、日番谷を避難させていた白哉が桜色の刀を夜一と地面との間に投擲する。

 

 ――それを見て宿儺は嗤う。

 

「無駄だ!刀を投げたところで何になる!!」

 

 確実に一人を葬ろうと、宿儺は全身の力を使って腕を振り抜く。

 だが彼が感じたのは地面に叩き付ける感触ではなく、何か柔らかいものに包まれたような――奇妙な感覚だった。

 

 ――そして、夜一の背を包む桜色のナニカを見て驚愕する。

 

「っ!!――そうか、そうだったな!」

 

 宿儺は何かを思い出したかのように笑う。

 

「――便利なものだ!攻撃、防御共に隙が無い!」

 

 宿儺は白哉の能力を手放しに賞賛する。

 

「――だが――」

 

 感心したような顔から一転、獲物を狙う肉食獣のような目付きになり、己の足を振り上げ、大地を――夜一を踏み潰さんと足を踏み落とす。

 

「夜一様!!!」

 

「チッ!」

 

「避けて!!」

 

 砕蜂が、グリムジョーが、ネリエルが夜一を助けようと行動を起こす。

 

 ――幸い、夜一はすぐ目の前にいる。

 

 だが、三人が到達するよりも早く宿儺の足は夜一を容易に踏み潰すだろう。

 

 宿儺の足裏が目の前まで迫る光景を、夜一はスローに感じていた。

 

「(しくじった、毒でろくに力が入らんと思っておった!!)」

 

 顔にはおくびにも出さずとも、内心は焦燥感に埋め尽くされていた。

 

 ――そんな彼女を庇うように浦原喜助が動く。

 

「いやー危なかったっスね。夜一サン」

 

 下駄帽子を押さえ、飄々とした声で現れた浦原は、踏み下ろされた足の下へ己の足を滑り込ませ、動きを止めた。

 

 ――寸前で命を救われた夜一は思わず笑みを零す。

 

「喜助!!」

 

 彼女のそんな声に答えるかのように、浦原は一瞬だけ夜一の方へ顔を向け、いつもの胡散臭い笑みを向けた。

 

 ――そんな彼らを見て、宿儺は更に足に力を加え、ただ一言。

 

「退け」

 

 その声は、物理的重圧を伴っていると錯覚してしまう程――重い。

 

 追撃を加えようとしていた砕蜂、グリムジョー、ネリエル、白哉と、浦原の邪魔にならぬよう身を移そうとした夜一を含めた五者の動きを一時的に止める。

 

 ――その様はまるで世界が凍り付いたようだった。

 

 そんな中、一人飄々とする男――浦原喜助。

 

「それは出来ない相談っス」

 

「そうか、ならば殺す」

 

 世界はもう二人だけのものだった――停止する世界にヒビを入れ続ける二つの力。

 辺りには金属同士が擦れるような甲高い声が鳴り響く。

 

 ――そんな空間に、二人の男が割って入る。

 

「俺たちを忘れてんじゃねぇ……よ!!」

 

 爆炎に包まれた刀が振り下ろされる――だが、宿儺は動じない。

 手の平で刃を掴み取り、勢いを止めてみせた。

 

「チッ、暑苦しいやつが来たな――先にこいつを殺すか」

 

 宿儺が独り言のように呟いたそれを聞いて、一心の顔に焦りが浮かぶ。

 

「チッ、離しやがれ!!」

 

 重い蹴りを宿儺に食らわせるがまるで巨石を蹴ったかのようにビクともしない。

 

「コイツ本当に毒に侵されてんのか!!?」

 

 元とはいえ、隊長だった己の蹴りを受けて微塵も揺らがない宿儺に対し、思わず愚痴を吐く。

 

 そして宿儺は、先ずは装備から破壊しようと刀を握る手に力を込める――己の手の平から血が流れるのを気にせずに。

 

「ぐっ……!!」

 

 一心が刀を引き戻そうと力を込めたり、炎を吹き出したりするが、動かない――いよいよ刀からピシッと嫌な音が鳴る。

 

「(マズイ……このままじゃ折れる!!)」

 

 それだけは阻止しようとしていた時、耳馴染みのある声が一心の耳に届いた。

 

「馬鹿め、安易に突っ込むからそうなるのだ」

 

 氷のように冷たい声と同時に、刀を掴む手に数本の矢が突き刺さる。

 これにより力が緩み、一心が茶化すような笑みを浮かべる。

 

「サンキューな!!」

 

 活発な感謝の声と共に、宿儺の拘束を解き爆炎を纏った斬魄刀で逆袈裟を放つ。

 

「チッ」

 

 苛立ちを隠さない宿儺が、その斬撃を躱そうと身体を捻るが、誰かに拘束されたかのように身体が硬直する。

 

「ダメっスよ宿儺サン――逃げちゃ」

 

 その挑発したような口調を聞き、宿儺の堪忍袋の緒が切れる。

 

「――浦原喜助ェ!!」

 

 その怒りの怒号が響くと同時に、一心の炎刀が宿儺を切り裂いた。

 

 ――その怒号で、放心状態だった五人の意識が浮上する。

 

「チッ、情けねェ……」

 

「情けないわね……これじゃあ一護に顔向けできない……」

 

「(夜一様の前でとんだ失態を犯してしまった……)」

 

「(不甲斐ないの、皆の足手まといに成り果てるとは)」

 

「(私は先程から何をしている……何も出来ておらぬではないか)」

 

 皆それぞれが己の至らなさに、奥歯を噛み締めていると一心から皆を鼓舞するような声が送られる。

 

「何してやがるテメェら!まだ戦いは終わっちゃいねぇんだぞ!!テメェらにもプライドがあんるなら立ち上がりやがれ!!!」

 

 その荒々しくも熱が籠った声に皆は奮い立つ。

 

「(そうだ、うじうじ考えんのは俺らしくねェ)」

 

「(一護のお父様の言う通りね……)」

 

「(そうだ!ここから挽回すれば夜一様からの評価を取り戻せるかもしれん!)」

 

「(奴の言う通りじゃな、先ずは宿儺を倒すことが先決じゃ)」

 

「(こればかりは奴の言う通りだ……ここからはルキアが誇れる兄であるよう、全霊を持って両面宿儺を討ち滅ぼす)」

 

 再び活力を取り戻した五人の目に、溢れんばかりの闘志が溢れ出す。

 

 ――その様子を見ていた宿儺は顔を激しく歪める。

 

「(何度も心を折ったのにも関わらずなぜそんな目が出来る……)」

 

 血管が浮き出るほど握り締めた拳を一心にぶつける。

 だがそれは斬魄刀で受けられ後退させるだけに留まる。

 

 ――そこに、宿儺にとって忌々しい声が響く。

 

「油断しましたね」

 

 そう皮肉げに笑った浦原の回し蹴りが、宿儺の背に突き刺さる。

 

「ぐっ……!」

 

 鈍い衝撃音と共に、衝撃に弾かれ、宿儺の身体が数メートル程吹き飛ばされた。

 足裏で地面を削りながら踏み止まり、土煙を上げて停止した。

 

 ――そしてゆっくりと振り返り、憎悪の言葉を口にする。

 

「いい加減鬱陶しいぞ貴様ら……」

 

 その言葉に乗せられた殺気が彼らの肉体に突き刺さる――しかし彼らの精神は微塵も崩れなかった。

 

 各々が強い意志を持ち宿儺に鋭い殺気を返す。

 

 そうして宿儺がゆっくりと一歩を踏み出した時、彼の視界が歪み、膝の力が抜け大地に手を付く。

 

「毒…………いや違う、血が足りんのか」

 

 宿儺は己の状況を冷静に分析する。

 

「(今反転を使えば、通常の呪力強化術の質が落ちかねん……そうなれば奴らに一方的に蹂躙されるのがオチだな)」

 

 宿儺の研ぎ澄まさた思考が静かに結論を出す。

 そして彼の耳にはこれを好機と見た浦原と竜弦を除く者達が、一斉に駆け出す音が聞こえた。

 

「どうするか……」

 

 宿儺の口から出た、どこか他人事のような呟き。

 

 ――その直後に、六つの攻撃が宿儺に振るわれた。




浦原の毒は呪力の動きを阻害する効果しかありません。なんか最初に血とかを吐いたのは初期症状(?)みたいなのとノリです。そこまで深く考えないでください。

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