銃と鋼鉄の世界で運び屋   作:単細胞

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ルール2 重量制限はキッチリ守れ(強盗ミッション①)

銀行の前で、1台のインプレッサが停車する。

 

今回の俺の依頼は強盗イベントの手伝い。

追跡チームからを逃げ、銀行強盗チームをゴールまで運ぶドライバーだ。

閑静なオフィス街のフィールド、奴らはまだ店内に入ったばかりだった。

俺はラジオをONにする。

 

ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『ベルボトムズ』が流れた。

 

あー、これ好きなんだよなぁ

 

軽快な曲のリズムに合わせ自然と体が動く、車内で聞く音楽はどうして気持ちがいいのか……

 

その時――

 

ビィィィィィィッ!

 

非常ベルが鳴り響き、銀行の扉から覆面の強盗犯が4人、こちらへ走ってきた。

 

「いいトコだったのに」

 

俺はエンジンを掛ける。EJ20が「待ってました!」と言わんばかりに始動した。

そして全員が乗り込んだ瞬間――

 

エンジンを止めた。

 

車内が一気に静まり返る。

 

「おい! 早く出せ!」

 

助手席の女が怒鳴った。

後部座席にも三人の女。今回の依頼人、ミス・アルセーヌスのチームだ。

問題は――

 

 

「4人いるぞ」

「はぁ!?」

 

頓狂な声を上げたのは助手席のリーダー、ジェーンだ。

 

「依頼は3人って話だったが、4人いる。重量オーバーだ」

「何を言っている!?コイツは5人乗りだろう、問題ないだろうが!」

 

後部座席に座るメンバーの一人、ナンシーがキレる。

俺は肩をすくめた。

 

「聞かされた逃走経路は舗装路と不整地が混在したルート、重量に余裕がない」

「一人くらい変わらねぇだろ!」

「甘いな。変な逃走経路を指定されたせいでセッティングに余裕がないんだ。80キロも増えたらサスペンションに想定外の負荷が掛かって底突きする。足が逝った車は走れない。砂利で滑ったら崖下直行。任務失敗、おまけに車はロストだ。」

 

まくし立てる俺に痺れを切らしたのか、ジェーンが腰のホルスターから銃を抜いた。イタリア製の半自動リボルバー、マテバ・モデル6ウニカだ。

 

「おぉ、珍しい銃だ。過去イベの報酬か何か?」

「うるさい!さっさと走れ!さもないとお前の眉間に風穴開ける!」

 

後席のリズも同調する。

 

「もうコイツ殺してボスが運転しなよ!」

 

押し問答している間、SUVに乗った敵の追跡チームが道路を塞いで包囲していた。すぐに

攻撃しない理由はノーキルで相手を捕縛するとボーナスが貰えるからだ。

 

「この車はパスワードを入れないと動かない仕様になってる。それとも敵に囲まれている今、ここで降りるか?」

「……」

 

沈黙。

 

「……クソッ!」

 

ジェーンが銃口を後席へ座るメンバーの一人に向けて引き金を引いた。

銃声と共に撃たれた仲間の体にノイズが走り、消えた。

 

「どうも」

 

キーを回し、エンジンを掛ける。ちなみにパスワード云々はハッタリだ。

 

「失敗したら殺す。この車も破壊してやる!」

 

ジェーンはさらに語気を強めた。

 

「ご自由に」

 

1速へ叩き込み、アクセルを床まで踏み込む。包囲網が出来上がっているが抜け道があった。オフィスビルだ。

その場で旋回しガラスを破りビルへ突進。机や椅子、書類が宙を舞う。

相手は慌ててSUVに乗り込み追跡を開始した。

後を追うSUVの窓が開く。兵士が顔を出し、SCAR-Lを構える、ノーキルボーナスは諦めたらしい。

自分の頭にバレットラインが伸びる。

車道へ出た俺たちは発砲の瞬間を見計らい反対車線へ、銃弾はNPC車に当たり、縦列駐車の列へ突っ込んでいった。

車線を逆走、クラクションを鳴らす一般車を俺はジムカーナのパイロンの如くすり抜け、通りを進んでいく。

 

市街地での銃撃戦なんて、ゲームならではだ。

 

このまま大通りを走り続けるのは不利、俺は裏路地を進もうと決めた。

通行人や障害物を避けながらさらに加速させ、階段を駆け下りる。

段差の振動がサスペンションを介して車内を揺らす、しかし走行に全く支障はない。

 

「サスペンションは大事だろう?」

「……ああ、そうだな」

 

ジェーンが苦い表情で頷く。

再び車道に戻ると、後ろのSUVが横に広がり弾幕を張る。

1台に3人のガンナー、獲物はバトルライフル、必死に車体を左右に振って弾を避けるが数発は命中している、耐久ゲージが少しずつ削れていくのが見えた。

しかし車内はそれどころじゃないらしい。

 

「ねえジェーン、運転手間違えたんじゃ?」

 

真っ青な顔のリズが声を絞り出す。

 

「かもな……」

 

ジェーンも口元を押さえている。

 

 

 

ここがVR空間で本当に良かった

 

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