館に響く高笑い。それにいち早く反応したのはレヴルだった。
リコルたちとは反対方向に進んでいたレヴルは、すでに多くの死霊を触手で串刺しにして倒していた。アリシアも箒でできる限りの応戦をしていた。そんな中死霊の笑い声が響き渡り、レヴルはすぐに理解した。
「中央ホールですわ…」
レヴルとアリシアはきた道を戻り、階段を駆け降りて二つの階段の間の扉を開けた。
そこには、予想通りに死霊がいた。身長は2.5メートルほどだろう。黒いドレスのような形状の体から、時計の針のような一本足が突き出ている。両腕は広げられ、鋭い爪が見える。頭部はなく、かわりに赤い正八面体の結晶が浮いていた。
「…これはやばそうですわね…」
「強そうで…」
バキャン!
死霊が腕を振り上げると、アリシアの立っている場所にエネルギー弾が放たれて破裂した。
「危ない!」
レヴルがアリシアを引っ張って難を逃れた。
「ちゃんと敵の動きを見てないとダメですわ…!」
死霊がキャハハと見下すように笑った。金属の首がかくんかくんと伸縮する。
レヴルは三本の触手を素早く死霊に放つ。しかし死霊はいとも容易くそれを回避し、ツメで全てを引きちぎった。
「ああっ…!!」
レヴルはこてんとひっくり返る。死霊がさらに嘲笑うように高笑いする。もしくはそういう鳴き声なだけか?
「レヴルさん…!」
アリシアがレヴルをぐいぐいと揺さぶる。レヴルはくるんと起き上がり、悔しそうな表情を浮かべる。
「おのれ〜…終わったかと思いましたわ!」
レヴルは導力で触手をすぐに再生させる…彼女の触手は自身の導力で構成されているのだ。
レヴルは触手を地面に叩きつけて大きく飛び上がり、両足を構えて死霊の結晶部分に叩き込んだ。ガツンと鈍い音が響くが、死霊はまだ平気そうに笑っている。
「まじですの!?」
死霊の右腕がレヴルの足を掴んで逆さ吊りにして持ち上げた。
「きゃっ…!」
アリシアはそれを見ていることしかできない。
(私がもっと強かったらレヴルさんを救えるのに…!なんで…!)
レヴルが見たことのない焦り顔をしている。死霊は完全に弄んでいる。レヴルの触手やドレスの一部を少しずつ爪で切り裂いている。
「いやっ…!だれか…!」
「私の【親友】を傷つけるなあああーーー!!」
バコンという音と共に、ホールの扉から2人の人影が現れた。2人とも飛行している。
「リコルちゃ…」
「助けに来たよ!」
リコルが死霊の右腕に両足でドロップキックを繰り出す。死霊の腕は吹き飛び、レヴルは解放されて落下する。それをアリシアが抱き止めた。
「すみませんレヴルさん…!私に力があれば…もっと早く助けられたのに…!」
「アリシアちゃん…そんなこと気にするのはあほですわ…私がそんなの気にしているわけ…」
「うわわわー!」
スペシャーが死霊の攻撃を間一髪で避けていた。リコルが俊敏に飛び回って死霊を翻弄している。死霊がエネルギー弾を放つも、リコルは多数のコウモリに分離してそれを避けた。
「リコルちゃん…いつの間にそんなに強く…」
レヴルが静かに呟く。
スペシャーが霊魂をリコルにポンと放った。霊魂がリコルを包み込む。
「いまだよ!」
スペシャーが叫ぶ。同時にレヴルが触手を伸ばし、死霊を後ろから拘束した。さらに同時に、霊魂を纏ったリコルが死霊の結晶目掛けて蹴りを繰り出す…
パキィン
結晶が砕け散り、死霊は崩れ落ちた。