進撃の朱点童子 ~2度目の人生もハードモード?~   作:茄南詩

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※エレン視点


邂逅

 ティエラは始めて会った時から変なやつだった。元気に振る舞っていても、ふとした瞬間に何かを恐がっているような顔をしていたから。いつもの勉強会にあいつが出られなかった時、『まるで知らない事があると死んじゃうみたいに焦って勉強していたのに、おかしいね』とアルミンも心配してたし。

 

 今日あいつの話を聞いて、変だった理由が分かった気がする。俺達は気にしないのにな。でも、ティエラの父さんは違ったみたいだった。

 

『君を消滅させれば、ティエラの心は戻ってくるのではないのか』

 

 それは、“今話してるあいつはいらない”って言ってるみたいだった。それを聞いたせいか、あいつは床に倒れてしまった。診察した父さんが言うには、病気じゃないから大丈夫らしい。でも、倒れた時に頭をぶつけてたから、大きなたんこぶが出来ると思うって言ってた。

 

 父さんはあいつをティエラの部屋のベッドに運んでから、ついてきたエルヴィンさんに、怖い顔をして聞いた。

 

「エルヴィン。さっきの言葉はどういう意味だ」

「思った事をそのまま口にしただけだ。仮に人格を壊したとしても、グリシャが近くに居れば問題無いと思っていた。今回は何もしない内から倒れてしまったが」

「自分が何を言ってるのか、本当に解っているのか?私達と会話していたあの子が消えても、ティエラが戻ってくる保証なんて何処にも無いんだ。廃人になる危険だってあったんだぞ」

「構わない。エミーリエの遺したティエラでなければ、意味がないのだから」

 

 なに言ってんだよ……。全然わかんねえよ。

 

 父さんとエルヴィンさんが静かにけんかしていると、ティエラは身動ぎをしてから目を開けた。

 

「あぁ~あ、やっと繋がった」

 

 ティエラは目を覚ますとベッドから上体を起こして伸びをした。それから俺達の方を向いて、ニカッと笑った。

 

 ……誰だこいつ?

 

 それに、何でだ?さっきまでは無かったのに、片目の近くに緑色の模様がある。

 

「やぁ、こんちは♪」

「君はティエラ……なのか?」

「いいや、違うよ」

 

 そいつは父さんの質問に首を振ると、ベッドの上に立ち上がって、カッコつけた様なお辞儀をしながら自己紹介した。

 

「はじめまして。僕の名は、黄川人(きつと)。さっきまでティエラって子のかわりに身体を動かしてた魂とは、以前ちょっとした縁があってね。時々お風さんに視てもらってたけど、今回『直接様子を(ついでに体に残る記憶も)見てこい』って、姉さんに命令された訳さ」

 

 あいつの知り合いなら、多分いいやつだな。

 

「そっか、よろしくなっ。俺はエレンだ!なあなあ、キツト!あいつの事、何て呼んだらいいんだ?あいつ、自分の名前を忘れたって言ってたんだ」

「へぇ……。そうだなあ、初めて会った時から、周りから当主様当主様って言われてたからなぁ」

「とーしゅって何だ?偉いのか?」

「一族で一番偉い人のことっ」

「そっか、偉かったのか!」

 

 だからアルミンも知らない事を知ってたんだな。

 

「初代当主は高辻誉で、歴代の当主達はみんな役割と同時にその名を継いでいたから、そう呼んだらいいんじゃないかな?」

「タカツジ?」

「それはファミリーネームだネ」

「そっか、じゃあ、ホマレって呼ぶ!」

 

 

 

 キツトは俺の頭を撫でてから、エルヴィンさんと父さんに問い掛けた。さっきまでニコニコしてたのに、俺にはよくわからない、でも何となく怖い表情(かお)をしてる。

 

「ところで、君達は色々と彼女から聞いていたみたいだけど、どうするつもりなんだい?消すのかい?それとも利用する?」

 

 そんなの決まってる。

 

「俺は、友達のままでいたい!いっしょに兵士になるんだ」

「私はそれを決める権利は無いが、今後も息子の友人であってくれればと思っている」

「……私は彼女に嫌悪感は無いが、どこか他の身体へやってくれればと願おう。キツト、君なら本当のティエラを取り戻す事が出来るのだろう?」

 

 エルヴィンさんの顔をじっと見たキツトは、気持ち悪い顔で笑った。身体を動かしてる人が違うと、こんなに変わるんだな。俺も気を付けよう。

 

「あっはははははっ。この子の魂は、随分前に天へ召されているよ?この身体に残っている魂の残りカスに自我を持たせる事は出来なくはないけど、そのカスすら生きることを放棄してるから、すっごく時間がかかるね。あんた、10年近く待てるの?体は今宿ってる誉のお陰で正常に機能・成長したとしても、中身は4才児だけど。それに、あんたが“本当の”ティエラに拘る理由って、贖罪を気取ってるだけなんだろう?執着してる割りには、幼い内から酷い目に合っていた彼女に気づかなかったじゃないか。ちょっと調べれば、すぐに分かることだろう?引き取ってから本物じゃないってわかるまでの間も、他人任せで大事にしてなかったみたいだし?結局は傍観者のままじゃないか。あんたが助けられなかったエミーリエさん、草葉の陰で娘を抱きしめて泣いてるんじゃない?」

 

 エルヴィンさんは、凄い顔でキツトを睨み付けた。

 

「その顔だと、図星みたいだね。おー怖い怖い。そろそろ退散するとしますか。こりゃあ、あいつも苦労しそうだねェ。」

「待て。話はまだ終わっていない」

 

 キツトはまだ凄い顔のままで、笑いながらエルヴィンさんとけんかしてる。

 

「はははっ。次に会うまでの間に、よく考えておくんだね。今は他人の体に居候している身分とはいえ、あいつも神と神の血を引く人間との間に生まれたってことをサ。その才能を活かすも殺すも、あんたら人間次第だ。じゃ、またね」

「おう。ばいばいキツト!」

 

 その体から赤い光が出たと思うと、ティエラはぱたりと崩れ落ちた。父さんが慌てて駆け寄ってた。今日はよく倒れるなあ。原っぱに初めて行ったときみたいだ。

 

 父さんはぐったりしてるティエラ(ホマレかな?)をベッドに寝かせてから、さっきの応接室に戻ってエルヴィンさんと話してるみたいだ。俺はここに居なさいって言われたから、ベッドに座って足をぷらぷらさせながら寝顔を見てる。暇だなあ、早く起きないかな?

 

 

「んん、ぁれ?エレン?」

 

 お、いつも通りに戻ったな!

 

「おっはよー、ホマレ!」

「おはよ……ほまれって?」

「キツトが、思い出せないなら、しょだいとーしゅの名前を呼んだら?って言ってたんだ!」

 

 キツトの名前を聞くと、痛いような苦しいような、でも懐かしいような顔をしてた。

 

「え?うそ、ここに来たの?」

「おう、なんか体に乗り移ってたみたいだ。様子を見に来たって言ってたぞ」

「ふぅん……。そういえば、私の処遇はどうなったのかな?」

「さあ?父さん達は応接室で話してるみたいだ」

「そっか」

 

 それからしばらくおしゃべりしていると、ドアが開いて父さん達が入って来た。

 

「ホマレ。今後の君についてどうするべきか、大まかなことは決めた。細かい点について、話し合おう」

「はい。かしこまりました」

 

 エルヴィンさんとホマレが隣の部屋で話し合って戻って来た。

 

「エレン、アルミンのお家に遊びに行こう!」

「もう大丈夫なのか?」

「うん!ありがとう」

 

 久しぶりに晴れやかな顔で笑ってた。本当に平気そうだ。

 

「それでは馬車で送って行こう」

「ありがとうございます。グリシャさん」

 

 それからエルヴィンさんの方を向いて言った。

 

「それでは行って参ります」

「ああ」

 

「エレン行こう!」

「おう!」

 

 

 このまま3人でいっしょに居れたらいいな。

 

 

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