満腹になったリコルはててててと先ほどまでとは全く違う足取りで保育園の廃墟へ走る。レヴルが後ろから走ってくる音も聞こえる。
「どういうつもりですの…?」
レヴルが息を切らしながら追いついてきて言った。リコルは期待に満ちた表情でレヴルを見た。
「ここに住もうよ!」
レヴルが驚いたような表情を浮かべた。
「名案ですわ〜!」
レヴルがリコルに飛びついた。見たことがないようなニコニコ顔でリコルを抱きしめるレヴル。
「ちょ…レヴルちゃん…」
「ふふ、ごめんなさい。あんまり素晴らしい案だったのでつい…」
レヴルが両手と触手をリコルからそっと離した。リコルもレヴルも少し照れ顔で立ってる。気まずすぎる。
「じゃ、じゃあ入ってみよう…」
リコルが気まずい沈黙を破って入り口のドアを見た。ピンク色のペンキが剥がれかかっている。リコルがドアノブを掴んで引っ張った。同時に、ガシャンと音を立ててドアが蝶番ごと外れた。
「わぁぁ!」
倒れてくるドアを避けるリコル。ドアが地面に叩きつけられ、とてつもない破壊音が響いた。レヴルがふらつくリコルを支えるような押さえつけるような独特な動きをした。
「ぼっっっろいですわね…」
「ぼろいね…」
リコルはドアの外れた入り口から少し中を覗き込んだ。ペンキや壁紙は剥がれているが案外生活はできそうな程度にはものが残っている。かつては子供たちが遊んでいたであろう玩具が大量に入った箱が部屋の端にまとめて置いてあるらしい。かなり異様な光景だったが、最も異様だったのは…そこに人間がいたことだ。
金髪に赤いカチューシャをした少女が箒を持って硬直した状態でこちらを見ていた。青く少しほつれたボロボロなドレスを着ている。
「あの…どちら様で…すか…?」
少女が小さい声で言った。レヴルが驚いて少女を見つめた。
「なんでこんな廃墟にいるんですの!?」
「えっと…掃除しててって言われて…」
少女が自身なさげに答えた。掃除?廃墟の?リコルが少し少女に近づいた。自分よりも年下に見える。
「ここが廃墟になる前からここにいて…なんか掃除しててって…」
「…全然わかんない…」
「すすすみません…!」
少女が焦ったように言った。レヴルが触手をニュルらせながら少女に近づいた。
「私たちここに住もうとしてるんだけど…いいわよね…?!」
レヴルが少女にこれでもかと顔を近づけて威嚇する。
「はわわわわ…!」
少女は今にも押しつぶされそうにレヴルを見上げている。リコルがレヴルを引き離した。
「あなた名前は?」
「あ、アリシアです…」
「アリシアちゃん、私たち家がなくて…ここに住んでもいい?」
アリシアがはわわな表情でリコルを見ている。
「…私も寂しかったのでいいですよ…!」
レヴルが途端にニコニコ顔になる。リコルも微笑んだ。
「ありがとう!」
それを聞いてアリシアが気弱な笑顔を浮かべた。長い間人と会っていなかったのだろう。
「それでは…ちょっとここを案内しますね…」
「ほんと?お願い〜。」
階段を登って2階へ上がっていくアリシアを2人は追いかけた。