進撃の朱点童子 ~2度目の人生もハードモード?~ 作:茄南詩
「作戦その1:絶対助ける!
作戦その2:命大事に怪我しない!
作戦その3:ミカサの心も助けれるよーに!
……大まかな作戦は、これでいいよな? でもこれだと俺、あんまりカッコイイとこがないー」
「それでいこうよ。その方が、ミカサは安心すると思うよ」
「そっか、じゃあそうする!」
彼女は物理的安心と精神的安心を求めているはずですから。後者はエレンが適任です。
2人を無傷でグリシャさんへ渡せればいい。気をつけるべき事は、只それだけ。
「エレン」
暗い森の中、彼は振り返る。
「何だよ」
『常夜見 [対象:味方、敵への認識阻害]』
「どうした? 何か術掛けたのか?」
「うん。敵に顔や声を覚えられたら厄介だからね」
「何でだ?有害な奴らは駆除するから問題ないだろ」
それではミカサの心は助けられないんだ。
「ううん。駆除は憲兵のお仕事だから。その前に、お仕置きと有効活用をしないとね」
「??? よくわかんねぇけど、そうする」
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目を開けると、お父さんとお母さんを殺した人達が話をしていた。
ここはどこだろう?
足蹴にされながら話を聞いていると、どうしてこんな目に合っているのかが、わかった。お母さんが最後の東洋人だったから、らしい。
お母さんは、だからあんなに必死で叫んでたのか。
お父さんは巻き添えになったのか。
……わたしは、独りになってしまった。
殴られた箇所が痛むのを感じながら、ぼんやりとそんな事を思っていた。
トントンッ
ノックの音が聞こえる。男の一人が出て行き、戸を開けた途端、崩れ落ちた。
「誰だ!」
倒れた男の仲間が叫ぶと、子供の声がした。
『くらら』
彼もまた、ドサリと音を立てて倒れ臥した。
すると、わたしと同じ位の年の子が2人、部屋に入ってきた。ズボンをはいているから、男の子だろうか。
大きな目が印象的な黒髪の子が、わたしを安心させようと話しかけながら、両手の縄を切ってくれた。エレン・イェーガーという名前だそうだ。
倒れている男の人達を、玄関から外したドアの上に縛りつけている白い髪の子の名前は、ティエラ・スミスというらしい。
でも、まだ……!
「まだ仲間がいるはず……っ」
「え?」
「何だこの生き物は、化け物かっ!?」
「2人とも、後ろ!!」
「ぐうっ……!」
ティエラが警告するのと同時に、エレンが蹴り飛ばされた。
「ふざけるな!『お焔』」
「ギャアアアァ!」
どうなっているの……?
エレンを蹴った男が立っている地面から、水のような火が、とろとろと吹き上がった。
なに、これ……?
火は直ぐ消えたけど、膝から下が真っ黒になっていて、とても嫌な臭いがする。
男は座り込んで叫んでる。
「足!オレの、オレの足がぁあああっ!!」
「黙って。『くらら』」
エレンを見ると、目を大きく見開いていた。混乱しているみたい。わたしもだけれど。
「これって炎の水、なのか!? ティエラおまえっ、何をしたんだよ!」
「エレン……」
ティエラは男の意識が無いのを確認すると、私達の方へ近寄ってきた。
「何、なんだよ!やめっ……!」
それから怯えているエレンのお腹に手を翳すと、何かを呟いた。
「ごめんね。『泉源氏』」
「え? ……痛く、ない」
呆然とお腹に手をあてているエレンを見たその子は顔から表情を取り去った。
「エレンやアルミンの前でこういう使い方をした事はなかった。怖い、よね? だけど今、ミカサの御両親を助けられるかもしれないのは私だけ。
だからそういうのは後にしてくれないかな?」
「……ミカサの父さんと母さん、助けられるのか?」
「出来ることは全てやってみるつもりだよ」
どういうこと……。お父さんとお母さんは、殺されたのに。
「わたしにはもう、どこにも帰る場所がないのに、何でそんな事言うの?」
「こいつらいっしょに引っ張って、ついてきて。試した事は無いけれど、一つだけ方法を知ってるから。憲兵達に遺体を持って行かれる前に戻らないと。今言った事は完全に嘘になる」
ティエラという子は少しこわい。
でも、もう一度お父さんとお母さんに会いたい。
声を聞きたい。抱きしめてほしい……!
「(なんにもしないであきらめるのは)、いやだ!
お父さんとお母さんを、助けて……っ」
その子はニヤリと笑って言った。
「決まりだね。まずはこの、さっき眠らせた男をあっちに乗せるの、手伝ってほしいな」
「うん……!」
それからは、あの男を先にドアに縛りつけていた2人の男の上の真ん中あたりに乗せて、ロープでしっかり縛った。ティエラがちょっとの時間、力持ちになる術をみんなに掛けたから、全然疲れなかった。
それから今、エレンとティエラもいっしょに、ドアの上の犯人達をロープで引き摺りながら走ってる。
何かいっぱい術を掛けてたけど、何の為? 私達だけじゃなくて、犯人達にまで。聞いてみてもティエラは悪そうな顔で笑うだけで、何も教えてくれなかったけど。
……少し経ってからの犯人達の悲鳴で、なんとなくわかった。
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「うぐっ……。な、何だこりゃあ!おい、お前ら起きろ!!」
ガタンガタンという強い振動で目を覚ますと、何か板のような物に横向きにロープで括りつけられていた。森の中をすごい速さで引き摺られている。何故か服が濡れていて、酒の匂いもする。
目の前には靴下を履いた足があった。そいつも横向きにされているのは、はみ出ないようにか。
……因みにとても臭い。あいつだな。なぜ靴を履いてないんだ。履いている時の方がよっぽどましだった。つま先に顔が付きそうだ。その上隠れデブのおっさんが、俺と足臭いのやつの上に大の字に縛られてやがるせいで、すげー息苦しい。
「俺の足、足は……」
痛みは感じねえけど感覚が無ぇ……。さっきのガキの化け物共は、現実か。
「うあ……」
「ぐうぅっ」
2人が起きた様だ。
「ナァ、アイツラ、目ヲ覚マシタミタイダ」
「オ寝坊サンダネー、ピョヒョヒョッ」
耳障りな声、忌々しい化け物共の声がする。一体いつまで、どこまで俺達を引き摺るつもりなのか。
「ミカサン家ニ着クマデ、オ仕置キタイムダナ!」
「オ仕置キタイムッテ、何ヲスルツモリ?」
化け物が増えている……?そういえば、東洋人のガキはどうなったんだ?食われたのか?
「ヒョヒョッ、マア、様子ヲ見テテヨ」
ギチッ
「「オハヨウ、人サライノオジサン達」」
ギチギチギチッ
「わ゛、わ゛ああぁァア゛!!」
「「ぐぇっ」」
上に乗ってる隠れデブが暴れだした。ただでさえ道が悪いのに、暴れるんじゃない。
グチャアッ!!
「ただでさえ重いんだから暴れるなっ……ギャアア!」
一体何が起こっているんだ!
「おい!お前らどうし……っ!!」
俺は自分の首を臭い足の反対側へ、曲げられるだけ曲げた。
そこには全身を血塗れにした赤ん坊のようなものたちが。俺の顔を濁った目で、はっきりと見つめていた。
「「「「「「……ァ、パパァ、パパアアアアアアアアアァァァ!!」」」」」
そいつらは引き摺られている俺達にハイハイで追走しながら、少しずつ迫ってきた。
叫んで暴れたものの、縄はびくともしない。
「うわ!こっちに来るな、来るんじゃねえ!!」
「「「「「「ウァー、ダァーゥウ!」」」」」
「「「「パパアアァ!!」」」」
「俺はパパじゃねええ!」
赤ん坊は俺以外にも迫っている様だ。
「「「ぎゃああああああああ!!」」」
血がベットリと着いた小さな手がヒチャリと音を立てて。俺の頬に触れた所でもう、限界だった……。
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拍子抜けしました。多くの人々を不幸にした人が、簡単に気絶するなんて。
しかし、先程の攻撃は過剰でした。
エレンを攻撃された事と、以前私を売ろうとした人が混ざっていた事で混乱していたとはいえ。一応お雫を掛けておきましたので、ミカサの家につく頃には感覚が戻るのではないでしょうか?
あの炎を見て、目が覚めました。
私も最期に焼かれた時、あんな風に燃えたのでしょうか? いいえ、あの時は雪で火力は弱まっていた……。
だめだ、こんな時に思い出してはいけない! 冷静に、冷静に。
頭をブンブンと振って、考えなくて良い事を追い出していると、エレンが不思議そうな顔で言いました。
「なぁなぁティエラ。これがお仕置きなのか?
俺とティエラで『おはよー』って振り向いただけで、何にもしてないぞ??」
確かに何もしてないように見えるけど、一応精神的なものを食らわせました。
「そうだね。あいつらには、まやかしを見せたの。だから私とエレンは最初から最後まで、犯人達の目にはオバケに映ってたんだよ?」
正しくは貞八さんですが。
「そうか、オバケに見えたのかー。ちょっと嫌だな」
「そうだね」
「オバケ、きらい」
エレンは微妙な顔をしています。……言えない。オバケという言葉に嫌そうな反応をしているミカサも、途中から貞八さんに見せていたなんて。
(実は貞八エレンと貞八ティエラの頭から『人さらい達が今まで不幸にしてきた人数分』ひよを生み出して、それぞれに寄っていく様に仕向けましたが。
エレンとミカサを怖がらせてはいけないので、これも2人には言えません。)
「もうすぐミカサの家に着くよ」
黒鏡には、複数反応がある。気を引き締めなければ。