続きでなくてごめんなさい。
「……以上です」
ーーーとある一室。
部屋の隅から隅までに並ぶ機械があり、白衣を着た5人の男達が機械に向かってキーボードを叩いている音が響く。壁に張り巡らされた配線やランプは人工的かつ無機質な光の明滅を繰り返している。
モニターに映し出されたポケモンは怯えた表情を見せ、近づくいてくる電気を帯びた首輪から逃げ回っていた。
そういう意味では騒がしい部屋の中央で、ひとりの男が部下からの報告を受けていた。
「………その下っ端たちは今、何処に?」
「はっ。こちらに」
部下が言うと、壁の一部が浮き上がり、扉のように開いた。
現れたのはメガネをかけた者と体格の良い者(以下、体格の良い方をA、メガネをかけた方をBとする)だ。どちらも組織内では『下っ端』という位置づけだった。
「あなたたちですか、リオルを逃がしたのは」
男の声音は優しかったが、芯にある冷たい何かを感じ取った下っ端たちは震え上がる。
「もっ、も、申し訳ありません‼︎」
「し、しかしながら、あと一歩というところまで……」
「言い訳はおよしなさい」
たった一言で下っ端たちは黙りこくった。
これ以上話を続ければ、自分たちがどうなるかを理解していたからである。
「……その件については代替が効きました。私が聞きたいのは、リオルを連れていた『少年』の方です」
男の言葉に対して、Aが慌てて言い出した。
「え、ええと……、ガキ……いや、奴はかなりの実力を持っていまして……」
言葉を上手くまとめられずにまごつくAの代わりに、次はBが語り出す。
「わ……我々の調査によりますと、あのリオルは同じ種の中でも群を抜いて強力な力を有していました」
「ええ。ですから、あなた方に我が優秀な研究員たちにあの首輪を作らせたのですよ。……まあ、ニャースに小判でしたがね」
「………っ、……はい………」
『お前たちは役立たずだ』と言外に語られ、二人は首を垂れる。
しかし続けなければどんな恐ろしい目に遭うか。考慮し、Bは続けた。
「や……奴が現れたのはリオルを追い詰めたときでした。あの首輪の『点』を貫き、破壊したのです」
「ーーー『点』を?」
初めて男が反応を見せる。
Bはチャンスだと言わんばかりに語る。
「はっ。それだけではなく、リオルの力を完全に把握し、リオルも奴の命令には従順な対応を見せていました。更に……」
「更に?」
「……奴の目つきは……似ていました」
「似ていた? 一体誰に?」
一拍置いてから。
一拍置かねば、語ることが出来そうになかった。
「ロケット団、元首領……ーーー『サカキ』様に」
Bの一言に、男は目をみはった。
しかし動揺を悟られぬよう平坦な声を作る。
「……わかりました。では」
「………?」
「あなたたちは降格です」
「なっ………⁉︎」
「作戦の失敗は罪、贖いは組織への貢献です。命があるだけ有難いと思いなさい」
男はパチンと指を鳴らす。
すると下っ端たちの立っていた床が空洞になり、AとBはそこに吸い込まれるように落ちていった。
「……良かったので?」
「構いません。ああいう輩は待遇を良くすると付け上がりますからね。どうせ口封じなどあってないようなもの。それよりも……」
男は部下に振り返る。
「その少年……『ナユタ』と言いましたか」
「はっ、左様でごさいます」
部下の言葉を受け、男は思案する仕草を取った。
ロケット団元首領・サカキには、確か子息がいた。父親とは全く縁の無いところで隠居していると聞くが、まさか。
「……いいえ、他人の空似に過ぎません」
浮かんだ考えを否定し、男が言う。
「『ナユタ』……。不安の種は潰すことに尽きます。居場所を特定しなさい」
「はっ、『ランス』様」
ロケット団アジトの研究室にて湧き上がる思惑。
ーーー幹部のランスによって、ナユタには新たな試練が課されようとしていた。
***
(一方その頃ナユタは)
「オレンの実って美味しいんだね、アマタ」
「うおんっ」
サカキの息子疑惑が浮上するナユタであった……。
(ニャースに小判って言わせたかっただけなんて口が裂けても言えないっ……)
言っておきながら、ランス様の登場はもうちょっと先です。ランス様ファンの皆様、申し訳ありません。