「クソ、厄介だな……」
バックミラーに映る黒い影を睨みながら呟く。
YZF-R3。軽くて速くて、小回りが効く。友人がドヤ顔で語ってたバイクだ。
大通りは一般車が邪魔。路地に逃げれば奴らの機動力が光る。
……詰んでね?
「シムさん、作戦は?」
スコーピオンにマガジンを挿しながら、レンが不安げに聞いてきた。
「ない!」
「……今、なんて?」
「ノープランだ! 敵見てから考える!」
レンがドアノブに手を伸ばす。
「降りる!!」
即座にロックボタンを押す。
「ルールその1、契約厳守。報酬もらってる以上、俺はお前を送る義務がある」
「そういうの今はいいって!!」
「相手に顔も割れちまったしな……この街じゃ俺もお尋ね者だ」
一般車の隙間を縫って進むなおもバイクは追跡の手を緩めない。
後部座席でレンが右へ左へゴロゴロ転がる。
「ああ……別の車に隠れてたらよかった……」
その時。
バイクが横に広がり、背中の銃を抜いて撃ってきた。
タタタタタタッ!!
銃声、音から察するにサブマシンガン、シルエットからしてMP5Kだろうか、車上で撃つには最適のサブマシンガンだ。
ビシビシと嫌な音が聞こえる。拳銃弾とはいえ、かなり被弾しているようだ。
「撃たれてるけど!? 大丈夫なのこの車!?」
「たぶん大丈夫」
「“たぶん”て何!?」
「一応、前に来とけ!気休め程度だが……」
小柄なレンは位とも容易く助手席へと移動した。羨ましい。
銃声が止まらない。耐久ゲージが削られる。
「レン!撃ち返せ!このままじゃ車が持たん!」
助手席の窓を開ける。レンが身を乗り出し、スコーピオンを構える。
パンパンパンッ!!
だが相手は車体を振ってかわす。相手のライドスキルはかなり高い、
「ダメ! 当たんない!」
「いいから撃ち続けろ! 牽制になる!」
レンが頬を膨らませつつも、撃ち続ける。
――ジリ貧だな。
住宅街へ飛び込む。
「ねぇ……バイクの数、減ってない?」
「……確かに」
バックミラーを見ると、半分くらい消えていた。
レンが攻撃を続けるが当たらない。この道幅でもバイクには広すぎる。
――その時。
前方の路地からもバイクの集団が現れた。
「前からも来た!? 挟まれたじゃん! どうすんの!?」
「……」
こっちが聞きてぇ
頭を回転させる。
その時、レンの背中にもう一本のスコーピオンが目に入った。
「レン! もう一つのスコーピオン、使えるか!?」
「え? 持てるけど……」
「頼む!!」
サイドブレーキを引く。
ギャアアアアッ!!
後輪がロックし、車体が真横に滑る。
両側の窓を開けると、レンも気付いた。
「――そういうことね!!」
レンがもう一挺のスコーピオンを抜き、左右に構える。
「――いけええええ!!」
バババババッ!!
クルマが回転銃座と化し、火線を撒き散らす。
ライダー達は反応する間もなく撃ち抜かれ、倒れ込む。
残る一台は――
ドスン!!
撥ねた。
十字路の中央で、インプレッサが止まる。
【DEAD】のマークが四つ。
「だから二輪は怖ぇんだよ……レン、後処理頼む」
「了解」
レンが窓からトドメを刺していく。
「さて……大通りに戻って荒野へ抜けるか」
もうすぐ住宅街を抜けられる。
幹線道路に出たら、流れに乗って街を抜ける。
途中で色替えと修理して目立たず――
「――!?」
路地から大通りに出た瞬間――
ブレーキを踏み込む。
ガツン!!
またレンがダッシュボードに頭をぶつけた。
「い、いたた……急ブレーキするなら言ってよぉ……」
「言えるなら急ブレーキ……なん、か……」
言葉が詰まった。
「ど、どうしたの? って、えっ?」
目の前に“壁”が立ちはだかっていた。
迷彩柄の鋼鉄の車体。
そして、その上に――
「……これはさすがにやりすぎだろ」
「私もそう思う……」
105ミリ戦車砲が、俺たちに向いていた。