リコルは家の裏まで幽霊少女スペシャーを追って飛び上がった。しかしすでにその場所には彼女の姿はなかった。なんとなくそんな気がしてた。
(どうしよう…)
リコルはとりあえず村を歩き始めた。そうだ、本当の目的はただ遊びに来ただけだ。とりあえずリコルは街の名物のワッフルを買ってベンチに座った。
「はむっ」
血とはまた別のおいしさ。甘いなぁ…。リコルは腹を満たし、ベンチでうとうとし始めた。
「いやあああああっ!!」
少女の絶叫で、リコルは目が覚めた。もうすっかり朝になっていた。広場には打って変わって多くの人が押しかけている。丸太のような木が広場の中央に設置されている。あんなのあったっけ。次に目に入ったのは、大勢の大人たち。それらは地面にあるなにかをなにかしているらしい。全然わからない。
「昨日の子…!ちょっと助けて…!」
リコルはハッとした。大人たちが地面に押さえつけていたのはスペシャーだった。
地面に押し付けられジタバタともがいている。ドレスはほぼ原型がないほどに引きちぎられてもはや服の役割をこなしていない。
「スペシャーちゃん!?」
リコルがすぐに近寄ろうとするが、大人の背中が邪魔で近づけない。
「なんで!?遊んでただけなのにぃ!!」
「その遊びが迷惑なんだよ!」
男が後ろ手に縛られたスペシャーから衣類を剥ぎ取りながら怒鳴った。
「やめてください!!」
リコルは反射的に叫ぶが多くの怒号にかき消されて誰の耳にも届かない。スペシャーはそのまま広場の中央の丸太に縛り付けられた。リコルは松明を持った男がいることに気づいた。こいつらはこの子を燃やすつもりだ…!
スペシャーは泣いている。なぜ自分がこんな目に遭うのかわからないらしい。
「覚悟しろ幽霊!」
男が松明をスペシャーの素肌に近づける。その瞬間に、男が黒い何かによって足を掬われて盛大に転んだ。
「自分たちの都合で人を殺すんじゃありませんわ〜!!」
レヴルが触手を伸ばして飛びかかった。リコルは目を丸くする。
「レヴルちゃん!?」
「急いで!」
リコルはレヴルに急かされ、スペシャーを拘束している縄の元へ行く。強固な結び目でとても解けなさそうだ。だがそんなこと問題ではない。
リコルは自慢の尖った牙で縄をガブリと噛み切った。
「ふぇ…?」
スペシャーが地面に落ちて何が起きたのかを見ようとする。リコルがふわりと近寄って、その腕を固定していた縄も同じように噛み切った。
「おっけー!逃げますわよ!」
レヴルが触手で大ジャンプしてリコルの元へ来る。
「よし!逃げよう!」
リコルは適当な男から剥ぎ取った服の布をスペシャーに羽織らせて翼を広げた。スペシャーが目に涙を浮かべてリコルを見つめている。
「はい、ばいば〜い」
レヴルが大人たちを煽りながら素早く走って逃げていった。もちろんリコルとスペシャーも後を後を追う。
「助けてくれてありがとう…!!」
保育園の廃墟へ帰宅した瞬間、スペシャーがリコルに抱きついた。
「きっと同じような過去だろうと思ったから…助けただけだよ」
スペシャーは涙に濡れた顔でニコッと微笑んだ。