進撃の朱点童子 ~2度目の人生もハードモード?~ 作:茄南詩
勉強を終えてから、イェーガー家でオリガさんに作ってもらったお弁当を食べていると、グリシャさんが帰宅しました。因みにエレンはカルラさんお手製のシチューに舌鼓を打っています。アルミンは午後から用事があるとかで、家に帰りました。
「おかえりなさい」「父さん、おかえり」
「グリシャさんお疲れ様です。お邪魔してます」
「ただいまカルラ、エレン。ティエラもよく来たね」
グリシャさんが帽子をとって椅子に座ると、カルラさんは彼の前にシチューをよそったお皿を置きました。
「今日も遅くなりそうなの?」
「午後からの往診が一件だけだから、よっぽどの事がなければ帰れるさ」
「わかったわ。気をつけてね。今日の夕御飯は貴方の好物にするわ」
「ああ。それは楽しみだ」
上手く言えないけれども、良いなぁ。このお互いを想い合う雰囲気。
幸せのお裾分けに浸っていると、エレンがスプーンを持つ手を止めて、言いました。
「ねぇ父さん、俺も往診についていってもいい?」
「エレン。お父さんを困らせないの」
「いいんだカルラ。今まではそんな事言わなかったのに、何故だい?」
カルラさんをやんわりと宥めたグリシャさんは、尋ねました。
「だってこの前、『命が危ない患者さんの為に、直ぐに手当て出来る事も大事だけど、患者さんと話して病を特定する事もじゅーよーだー!』って、父さん言ってたよね?その、じゅーよーな事のやり方を見てみたかったんだ」
エレンが成長している事に嬉しくなりました。それはお二人も同じだったようです。
「エレンがちゃんと考えている事がわかって、母さん嬉しいわ。でも…」
カルラさんは不安そうな顔をしています。『患者の病が、もし大切な一人息子にうつってしまったら』という考えが頭を過るのでしょう。
「エレンとカルラの気持ちは良くわかったよ。
今日向かう家にはエレンと同い年の、ミカサという女の子がいるんだ。その子が不安にならないように、私が診ている間、傍についててやってくれないか?」
「やったあ!父さんありがとうっ!……あつっ!!」
エレンは嬉しさのあまり、食べ掛けのシチューをひっくり返してしまいました。
「エレン、なにやってるの!火傷しちゃうでしょう!」
「ごめんなさい~」
……そそっかしい所は相変わらずみたいですね。
エレンとカルラさんが衣服やテーブルを整えている間に、グリシャさんは私に話しかけてきました。
「ティエラも往診についてくるかい?年の近い女の子同士、仲良くなれるだろう」
そうですね……。「今日はイェーガー家で夕食をご馳走になってから帰る予定」であるとヨハンさんへ報告していたので、行くことになっても改めて連絡を入れる必要はないでしょう。
しかし、エルヴィンさんの許しが出るかしら?せっかく仲良くなっても、会うのを禁止されるかもしれませんし。うーん……。
「因みにその子は、東洋人の血を引いている」
「えっ」
悩んでいると、グリシャさんは私の耳元で、とんでもない事を言いました。
友達作りも大切ですが、その子に会って話を聞きたい。あの子達は、その子孫はどうなったのかを。京の都はどうなってしまったのかを。
「決めるのは君だよ。私がいるから大丈夫さ。
君もエレンも、友達が少ない事が心配なんだよ」
あぅ……、とっても耳に痛いです。
テリーは母親のような存在ですし、ヨハンさんとオリガさんは、エルヴィンさんの指示で私の相手をしているだけであって、友達ではないですし。ハンネスさんは友達、なのでしょうか?
エレンも私も、友人はアルミンだけであることに気付き、愕然としました。これはいけない。視野が狭くなる。
「わかりました。私も行きます」
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雨がザアザアと降っています。私達はアッカーマンさんの家の前に来ました。グリシャさんが何度もノックをしても、返事がありません。
「アッカーマンさん、イェーガーです。……留守かな?ごめんください」
ドアを開けると、そこには惨劇の跡がありました。
グリシャさんは黒髪の女性の手首を取り、ダメだと言いました。
「エレン、近くに女の子は、ミカサは居たか?」
「……いなかった」
「そうか。父さんは憲兵団を呼んで捜索を要請する。お前とティエラは麓で待ってるんだ。わかったな?」
エレンはこぼれ落ちそうな位、目を見開いて固まっています。
『黒鏡』『白鏡』
森の中を見てみると、もう一つ家があります。ここにミカサが居るかもしれない。
「わかった、父さん。ティエラ、行こう」
エレンに手を引かれ、グリシャさんと別れました。アッカーマン家が見えなくなった所でエレンは私の手を振りほどき、走り出しました。その後を追いかけますが、いつもより速いっ。あの森の家へ行くつもりなの?
「エレン、どこいくの?麓はそっちじゃないよ!」「ティエラだけ麓に行けよ、俺はミカサを助けに行く!」
エレンのばか!
『白浪(威力:躓き程度)』
「うわっ」
威力を弱めたものの、エレンは転び、びしょ濡れになりました。
「何すんだよ!……うぇ、しょっぱ!なんだこれ!?」
「しょっぱいのは海水だからよ。一人で行かないで。貴方に何かあったら、みんなが悲しむわ」
「は!?ってことは、しようと思えば術で海も作れるのか!?」
忘れてた。海がないから塩が貴重なんだった。どうしよう。塩の味を覚えさせてしまったかもしれない……。
内心焦っていると、エレンは頬を膨らませて言いました。
「大体、体が昔より強くなったっていっても、お前じゃまだ無理だろ」
一応心配してくれたのかしら?……なら許しましょう。
エレンに向けて手を差し出して言いました。
「私を誰だと思ってるの。ほら、いっしょにミカサを助けるよ。」
今は緊急事態。いつもより術の使用を解禁します!