銃と鋼鉄の世界で運び屋   作:単細胞

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ルール6 時には運が大事(レンとの邂逅③)

目の前に――

 

大砲がありました。

 

「……」

「……」

 

嫌な汗が全身から噴き出してくるのを感じます。

 

「全力後退ぃぃぃぃ!!」

 

シムさんは全力でバックしました。

 

ガツン!

 

「いたた……」

 

また頭ぶつけてしまいました。もう何回目でしょう。

勿論、バレットラインが私たちを指しています。

シムさんはハンドルを目いっぱい左に切りました。

インプがキュルルッと左に回って、180度ターン。あとで聞いたのですが、Jターンというテクニックらしいです。

 

ヒュン――ドォォォォン!

 

砲弾が横を掠めて、後ろで爆発しました。爆風で車体がガタガタ揺れます。

 

「よし、まだ動くな……」

 

シムさんはすぐに建物の陰に隠れて射線を切りました。

 

「いてて…バックばっかり……ていうか、あれは何!?」

「暗くてよく見えなかったが、ストライカーMGSだとおもう」

「なにそれ?」

「簡単に言うとタイヤのついた戦車」

「戦車!? そんなので撃たれたら――」

「木端微塵」

 

シムさんが無表情で言いいました。

そんな相手に、勝てるわけない事は私でもわかります。

 

「じゃあ……撃たれないように回り道するしか……」

「後ろ、見てみな」

 

言われたとおり後ろを見ました。

壁……

完全に――袋小路だったのです。

 

「……どうして撃ってこないの?」

「降参して出てくるのを待ってるんだろ。生け捕りにして晒し首とか」

「晒し首……」

 

考えただけでゾッとしてしまいました。

 

「ずっとここにいたら向こうが痺れ切らしてくるだろうし……あーあ、結構金かけたのになぁ、この子……」

 

シムさんがハンドルを撫でながら呟きました。

 

愛がすごい……

 

「なにか作戦はないの? あれだけの運転ができるなら戦車の弾の1発や2発くらい――」

「無理。スタングレネードあるけど目くらましにしかならない、もし避けられたとしても次弾が3秒後、それに機関銃だって2機も積んでる」

「大砲に機銃が2つ……」

「ここからフル加速しても時速50キロ、角出た瞬間ズドン。つまり、あの武装がある以上、俺達は何もできないってワケ」

 

50キロ、それなら私が走った方が速いかも……

 

私が……走れば……

 

シムさんと初めて会った時のことを思い出しました。

そして、思いついたのです。

 

 

「車が無理でも……人だったら?」

 

 

 

 

 

 

 

レンから作戦を聞いた。

無謀で、運任せで、強引すぎるそれを――

作戦と呼んでいいのか。人のこと言えないけど……

無意識にハンドルを握る手が震える。

今まで、相手の作戦通りに動くことは何度もあったのに。

 

なのに――

 

怖い。

 

「シムさん、緊張してる?」

「……してる」

「……ごめん、こんな作戦しか思いつかなくて」

「いや……仕方ないと思う。でも、怖いんだ」

「怖い?」

「ああ……具体的には、鈴鹿の130Rでスピンした時くらい」

「なにそれ?」

「伝わらないか……鉄板ジョークなんだけど」

 

だがこのまま何もしないよりはマシだと思った。

 

やるしかない。

 

「行くぞ」

「うん!」

 

レンとグータッチ。――絶対成功させる。

 

ブォン! ブォン! ブォン!

 

アクセルを煽る。合図だ。

サイドを引いたままクラッチを少し戻す。

 

ブォォォォォォ……

 

低く独特なエキゾーストが響く。完璧なスタートを決め為、エンジンを3000回転に固定する。

同時にストライカーのディーゼルエンジンの音が大きくなる。

 

来る――

 

サイドを下ろし、クラッチを繋ぐ。

完璧な発進。

角が迫る。

 

「行け!レン!」

 

 

 

 

「車が無理なら……人だったらどう?」

「は?」

 

シムさんがキョトンとした顔をしました。

私が初めてシムさんと会った時――

真横にあったのはC4爆弾。

あれを使おうと思ったのです。

 

「車体に接地しないと十分なダメージが出せないと思うんだけど」

「だから私が直接行ってくる」

「直接?……そういう意味か!」

 

シムさんは理解してくれたようです。しかし表情はすこし暗いです。

 

「アジリティ強化しまくってるとはいえ、少しでも隙を見せたら機銃掃射されるぞ。運要素がすぎないか?」

「うん。でも――」

 

 

「運だけに頼るってことも、時には大事じゃない?」

 

 

私は笑って答えました。

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