呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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なんか書いてたら、宿儺→裏梅に対しての湿度がちょっと高くなっちゃいました。作者は恋愛経験が0なので許してください。

それと、美しい主従愛を壊した事は本当に申し訳ないです。

※今話もキャラ崩壊を起こしてます。

それではどうぞ。




 気絶している裏梅をお姫様抱っこしながら廊下を歩く宿儺。

 

 窓も無く続く廊下を歩き続け、浦原に言われた通りに突き当たりを左に曲がろうとした時、首元に一本のクナイが添えられる。

 

 音も無く忍び寄ったその者は、宿儺の耳元で小さく囁く。

 

「言え、どういう目的で入ってきた。三秒以内に答えんのなら首を掻っ切るぞ」

 

 宿儺に吐かれた冷たく鋭利なその台詞。

 

 そんな宿儺は、自身に刃物が突き立てられているにも関わらず、表情は変わらず冷静そのもの。

 

 宿儺は振り向くことなく、そのままの姿勢で返答する。

 

「なんだ、聞いていないのか……詳しいことは浦原喜助に聞けば分かる――兎に角、今俺が言えるのはそれだけだな」

 

 宿儺は自身の言葉に、隠していた哀愁が乗っていたことを感じた。

 そして同様の事を察したのか、夜一が握るクナイが若干鈍る。

 

「そうか、ならば儂がしばし傍に居よう――大方、裏梅を寝かせに来たのじゃろう」

 

 宿儺は夜一の視線が一瞬裏梅に向いたのを感じる。

 ここは黙っているのが吉と判断した宿儺はそのまま沈黙を続けていると、冷たいものか首から離れていくのを感じた。

 

「良いのか」

 

「あぁ、大方あの浦原(バカ)が内密に動いたに違いない」

 

「そうか」

 

 お互い黙ったままの空間が続いたまま、浦原が指定したであろう部屋の前に着く。

 その扉の前には、丁寧に大きく『裏梅サンの部屋!!!』と書かれていた。

 

「ハァァアアア…………」

 

 浦原が書いたであろうそれに、宿儺は大きな溜め息しか出なかった。

 

 気を持ち直し、襖を開けようとするも両手が塞がっていて開けない。

 

 どうしようかと悩んでいると、横から褐色の手が伸びて、音を立てずに襖を開けてくれた。

 

「感謝する」

 

 宿儺は夜一に感謝しつつ、その部屋に一歩踏み出す。

 

 中を一通り見てみると、一人部屋にしてはだいぶ大きい造りとなっていた。

 

 畳張りの床に、ちゃぶ台と二つの座布団。その他小物など色々。

 本当に必要最低限の物しかない一室だった。

 

 そして奥には大きな押し入れ。今は閉まっているが、そこに敷布団がある事が伺える。

 

 宿儺は布団を敷こうと一歩踏み出すが、それよりも早く夜一が止める。

 

「待て、布団を敷くのは儂に任せよ。お主は、部屋のどこかで休憩していれば良い」

 

 そう言い残し、夜一は布団を敷き始める。

 

 そんな夜一を横目で見ながら、宿儺はこの部屋の隅々まで観察する。

 

 一番彼の目に大きく止まったのは、やはり二つの座布団だろう。

 

 片方は長年の使用に耐え、糸がほつれ、色褪せていた。

 対してもう一方は、まるで今しがた仕立てられたかのように光を放っている。

 

 その状態の座布団を見ている宿儺の瞳には、どこか哀の色が帯びていた。

 

「………………」

 

 彼は改めて決意する――もう二度と裏梅から離れないと、一人にはしないと。

 そして優しく、されど確かに、裏梅を抱く力を強めた。

 

 そんな彼女も、今は心底安心しきったのか、全てを宿儺に委ねるような形で眠りについている。

 

 しばしの間、裏梅を抱き締めていると、横から軽快な声が掛かる。

 

「随分とお熱いのぉ」

 

 片手で口を隠しているようだが、その口角が吊り上がっている事は容易に想像できる。

 

 宿儺は否定をしようと口を開きかけたが、先ずは裏梅が優先だと布団に駆け寄る。

 

 そして優しく寝かし、丁寧に掛け布団を掛けた。

 

 宿儺は、慈愛の色を宿した瞳で裏梅を見つめ、錦糸のように艶やかな髪を、壊れ物でも扱うようにそっと撫でた。

 

「俺と裏梅は、そんな関係では無い」

 

 そう口にしながら撫でるその手つきに、説得力など微塵もない。

 ちらりと視線を向けると、夜一が何やら怪訝そうに眉を寄せていた。

 

「(なんだその顔は……)」

 

 宿儺が軽く目を細めると、夜一は一瞬たじろぎ――次には、無理に納得したように頷いてみせた。

 

 ――ウソじゃ……絶対ウソじゃろコレ……

 

 彼女の心の声が聞こえそうな顔だ。

 だがその表情は次第に和らぎ、どこか安堵を滲ませていた。

 

「(裏梅のこんな緩んだ表情は初めてみるの――良い事じゃ、安心出来る者が傍に居るというのはな)」

 

 そんな、生暖かい視線を向けられているとも知らない宿儺は、再び意識を裏梅に落とした瞬間――夜一の気配が変わった。

 

 ホッコリしていた彼女の気配が一瞬で捕食者のものに変わり、宿儺が反射的に目を向けた瞬間――彼女の両腕が霞みのように揺らめいた。

 

「何を……?」

 

 宿儺が疑問符を浮かべると同時に、何処からか「ヒャッ」という情けない悲鳴が響き渡った。

 

 その声に心当たりのある宿儺は、その声の主が居るであろう方向へと視線を向ける。

 

「また貴様か……」

 

 そこに居たのはやはりと言うべきか、変態科学者である浦原喜助。

 彼は身体をくねらせ、情けない格好でクナイを躱していた。

 

 そんな彼の近くには、クナイに縫い付けられた霊圧遮断マント。

 

「あっ、あのぉ……今回は見なかったことになんて「する訳ないじゃろう」――ですよね〜」

 

「ハハッ」と何処か達観したような目で、虚空を見つめる浦原の身体には、覇気が一切宿っていなかった。

 

 そんな彼を宿儺は、冷めた目で一瞬見つめた後、意識は裏梅へと向ける。

 

「ちょっ、ヒドイじゃないっスか宿儺サン」

 

 浦原が口を尖らせて文句を垂らすも、宿儺の耳には一切届いていない。

 

 浦原もその事を感じ取ったのか、露骨に落ち込んだフリをする。

 

 そんな中、二人のやり取りを黙って聞いていた夜一から、震えた声が喉から漏れる。

 

「のう喜助、先程から宿儺宿儺と言っておるが、もしやこの少女は両面宿儺ではないじゃろうな?」

 

「あら?言ってませんでしたっけ?」

 

 夜一の震え声と、浦原の間抜けな声は、宿儺にも届いており、視線はそのままに彼の耳がピクリと動く。そして同時に思う。

 

 ――(浦原)はこんな事も伝えていなかったのか。

 

 と、呆れると同時に、ふつふつと怒りが湧き上がって来た。

 

「(そもそもこの阿呆が俺の事を伝えていれば、先の一連の流れも無かっただろうに………チッ、こんなにも早く縛りを結んだことを後悔するとはな)」

 

 宿儺はチラリと夜一を流し見た。そしてすぐに視線を逸らす。

 

 何故ならば、その顔が般若をも超え、真蛇(しんじゃ)と化していたからだ。

 

 舌が舌が蛇のように伸び、口からは原因不明の蒸気が漏れ出している――そんな彼女を見て宿儺は悟った。

 

 ――浦原の寿命は残り少ないと。

 

  浦原が、遅れその事に気付いたてようだった。彼はみるみる顔を青ざめさせ、こちらに助けを求めるような視線を向けてきた。

 だが、宿儺はそれを務めて無視する。

 

 助けが得られぬと悟ったのか、浦原の顔から血の気が引いていく。

 その震えは、まるで死を前にした獣のようだった。

 

「よっ、夜一サン……」

 

 浦原が最期の言葉を喉から絞り出したが、それは宿儺から見ても、最期の断末魔にしか聞こえなかった。

 

 そんな中、夜一は怒気に満ち満ちた声で、浦原に語り掛ける。

 

「のう喜助ぇ……何故、両面宿儺の受肉などという危険極まりない行為を、独断で行ったのか、儂に聞かせてもらえんかの」

 

 夜一の長く艶やかな黒髪が、ゆらゆらと炎のように立ち昇り、その双眸には、煮え滾るような怒気が宿っていた。

 

 言葉を一切発することもなく、ただ静かに――しかし確実に、怒りの圧が場を支配していく。

 

 宿儺は二人の間に入ることは出来ないと諦め、再び裏梅の髪の感触を堪能していた。

 

 浦原は言葉を発することが出来ず、ただ怯えたまま動けない。

 宿儺には、彼がこれ以上の罪を重ねまいと、己を(夜一様)に委ねる覚悟をしたようにしか見えなかった。

 

「(浦原喜助ともあろう者が哀れだな…………プッ)」

 

「後は()()()()でゆっくりと話そうではないか――()()

 

 浦原の唇が震え、微かに「はい……」と漏れるのを、宿儺の耳は捉えていたが、無視を決め込んだ。

 

「(奴には少しお灸を据えねばならんかったからな。ちょうどいい機会だ)」

 

 夜一の後を死刑台に向かう罪人のような様相で歩く浦原を、横目でチラリと見た宿儺は後にこう語る。

 

 ――いつも巫山戯た態度を取る浦原が、ああまで消沈していたのだ。あの女だけは怒らせてはならんと心に刻んだな。

 

 

 

 

 

 

 二人が部屋から出ていき、暫く……ようやっと地獄の空気も中和されてきた時、裏梅がかすかな呻き声を漏らす。

 

 裏梅の意識がゆっくりと戻り始めたようだ。

 

 彼女が数度目を擦り、ぼんやりとした視界を覚ましていく。

 そんな彼女の視界にまず入ってきたのは女神の顔――ではなく、自身の主のご尊顔。

 

「(あぁ……なんとお美しい…………ッではなく!)」

 

 思わず魅入ったのも数秒。自身が置かれた状況を確認した裏梅は、即座に起き上がろうと腕を立てるが、それは宿儺に遮られた。

 

「よい、寝たままでいることを許す。その顔からして、長い期間ろくに睡眠をとっていなかっただろう?――だから今はゆっくりと休め」

 

「ですが私の役目は……」

 

「いいから休め」

 

「……畏まりました」

 

 裏梅にとって宿儺の役に立つ事が最上の喜び。だが、そんな敬愛する主に「休め」と言われたら、素直に休む他ない。

 

 裏梅は安堵したように目を閉じ、数秒で静かに、再び深い眠りへと落ちていった。

 

 意識を落とす直前、暖かで柔らかい聖母のような手の平が、自身の頭に触れたような気がしたが、迫り来る睡魔には勝てず、そのまま微睡みの彼方へ沈んでいった。

 

 

 

 

 

 スヤスヤと幸せそうに眠る裏梅を見て宿儺は思う。

 

「(千年前では見る事が叶わなかった光景だな……あの頃は、外敵が多すぎて深い眠りにつけなかったからな…………それにしても良い顔で眠る)」

 

 

 宿儺はおもむろに裏梅の髪へ手を伸ばし、手櫛でゆるやかに梳いた。

 一切引っかかることのない、絹糸のように滑らかな髪。

 最後に裏梅の頭を二度、そっと撫でると宿儺は立ち上がり、窓の外の景色へ視線を移した。

 

 

 

 

 

 どのくらい経ったか……日が沈みかけ、空が静かにオレンジ色に染まった頃。

 宿儺はふと大きな欠伸をこぼし、目覚めてから自身も寝ていないことに気付く。

 

「(受肉してから色々とあり過ぎて知らぬ間に疲労が溜まっていたか……疲れを明確に感じるなど何時ぶりだ?)」

 

 宿儺はそんな自分の感想に呆れが来ると同時に、笑いが喉の奥から込み上げてくる。

 

 もう戦いの日々は終わったのだと。だが宿儺にはまだ一つやらはねばならない事がある。

 

「気を抜いてはいられんな」

 

 宿儺はその計画を成功させるために、脳内で何度もシュミレーションを行う。

 

 だが、それを行うには、まだ重要なピースが一つ足りていない。

 

「やはりどうしても浦原喜助の協力が必須となるか……止むを得ん、次会ったら頼んでみるとしよう――まぁ、その時まで生きていればの話だが」

 

 宿儺は、今浦原が置かれているであろう状況を想像し、愉悦を含んだ薄ら笑いを浮かべる。

 

「ふぁあ……」

 

 それでも、迫り来る睡魔には勝てないのか、大きな欠伸を再び漏らす。

 

 宿儺は辺りを見渡し、睡眠がとれそうな場所を探すも、めぼしい所は一つしかない。

 

「仕方がない、裏梅には悪いが端を少し借りるか」

 

 宿儺はのそりと動き出し、半分閉じかかった眼を擦りながら、裏梅の布団に潜り込む。

 布団の中は、裏梅の体温で程よく暖められており、とても心地良い。

 

 故に、意識が落ちるのは時間の問題だった。

 

「(一時間ほど仮眠を取り、その後浦原喜助……を探すと……しよ…………う)」

 

 宿儺は睡魔に身を委ね、深い深い眠りにつく。

 傍から見たら、仲の良い姉妹が添い寝しているようでとても微笑ましい。

 

 柔らかな夕日が二人を静かに照らす。部屋には鳥のさえずりが程よく響いており、安眠の材料となる。

 

 ――それから数時間後、先に目を覚ました裏梅の目に、心地良さように眠る宿儺の姿が映り、再びショートしたのはご愛嬌。

 

 

 

 

 

 

 深夜0時を回った頃、フクロウの低い鳴き声が部屋に木霊したことで宿儺は目を覚ます。

 

 半ば閉じた目で周囲を見渡す。月の光が部屋全体をぼんやりと照らし、それに加え夜目が利く為部屋の状況を鮮明に映し出せた。

 

「夜か……」

 

 宿儺は部屋の状況を朧気ながら認識し、それと同時に寝過ごした事も悟る。

 そしてそのすぐ横では、可愛らしい寝息を立てながら眠る裏梅の姿。

 

 毛布に包まりまるで猫のような寝姿は宿儺の庇護欲を掻き立てた。

 

「もう一度眠るか……」

 

 前までの宿儺なら、ありえないであろう禁断の二度寝。

 宿儺は再び布団に潜り、今度は裏梅を抱き寄せ、抱き枕の様にしながら瞼を閉じる。

 

 そんな彼の耳に届いた小さな可愛らしい声。

 

「お慕い申しております……宿儺様」

 

 裏梅の全く意識の無い状態で漏れたであろう本音。

 その言葉を聞いた宿儺は、嬉しそうに目尻を下げ、口元を緩ませる。

 そして、裏梅を抱く力を少し強めた。

 

 裏梅の言葉が恋愛によるものなのか、敬愛から来るものなのか、前世含め恋愛経験が皆無な宿儺には判断出来ない。

 

 だが、宿儺はそこらの細かい事は気にしない。今はただ、裏梅が傍にいれば良いのだから。

 

「ゆっくり休むといい、裏梅」

 

 宿儺は聖母のような微笑みを浮かべながら、裏梅の背を規則的に、優しく叩く。

 

 フクロウのさえずりに混ざり、宿儺が裏梅の背を優しく叩く音だけが、夜闇に響き、溶け合っていた。




湿度高めなのは、前世の影響とでも考えてください。

それと、宿儺のしてる事変態的な行為ではありません。あくまでも従者に対する愛です。きっと()

後、夜一と裏梅はまぁまぁ仲良いです。
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