砂嵐が吹き荒れる荒野で、俺は岩陰に停めた車の運転席にいた。
「砂嵐ひでぇなぁ、ひどくなる前に帰りたい……」
ドアが開く、助手席に座ったリーダーらしき男性が叫んだ。
「街まで頼む! PKプレイヤーの集団に追われてるんだ!」
バックミラーを覗くと、砂嵐の向こうにぼんやりライトの光源が見えた。あの機動性、恐らくバギーだろう。
地図によるとセーフゾーンまで【24km】の表示。
「早くしてくれ! すぐ追いつかれる!」
助手席のリーダーが捲し立てる。しかし、俺はまだ車を動かさない。
「……あいつら倒したら、報酬上乗せしてくれるか?」
「は、はあ!? バギー3台に6人だぞ!? こっちは光学銃しかねぇんだ!」
後部座席の男が眼を丸くしながら叫ぶ。モンスターハント専門らしく、実弾は護身用のハンドガンだけらしい。
「性能は相手が圧倒的有利、追いつかれて蜂の巣……」
リーダーが歯噛みしながら、俺の目を真っ直ぐに捉える。
やがてーー
「……できるのか?」
「算段はある」
即答した。
「……わかった。倒せたら追加報酬を払う」
交渉成立。ボーナスゲットだ。
1速に入れ、アクセルを煽りながらUターン。バギーと正面から向かい合う形になる。
「相手の装備は?」
「7.62mmのバトルライフル。それと、50口径の重機関銃が載ってたわ」
後ろの女性が答える。漁夫狙いPK、よくある話である。
バギーの距離が縮むと、モヒカンにグラサン、変な肩パッドの奴らが見えた。
「なんだ、コスプレ集団じゃんか」
相手も此方に気づいたらしく、旧ソ連製のAKがこちらを向く。M2ブローニングの銃口も向けられ、赤い弾道、バレットラインが伸びた。
車体を振り、曳光弾を避ける。
「下に転がってるやつ取ってくれ!」
「これか!?」
リーダーから受け取ったのは、サーブ・スーパーショーティ。超短銃身の散弾銃だ。
そして俺は接近しながらフォアグリップを窓枠に引っ掛ける。薬室に弾を送り込み――
ズドンッ!
一発で横のバギーが吹き飛んだ。バギーは足回りが剥き出し、付け根を狙えばタイヤが外れる。
すぐに次弾を装填――
ズドンッ!
今度は運転手の腕に当たった。バギーがスピンして横転。
二台潰した途端、残りの一台から再び銃撃が来る。
しかし突然、銃撃が止まった。ジャムか、銃身の加熱か……
「チャンス!」
俺はバギーと並走しながら、中央のドリンクホルダーから缶ジュース大の“あるモノ”を取り出す。
「プレゼント❤️」
放り投げたのはジュースじゃない。手榴弾だ。
相手がそれをキャッチした瞬間、ギョッとした。
ドオォォン!!
そして爆炎が夜空を照らした。
「汚ねぇ花火だ……いや、違う作品だったか」
ミラー越しに爆発を確認しながら、一同はセーフフィールドへ向かった。
――こうして、メンバーの移送、さらにPK集団殲滅という追加依頼は完了した。
俺、SYMS(シムス)はこのGGOでは珍しい車両専門の運び屋だ。
主な依頼は、ファストトラベルが出来ないミッションでセーフゾーンまで人や荷物を「確実に」輸送する事。