アンケートでとりあえず「ほのぼの」展開が需要ありみたいなので、ほのぼのとした新人の兵士くんとの交流会です。前回は操舵士が出てきたけど、今回のはメカニックマンですね!
サブタイのとおりでドレンとガイアのおじさん同士の交流もやる予定です。
影の主役である少佐やホワイト・ベース周りのこともやりたいのですが、メカニックデザインがしんどいですねw やんなくてもいいんだけどwww
Scene1
敵・連邦部隊との戦闘を終えたガイア率いるリック・ドム小隊は、通常なら航行困難な暗礁宙域を再び渡って、母艦であるこのムサイ級巡洋艦の元へと、全機が問題もなく無事に還ってきた。
いやはやさすがだな! まことにめでたい!!
ただしこの着艦に当たって、隊長機がちょっとゴネついたらしいのだが?
その理由を聞くにあたり、あいつらしいっちゃあ、いかにもあいつらしいものだったから、ブリッジからこの様子を見に来た、この俺、艦隊副長のドレンである。
ま、もともとやつらが発艦していった宙域でこれを待つこともなく、さっさと艦隊進ませちまったからな! おまけに最大戦速で!!
ベテランの凄腕パイロットばかりなのだからそうそう問題はないはずだが、怒るヤツは怒るし、あいつは当然、怒る。
「……というか、元から怒ってたよな?」
内心で首を傾げながら、艦の一番上に位置するメインブリッジから、艦底のMSデッキまで直通の艦内中央通路(通称・トンネル)を降りた先で、気圧差緩衝ブロック手前の扉の前に付ける。
ここから先のMSデッキはいわゆる空気のない真空状態で、艦外の宇宙空間と直結していることも多いことから、デッキの内部が酸素を含んだ清浄な空気と正常な気圧に満たされるまでの安全が確保されないと進入ができない。
ちなみ、そういった危険性を考慮して、この長い一本通路のトンネルを渡る時はノーマルスーツの着用が推奨されるのだが、あいにくとそういった面倒ごとが根っからイヤなおじさんである。
はっは、この俺が熱烈に推してる少佐なんかは、このMS搭乗時にだってパイロットスーツなんか着てやしないんだから!!
ま、自己責任だな。
ともあれこの内側の状況をリアルタイムで示す表示ディスプレイを見るには……?
そこが安全圏にあることを示す、緑色が点ったパネルの状態表示をじっと見つめて、その内容を読み取る。
「お、メインデッキは正常値クリアしてるんだな? 二番機と三番機はもう着艦済みと! そういやさっきそれっぽいパイロットスーツとすれ違ったような? あいつら、無視しやがって……! ガイアの一番機は今、入ってきたところか? ふうむ、あいつめ、あんな横暴そうな顔と態度で、こういうところはやけに部下想いなんだよな……」
さっさとMSの収容を終わらせて仲間たちを休ませてやりたいという親心ならぬ隊長心なのかもしれないが、これにあたりちょっと頭の隅に引っかかるところがあるこの副艦長さまではある。
「あん、あいつら、やけに早くに自室に引き上げていったが、帰投後のメディカルチェック受けてないんじゃないのか? それで前もめてたよな??」
手近に艦内放送のブースがあれば大声でがなってやるところだが、あいにくとそんなものはないし、目の前のゴツい気密扉が開いてしまう。
そうだ、この先でちょっと減圧するんだったか?
めんどくさいからとっとと済ませてデッキに入ることにする。
緩衝ブロックを抜けてMSデッキに出ると、そこはやたらとやかましい騒音と機械油のニオイに満たされていた。
そうか、今は空気があるからちゃんと音が伝わるんだな!
でないとこの俺も窒息死してしまうのだが、左右のハンガーに二番と三番のドムが収容されて、ちょうど真正面の真ん中のハンガーに隊長であるガイアの一番機が機体収容を完了したところらしい。仰向けの状態で機体各部をがっちりと固定されている。
これからメカニック・スタッフたちによる点検整備だ。
おそらくは前準備なのか、ノーマルスーツ姿のメカニックマンたちが、ちょっと遠巻きに機体を眺めているな。
各種の機体情報と戦闘データの収集もしているのだろう。
ようし、良いタイミングだ。
そう思っていたら、これまたいいタイミングでMSのコクピットのハッチが開かれる。
分厚い装甲隔壁の内部から、ひょっこりと黒い専用のパイロットスーツに身を固めた主が、この顔を出すのだ。
お、ガイアだな……!
ヘルメットを被っているから素顔が見えないが、三人の中ではやや小柄な小太りの野郎体型がそれだとわかる。
ここからじゃまだ声が届かないなと左右を気にしながら、このまま向こうまで行ってしまっていいものかと考えあぐねる。
部外者が出すぎたマネは危ないし迷惑だものな?
が、この時、この俺よりも一足先にそのリック・ドムに向けて、無重力のドック内を浮遊しながら泳いで渡る人影があった。
デッキクルー用の簡易型ノーマルスーツを着た、MSのメカニックマンだとひと目で見分けが付く。薄い緑色の生地に蛍光色の補強ラインが走る、かなり独特な見てくれだからな。
「ん……! あんなヤツ、いたっけか?」
そいつは空気があるからメットもなしでその素顔をまんまさらしていて、見た感じ、大柄なデブの、おまけ若い兄ちゃんみたいだ。
そう、おそらくは新人だな?
遠目にもかなり個性的な顔立ちをしているが、もとよりイケメンである必要もない。
顔つきのいかめしいひげヅラのおやじには打ってつけだ。
ここからでは何を言っているのかわからないが、どうやら満面の笑みでみずからが担当するMSのパイロットであるガイアにねぎらいの言葉をかけているようだ。しきりと。
まだそんなにさまになってない敬礼をひたすらに送っている。
あれ、なんか、なつかれてたりするのか? 若いヤツに意外にも?? 人望あんのか、あんなんで!!
傍から目を白黒させてそのさまを見てしまう俺だった。
周囲のクルーの動きを見ながら、こちらも慎重に無重力のデッキ内を浮遊して泳いで渡る。
そうれっ……と!
だがおじさんの宇宙遊泳は傍目にはかなり滑稽なんだよな?
仕方ない。
それでいざ近づくと、思ったよりもこの周囲が熱い熱気で満たされているのに、慌ててコース取りを変更した。
あっち! まずい、ロケットエンジンやバーニアが集中している足下側じゃなくて、さっきの若いのが近づいて行ったみたいな、メインカメラの頭上やコクピットと同一線上の脇腹あたりから攻めないとダメなのか! たく、あいつらバーニア無駄に噴かしすぎてやすまいな?
パイロットとメンテナンスを真上から見る状態で、しばしデッキに浮遊してしまう副艦長だ。
みんな声を掛けずらいみたいだな。
「ようし、今度こそ……!」
整備用に張り巡らされたラインやら何やらを取っかかりに、すっかり肥満気味の身体を真下に向けて固定、どのくらいの力加減で飛び立てば、無難に目的地までたどりつけるか算段する。
お山の大将と整備士くんの会話が気になるので耳をそばだてながら、タイミングを見計らった。
さっきよりは近づいたからそれなり聞こえるのだが、やはりまだ若い新人のメカニックみたいだな?
たどたどしい会話にちょっと好感が持てるおじさんだ。
【挿絵表示】
「あっ、あのっ、あのあの、聞こえるでありましょうか? 大尉どのっ! たっ、大尉どのっ、あの~~~、あのであります、ガッ、ガイアっ、あの、おつかれさまでありますっ!! 無事のご帰還何よりでありますっ、聞こえてないのでありましょうかっ? だっ、だったら、大好きでありますっ、昔から大ファンでありますっ! 黒い三連星、めちゃくちゃカッコイイでありますっ!!!」
ちょっと耳を疑う俺だった。
コイツ、なに言ってるんだ??
たぶん相手が聞こえてないのだろうから、最後のあたりはぶっちゃけているのだろうが、あいにく背後で聞いてるヤツがいる。
まあこのぶんなら、周りにも触れ回ってみんな周知のことなんだろうが。
でもそのクセ、本人には伝えてないのか?
ということは……。
「あいつも隠れて推し活してるのか! めちゃくちゃ不器用だな! というか、メカニックにそんなヤツがいるの、めちゃくちゃパイロット冥利につきるんじゃないのか? 打ってつけすぎる!!」
感心を通り越してもはや感動すらおぼえる、同じ推し活の同士のおじさんが見ている前で、健気な新人メンテナンスの若者は、推しの凄腕パイロットの間近にまで迫った。
胸の内バクバクなんだろうな?
いやいや、顔が真っ赤だろう!
なんでそんな老害みたない中年パイロットに?
見ているこっちまでハラハラするが、果たして周りの気配にやっと気がついたらしい当の推し、もとい、リック・ドムの使い手のパイロットスーツは、おもむろにこのメットのバイザーを上げてその素顔をさらす。
じぶんを真上から見下ろしている熱烈なファンに、ジロリと冷めた視線を向けた。
でぶちんくんの身体がびくっと硬直するのが後ろで見ていてわかったが、すぐにも脱力するのがこれもまたはっきりとわかった。
かわいそうに……!
「んっ、なんだ、またおまえか? いちいち出迎えになんて来なくていいと言っただろう! 仕事をしろ、おまえの仕事はコイツの面倒を見ることなんだから。違うか?」
「もっ、もちろんそのつもりでありますっ! でで、ですが、大尉どのの調子とご意見を伺うのも大事な仕事でありますっ! お心遣いありがとうございます!! とにかくご無事でなによりでありますっ、じぶんは、その、とても光栄でありましてっ、泣きそうでありますっ!!」
「は、何がだ? おまえ変なヤツだよな? まだ若いくせに腕はいいから文句はないが、もうちょっと肩の力抜いたらどうだ? 緊張しすぎなんだよ、見ていてこっちが疲れる! あとおまえ、名前なんつったっけ? デイビッド? 覚えてやるから」
名前もまだろくに覚えてもらえてないのか。
がっくりと落ちる肩に、もっとがんばれ!と念を送りながら、この推し活おじさんもただちに援護射撃に撃って出た。
余計なお世話にならないように気をつけながら……!
「ガイア大尉! おつとめご苦労!! また戦果を上げたな? 三人そろって老後は安泰だ。うらやましい限りだよ! よう、おまえもありがとうな! はは、俺にも名前、聞かせてくれないか?」
「なんだ、横からいきなり? ブリッジの人間がこんなところに我が物顔で出しゃばって来るんじゃねえよ、あとよくも置いて行きやがったな! おまえにはいろいろと話があるんだっ……」
「わかった! 後で聞く。それよりも今は取り込んでいるんだろう? な?」
はいはいと肩をすくめさせながら、ニヤけた視線を緊張した面持ちで固まる若手のメカニックに向けると、なおさら緊張した不細工くんは無理に直立した姿勢を取って律儀な敬礼を返してきた。
けっこうけっこう! これは俄然、応援してやれるぞ。
やることなすこと初々しいメカニックスーツの青年は、ちょっとうわずった調子で声を張り上げる。
よっ、青春!
「はっ、は! お気遣いありがとございますっ!! じ、じぶんはっ、でい、デーミスと、いいますっ、MS09およびMS15系限定のメンテナンス技術兵としてこちらに配属されました! まだ若輩者ながら、どうかご指導よろしくお願いします!!」
「ほお、そうか。デーミスだな。やけに若いと思ったら、ドムとゲルググあたりに限定って、そりゃ仕方ないよな! こんな最前線のとっちらかった現場に放り込まれちまうのも? まあ本人的には、願ったり叶ったりなんだろうが……おほん!」
「デーミスか、とりあえず覚えてはやるよ。ザクは見れねえのか? 使い勝手が悪いヤツだな! 一番汎用性が高い機体なのに、現場なら基本中の基本だろうさ」
「は、はあっ、じぶんはその、大尉どのの大ファン、あ! じゃなくて、ドムのような独特かつ重厚な機体が好みでして、おまけにこのガタイですので、おまえはあっちのいかついのやれっ! てよく周りからも言われてしまいまして……!」
「おまえ、バカなのか?」
「おほん! 昨今は人員から何から逼迫していて、現場に早急に人手を送り出すためにはもはや仕方がないんだよ。新型機が出回っても現場がそれに付いていけなくちゃどうにもだろう? このデーミスみたいな即戦力は必要不可欠なんだ、だからおまえもちゃんとファンサ……じゃなくて、世話してやれよ。こんな有能な味方、そうはいないぞ?」
「何を言っているんだよ? おい新人、そういやおまえが言っていたこと、それなりには役に立ったぞ? 上から下までフル装備じゃなくて獲物をしぼって機体をスリムにしたほうが、障害物だらけの暗礁宙域を突破するには適当だろうっての、いざやったらみんな納得だ。ありがとうよ」
「そ、そんな、もったいないお言葉! はっ、めちゃくちゃ感動であります!!」
「俺だってそのくらい言うぞ? ちゃんとデーミスって呼んでやれ。バカは誰なんだか……! まあいい、話の前にやることやっておこう。忙しいところ悪いが、おまえも手伝ってくれないか? まずはこの大尉どのを医務室に連れて行く! 作戦終了後のメディカルチェックはパイロットの義務なんだからな? ようし、暴れられたらあぶないからおまえもそっちから抑えてくれ、この素行不良のエースさまを!」
「なんでそうなる? 必要ない、オレはピンピンしてる。時間の無駄だろう、おいっ、なんだ!」
ファンサービスがからきしできやしない有名パイロットを脇から抑えて、もう一方の脇を押さえろとデーミスにうながす。
はじめ目を白黒させてたじろぐオタク気質の青年は、なおさらその顔を真っ赤にさせて、すうはあと大きな深呼吸して、さては覚悟を決めたのか?
みずからの緑のノーマルスーツを黒いパイロットスーツへとぐぐっと強く押しつけた。
めでたくしっかりと推しを確保だ。
よしよし、しっかり感触を覚えておくんだぞ、なんなら頬ずりしたっていい! セクハラなんて言わせやしないさ。
当人、わざわざヘルメットを脱いで来たってことは、それだけ身近にこのおっさん兵士の息づかいを感じたかったんだろう。
まっこと健気で献身的なガチのファンだ。
これならいくらだってやりがい搾取できるぞ?
いや、させやしないが。ここらへん、本人も無自覚だからな!
「し、失礼いたします、ガイア大尉どの! わあ、思ったより小柄だけど筋肉質であります! さすがであります!! ジーク・ジオンでありますっ! めちゃくちゃ感動でありますっ!!」
感情が爆発しているらしい。
今や全身身震いさせて黒い猛獣にしがみつく、怖い物知らずの若造に、ただごとでない親近感がわくおじさんだった。
「おまえ、ほんとうにバカなんだな! いや、いいことだ。上官としてとてもありがたい! 負ける気がしないからな! その調子でこれからも黒い三連星のバックアップは任せるぞ、もっとしっかり掴まないと逃げられる! 羽交い締めにしてやれ!!」
「りょ、了解! し、幸せでありますっ!!」
「な、何をしやがるっ、こら、離せっ! おい若造、調子に乗るなよ、このオレは黒い三連星のガイアだぞ!?」
「だからだよ! いいファンがついて鬼に金棒だろう? 連邦の白いヤツとの再戦も間近かもしれないが、少佐以外にも勝ちが見えてきたのかもしれないな! けっこうけっこう!!」
作戦終わったばかりなのに元気に暴れる隊長を二人がかりで医務室まで送り届けて、無事に今回の強襲作戦を終わらせた艦隊副長の俺であった。
かくして推しは違えどおなじ推し活の友を得て、殺伐とした戦場にある種の潤いを感じられたよい一日だ。
ああ、まことにめでたい! まさしく推し活万歳だな!!
最後にブリッジに戻ったら、艦内の戦闘態勢を解除していなかったことを推しの少佐にやんわり指摘されて、あえなくこの顔が真っ赤になるおじさんである。
うわ……!
ほんとにバカばっかりだ。
合掌――。