進撃の朱点童子 ~2度目の人生もハードモード?~   作:茄南詩

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不穏

 もうすぐ家に着く。もう雨は上がったのに、まだ少し血の臭いがする。

 

「3人とも、無事か!?」

 

 イェーガー先生と憲兵2人が走って来た。

 

「父さん!」と私の左隣のエレンが大きな声を出した。

 

 

「何故麓で待っていなかったんだ!」

「でも、それじゃ間に合わなかった!誰も怪我してないし、人さらい達はティエラと捕まえた!」

「……今回は運が良かっただけだ。もしもの事があったらと思うと、父さんは生きた心地がしなかったんだぞ」

「ごめんなさい」

 

 憲兵の内の1人、先生よりも少しおじさんな感じの人が、ヘラヘラした顔で近付いてきた。

 

「まぁまぁ、2人共。話は後でゆっくりして下さいな。それよりも、エレン君、だったかな?犯人達を捕まえた時の状況を聞かせてくれないかい?先生はミカサちゃんの手当てを頼みます。テオ、お前は犯人とティエラちゃんを見とけ」

 

 それから私は先生の馬車で手当てをしてもらった。ほっぺだけだから、すぐに終わった。エレンが帰って来てから、先生はいっしょに暮らさないかと言ってくれた。

 まだ希望を捨てられなかったから、考えさせてくださいと返事をすると、困ったような顔をしていた。少しすると先生はテオと呼ばれていた兵士といっしょに馬車を出て行った。今は兵士のおじさんとエレンといっしょに馬車の中で待っている。

 

 これからどうなるんだろう?お父さんとお母さんに会いたい。ティエラは大丈夫って言ってたけど、やっぱり少し怖いよ。

 

「ミカサ、ふるえてるけど大丈夫か?」

「寒い。これからの事を考えると、どうしようもなく、寒い」

 

 すると、エレンはマフラーを巻いてくれた。

 

「……あったかいだろ」

「うん」

「大丈夫だ。ティエラと父さんがなんとかしてくれる。それに、俺もミカサを1人にしないから」

「……うん」

 

 何故だろう、エレンの顔を見ていると、涙が出てきた。

 

「だからミカサ、泣くな」

 

 エレンはとても、あったかい。

 

 

 

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 犯人は全員気絶したままだ。時々うめき声を上げている。今回の事件は凄惨だった。その犯人、成人男性を3人も捕まえたエレンとティエラ。顔見知りと言う事もあって彼女の方を任されたが、何から話せば良いものか……。

 

「憲兵のお兄さん。お兄さんは確か、テリーの弟さんですよね?」

「ああ、そうだ」

「ミカサは、どうなるんですか?」

 

 いきなり答えにくい事を聞いてきやがった。

 

「あー……。ご両親が亡くなったから、ウォール教が経営している孤児院に送られるだろうな。そこから労働力としてどこかに引き取られていくか、神に仕えるかってとこだな」

 

 東洋の血を引く女のガキと言う事もあって、寄付金の多い信者の中で競りに出される可能性が高い。神秘的な容姿だったから、上手いこといけば貴族の妾になって、衣食住に不自由なく暮らせるだろうか。

 

「1つだけお願いがあります。ミカサをご両親に会わせてあげて下さい」

 

 俺の目を真っ直ぐ見上げている。本気で言っているのか。

 

「悪いが、あんなひどい姿を被害者に見せるわけにはいかない」

「私は、エルヴィン・スミスの養女です。エルヴィンさんにもしもの事があった時の覚悟は出来ています。

 ……しかし、ミカサは違います。私とイェーガー先生で遺体を清め、着替えさせます。それから、ミカサと会わせてあげて下さい。お別れをする、時間をあげて下さい!」

「先生はわかるが何故、お前が必要なんだ?他の人間でも良いだろうが」

「私がミカサのお母さんを担当します。家族と医師以外に肌を見せるのはいけない事とテリーに教わりました。亡くなっているとはいえ、そこは譲れません」

 

 そう言って俺の方をジト目で見上げてきやがった。姉さんはまだ、エミーリエさんの事を引き摺っているんだろうな。

 

「わかった。俺だけでは判断できないから、上司に掛け合ってみるが……期待するなよ」

「いいえ、充分です。ありがとうございます」

 

 上司に確認すると、検死はイェーガー先生が終わらせてるから、俺が見張ってるなら良いと言われた。

 

 ……何故そんなにテキトーなんだ。それで良いのか。

 

 

 

 

 ----------------------

 

 

 憲兵さん達の許可が出たので、後は全力で行きましょう。

 

「ティエラ。君に言われた通り、ミカサのご両親の身を清めたよ。」

「ありがとうございます。これから目にする事は他言無用ですので」

 

 只、反魂の儀を行うだけです。

 

「君が何をするつもりか知らないが、死者を冒涜することだけは許さないよ」

「はい。彼らを傷つけたりしません」

 

 ご両親の傷は壱与姫をそれぞれ数回唱えると綺麗に塞がった。憲兵さんやエレン達には悪いけれども、彼らの記憶を少しだけ弄らせてもらうつもりです。成功するかはわかりませんが、先生にだけは見届けてほしい。

 

「始めます」

 

 私はイツ花が舞を練習する姿を見ていた。神との婚姻の為の舞、反魂の儀の舞を。

 

 彼女の姿を思い出しながら、無心に舞った。犯人達の寿命を代償として。

 

 

 

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「『壁内の奇跡!アッカーマン夫妻は壮年の犯人達に殺されかけて虫の息でしたが、運良く完成したばかりの新薬を所持していたイェーガー先生によって、命を取りとめました。そして現在彼らはシガンシナ区で飲食店を始めました。めでたしめでたし』……なーんて、3文芝居も良い所さァ!詰めが甘い所は、変わって無いねえ」

 

 日が落ちたばかりの、森の中。木の幹に寄りかかっている赤毛の男は、新聞を自ら作り出した炎で燃やしながら一人ごちた。

 

「まあ、今後も続くとは限らないし、いいか。これから楽しくなるみたいだし?血兄弟への贈り物を考えなきゃねェ?あっはははははは!」

「なぁ、まだ一人でしゃべってるつもりか?俺もう、兄ちゃん達が心配するから、帰りたいんだけど」

「ああ、ごめんよベル。昔閉じ込められてた時からの癖なのさ」

「時々さらっとトラウマぶっこんで来るよなあ、あんた」

 

 彼を見下ろしながらフードを被った人間は、そう呟いた。

 

「君のお兄さんは、元気かい?」

「ああ。相変わらず過保護な兄ちゃんだ。……今度の仕事は何なのさ?」

「良いねえ、無償の家族愛。素晴らしいよ。

 今回の依頼は簡単さァ。君と同じ団のリーネルトを、今度の壁外調査に出させない様に仕組む事さ。勿論、手段は問わないよ。報酬の半分は今渡しておくからネ」

「ああ。わかった。(前回より多すぎる。何かあるのか?)」

 

 袋を受け取った人間は、直ぐに去っていった。

 

「あーあ、つまらないなぁ。結界で外部へ漏れないようにしてるんだから、もうちょっと可愛い反応をしてくれても良いのにさ。まあ次で死ぬ様な子だったら、いらないけど。あははっ」

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