遊戯王0D’s ナリキリボーイと青き眼の精霊王 作:GT(EW版)
【スターダスト・ドラゴン】
星8/風属性/ドラゴン族
攻撃力2500/守備力/2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。
その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
自らを犠牲に仲間を守るシンクロモンスター、スターダスト・ドラゴンは不動遊星の魂のカードである。
かの英雄が歴史に刻みつけた数々の栄光の中心にはこのカードの存在があり、まさに遊星神話の代名詞と言える別格の存在だった。
そんなドラゴンの白き姿を恍惚とした顔で見つめた後、セティア・キサラギは今一度自分の盤面を確認して告げる。
「やはりスターダスト・ドラゴンか! だが私の場には貴様のエースモンスターと同じ攻撃力の
不動遊星の不敗神話を築き上げてきた伝説のモンスターの姿を前に高揚を隠せない内心をヘルメットの奥に隠しながら、セティアはこの状況に対する冷静な指摘を述べる。
そんな彼女の問いに、「不動遊星」は返した。
「……確かにスターダスト・ドラゴンだけの力では、2体のブルーアイズモンスターを倒すことはできない」
いかに偉大な存在であろうと、モンスターの攻撃力が格で変動することはない。このままバトルしても
だが、と「不動遊星」は続ける。
「だが、その「先」の進化なら別だ!」
「ふっ……奴を呼ぶつもりか。いいだろう! やってみせろ!」
スターダスト・ドラゴンでは勝てなくても、その先に進化した姿ならこの状況をひっくり返すことができると──そう捲し立てた「不動遊星」の言葉に、セティアは身体中の血液が沸騰しているかのような昂りを見せる。
「俺は手札1枚をコストに、墓地からジェット・シンクロンの効果を発動! このカードは1ターンに一度、墓地から特殊召喚できる!」
『ハアッ!』
スターダスト・ドラゴン召喚の為のチューナーとなったジェット・シンクロンが、自らの効果で再びフィールドへと舞い戻っていく。
実質的に手札1枚のコストで連続のシンクロ召喚が可能となる使い勝手の良さから、二十代の頃にジャック・アトラスと組んで出場した制覇した「アメリカ横断ゴールデン・タッグ・トーナメント」では、彼らの切り札である「スターダスト・ドラゴン」と「レッド・デーモンズ・ドラゴン」を同時に降臨させたことで知られている。
ジェット・シンクロンには他にも自身がシンクロ素材となった時、デッキから「ジャンク」モンスターをサーチする効果もあるのだが、それを発動した場合には自身の蘇生効果が使えなくなってしまう。故に「不動遊星」はそこまで見越した上でそちらの効果を発動しなかったのである。
「流石だと言いたいが……させんぞ英雄!」
故に──セティアがその効果の発動を黙って見ていることはなかった。
墓地から現れようとするジェット・シンクロンに対して、光の龍の青い双眸が鈍く輝く。
「
「なに!?」
「よって、ジェット・シンクロンは蘇生できない!」
無念の表情を浮かべたジェット・シンクロンの姿が、朧のように掻き消えていく。
青眼の精霊龍が発動したその効果は、墓地から発動する効果を積極的に利用していく「不動遊星」のデッキにとってはまさに相性最悪と言えた。
その能力がある限り、切り札のスターダスト・ドラゴンさえも自身の蘇生効果を無効にされてしまうのだから。
「レベル1のチューナーを蘇生して「奴」につなげたかったのだろうが……私と精霊龍の眼が青い内には、現世への勝手な帰還は許さん!」
「…………」
やってみせろとは言ったが、何も妨害しないとは言っていない。「不動遊星」の必勝パターンを崩したセティアは、英雄が駆るDホイールよりも先を走りながら、振り返ることなくそう言い捨てた。
「それがたとえ一時の奇跡であっても……亡霊は現世に帰ってはならないのだ」
激することもなく静かに紡ぎ出したその言葉は、セティア・キサラギという少女の信念を表しているように思えた。
復活しようとしたモンスターを墓地へ追い返した精霊龍の眼差しは、まるで現代に蘇った英雄「不動遊星」の存在に対する彼女の気持ちそのもののように映る。
デュエルはどこまでも雄弁に語る。
「不動遊星」という青年は元来そこまで口数の多い人間ではなかったが……ことデュエルを通した対話においては、誰よりも饒舌であった。
「……俺は墓地から、スターダスト・シャオロンを特殊召喚」
「──ッ」
「このカードはスターダスト・ドラゴンが場にいる時、墓地から特殊召喚ができる」
【スターダスト・シャオロン】
星1/光属性/ドラゴン族
攻撃力100/守備力100
自分フィールド上に「スターダスト・ドラゴン」が存在する場合、自分の墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
墓地から現れたそのモンスターは、ジェット・シンクロンの効果発動時のコストによって墓地へ送られていたカードであった。
彼はジェット・シンクロンの蘇生よりも、このカードを自身の手札から墓地へ送ることこそを目的としていたのだ。
効果を無効にしても、発動のコストは無効化されない──霊界の守護者である精霊龍からいかに咎めを受けようとも、彼のあがきが止まることはなかった。
そんな「不動遊星」の信念を表すような復活劇に、セティアは呆れの滲んだ声で呟いた。
「……認めよう。初めて見た時はイカれたナリキリボーイだと思ったが、貴様は確かに「不動遊星」だよ」
これまでのデュエルを通して「彼」という男のことを理解したように語る彼女に、「不動遊星」もまた確信を以て語り掛ける。
「君は……不動遊星を知っているんだな」
先行するセティアと追い掛ける「不動遊星」。
お互いに目を合わせることなく行ったその会話は、セティア・キサラギという少女の核心に迫るものだった。
「君のそれは、記録上の伝説から見聞きした知識だけじゃない。「俺」を語る君の様子からは何か、直接会ったことがある雰囲気を感じる」
「…………」
「不動遊星」から向けられる言及に、前を走るセティアは沈黙を返す。
そんな彼女はヘルメットのマイクから「イソノ、ここからは私が命令するまでミュートにしろ」と街の空にデュエルの様子を中継している部下に命じると、さらに沈黙を空けて口を開いた。
「……仮にそんな非科学的な疑いが事実だとして、だったら何だ? 私から見たあの男の話を聞きたいのなら、後で部屋にでも来い。貴様になら聞かせてやってもいいぞ」
「……君が俺にクリアマインドを広めることを認めたくないのは、この時代で「不動遊星」をまた世界の為に戦わせたくないからか」
「!」
「100年以上も前の人間に、この時代の人々の未来まで任せるのは間違っていると……そう言いたいんだろ?」
「……貴様……」
未来に蘇った英雄がその時代の人々を救う。なるほどそれはロマンチックな話だろう。
しかし捻くれた言い方をしてみれば、それはとうにこの世を去った人間に頼るしかないこの時代の人々の無力さを証明しているとも言える。
その考えは当然あるべきものとして、他ならぬ「不動遊星」自身も考えていた。
これがこの世の摂理に反した邪道な救済であることは、この時代の人間の誰よりも高潔だった「彼」自身が理解していたのだ。ただ、時間が無かったからやるしかなかった。
──そうして始めた「彼」が、これまでの救済の旅を通して得たものは……この世界の人々の心はまだ、捨てたものではないのだという確かな「希望」だった。
「もしも君に、この時代のことはこの時代の人たちで解決しなければならないという信念があるのなら……それでいいと思う。だが、だからこそ! 俺はいつか人々が本当の意味で世界を救えるようになるその時まで、彼らの時間を稼いでやりたい。明日を掴んでやりたい!」
「……それが、貴様の覚悟か」
大勢の人間が死に、世界は今も滅びに向かっている。
だがそんな世界でも人々は「不動遊星」の生き様を通して正しい心を取り戻し、助け合うことができるようになっていた。
「彼」は決して功名心の為に英雄に……「不動遊星」になったわけではない。ただそれが世界を救う一番の方法だと思ったからこそ、この道を選んだのである。
過去の「伝説」を都合良く扱おうとするその行為が、たとえ当時を生きていた者から否定されたとしても……「彼」は今苦しんでいる他の誰かに手を差し伸ばすことを、やめる気は無かった。
「この世に数多あるカードのように……この世界に救われなくていい人間は一人もいない! 一度は間違えても、またやり直すことができるんだ! それが俺の、クリアマインドがもたらす未来っ!」
スターダスト・ドラゴン、そしてスターダスト・シャオロン。奇しくも2体の「ブルーアイズ」が並ぶセティアの盤面に対抗するかのように2体の「スターダスト」を展開した「不動遊星」は、最後に残った1枚の手札を切った。
「手札から、エフェクト・ヴェーラーを召喚!」
【エフェクト・ヴェーラー】
星1/光属性/魔法使い族/チューナー
攻撃力0/守備力0
手札のこのカードを相手ターンのメインフェイズ時に自分の墓地へ送る事ができる。
この効果を使用したターン、相手フィールド上に存在するモンスター1体のモンスター効果をエンドフェイズ時まで無効にする。
「エフェクト・ヴェーラーだと!? 引き込んだもう1枚はレベル1チューナーだったのか……!」
セティアが振り向き、現れたそのモンスターに驚愕の声を返す。それはおそらくこのデュエルで、初めて表した彼女の動揺であった。
スピードスペル「シフト・ダウン」で引き込んでいたのは1枚はスターダスト・シャオロン。そしてもう1枚はレベル1のチューナーモンスターだったのである。
神秘的なベールのような透明な羽を持った青髪の少女型モンスターは、基本的には手札から相手ターンの動きを妨害する役目を担う。しかしこの場においてはそれ以上に、「手札から通常召喚できるレベル1チューナーであること」に意味があった。
「レベル1のスターダスト・シャオロンに、レベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング! 集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う──光さす道となれ!」
立ち並んだスターダスト・シャオロンと即座にシンクロ召喚に入り、その希望の礎となる。
光の中から現れたF1マシンのようなモンスターの姿に、セティアは悔しそうに唇を噛んでいた。
「シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー! フォーミュラ・シンクロン!」
【フォーミュラ・シンクロン】
星2/光属性/機械族/チューナー
攻撃力200/守備力1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。
「フォーミュラ・シンクロンの効果により、俺はカードを1枚ドロー!」
シンプルかつ強力な効果を持つそのカード。
しかしそのカードの役割は自身の効果だけには留まらない。今隣に並び立つスターダスト・ドラゴンの存在と合わさった時、それは新たな進化の扉を開く鍵となるのだ。
「──!? このカードは……」
──だがその瞬間、「不動遊星」は今しがた効果で引き込んだ1枚のカードを見て、一瞬だけ驚きに固まってしまった。
「…………」
それは彼が、自らのデッキに入れた憶えの無いカードだったのだ。
今初めて目の当たりにしたそれは、「不動遊星」が歴史上一度も使ったことの無いカードであった。
【愚者の裁定】
そのテキストを即座に確認した後、「不動遊星」は努めてポーカーフェイスを保ちながらそのカードを0枚となった手札に加えた。
雑念を払い──目を閉じ、スピードの世界へと突入する。
遊星号の最大速度が先行していたセティアのDホイールを鮮やかに追い抜き去ったその時、静かに滴り落ちた水の一雫が心の水面を揺らした。
「クリアマインド──! レベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!」
遊星号のスピードは性能の限界を超越し、彼を連れて風の中へと溶け込んでいく。
絡みつく時間をも振り切った彼は赤く滾る情熱を胸に白紙のカードを掲げ、モノクロの景色をノンストップで追い越していった。
「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光差す道となれ! アクセル・シンクロオオオオオオッ!!」
彼は決して目に見えない何かに怯えることはない。
叫んだ彼は嵐のように全てを蹴散らし──その姿をDホイールごと光へと掻き消した。
「消えた!? ──きゃっ」
セティアが青い眼を驚きに見開いた次の瞬間、後方から吹き抜ける凄まじい突風が彼女の操縦するDホイールを揺らした。
同時に、彼女のDホイールを追い越していった筈の「不動遊星」が何故か後方から、再び姿を現す。スターダスト・ドラゴンを超える無敗の「アクセルシンクロモンスター」を、その後ろに従えて。
「生来せよ! シューティング・スター・ドラゴン!」
歌うような雄叫びを上げながら、飛翔の風圧で雲を突き破った1体のドラゴン。
その名の通り、それは流星の如きまばゆい煌めきを放っていた。
【シューティング・スター・ドラゴン】
星10/風属性/ドラゴン族/攻3300/守2500
シンクロチューナー+「スターダスト・ドラゴン」
このシンクロ召喚は相手ターンでも行う事ができる。
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを5枚確認し、その中のチューナーの数だけ、このカードは相手モンスターに攻撃する事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカード以外のカードを対象に「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・ 罠・効果モンスターの効果が発動した時、その発動を無効にし破壊する。
相手ターンに1度、このカードをゲームから除外する事で、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。
この効果を発動するために除外したこのカードは、この効果を適用したターンのエンドフェイズ時に自分フィールド上に戻る。
「……っ、シューティング・スター・ドラゴン……!」
忌々しげにその姿を睨んだセティアの目に、「不動遊星」の辿り着いた進化の証が舞い降りる。
人類の境地、クリアマインド──その境地がもたらした、シンクロを超えるシンクロモンスターがシューティング・スター・ドラゴンである。
その攻撃力は
スターダスト・ドラゴンのシンクロ召喚から始まったこのターンの「不動遊星」の展開は、これで締めとなる。
そしてこれからが、この戦いの行く末を占う効果の発動であった。
「俺はシューティング・スター・ドラゴンの効果を発動! シューティング・スター・ドラゴンはデッキからカードを5枚めくり、その中のチューナーモンスターの数だけ攻撃できる!」
「……はっ、見せてもらうぞ英雄! 私の場にいる
不動遊星の英雄伝説では、数々の大連撃を成功させてきた最強のフィニッシャーである。
仮に1枚もチューナーモンスターを引き当てることができなければ一回も攻撃することができなくなるギャンブル性の高い効果であったが……不動遊星のデュエルは生涯、この効果を外したことがなかったという。
そのエピソード一つとっても彼がいかにデッキ構築力に優れており、何より土壇場での引きの強さが神がかっていたか窺い知れるだろう。
挑発的に、セティアは問い掛けた。
「やれるか? 貴様に」
「これはこの世界の未来……必ず引き当ててみせる。俺が必ず、みんなを希望に導いてみせる!」
デッキトップに手を掛けた「不動遊星」は、自身に言い聞かせるようにそう叫ぶと、緊張の面持ちで1枚ずつカードをめくっていった。
「1枚目──ソニック・ウォリアー……2枚目──チューナーモンスター! ロード・シンクロン!」
「…………」
「3枚目! チューナーモンスター、ニトロ・シンクロン! 4枚目──スピードスペル、ゼロ・リバース……っ」
「不動遊星」が気迫の表情でめくったカードを確認し、セティアが無言でそれを見届ける。
4枚中、確認したチューナーモンスターのカードは2枚。これで2体のブルーアイズの撃破が確定となる。
そして最後の5枚目、これを引き当てればシューティング・スター・ドラゴンの攻撃は怒濤の三連打となり、セティアへのダイレクトアタックが可能となる。
その勝負に、彼は望みを託した。
「そして、5枚目──!」
剣で斬り裂くように、「不動遊星」は最後のカードをめくる。
カードの面を表に返したそこにははっきりと、モンスターの種別が書き記されていた。
「チューナーモンスター、アンノウン・シンクロン!」
「……ふっ」
「チューナーの合計は3体! よってこのターン、シューティング・スター・ドラゴンの攻撃は3回となる!」
「ああ、見事だ。クリアマインドの境地……確かにこの目で見届けた」
最後のカードもチューナーモンスターを引き当て、シューティング・スター・ドラゴンの攻撃回数は決定した。
その伝説通りの勝負強さに、セティアは思わずといった様子で笑みを溢す。
だがその笑みがデュエルを観念したものではないと、「不動遊星」は彼女の青き眼の奥に浮かぶ闘志から見抜いていた。
攻撃力はシューティング・スター・ドラゴンが上回っているが、まだ彼女の場には1枚の伏せカードが残っている。シューティング・スター・ドラゴンには相手の破壊効果を無効化する能力も備わっているが、仮にあの伏せカードが「プライドの咆哮」のようにセティアのモンスターを強化するものであった場合には、ここから再び巻き返される可能性は残っているのだ。
故に油断なく、「不動遊星」はステータス差が大きい順に対象を選び、攻撃宣言を行った。
「バトル! まず一回目、シューティング・スター・ドラゴンで
シューティング・スター・ドラゴンの姿がその攻撃回数を意味する3体の分身に分かれ、ミサイルのように突っ込んでいく。
まず一回目の攻撃、深淵の青眼龍に向かった攻撃力3300ポイントの攻撃に対して──セティアの伏せカードは動かなかった。
【セティア:LP2600→1800】
「くううっ!」
攻撃は成功。
攻撃表示の
「二発目!
モンスターに対する攻撃に彼女の伏せカードが反応しなかったということは、次の一撃も同じ可能性が高い。
「不動遊星」は続けてフィールド2体目のブルーアイズモンスター、青眼の精霊龍を破壊するべく連撃を命じた──その時である。
「……やむを得んか。
「何っ!?」
苦渋の判断と言うように舌打ちした後、セティアは青眼の精霊龍が持つ二つ目の特殊能力を発動する。
彼女が絶大な信頼を置くこのドラゴンには、相手の墓地から発動する効果を無効化する能力の他に、さらに強力な効果が宿っているのだ。
それを今、青き眼の少女が高らかに宣言する。
「
自分自身を触媒として呼び出す、さらなるシンクロモンスターの降臨。
青眼の精霊龍の時点で青眼の白龍に匹敵し、スターダスト・ドラゴンを上回るステータスを持っていた。にも関わらず、彼女は精霊龍をリリースし他のシンクロモンスターを出そうと言うのである。
「まさか……また新しいブルーアイズを呼ぶつもりか!」
彼女のデッキにはあの海馬瀬人よりも多くのブルーアイズモンスターが眠っていると語っていたが、それが何体かまでは語っていない。
嫌な想像が脳裏に過ぎった「不動遊星」に対して、セティアは如何ともしがたい苦笑を浮かべて応える。
「いや、今呼び出すドラゴンはブルーアイズではない。だが、貴様も知っているカードだ。……いや、貴様が本当に「不動遊星」なら、
そう告げたセティアがエクストラデッキから1枚のカードを抜き取ると──目を閉じて、誰かに対して哀悼の意を表するように胸に当てながら、厳かに祈りを捧げた。
「母なる世界を救う為……命の光が今、刹那に交わる!」
「──!」
どこかで、聞いた憶えのある口上──しかし同時に違和感を抱いた「不動遊星」がその正体を確かめるよりも先に、ソレは精霊の龍によって呼び出された。
「末裔の祈りに応えよ──エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンッッ!!」
「なっ──」
霧に包まれた幻のように、静かに眠るように翼を折り畳んだドラゴンがその姿を現す。
その姿を、「不動遊星」は知っていた。
何故ならばその龍は不動遊星が200年前、蘇った地縛神を討つべくシグナーとして共に戦った仲間の切り札にして──スターダスト・ドラゴンと同じ力を宿した、世界に1枚しかないカードだったのだから。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴン!?」
セティア・キサラギ──その正体が、本当に掴めなくなった瞬間であった。