進撃の朱点童子 ~2度目の人生もハードモード?~   作:茄南詩

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目標

 エレンに土下座して頼み込んでから3週間後、アルミンに許可を貰い、3人で文字を学ぶ事になりました。どちらかというと『シガンシナ区は遠いから』と渋る保護者達を説得することの方に時間がかかりました。

 そのような経緯を経て、エレンのお家で開かれている勉強会に週1回参加できています。アルミンはもう基本的な読み書き計算が出来るので、エレンと私の先生役をしています。

 

「石板で表の文字をあと3行れんしゅうして、おぼえたらカルラさんにテストしてもらおう。それでごうかくしたら、今日はおわりにしようね。エレンは石板に、このぶんしょうを書きうつすれんしゅうをしようね。」

「はい、アルミンせんせい」

「おう。おわったら、このまえの話のつづきを聞かせてくれよな、アルミンせんせい」

「うん、わかってるよ。はやく1人でも本を読めるようになろうね。あと、せんせいってよぶの、はずかしいからやめてね」

 

「「はーい、アルミンせんせい」」

「もう!からかわないでよ」

 

 ぷくっと頬を膨らませていて可愛らしいです。

 

(なっ?アルミンはおこっていても、かわいいだろ?)

(うん、ほんとうに)

 

 私的にはエレンもアルミンも可愛いです。

 

「こらこら、2人とも。あんまりいじわるしていると、アルミンに嫌われちゃうわよ?」

 

 アルミンの可愛さについてひそひそと話していると、カルラさんは洗い物の手を止めて忠告しました。

 

「それはいやだ!ごめんなアルミン」

「ごめんねアルミン。からかいすぎた」

「もういいよ。ほら、ティエラはなかなか会えないんだから、しっかりおぼえて。エレンも今までおぼえた文字がほとんどなんだから。早くおわらせて、ゆっくりしよう?」

「「はーい」」

 

 今日の分の勉強を終えた後に、カルラさんにお茶をご馳走になりました。そしてほっこりした頃に次回までの宿題を貰い、迎えがくるまでの時間、町を散策することになりました。

 

 1年間ほとんど外出せずに治療に専念していた私は、3人の中で一番体力がありません。前回はアルミンの家に向かう道の途中で、何度も息が上がってしまいました。当面の目標は、息を切らさずに野原まで歩いて行けるようになることです。この季節はお花畑がとても美しいと2人が言っていたので、来年には体力を気にせず行けるようになりたいです。

 

 アルミンのお家で育てている植物についてのお話を聞きながら歩いていると、大きな声が聞こえてきました。

 

「調査兵士が帰ってきたぞー!」

「いこう!」

「まって。はやいよ、エレン」

 

 駆け出したエレンを追いかけようと、アルミンは少しふらふらになりながらも走っていきました。……私は走れないので2人との距離が開く一方です。

 

 あ、完全にはぐれました。保身の為になるべく使わないようにしているのですが、仕方がありません。

 

『くろかがみ』『しろかがみ』

 

 誰も見ていないことを確認して術を囁き声で唱えると、2人の位置を把握することが出来ました。ついでにシガンシナ区の地理がわかって便利です。時々休憩を挟みながら早足で追いかけました。

 

 さすがに速瀬(移動速度を増加させる術)の使用は、使っているところを見られでもしたら常時発動させないといけない状況に陥る気がするので、今のところ封印中です。

 

 

 

 

「ティエラおそいぞ。どこ行ってたんだ?」

「2人が速すぎるんだよ」

「ともかく、まいごにならなくて良かったね。会えなかったらどうしようかと思ったよ」

 

 合流出来た事に安堵していると、人だかりから兵団に対する陰口が聞こえてきました。

 

「あーあ、今回もまた随分と人が減ったもんだ」

「聖女様が殉死してから壁外調査の被害は増える一方だねぇ」

「もう外に出なくてもいいんじゃないか?もう弔いの為に巨人を殺すのは充分だろう。こちらの方が被害は大きいのだから」

「確かに。壁内の事にも目を向けてほしいものだ」

 

 エルヴィンさんは巨人だけではなく、いつもこのような言葉とも戦っているのでしょうか?

 

「あ、ティエラの父さんだ。けがしてる」

「ほんとうだ。めずらしいね」

「え!?」

 

 民家の側に積み上げられている木箱の上に立って見ていると、エレンがエルヴィンさんを見つけました。指差した方向を見ると、彼は頭に包帯を巻いて馬に乗っていました。血が滲んでいて、見ているだけで痛々しいです。

 

 他の人も、多くが手足を失ったり目を負傷しています。兵士として致命的な怪我をしなかった分だけ、彼は運が良いのでしょう。目が合ったと思った瞬間、彼はなんとも言えない顔をして目を反らしました。

 

 

 

「ハンネスさんハンネスさん、きょじんってどのくらいつよいの?さっき、たくさんのへいしさんたちがけがをしていたのを見て、きになったんだ」

 

 調査兵団一行が通りすぎた後、エレンの家に戻る際に出会ったハンネスさんという赤ら顔の駐屯兵の方に、アルミンが質問しました。……ちょっぴりお酒臭いです。

 

「まさかお前たち、あれを見たのか?まだ早いと思うぞ。んー、まあいいか。巨人の弱点は項のみだ。その攻撃は基本的にはトロいが当たると死ぬし、この立体機動装置が故障していれば自殺するようなもんだ。何よりも、あいつらは人を食う。調査兵士の道を歩んだ同期の中で、生き残っているやつはほとんどいねぇ。予測不可能な動きをする、奇行種ってのもいる。俺は調査兵士として戦うよりも駐屯兵として平和に暮らす方が性に合ってるな」

「なに言ってんだよ!かべの内に閉じこもっているだけじゃ、何もかわらないじゃないか」

「あのなエレン。調査兵団が今まで犠牲を払ってきた割に何の成果も得られていないっていう事実こそ、壁の中にいた方が幸せになれるっていう証拠になるんじゃないのか?」

「ハンネスさんのおっしゃることも、いちりあると思います」

「ティエラ!?」

 

 エレンが裏切られたと言わんばかりの目で私を見ます。

 

「しかし、ちゅうとんへいも、かべのなかで、今いじょうに、じんるいの役に立つことができると思います」

「たとえばどんなこと?」

 

 険悪な空気におろおろしていたアルミンが、興味深そうな目付きになりました。

 

「きょじんの行動の、かんさつです」

「「「は?」」」

 

 あの、皆さん。目が点になっていますよ?

 

「たとえば、どのきせつに、どれぐらいのきょじんが来るのか?きょじんが多くなるじきは、あったりするのか?もしあるとしたら、それがはんしょくきではないのか?……などを考えながら、まいにち、まいつきごとに数をかぞえて、その大きさもきろくします。そうしてきろくを貯めていくことによって、時間はかかりますが、きょじんへの対策がたてやすくなると思いました」

「きょじんの区別はどうやってするの?こうたいで見ていたら、わからなくならない?」

 

 アルミンが疑問を口にしました。

 

「……雨にあたってもおちにくい、とりょうがあったらいいのだけれど。たたかわなくても、きょじんのとうちょうぶに、かべの上から投げていれば、だれも食べられずに、区別がつくんじゃないかな?」

「なるほど。今度の班のミーティングでその提案を言ってみよう。ありがとうな」

 

 え、子供の思いつきを採用してもいいのですか?それに、誰でも考えつきそうなものなのに、どうして今まで行わなかったのかしら。壁内の安全に酔って、そういう考えが浮かばなかったのかもしれません。それとも単純に、考えても行動するのが面倒だったからしていないだけなのかも。

 

「外に出ることだけ考えるんじゃなくて、かべのなかにいるうちから出来ることも考えるってことだね」

「そっか、かべのなかでも出来ることか。おれ、父さんに1人で本が読めて、けいさんが速くできるようになったら、医者のべんきょうを教えてやるって言われてる。だからきめた!はやく医者になって、ちょうさへいだんせんぞくの、たたかう医者になる!そうやってちょうさへいだんを助けていたら、外をたんけんする日も近づくよな?」

「うん、みんなでがんばろう!」

 

 アルミンがふわりと笑いました。

 

「わたしも、エレンとアルミンに置いていかれないように、がんばるね」

「おう!」

 

 エレンは拳を天に翳しながら跳びはねました。その姿を、ある者は微笑ましく、ある者は自分の若い頃を懐かしむように見ていました。

 

 

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