遊戯王0D’s ナリキリボーイと青き眼の精霊王   作:GT(EW版)

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あの頃と比べて前に進めた?

【セティア:LP1800 遊星:LP2800】

 

 

【エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン】

 星8/光属性/ドラゴン族

 攻撃力2500/守備力3300

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 (1):このカードがS召喚した場合に発動できる。

 自分は1枚ドローする。

 フィールドに「精霊の世界」が存在する場合、代わりにデッキから光属性の獣族・植物族・天使族モンスター1体または「エターナル・サンシャイン」1枚を手札に加える。

 (2):自分の「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」及びそのカード名が記されたモンスターは表側守備表示のままで攻撃できる(ダメージ計算では守備力を攻撃力として扱う)。

 

 

 亡霊のように朧げな姿で現れたのは、200年前の地縛神との戦いで「不動遊星」が共に戦ったシグナーの竜の一体「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」に似たモンスターだった。

 しかしそのステータスは別物であり、姿もところどころが違っていた。

 

「エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴン……エンシェント・フェアリー・ドラゴンではないのか……? それに、そのカード……様子がおかしい」

 

 何故だろうか、上手く言えないが奇妙な気配を感じた。

 かつての記録に残っているエンシェント・フェアリー・ドラゴンを超越したステータスを持ちながら、目の前のモンスターからはかのシグナー竜にあった強い霊圧を感じないのだ。

 

「ほう、貴様にはわかるか。このカードがこの世界のものではないことが」

「何……?」

「ふっ……だがこのモンスターもまたエンシェント・フェアリー・ドラゴンであることに偽りはない。言わばエンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンは、スターダストに対するシューティング・スターのようなものだからな」

「……そうか。彼女もあの後、新たな境地に辿り着いたんだな」

「尤も、かつてのシグナーであるミス・龍可(ルカ)が扱っていた本来のエンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンと比べれば、私のコレは抜け殻のようなものだ」

「抜け殻……?」

 

 不動遊星の盟友にして、伝説の赤き龍の痣を持つ最年少のシグナー。エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンが成長後の彼女が扱っていたカードと言われれば納得はできる。

 しかし、そのカードを何故セティアが持っているのか?と当然の疑問を浮かべる彼に、彼女ははぐらかすように返した。

 

 

「話せば長くなるぞ? デュエル中に浸れる話ではないな」

「…………」

 

 

 ……尤もである。デュエルモンスターズの進行に、対話フェイズなどというものは無いのだから。そう返されてしまえば「不動遊星」にも追及することはできなかった。

 故に今は彼女と戦う一人の決闘者(デュエリスト)として、彼は目の前のドラゴンのステータスに注視した。

 

 

「エンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンの守備力はシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力と同じ3300……」

「残念だったな英雄。せっかくの三回攻撃が、二回で止まることになって」

 

 

 守備力3000の青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)であれば戦闘破壊後に追撃のダイレクトアタックが決まり、このデュエルに幕を引くことができた。それを彼女は、このモンスターを壁として呼び出すことで凌いでみせたのだ。

 このターンで決めるつもりだった「不動遊星」としては、悔いの残るバトルフェイズとなった。

 

 

「……ターン・エンドだ」

「ふっ、だが安心しろ。青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)が呼び出したモンスターは、そのターンの終了時に破壊される。……急に呼び出してすまなかったな、エンシェント・フェアリー。安らかに眠るがいい」

 

 

 静かに眠りながらも「不動遊星」の前に立ちはだかっていたエンシェント・フェアリー・ライフ・ドラゴンの姿は、全く微動だにしないまま砂像のように消え去っていく。

 シューティング・スター・ドラゴンと手札1枚しか無い今の「不動遊星」からしてみれば、守備力3300の守りを突破する手段は皆無であった現状、自壊でフィールドから立ち去ってくれたのは確かに都合が良かった。

 ……無論、デュエリストとして不完全燃焼な感情もあったが。

 

 

 TURN7

 

 

「そうがっかりするな。次はもっと面白いものを見せてやろう。私のターン!」

 

 

【セティアSp7 遊星Sp1】

 

 

 気を取り直すように進行したこのデュエルの7ターン目。セティアの手札は2枚から3枚へと移り変わっていく。

 ドローフェイズに引き込んだカードを確認した瞬間、彼女はふんと鼻を鳴らして盤面を見据えた。

 

「さて、私は2体のブルーアイズが退場したこの状況から、天下無敵のシューティング・スター・ドラゴンを相手取ることになったわけだが……」

「…………」

 

 やや芝居がかった物言いから、自らの状況説明を行うセティアの様子に「不動遊星」が訝しむ。

 実際のところ、現在追い込まれているのは彼女の方である。生来すれば一転にして流れを引き込んでいく──スターダスト・ドラゴン、およびシューティング・スター・ドラゴンとは、それほどのモンスターなのだ。

 

 

「不動遊星のデュエルでは、かのアクセルシンクロモンスターは生涯一度も破壊されなかったという」

 

 

 シューティング・スター・ドラゴンには1ターンに1度、相手の破壊効果を無効にして破壊する効果と自らを任意のタイミングで除外し、相手モンスター一体の攻撃を無効化する効果がある。

 特に強力なのが二番目の効果で、一時的に自らを除外することで相手のあらゆるアクションを回避する抜群の継戦能力を備えていた。

 この効果で相手のターンを凌ぎ、自身のターンでは青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)をも上回る攻撃力3300の連続攻撃が襲い掛かる。攻防一体の能力こそがこの時代まで語り継がれる伝説のアクセルシンクロモンスター、シューティング・スター・ドラゴンの真価だった。

 

 並のデュエリストであれば姿を見ただけで戦意を失う偉大なモンスターを見上げて──セティアは尚も好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「ならばその不敗神話、この私が破ろう。シグナーの血と精霊の魂、そしてブルーアイズのカードを受け継いだこの(わたし)が!」

 

 

 シグナーの血と、確かに告げたその発言に目を見開く「不動遊星」を追い縋りながら、セティアは緑枠のカードをディスクに置く。

 彼女にはあったのだ。その3枚で、この盤面をひっくり返すビジョンが。

 

 

「私はスピードスペル、「サモン・スピーダー」を発動!」

 

 

【Sp-サモン・スピーダー】

 スピードスペル

 自分用スピードカウンターが4つ以上ある場合に発動する事ができる。

 手札のレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

 

「このカードはスピードカウンターが4つ以上ある時、手札から下級モンスターを呼び出す。私はこの効果で「青き眼の巫女」を特殊召喚!」

『ハァッ!』

 

 

【青き眼の巫女】

 星1/光属性/魔法使い族/チューナー

 攻撃力0/守備力0

 「青き眼の巫女」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

 (1):フィールドの表側表示のこのカードが効果の対象になった時に発動できる。

 自分フィールドの効果モンスター1体を選んで墓地へ送り、デッキから「ブルーアイズ」モンスターを2体まで手札に加える(同名カードは1枚まで)。

 (2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの「ブルーアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを持ち主のデッキに戻し、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

 彼女がスピードスペルで呼び出したのは、手札に握っていたレベル1の下級モンスターである。それは前のターンで召喚した「青き眼の賢士」の効果により、デッキからサーチしたカードでもある。

 ステータスは攻守とも0で、「ブルーアイズ」のサポートに特化したモンスターであったが、いずれも今この状況で発動できる効果ではない。

 

 ならば彼女がこのカードを特殊召喚した意味は、「レベル1」「チューナー」という点にこそあるのだろうと「不動遊星」は即座に察する。

 

 その答え合わせは直ちに行われ、セティアはフィールドに伏せっ放しにしていた一枚のカードを発動した。

 

 

「リバースカード・オープン! (トラップ)カード、「蘇りし魂」!」

 

 

【蘇りし魂】

 永続罠

 自分の墓地の通常モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。

 そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

 そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

 

 以前使用した「正統なる血統」と同じ、モンスターの蘇生効果を持つ罠カードである。違うのは蘇生時の表示形式がこちらは守備表示という一点のみであり、対応するモンスターカードも同じだった。

 

「……! 白き霊龍か!」

「その通り! 蘇れ我が半身、白き霊龍!」

 

 まばゆい白光と共に再び墓地より舞い戻ったのは、効果モンスターでありながら墓地では通常モンスターとして扱うブルーアイズモンスター、白き霊龍である。特殊召喚時には相手フィールドの魔法罠カードを一枚除外できる効果があるが、今の「不動遊星」の盤面にはモンスターカードであるシューティング・スター・ドラゴンのみ。故に、その効果は発動しない。

 

 だが無論、彼女が高レベルモンスターを呼び出したのは効果が目的ではなかった。

 

「合計レベルは9……また青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)を呼び出すつもりか!」

 

 チューナーとチューナー以外のモンスターが揃ったことで、再びシンクロ召喚の準備が整ったことになる。

 レベル9のシンクロモンスターの登場を警戒する「不動遊星」に対して……セティアが返したのは否定の言葉だった。

 

「残念ながら、私のブルーアイズは各種一枚ずつしか無くてな。私のエクストラにレベル9のシンクロモンスターは他にもいるが、青眼の精霊龍(ブルーアイズ・スピリット・ドラゴン)は先ほどの一枚だけだ」

 

 「海馬瀬人のようにエースモンスターを三枚積めれば良かったのだがな……」と呟くセティアだが、その表情は自身のデッキを卑下したものではない。

 寧ろそれこそが自分のデッキの在り方であり魂そのものなのだと語るように、ぎらついた青い瞳には信念に裏付けされた絶対的な自信に満ち溢れていた。

 

 そんなセティアの態度にさらに警戒を強めた「不動遊星」に向かって、彼女は自らのDホイールを加速させるなり「だが……」と続けて言い渡した。

 

 

「教えてやろう。今やシンクロ召喚を超えたシンクロ召喚は、貴様たちだけのものではないということを!」

「なに!?」

 

 

 アクセルシンクロ──進化したシンクロ召喚を使えるのは「不動遊星」とジョニーの他にいない。それが彼の認識だった。そんな世界だからこそクリアマインドが必要で、世界を救う唯一の希望だと信じていた。

 その前提を根本から覆すような発言をしたセティアは、手札に残っていた最後の一枚をフィールドに繰り出した。

 

 

「現れろ! ネオ・カイザー・シーホース!」

 

 

 通常召喚権を使い現れたのは、「不動遊星」の知らないモンスターである。

 類似した姿と名前を持つ、「カイザー・シーホース」というモンスターのことならば知っている。かつて海馬瀬人が扱っていたという記録が今も残っており、その効果はアドバンス召喚を行う場合、自らを二体分のリリース素材にできるというものだ。

 かのレジェンドデュエリストはその効果を利用し、切り札である青眼の白龍の召喚に繋げていたという記録が印象的だった。

 ……しかしこの状況に適したカードではない。故に「不動遊星」は訝しんだ。

 

「ネオ・カイザー・シーホース……何をするつもりだ?」

「無論、シンクロ召喚だ。貴様ら人間の、進化の証よ」

「……!」

 

 

【ネオ・カイザー・シーホース】

 星4/光属性/ドラゴン族/チューナー

 攻撃力1700/守備力1650

 このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 (1):自分フィールドに「青眼の白龍」が存在する場合に発動できる。

 このカードを手札から特殊召喚する。

 (2):自分フィールドの光属性チューナー1体を対象として発動できる。

 そのモンスターのレベルを1つ上げるか下げる。

 (3):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。

 「ネオ・カイザー・シーホース」を除く、「ブルーアイズ」モンスター1体または「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」のカード名が記されたモンスター1体をデッキから墓地へ送る。

 

 

 ネオ・カイザー・シーホースは名前と姿こそカイザー・シーホースに類似しているが、その効果は全く別物であった。

 より強く「青眼の白龍」のサポートを意識したそのチューナーモンスターは、「不動遊星」の知るレベル4チューナーの中でも破格のポテンシャルを秘めているパワーカードである。

 

 

「私はネオ・カイザー・シーホースの効果を発動! このカードは1ターンに1度、自分フィールドの光属性チューナーのレベルを1つ分変更できる。私はこの効果により、ネオ・カイザー・シーホース自身のレベルを1つ下げる!」

 

 

 サモン・スピーダーで呼び出された青き眼の巫女と共に、白き霊龍を挟むように並び立つネオ・カイザー・シーホース。自身の効果により自らのレベルを下げた彼のレベルは4から3になった。

 そのフィールドを一瞥した際に「不動遊星」の脳裏に過ったのは、アクセルシンクロに比肩する「もう一つの進化」の可能性だった。

 

 歴史の中には、確かにあったのだ。

 クリアマインドに至らずして、シンクロ召喚を超えたシンクロ召喚が。

 

 

「……ッ! まさか……!?」

「フッ……「不動遊星」なら気づくか。そうだ! 青き眼の巫女、白き霊龍、そしてネオ・カイザー・シーホース……今この瞬間、私の場の合計レベルは貴様のシューティング・スター・ドラゴンを超える「12」となった!」

 

 

 かつて、不動遊星最大のライバルであったデュエリスト、ジャック・アトラス。

 「彼」の知る歴史では不動遊星がクリアマインドに至ってからそう日を跨がずして、彼もまた負けじと自らの境地へと辿り着いたのである。

 

「貴様は人類救済の可能性をクリアマインドに見たようだが、進化の形は一つではない! 人が人らしく在る為に最も必要なのは水の如き精神ではなく……炎の如く荒ぶる魂だ!」

 

 セティアのDホイール、「B・W・D(ブルーアイズ・ホイール・ドラゴン)」が燃え盛る炎のような光を放ち、スリップ・ストリームで差し掛かったコーナーから一気に遊星号を追い抜いていく。

 威風堂々たる少女の背中を、「不動遊星」は信じがたい思いで見つめていた。

 

 

「私はレベル8の白き霊龍に、レベル1の青き眼の巫女と、レベル3となったネオ・カイザー・シーホースをダブルチューニング!!」

 

 

 バーニング・ソウル──かつてジャック・アトラスが辿り着いた荒ぶる魂に近しいものを、神聖なる輝きを放つ彼女の姿に彼は見た。

 灼熱の中で光と光が交わり、天地創造にも似た雄叫びが天空に轟く。

 

 

「霊界を統べる究極の竜よ──堕落した現世に粛清の息吹を与えろ!」

 

 

 青き眼の巫女とネオ・カイザー・シーホース、二体の賢人が光のロードを束ね、白き霊龍を次なる次元へと導く。

 

 雲を割って天を引き裂いた太陽の如き光点から舞い降りたのは、シューティング・スター・ドラゴンよりもさらに巨大な白銀の体躯と三本の首を持つ、究極のドラゴンの姿だった。

 

 

「轟臨せよ! 青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)ッッ!!」

 

 

 精霊龍を超越した究極の白竜は、荒ぶる吐息を溢しながら六つの青眼で英雄の姿を見下ろす。

 その美しくも恐ろしい圧倒的な迫力に、「不動遊星」は思わず言葉を失った。

 

 

【攻撃力3500】

 

 

 レベル12のドラゴンの攻撃力は、シューティング・スター・ドラゴンのそれを上回る。

 ブルーアイズを超えたブルーアイズモンスターの轟臨に、「不動遊星」は記録で見た伝説の究極竜の姿を想起した。

 

「三つ首のブルーアイズ……! あれは、まるで……」

 

 青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)。三体の青眼の白龍が融合することで召喚される、海馬瀬人最強のモンスターに酷似していたのだ。

 青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)とは、まさしく青眼の精霊龍にとってのアルティメットに該当する存在だった。

 

 「不動遊星」に備わっているデュエリストの本能が激しく警鐘を鳴らし続ける中、セティアは淡々と効果処理を進めていく。

 

「シンクロ素材となったネオ・カイザー・シーホースは、墓地へ送られた場合、デッキからブルーアイズモンスターを墓地へ送ることができる」

 

 おもむろに抜き放った一枚のカードを見せびらかすように振りかざすと、セティアはそのカード名を宣言する。

 それもまた、青き眼の白龍の姿が描かれたモンスターカードだった。

 

 

「私が墓地へ送るのはコイツだ。青眼の(ブルーアイズ・オルタナティブ)亜白龍(・ホワイト・ドラゴン)

「オルタナティブ……?」

 

 

青眼の(ブルーアイズ・オルタナティブ)亜白龍(・ホワイト・ドラゴン)

 星8/光属性/ドラゴン族

 攻撃力3000/守備力2500

 このカードは通常召喚できない。

 手札の「青眼の白龍」1体を相手に見せた場合に特殊召喚できる。

 この方法による「青眼の亜白龍」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

 (1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「青眼の白龍」として扱う。

 (2):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる(この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない)。

 そのモンスターを破壊する。

 

 

 これまでに彼女が見せてきたブルーアイズモンスターの中でも、特に際立って「青眼の白龍」に酷似した姿を持つドラゴン。その召喚条件は非常に特殊で、デッキに入っていない青眼の白龍カードを要求するものであったが……彼女が召喚できないこのカードをデッキに入れていたのは、ひとえに一つ目の効果を活用する為だった。

 

青眼の(ブルーアイズ・オルタナティブ)亜白龍(・ホワイト・ドラゴン)はフィールド・墓地にいる時に限り、カード名を「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)」として扱う」

「……代用が目的か」

 

 彼女のブルーアイズモンスターたちは、その多くが「青眼の白龍」の存在を鍵とする強力な効果を秘めていた。

 故に「青眼の白龍」として扱うこのカードを墓地へ送ることで、彼女のブルーアイズモンスターたちはその真価を発揮することができるようになったのである。

 

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)のカードがこの世に無くとも、やりようはあるのだよ。私の墓地に「青眼の白龍」扱いとなった亜白龍(オルタナティブ)が渡ったことで、墓地の「深淵の青眼龍(ディープ・オブ・ブルーアイズ)」の効果を発動! このカードを墓地から除外することで、場のブルーアイズモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

 

 場のブルーアイズモンスターとは、すなわち青眼の究極霊竜のことである。亜白龍の魂に深淵の青眼龍の魂が呼応することで究極霊竜の眼が輝き、その攻撃力はさらに上昇した。

 

「攻撃力4500……!」

「そう、スピリット・アルティメットはまさに青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)と同等のパワーを手にしたわけだ」

 

 先のターンで深淵の青眼龍が破壊されても彼女が動じていなかったのは、墓地で発動する効果を狙っていたからか。それが発動したことで、元々シューティング・スター・ドラゴンを上回っていた究極霊竜の攻撃力はさらなる高みへと到達し、セティアは嬉々としてバトルフェイズに入った。

 

 

「行くぞ英雄! 青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメット・ドラゴン)で、シューティング・スター・ドラゴンを攻撃!」

「っ、シューティング・スター・ドラゴンの効果を発動! このカードを除外し、相手モンスターの攻撃を封じる!」

 

 

 青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)の六つの眼が、「不動遊星」の切り札であるシューティング・スター・ドラゴンを捉える。攻撃力で圧倒的に上回る究極霊竜に対して、まともに戦えば到底太刀打ちできない。

 当然、「不動遊星」はシューティング・スター・ドラゴンの効果を発動し、自らを異次元に身を隠すことで敵の攻撃を制止しようとする。

 

 

 ──が、六つの眼に睨まれた瞬間、制止されたのはシューティング・スター・ドラゴンの方だった。

 

 

「無駄だ! 究極霊竜(スピリット・アルティメット)の青き眼光は、1ターンに1度、相手フィールドで発動する効果を無効にする!」

「なんだと!?」

「さらに、自らの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

 

 

 異次元に逃れようとしたシューティング・スター・ドラゴンの効果は不発に終わり、それどころか青眼の究極霊竜はさらにその力を増大させていった。

 かの青眼の究極竜に並んでいた4500ポイントの攻撃力は、さらに上昇してこのターン5500ポイントとなったのである。

 

 そしてフィールドに取り残されたシューティング・スター・ドラゴンを守る術は、今の「不動遊星」の盤面には残されていなかった。

 

 

「消え失せろ! スピリット・アルティメット・バースト!!」

 

 

 巨大な翼を広げて接近した青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)は、右の首でシューティング・スター・ドラゴンの左翼を拘束し、左の首で右翼を拘束する。

 そうして自慢のスピードを封じ込めた究極のドラゴンは、真ん中の首から放つ白銀色のブレスを以って、史上最強のアクセルシンクロモンスターを粉砕したのだった。

 

 

「うああああああッッッ!!」

 

 

【遊星:LP2800→LP600】

 

 

 ──圧倒的な威力の攻撃の余波を受けた遊星号は、スリップしながら勢い良く後退していく。

 「不動遊星」の卓越したライディングテクニックによってどうにかクラッシュは避けられたが、神の天罰の如き痛烈な一撃には、やはり明らかに物理的な衝撃が伴っていた。

 態勢を立て直し、遠ざかっていく少女と竜の姿を追いかける彼は、宣言通りシューティング・スター・ドラゴンの不敗神話を打ち崩してみせた相手の力に驚嘆する。

 

 

青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)

 星12/光属性/ドラゴン族

 攻撃力3500/守備力4000

 チューナー2体以上+チューナー以外の「ブルーアイズ」モンスター1体

 このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

 (1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の墓地のカードを相手は除外できない。

 (2):カードの効果がフィールドで発動した時に発動できる。

 その発動を無効にし、このカードの攻撃力をターン終了時まで1000アップする。

 (3):このカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。

 自分の墓地から「青眼の究極霊竜」以外のドラゴン族・光属性モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 そのカードの恐るべきは基本的なステータスの高さはもちろん、こちらの効果発動を無効にしながらついでのように自らの攻撃力を上昇させる効果である。

 攻防一体の効果という点ではシューティング・スター・ドラゴンに通ずるところがあるが、相手に対して抵抗すら許さない問答無用さは守護竜と言うよりも無慈悲な裁定者のように思えた。

 

 その裁定者を従えた白き少女が、嘲笑うような声で問い掛けてくる。

 

 

「美しいだろう? 青眼の(ブルーアイズ・スピリット・)究極霊竜(アルティメットドラゴン)は、私の知る限りジャック・アトラスのドラゴン以来のマルチチューニングモンスターだ。チューナー2体以上(・・)という点はやや異なるがな」

 

 

 複数のチューナーモンスターとのチューニングによって現れる究極のシンクロモンスター。その境地にたどり着いたデュエリストは、ジャック・アトラスの没後にはただ一人として存在しなかった筈である。

 

 ──その人物が今、目の前にいる。

 

 それは「不動遊星」にとってイレギュラーな存在であった。

 しかし、世界の救済にとっては歓迎すべき事態とも言える。バーニングソウルはその特異性故にクリアマインドのように他人に広めることはできないと思っていたが、それもまたモーメントに正なる回転を与える一つの解ではあったのだ。

 

 しかし。

 

 

「ふっ……まったく情けない話だとは思わないか? 不動遊星の「クリアマインド」にしても、ジャック・アトラスの「バーニングソウル」にしても、シンクロ召喚の本当の進化にたどり着いたのは200年前の偉人が最後だ。彼らがいなくなった後の人類はその口でさらなる進化を謳いながら、実際は誰一人として200年前の水準に追いつくことができなかった……あの頃と比べて、何一つ前に進めていないのがこの世界だ」

「……この時代の人々は、確かに間違いを犯したのかもしれない。だがそれは、ただ知らなかっただけなんだ」

「知れば間違えなかったとでも?」

「そうだ!」

「即答か……」

 

 

 200年前の人間がとっくにたどり着いていた境地に誰一人追いつくどころか、逆走してしまったのが人類の失敗である。

 「不動遊星」とてその事実は心の中では認めていたが、それでも彼は人類に絶望したわけではなかった。

 この失敗で失った命はもう元には戻らない。だが、これからの未来を取り返すことはできると信じていたのだ。

 

 それを可能にするのが、かつて不動遊星が提唱した透き通った精神──クリアマインド。

 

 

「正しい心の在り方を理解すれば、この時代の人たちだってクリアマインドにたどり着けた!」

「ああ、それには驚いたよ。正直私は、この時代の愚民共がクリアマインドを会得できるとは思わなかった。そのおかげで、機皇の動きも随分穏やかになったな」

「なら、クリアマインドを広めることの何が悪い!?」

 

 

 尊大な態度で紡がれる彼女の言葉は、妙に歯切れの悪いものがあった。その真意を探る為、「不動遊星」は改めて彼女の思惑を問い質す。

 蘇った英雄がこの時代で為そうとする救済に対して、彼女は皮肉げに言い捨てた。

 

 

「悪くはないさ。貴様のもたらした奇跡は間違いなく、人類が滅びるまでのささやかな時間稼ぎになったからな」

「……時間稼ぎだと? クリアマインドでは、世界を救えないと言うのか!」

「ああ、救えない」

 

 

 きっぱりと言い切った。

 クリアマインドの有用性と「不動遊星」の献身を最大限評価した上で、彼女は断じた。

 「貴様の与えた希望は泡沫の夢のようなものだ」と。

 

「生き残った僅かばかりの人間が今更クリアマインドに至ったところで、それが何になる? 愚民共に期待するのはやめておけ。奴らは貴様の寿命が尽きる頃には教わったことを忘れ、また同じ過ちを繰り返すだけだ」

「そんなことはない! 一度失敗したからこそ、間違いを改めることができる筈だ。クリアマインドに辿り着いたみんななら、必ず!」

「買いかぶりすぎだな。貴様が思うよりも、人類は愚かだ」

「君は悲観的すぎる! 王なら、何故今変わろうとしている人々を信じようとしない?」

「王だからかな……いや、この場合はそれも少し違うか」

 

 クリアマインドでは世界を救えないと言い切った彼女は、その論拠を語る。

 

 

「私は人間ではないからな。貴様ら人類の繁栄と衰退を見届けてきた──「デュエルモンスターズの精霊」だからこそ、私には滅びの運命が見えるのだよ」

「……!」

 

 

 精霊の王と名乗った自らの肩書きが、そのままの意味であることを少女は明かした。

 




 何となくスカノヴァはイレギュラーな存在な気がするので、この世界線のジャックは辿り着いてなさそうな気がしています。それはそれとしてバーニングソウルはアメリカ縦断トーナメント辺りで習得してスカノヴァとは別のダブルチューニングモンスターを手に入れたイメージで考えてます

 あとこの時代だと地味にネオカイザーシーホースがパワカすぎるなと思いました
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