「このままだと埒が明かない、追手を撒くぞ!」
市街地を抜け、林道へ。不整地だと相手の狙いがブレやすい。
「此方も攻撃してくれ!狙うのはラジエーターかタイヤ。向こうのガンナーが撃てるなら撃ても構わない!」
できればガンナーを倒してくれるのが望ましいが不整地だと難しいだろう。
「攻撃開始!」
「「イエスマム!」」
合図と共に後席の二人が攻撃開始、獲物はアサルトライフル、HK416のようだ。
金属音と破片、冷却水が噴き出し、SUVが煙を吹いて速度を落とす。
「先頭ダウン! 次!」
「意外と楽勝じゃ――」
シュッ――
赤い斑点がナンシーの顔に浮かぶ。
「ボス!ナンシーが!」
「無視しろ!マガジン回収して攻撃継続!」
「おりゃぁ!ナンシーの仇だ!」
ジェーンも身を乗り出し攻撃に加わる、ミラー越しだが弾丸はタイヤにきちんと命中しているのが見える。
トップレベルと言われるだけの実力に思わず感心してしまった。
数発撃ち込んだ後、SUVのタイヤを破壊。二台目が崖下へ落ち、爆炎を上げた。
残り一台。
「運転手! ゴールまでどれくらいだ!」
「およそ10分! 林道抜けたら――うわっ!」
倒木が道を塞ぎ、俺は急ハンドルで避ける。その衝撃で振り落とされ、後ろのリズが消えた。
「……悪い」
「気にするな。だが2人だと戦力が厳しいかもしれない……」
その時、赤いラインが俺とジェーンの間に現れる。
「掴まれ!」
ブレーキを目一杯踏む。細かな振動がペダルに伝わってきた。ABSが作動しているのだ。
直後、目前で爆発。砂塵が視界を遮る中、勘を頼りに進む。グレネードランチャーが炸裂したのだ。
「M79持ちがいる!」
直撃したら一たまりもねぇ!
連発してくるグレネードランチャーを何とか避けながら林道を進む。しばらく走ると道が広がり、SUVが横付けしてきた。
「潰す気か!」
反対側崖、スキップシフトで5速から3速へ落とし急減速……並走状態へ持ち込み、相手が車体を振って体当たりしてくる瞬間――
フルスロットルで再加速、ブースト計は1.5を指していた。加速のGで体がシートに抑えつけられる。
目標を外したSUVは為す術なく崖へ飛んでいく。爆炎が確認できた。
しかしこちらもギリギリ、リヤに軽くヒットされた。車体を姿勢を崩すには十分なインパクトだった。
カーブで外へ膨らんでいく、その先はカーブ……
「クソッ、ここまでか……」
ジェーンが落下を覚悟した。
だが俺は諦めない。接触はハコ車のレースだと茶飯事。
俺はハンドルを切り戻し、アクセルを全開に。無理に体制を戻そうとせず、横のスライドを徐々に弱める。
「耐えろ……!」
タイヤが地面を掴み、前へ進む感触が少しずつ戻ってくる。そして一瞬の衝撃。
――気づけばインプレッサはだ道の上に居た。
右後輪が少し落ちただけで済んだ。
「……助かった」
息を吐き、ハンドルを握る手の力が抜ける。
ゴールまで残り1キロ、ギリギリの勝負だったが無事、ゴ引き渡しポイントまでたどり着くことができた。
結果は逃走者チームの勝利に終わった。
「ありがとう。君じゃなかったら失敗してた」
報酬を受け取った後、ジェーンが笑顔を見せた。金髪ロングに碧眼の切れ長の目。凛々しくも優しいシゴデキ女子アバターだった。
リスポーンした仲間たちも戻ってきて、全員で礼を言う。
報酬はきっちり山分け。悪くない額だった。
「また依頼したい。プロフィール、交換してくれないか?」
「お得意様は大歓迎。またよろしくな」
俺はジェーンと握手を交わし、プロフィールを交換した。
めっちゃ美人だったな。……アバターだけど。