保育園の廃墟を生活拠点にすることにしたリコルとレヴル。
「ねえ、今日は久しぶりに西の村に行ってきてもいい?」
「え“っ…あんな時代遅れな場所に行ったことがあるんですの!?」
リコルは自身が定期的に行っていた村を侮辱されてムッとする。アリシアは自信なさげに聞いている。
「あそこはいいとこだもん。木でできた家がいっぱいあって。ちょっと昔っぽいのも好きなとこだよ」
「そ、そうなんですの…?」
リコルはむすっとした顔のまま保育園廃墟を出て翼を広げた。
月明かりが眩しいいい夜だ。星も出ている。そして目標の村も見えてきた。
木製のログハウスが立ち並ぶ小さな村。昔ながらの伝統を感じさせる雰囲気だ。リコルはそれがすごく好きだった。
しかし、前に来た時とは違うのがすぐにわかった。出歩いている人が少なすぎる。前は大勢の人で賑わっていたはずの広場に、人がたったの2人しかいない。街灯すらついていない。
リコルは不思議に思って噴水のそばにあるベンチに腰掛けている市民に話しかけた。
「なんでこんなに人が少ないんですかぁ?まえはもっと人がいっぱいいたのに」
市民の男はビクッとして小声で言った。
「最近になって…怪奇現象が頻発してるんだ。ほとんどの人が怖がって出歩かない。」
「かいきげんしょう?幽霊?」
「さあな…」
市民はこそこそと逃げるように去っていった。
「幽霊こわい…」
リコルはそっと呟く。その時、目の前の家の裏あたりから悲鳴が響き渡る。リコルは驚いてぴょんと飛び上がった。そして、好奇心に負けて家の裏へ飛んでみた。
1人の青年が腰を抜かして倒れていた。そして今もなおガンガンと何かを叩くような音がしている。
「幽霊出たんですか!?」
「出た…!」
青年は這いずるように家の中に入っていった。姿は見えないが何かがいるらしい。リコルは音が聞こえる空中を睨む。
「ばあ!」
リコルの真後ろから声がした。
「きゃっ!!?」
リコルは焦って後ろを向くと、そこには黒い何かが浮いていた。
よく見るとそれは黒いドレスを纏った少女だった。白い髪が片目を隠し、もう片方の目は青く光っている。頭には赤い三日月のアクセサリーがついている。
「きゃはは!びっくりしたでしょ〜」
少女が笑いながら言う。
「あれ?」
少女がリコルの背中にある翼に気づいたらしい。驚いたときに翼が勝手に出てしまったようだ。
「キミ普通じゃないな〜!?」
「あなたには言われたくない!あなたが幽霊の正体ね!」
「うん。私スペシャー。暇だったからこの町でイタズラしてるんだ〜。」
スペシャーはふわりと浮かび上がって家の裏へ姿を消した。
リコルは羽を広げてそれを追いかけた。