呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる 作:ジェネリックたい焼き
それではどうぞ
「ユーハバッハを受肉させるのだ」
「?――失礼ですが宿儺様、奴は黒崎一護に敗れたのではなかったのですか?」
裏梅のその疑問も最もだろう。だが宿儺は知っている。ユーハバッハの戦いには、極力干渉しなかったからこそのこの作戦。
「いや、ユーハバッハは生きている。そして、奴が復活する時期というのが、残り数週間なだけだ」
「????」
裏梅の脳内が「?」だらけになっているのは、宿儺にも分かる。それ程ありえないことを言っているのだから。
「ともかく俺を信じていろ。真相は後に分かる」
「――畏まりました」
なんの躊躇いもなく了承の意を示した裏梅に、宿儺は「面白いものが見れるぞ」と声をかけ、意味深な笑みを裏梅に向けた。
そして踵を返し、宿儺は小部屋から出ていく。裏梅も宿儺を静かに追う。
――静寂が支配する部屋に残された義骸は、その時が来るまでただ静かに眠り続ける。
この部屋に、少女の怒号が響き渡る日は近い。
数週間後――
あれから宿儺は、浦原から霊圧を完全に隠蔽するという腕輪を貰ったり、研究に協力したり、外出が解禁されたなど、密度の高い日々を送っていた。
そんな彼は今、浦原商店の店番を頼まれていた。
「(まさか、裏梅の部屋が地下にあったとはな……あの窓の外の景色も、偽物だというし、相変わらず巫山戯た技術力だ)」
顔を歪めながら拳を握りしめる宿儺。その事を聞かされた時、枯葉大層驚いていたが、今やそれにも慣れた。
浦原がなにか画期的な発明品を見せてきたとしても、適当に流している。
「(そろそろユーハバッハが復活してもおかしくない頃合いだが……)」
宿儺がそう考えながら、適当な商品で遊んでいると、彼の鋭い感覚が懐かしき友の気配を捉えた。
宿儺は、手元で遊ばせていた商品を粉々に握り潰し、目を大きく見開いた。
そこからの行動は早かった。
「裏梅!この店をみておけ!!」
店の奥で休憩を取っていた裏梅に一方的に叫び、返事も聞かぬまま、浦原商店を飛び出した。
一般人に見られることも厭わず、今出せる限界の速度で、目的の場所へと駆ける。
風のように疾走する宿儺。その口元には、微かに笑みが浮かんでいた。
――とある一軒家の、とある一室。
そこには、小さなオレンジ色の髪の子供がいた。部屋は質素な造りで、子供らしい物は何一つない。
そして何より異質なのは、床にぽつんと存在する黒い円。まるでその部分だけが切り取られ、別の空間へと繋がっているかのようだ。
覗き込めば、時折、目玉のようなものがゆらりと姿を見せる。
それでも子供は泣きもせず、怯えもせず、ただその闇へと手を伸ばし、包み込んだ。
次の瞬間、白く細い指が、子供の腕を掴む。
驚いた子供が視線を上げると、そこには一人の美しい少女が立っていた。
そして――少女の唇が、静かに動いた。
「手を離してもらおうか小僧」
空を切りながら突き進んだ宿儺の前に見えたのは、黒崎一護一家が住む一軒家。
そこに宿儺はノックする事も、チャイムを押すことも無く、網戸になっていた窓から侵入する。
そして、中を一瞥すると――
「ビンゴだな」
目的のものを見つけた宿儺は、今にもソレを握り潰そうとしている子供の手を掴み、口を開く。
「手を離してもらおうか小僧」
宿儺がそう声をかけると、その子供は不思議そうに宿儺の顔を覗き込み、その小さな唇を震わせた。
「おじさん誰?」
「後で教えてやる。それよりも、今はその手の中に居る者を俺に寄越せ」
子供は素直に宿儺に手渡し、確かに受け取った宿儺は安堵の笑みをこぼす。
そして、浦原から渡されていた瓶に、ソレを入れ、蓋をしっかりと閉じた。
「これで良いだろう」
――ソレは、大小様々な無数の目玉が無規則に蠢いていた。
宿儺は瓶を懐に丁寧に仕舞い込み、侵入してきた窓に足をかけ、去ろうとした――だが、彼は衣服を引っ張られたような感覚に、足を止める。
「おじさん待って」
振り返れば、宿儺の衣服を掴んでいたのは、先の子供。
「なんだ」
子供のそんな行動に宿儺は眉を顰める。無視して出ようかと思い、前に乗りでるも、それよりも強い力で引き戻される。
「お前は……」
宿儺は目を見開き、無垢な瞳を向ける子供を凝視する。
そして、これまでの行動を思い返した。
「(そもそも、今の俺の外見は幼子だ。それも女のもの。それなのに、先程から此奴はおじさんと呼んでいる…………小僧――いや黒崎一勇……貴様にはナニが視えているというのだ)」
宿儺は眉をひそめながら、渋々膝をおり、目線を一勇に合わせ、頭に手を置く。
そして、目一杯凶悪な嗤みを顔に貼り付け、尊大な声を出す。
「俺の名前は教えん。知りたくば、其奴らの主にでも聞くといい」
そう言って目線をズラした宿儺の先には、確かにナニカが存在したような気配があった。
「えー、教えてよー」
「ダメだ」
「おじさんのケチ」
「なんとでも言え。俺はもう帰る」
「わかった……」
一勇は、名残惜しそうに宿儺の衣服を手放し、目を伏せた。悲しそうな仕草を見せる、
そんな彼を見て、宿儺は一瞬――口を開きかけたが、結局口を閉ざした。
そのまま宿儺は窓に足をかけ、最後に振り返り口を開いた。
「さらばだ一勇――もしまた会うことがあるならば、その時は俺について教えてやる」
「うん!!」
一勇が顔の周りに花を咲かせ、元気よく返事をしたのを見た宿儺は、窓から飛び降り、そのまま走り出し、閑静な住宅街へと消えていった。
窓から身を乗り出し、宿儺の姿が見えなくなるまで手を振っていた一勇は思う。
「(あれ?ぼく名前いったっけ?)」
疑問符を浮かべながら頭を捻り、記憶を探っている一勇。
そんな彼の元に、一人の少女が現れる。
そしてその少女は一勇の机に座り、足を組み刀の鋒を一勇に向けた。
「だれ?」
一勇の問いかけに少女は尊大に答える。
「阿散井苺花――死神見習いよ!あんたは!!」
苺花の胸を張ったその宣言に、一勇はキョトンとしながら唇を動かす。
「ぼくは…………黒崎一勇」
そして、一勇の表情が微笑みへと変わり、衣服がす死覇装へと変化する、
「ぼくも死神だよ」
「はぁ!?」
「そんなの聞いてない!!」
「だってきみとぼくは初めて会ったでしょ?」
「そういうことじゃなくて!」
「???」
「じゃあどういう事?」と疑問を浮かべていると、一勇の部屋のドアが大きな音を立て、勢いよく開かれた。
一勇はそれに驚くことなく、ドアを開けた人物を目にした途端、花が咲いたような頬笑みを浮かべる。
「お父さん!!」
立ち上がり、勢い良くお父さんと呼んだ人物目掛けて、駆け出し、腰に思いっきり抱き着くと、力強く抱き締め返された。
「無事か一勇!!今変なやつが来なかったか?!」
「?――あの子のこと?」
そう言い一勇が指差したのは、足を組んだまま口をあんぐりと開ける苺花の姿。
お父さんと呼ばれた人物――黒崎一護は、その少女に一瞬だけ視線を向け、すぐに首を振って一勇の方を見た。
その動きに気づいた一勇は、小さく首を傾げる。
「いや……違くて、なんかこう白髪で、女で、顔に模様があった奴だ。さっきまでここに居ただろ?」
「うん!あのおじさんでしょ!!」
「おじ、おじさん?」
「うん、おじさん!とっても強そうだった!」
「お、おう。強そうだったか――けどな一勇。知らない人が来たら、父さんか母さんを呼べって言っただろ?」
一勇から見て、一護のその言葉は正論であり、子を心の底から案じる親のお叱りだった。
その為、一勇も素直に従う。
「ゴメンなさい……」
「良いんだ――けど、もし今度怪しいヤツが現れたら思いっ切り叫べ。絶対父さんが助けてやるからな」
包み込まれるような言葉と一緒に、優しく頭を撫でられる。
その行為に一勇の心が解けていく。
一護のお腹に顔を埋め、グリグリして甘える。
一勇は一護の顔を見ることができない。だが、彼が穏やかな微笑みを浮かべている事は分かった。
「ちょっと何この空気は……」
一勇の耳に、寂しそうな少女の声が聞こえたが、今はスルーし、思う存分父親に甘えた。
一方で、一勇と別れた後、浦原商店へと駆け込んだ宿儺は、偶然鉢合わせた浦原の声を無視し、地下にある義骸が置かれた部屋へとやって来ていた。
その後ろには、若干息を切らした裏梅も付き従っている。
「ようやくこの時がやってきたか」
宿儺が義骸の前まで悠然と歩みを進め、膝をおり屈む。
そして義骸顎をクイッと持ち上げ、両頬をつまみ口を開かせた。
「さて……」
宿儺は瓶から取り出した目玉が蠢く影を、義骸の口に押し込む。
そして飲み込んだことを確認し、静かに立ち上がり、数歩離れて、万感の思いを滲ませながら口を開く。
「さぁ、起きろユーハバッハ。一体いつまで寝ているつもりだ」
その言葉を聞いたのか、義骸の指がピクリと跳ねた。
それを皮切りに、頭部からは艶やかで長い黒髪が生え、肌には戻り、爪などもどんどんと成長していく。
それを間近で見た宿儺は、歓喜で震える。
「たったの二ヶ月ほどだが、長かった……長かったぞ――ユーハバッハ」
宿儺の呼び掛けに答えるかのように、瞼が一気に開き、真紅の瞳が顕となる。
そして、その潤った唇が静かに開いた。
「私は何年眠っていた」
虚空を見つめながらの問いに、宿儺は静かに答える。
「……十年だ」
「そうか……」
ユーハバッハが、何かを噛み締めるように瞼を下ろしたのを見て、宿儺が目尻を下げて、ユーハバッハの傍に歩み寄った。
そして手を伸ばし――パシンッ――と、ユーハバッハの頬を叩き、良い音を鳴らした。今の宿儺の顔は、さぞ良い笑顔だろう。
「痛いではないか、宿儺」
「貴様がそんな弱々しい演技を続けるからだ」
「バレていたか」
ユーハバッハが苦笑を浮かべながら、ゆっくりと身を起こす。
宿儺は無言でその手を取り、立ち上がりを助けた。
「当然だ」
宿儺が鼻を鳴らすと、ユーハバッハが柔らかな笑みでこちらを見つめる。
そして宿儺と視線が合えば、示し合わせたように互いが「プッ」と吹き出した。
「「クハハハハハハハッ!!!」」
吹き出したかと思えば、息を揃えて大きく笑いだし、その笑い声が小部屋中に木霊している。
そして暫しの間笑った後、大きく息を吐き、宿儺はユーハバッハに手を差し出す。
ユーハバッハも意図を察したのか、彼もこちらに腕を突き出した。
「おかえり」
「待たせたな」
両者は握り拳をコツンッと合わせる。
二人の顔には、晴れ晴れとした、爽やかな笑みが浮かんでいた。
「それで、宿儺。何故私の肉体が女のものとなっている」
「許せユーハバッハ」
「いや〜、良かったっスね宿儺サン。お友達と再会できて」
長い廊下を歩いた先にいたのは、扇子で口元を隠した浦原喜助。
彼を見たユーハバッハは固まり、厳かに口を開いた。
「特記戦力が1、浦原喜助――なぜ貴様がここに居る……」
そう問いかけるユーハバッハの拳は、強く握られていた為に、宿儺が握り拳をそっと包む。
ユーハバッハが抗議するような視線こちらにを向けた。
「なぜ邪魔をする宿儺」
「それはアタシが説「俺が説明しよう」……どうぞ」
宿儺は、これまでの経緯を端的に説明した。説明の最中も、眉間に皺を寄せ、納得していない素振りを見せていた。だが、そんな彼に宿儺は、そっと耳打ちをすると――
「………………」
黙ってそれを聞いていたユーハバッハは、しばし沈黙の後、拳の力を抜き、浦原の方を向いた。
「すまぬ、浦原喜助。どうやら私は勘違いしていたようだ」
宿儺はその様子を見て、どうやら納得したらしいと判断する。
そして、ユーハバッハの手を引き、振り返る。
「着いてこいユーハバッハ。俺が案内してやる」
「あぁ、頼もうか」
綺麗な笑みを浮かべながら、宿儺の手を握り返すユーハバッハ。
そんな彼を見て、宿儺も自然と笑みが零れる。
二人の背を眺める裏梅は思う。
「(宿儺様が嬉しそうで何よりだ……ただ、あの笑みを向けられるのが、よりにもよって、何故奴なのか…………ッ違う!)」
裏梅は自身の顔が熱くなるのを感じ、誰かに見られていないか首を振る。
すると、手で口元を覆いながら、ニヤニヤ笑う浦原が視界に入った。
「……何も無かった、良いな?」
冷ややかな声で浦原を脅すも、効果はなく、更にいやらしい笑みが深まるばかり。
「良・い・な?」
最早、殺気でも籠っているんじゃないかと錯覚する程凄む裏梅。
しかし、浦原に効果は無いようだ。
「早くしないと、取られちゃうかもしれないってスよ」
「な!?宿儺様はそう簡単に靡く御方ではない!!」
「あれ?アタシは取られちゃうかもしれないとしか言ってないっスけど?」
「ッそれは……!!」
「あれれ〜おかしいっスね〜」
「ッ〜〜〜〜〜………///」
裏梅の顔がリンゴのように赤くなり、感情の発露と共に、冷気が吹き出る。
「ちょっ、危ないっスよ!?抑えてください」
「くっ…………」
最早、思考が羞恥の感情で埋まっている裏梅に、浦原の声は届かない。
「裏梅サン!裏梅サ〜ン!!――ほんとにヤバいっスよ!!このままじゃアタシの研究室まで氷で埋まっちゃいます!!」
「ッ〜〜〜〜〜…………////」
「ちょっ、あぁぁぁぁああ!!!!宿儺サ〜ン!!!助けてぇぇえええええ!!!!!」
浦原の情けない叫び声も、裏梅の耳には入って来ず、裏梅が無意識のうちに放出していた氷は、廊下中を埋め尽くした。
その事に裏梅が気付くのは、数分後……。
「これで一通り、紹介は終わったな……」
「そうか……」
宿儺の横では、夕日に照らされた黒髪紅目の美女が立ち、静かに微笑んでいる――が、その裏に隠された感情は暗い。
そんな美女――ユーハバッハは宿儺に向き直り、宿儺に申し訳なさで揺れる瞳をぶつける。
「すまぬ宿儺……私の身勝手な願いに巻き込み、あまつさえその命まで散らせてしまった……」
ユーハバッハの顔は俯き、宿儺からは見ることは出来ない。
けれど、その姿からは、ユーハバッハが後悔している事はありありと滲み出ていた。
そんな彼の肩に宿儺は優しくてを置く。ユーハバッハの肩がビクリと震えた気がした。
「俺は気にしてはおらん。もとより着いてきたのは俺だし、死神達との戦いは中々に愉しめた………だから顔を上げよユーハバッハ――」
宿儺の言葉を受け、ユーハバッハがゆっくりと顔を上げ、まっすぐこちらの瞳を見つめた。
「――俺はお前には感謝しているのだ。あの時、お前が俺に会いに来なければ、俺はもっと違う道に行っていたやもしれん。俺が今こうしていられるのもお前のお陰という訳だ――」
宿儺は、慈愛を込めた瞳でユーハバッハを見つめ返す。
「――故に己を責めるな」
宿儺のその言葉が、ユーハバッハの全身に染み渡り、先程とは別の理由で肩が震えていた。
「ッ……あぁ、あぁ、ありがとう宿儺――私の友がお前で良かった」
二人は夕陽の元で、息が出来なくなるまで笑いあった。
そこには、千年前とはまた別種の、新たな友情の芽が芽吹いていた。
浦原喜助のその後……
「喜助ぇ……言った筈じゃよなぁ、儂は。もう無断で危険な行為を繰り返さないと……」
「はっ、はぃ」
「それなのに何故、滅却師の首魁である者が呑気に茶を飲んでおる……?」
「それにはそのぉ……深い訳がありましてぇ……」
「言い訳は無用じゃ。数週間前に行った躾では、足りんかったようじゃな」
「あのぉ……それだけは勘べ「無理じゃ」――ですよねぇ〜」
「ついてこい」
「……はい…………」
「宿儺よ。奴らは何時もああなのか?」
「……あぁ、まぁ、そうだな」
終わりが雑ですみません。これにて、本編は終わりです。皆様、最終話まで読んで頂き大変ありがとうございました。ここまで書けたのは、皆様のおかげです。
気付いたんですが、僕は恋愛経験がないので、宿儺×裏梅という高度なものは書けませんでした。だからまぁ、百合風ということで許して下さい。
(もしかしたら数年後リメイクするかも?)
それと、リクエスト募集中ですので、宿儺達のその後など、見たいシチュエーションがあったらじゃんじゃんお願いします。(恋愛系も頑張ります)
リクエスト募集
(URLを貼るのは初めてなので、出来ていなかったすみません)