プラント、ザフト参謀本部。
その一室でイザーク・ジュール中佐は、整った顔を顰めていた。
世界平和維持機構コンパスとの遣り取りそのものは、情報将校となって以降何度も行っている。
ただし……それがラグエルともなれば話は別だ。
コンパスの中でも、ラグエルは大西洋連邦から供出された戦力で殆ど構成されている。
実体としてはフォスター大統領の意向が反映されやすい部隊と考えてもいいだろう。
元々ザフトからのミレニアムや「何かと縁のある」オーブのアークエンジェルとは訳が違う。
そんなラグエルがザフトの参謀本部に用があるとは。
「呑気にお茶でもしながら世間話ってんなら楽なんだろうけどな」
「分かっておるわ、そんな事ッ!」
パイロットだった頃から相棒だったディアッカ・エルスマンは相変わらず軽口を叩く。
気を張りすぎるなと言いたいのは分かっている。理解はしている。
だとしても、これから行われるのが世間話でない事は確かだ。
加えて。ラグエルの艦長を務めているのはシエラ・ハルバートン特務少佐。
かつて自分達が戦った、デュエイン・ハルバートン提督の娘だ。
……よもや仇をなどとは言いだすような真似はしないだろう。
とはいえ。油断ならない相手である事には違わない。
やがて回線がオンラインとなり、ディスプレイに一組の男女が映し出される。
温厚そうな白服の女性士官が件のシエラだろう。
黒服の男は確か……ルーク・ウォルバーグ特務少佐。
予め目を通していた資料によると、ラグエルのモビルスーツ隊を統括する隊長だったか。
『急なお呼び出しに応じて頂き感謝します……イザーク・ジュール中佐』
ディスプレイの向こう側にいるシエラは笑みを浮かべている。
少なくとも。表面的には。
事を構えるつもりではなさそうに思えるが。
笑顔の裏に伏せられたカードを警戒し、イザークは身構える。
「コンパス本部を通じて連絡があった。ハルバートン特務少佐、用件を聞こう」
挨拶もそこそこに本題を促すイザーク。
少し間を置いた後、シエラは落ち着いて口を開く。
『先刻、アラスカ付近でザフト正規軍と旧ザラ派残党の戦闘を確認しました』
「……ザフト正規軍、だとッ!?」
シエラから語られた内容は、さしものイザークといえど危うく平静さを失うところであった。
隣でディアッカが止めてくれなければどうなっていたか分からない。
……曰く。戦闘行為の停止を双方に呼び掛けたところ、旧ザラ派残党は攻撃を仕掛けてきた。
その後残党は逃亡、アーランド・ウェルナーらザフト正規軍の三名に事情を聴取。
彼らによると、残党はアラスカ付近に封印されている旧西暦時代の核兵器を狙っている。
残党を討滅すべしとの指令を受けているとの事だった。
隣にいたディアッカがおもむろにタブレットを差し出す。
シエラの話の最中、件の指令が事実かどうかデータベースを確認していた。
表示されたデータを即座に確認したイザークは一瞬天を仰いだが、すぐに眼前へ向き直る。
「……指令については概ね事実で、マインツ少佐によるものだ」
マインツ少佐といえば国防委員長であるジャガンナート中佐直属の部下だ。
二度の大戦を経てなお、ナチュラル蔑視の思想が強いジャガンナート。
そんな彼の影響下にあるマインツが旧ザラ派残党の討滅任務など下すだろうか?
大西洋連邦領内である事を承知の上で……だ。
プラントと大西洋連邦の不和を煽るのが目的では?……とは真っ先に思いついた。
しかしプラントに非がある形で事を起こすまい。
確たる証拠こそないが、何かしら別の黒い思惑が伺える。
そのシナリオを書いているのは、果たして何者か。
『仮に事実だとしても、大西洋連邦領内で活動するのであれば――』
典型的な抗議の文言を口にしかけたルークをシエラが片手で静止する。
その後、改めてイザークらへと向き直った。
『そういえば。まだ正式な辞令こそ出ていませんが……ザフトからコンパスへ、当艦へ出向する人員がいましたね』
向こうからすれば真っ当な抗議を遮ってまでシエラは話題を変えてきた。
ただコンパスへの人員出向など、この場で態々取り上げるような事だろうか。
傍らのディアッカが何かに気付いたのか。眉を僅かに上げる。
『……確かアーランド・ウェルナーら3名でしたか』
「成程な……そういう事か」
ディアッカはシエラの意図を察して口の端を吊り上げ、半歩遅れてイザークも理解して頷く。
日付を遡り、アーランドらをコンパスへと出向した人員という扱いにする。
であるならば大西洋連邦領内で活動していても何ら問題にはならない。
しかし。物事には表と裏があるものだ。
事実上、ザフト正規軍による無断活動を不問にするのと同義である。
対価は決して安くはない。見返りに求められるものとは何か。
それは流石にイザークでもすぐに答えに辿り着いた。
「……新型の運用による実戦データ取得、だな」
『ええ。話が早くて助かります』
ザフトの次期主力機となりうるゲルググはコンパスで運用しているとはいえ、あくまでもミレニアムに配属されている機体だ。
そして新型機のヘリテージ……戦後にロールアウトしたプライマルステージ・シリーズの一機。
本来であれば機密の塊ともいうべき新型を、大西洋連邦の影響力が強い部隊で運用させる。
即答は……できよう筈もない。
とはいえ、その提案を飲まざるをえないのも確かである。
仮にアーランドらを「保護」したのが大西洋連邦の正規軍であったなら、事態は更に拗れていたであろう事は想像に難くない。
マインツの背後にいるであろうジャガンナートはそれを望んでいたのかとさえ勘ぐってしまう。
……或いは。拗れても一向に構わないだけの「何か」があるのか。
「……データは逐一こちらに共有してもらう。それで構わないか?」
『ありがとうございます、ジュール中佐。出向手続きはコンパス本部を通じてお願いします』
イザークが頷くと通信が終わり、ディスプレイが暗転する。
黒一色となったディスプレイに部屋の照明が反射し、顔を顰めている自分自身が映った。
不意に嘆息したイザークは天を仰ぐ。
「……全く。面倒な事になったものだ」
「お前の頭がいまにも爆発しそうで、気が気でなかったぜ」
外交問題に発展しかねない大西洋連邦領内での活動を指示したマインツ少佐もそうだが。
ブルーコスモス残党による襲撃と、それを逃れたアーランドらを狙った旧ザラ派残党。
一連の動きには何か作為的なものすら感じてしまう。
杞憂であればいいのだが、用心するに越した事はない。
「何か手を打つ必要があるな。他の新型も」
ザフトの次世代最新鋭モビルスーツ群、プライマルステージ・シリーズ。
かつてデュランダル前議長の下開発途上であったサードステージ・シリーズの一部に仕様変更と再設計を行い、別途開発された新型も含まれている。
イザークが手元のタブレットを操作すると、三機のモビルスーツのデータが表示された。
ZGMF-X433/PM SOLITUDE
ZGMF-X671/PM ReDRESS
ZMGF-X72/PM INNOCENCE
「まったく……これではモビルスーツに乗って戦っていた方が幾らかマシだな」
混迷を極める事態を前にイザークは思わず愚痴を零す。
二度目の大戦が終わってから参謀本部へと異動となったが、心労が増えたとしか言いようがない。
疑う心の闇に鬼を思い浮かべない日はないと言ってもいいだろう。
前線で部隊を率いて戦っていたのが遠い昔のように思えてくる。
「そう言うなよ。前線で頑張る若い連中の為に踏ん張るのが俺達の仕事だろ」
「人を年寄りみたいに言うなッ!」
二度の大戦を経験してきたイザーク達は多くのモノを見てきた。
そしてプラントを、ザフトを立て直す為に力を尽くそうと決意した。
あの大戦で失った多くのモノが少しでも報われるのならと。
だからこそだ。この期に及んでまだ憎しみを叫び、諍いを起こそうという輩は看過できない。
……失われるのは敵の命だけではないのだ。
「ま……それにだ。個人的にはいい機会じゃないかとは思うぜ。特にアーランドにとってはさ」
そう語るディアッカの双眸は、ここではなく……過去へと向けられていた。
かつてはザフトの一員として任務に従っていたが、アークエンジェルの捕虜となり。
流れで軍を脱走した彼らと共に、戦争を止める為に戦っていたあの頃を。
「……ほう?」
「ザフトの外から物事を見るのも悪くはないってことだよ」
あの経験はディアッカを大きく変えたと言ってもいい。
二度の大戦を経験したクラウスとバージルはとにかく、アーランドは二度目の大戦後に入隊しているのだ。
今回の一件が彼らにとって、いい転機となるかは定かではない。
先行きが見通せぬ中、そうであってほしいと思うのは願いか。それとも祈りか。
「……フン。あの頃はただ突っ走っていただけだ」
「相当面倒な事になっているようだな。あちらは」
通信を終えたシエラとルークは部屋を後にし、艦内の通路を進む。
ザフト参謀本部の情報将校イザーク・ジュール中佐。
ディスプレイ越しに彼の様子を観察していたが、ザフトもまた一枚岩ではないという事か。
「……むしろ厄介事を抱え込んだのはこちらかもしれません」
先程受け取ったザフトの最新鋭機……ヘリテージの資料を、シエラはタブレットに出力する。
旧ザラ派残党は最初からこの機体が狙いだった。
そう考えるのは穿ち過ぎだろうか?
ザフト内部で運用するよりも、いっそこちらに預けてしまった方が逆に安全ということか。
ジュール中佐がアーランドらのコンパス出向に頷いたのも、そこに理由があるのかもしれない。
……尤も、その意味で言えば大西洋連邦も似たようなものではあるが。
「……それにしても。よく思いついたものだ」
先の通信を振り返ったルークは素直に関心する。
アーランドらを遡ってコンパスへの出向扱いとし、一連の件を事実上不問にする。
その見返りとしてザフトの最新鋭機をこちらで運用し、実働データを取得する。
通信を行う前にシエラから概要は事前に知らされた時は耳を疑ったが。
無論、前例のない出向に伴う諸々の問題はあり、それらを解決する必要はあるだろう。
「まるでアズラエルCEOのようだった」
「……ルーク」
続くルークの言葉にシエラは突如、足を止めた。
自身に向けられた彼女の双眸が、すっと細まるの様を見てしまう。
「……面白い冗談だと、思っているのですか?」
「すまない。失言だった」
冷ややかな眼差しに射貫かれたルークは思わず両手を挙げる。
……あの性格が悪い男に例えられる。
冷静になって考えてみれば、それは侮辱と受け取られても仕方ない。
ケイトあたりの耳に入ろうものなら「そういうところだぞ」と茶化されてしまう。
「まあ……かのCEO殿は大喜びでしょうね。新しい玩具を手に入れて」
「ザフトの機体を運用する以上、奴にも働いてもらわねば困る」
「随分と遅いな……」
「まだそんなに時間は経っちゃいないぞ」
ラグエル艦内の、ある一室。
使われていない士官室の一つにアーランド達は待機していた。
待機とはいったものの外では保安部が見張っており、軟禁と言っても差し支えない。
彼らを取り巻く状況から考えれば当然とは言えるのだが。
「少しは落ち着けアル」
「分かってる。分かってるけど……」
モノが殆ど置かれていない殺風景な部屋の中を、落ち着きなく歩き回るアーランド。
そんな彼を窘めたクラウスの表情もまた硬い。
今頃ラグエルの艦長達がザフトの参謀本部と対談しているそうだが、どうなる事やら。
「……ラグエルはコンパスとはいえ、大西洋連邦の影響力が強いからな」
ベッドに腰掛けたままのバージルが呟き、天井へと目を向ける。
かつて二度の大戦においてプラントと矛を交えた国家だ。
今は休戦中とはいえ、領内でザフト正規軍の自分達が動いていた。
大きな外交問題となるのは避けられないだろう。
「俺はアラスカで散った友の事を忘れてはいない」
一度目の大戦の折、オペレーション・スピットブレイクに参加した当時をバージルは振り返る。
地球連合本部であるアラスカを急襲する大規模作戦。
しかし内通者によって事前に作戦は察知され、多くの戦友が大量破壊兵器サイクロプスの餌食となり、極北の地で散っていった。
しかも犠牲になったのはザフトの将兵だけではない。
聞けば当時の大西洋連邦にとって後々の仮想敵となるユーラシア連邦や、かの浮沈艦アークエンジェルすら囮として使い潰そうとしたのだ。
サイクロプスによる死の顎を逃れたアークエンジェルが離反するのも、未だ大西洋連邦とユーラシア連邦が禍根を残しているのも無理はない。
とはいえ当時の首脳部と異なり、今のフォスター大統領はプラントとも協調しようとしている。
その為のコンパスとは理解はしているのだが。
多くの戦友を失ったという過去が、バージルの心に疑念として深く根を下ろしていた。
クラウスやアーランドとしても思うところがあったのか、表情に陰りが含む。
「そういえばアル。お前向こうのパイロットと知り合いだったのか?」
「ああ……レンリは、DSSDにいた頃の同僚だ」
かつてDSSDに所属していたアーランドは、スターリンカーのパイロット候補だった。
パイロットとしての実力には自信があったのだが上には上がいた。
ネリー・ハーシェルと……ナチュラルでありながらコーディネイターである自分達よりも優れた技量を持つレンリ・アマサキ。
……全く悔しいと思わなかったといえば嘘になる。
彼女には特別な才能が、コーディネイターを超える才能があったのだろうと思っていた。
しかし才能に驕ることなく、日々研鑽を重ねるレンリの姿を目の当たりにし、考えを改める。
いつしか、夢に向かって努力するレンリに惹かれていった。
DSSDにいた頃の想い出は遠い昔の事のように思えるが、未だ色褪せてはいない。
「……まさかコンパスにいたなんて思わなかったけど」
スターリンカーのパイロット選考にネリーが選ばれてから、人知れず、誰にも告げることなくレンリはDSSDを去ってしまう。
ずっと近くにいたのに、彼女が抱えているものを理解してやれなかった自分を恥じた。
ザフトに身を置いている今でもその事が気掛かりだった。
……まるで、喉に引っかかり続けている魚の小骨のように。
レンリが乗っていたというヴァーティカル。
あの機体の挙動を思い返すと、確かにスターリンカーの面影があった。
何を思って彼女はヴァーティカルに乗るのかは分からない。
だとしても、レンリと再会できた事は僥倖であったとアーランドは思いたかった。
……尤も現状では、自分達の先行きすら見通せないのだが。
各々が思案に沈んでいた折、急に部屋のドアが開かれた。
思わず一同は身構えるが、部屋に入ってきた人物に……彼らが手にしていたモノに瞠目する。
「転属命令だ……ようこそ、コンパスへ」
「……転属命令だと? どういう事だ?」
ベッドに腰掛けていたバージルが思わず立ち上がる。
その視線の先にはルークとレンリの姿があった。
彼らはパッケージに包まれたままの新品である、コンパスの制服を手にしている。
大西洋連邦領内での活動について何らかの処分があると思ってはいた。
乗機を取り上げられ連邦最大の収容所アルカトラズへ送られる事も覚悟はしていたというのに。
「追って正式に辞令が交付されるだろうが、君達はラグエルへ配属となる」
「……なるほど。そういう事か」
事情を理解したのか、思案していたクラウスが頷いた。
確かにザフト正規軍が無断で活動していれば外交問題となるのは避けられない。
しかし、自分達がコンパスであったのなら話は別だ。
コンパスが加盟国の領内で活動する事自体は問題はない。
「しかしミレニアムではなくラグエルなのか?」
「将来的な連携強化のモデルケースだ。ザフト参謀本部のジュール中佐も了承している」
特に明文化されているわけではないのだが、ザフトから出向する人材についてはミレニアムに配属されるのが通例となっている。
にもかかわらずラグエルへの配属は疑問を覚えて当然ではあった。
今では出向元を考慮した配属となっているが、ナチュラルとコーディネイターとの共存を掲げているならば、通例に当てはまらない配属もあるという建前か。
……実体としては自分達が受けていた任務の事もあるのだろうが、あくまでも建前は建前だ。
「着替えが終わったら艦を案内しよう。部屋の外で待っている」
言い終えるとルークはクラウスとバージルに制服を手渡した。
コンパス標準の青い制服を、未だ戸惑いが残ったまま受け取る。
そしてレンリからアーランドへは赤い制服を手渡された。
用が済んだルークとレンリは部屋を出、後にはアーランド達が取り残された。
「……なんだか、とんでもない事になったな」
「大西洋連邦の連中と轡を並べるとは……」
「この艦って同型艦なんだろ? かの『足つき』とは」
ラグエル艦内をルークが歩き、クラウスとバージルがそれに続く。
艦の構造を眺めていたクラウスはおもむろにルークへと尋ねた。
「一部の設計を刷新こそしているが、大元はそうなるな」
改アークエンジェル級強襲特装艦ラグエル。
大元となるアークエンジェルの完成度が高い為、艦の構造自体は大きく変わっていない。
各種アップデートが施されている以外大差はないと言ってもいいだろう。
設計も製造も同じくオーブのモルゲンレーテ社が深く関わっている。
「『足つき』か……ザフトではそう呼ばれていたらしいな。一度目の大戦の時には」
「ああ。低軌道会戦の時だったかな。あの頃自分はまだ新兵だった」
何気なく過去を振り返るクラウスが発した言葉に、ルークは足を止めた。
低軌道会戦……かつての第八艦隊がアークエンジェルを守り、そして壊滅した戦い。
ルークにとっては未だ苦く、古傷が痛むように記憶が軋む。
「あの戦いで俺は第八艦隊に所属していた。あの戦いでは多くの仲間を喪った」
「……悪かった。まさかアンタがあの場所にいたなんてな」
感じた痛みを嚙み締めるかのような沈黙が流れる。
しかし、やがて振り払うようにルークは再び歩き出す。
「互いに信じるモノの為に戦い、務めを果たそうとしたのだ。全く恨まなかったと言えば嘘にはなるが……それを引きずるつもりはない」
……自分達がもっと奮戦していれば、ハルバートン提督を喪わずに済んだのではないか。
そんな事を考えたのは一度や二度ではない。
ルークだけではなく、このラグエルに乗艦する第八艦隊の生き残りの多くもそうだ。
とはいえ自分達にしろザフトにしろ、互いに本分を果たした結果だ。
それはどれだけ受け入れがたいものだとしても、飲み込まなくてはならない。
未だ割り切れず死者に引きずられ……ブルーコスモス残党や旧ザラ派残党のようになるつもりは全くなかった。
「誰もがお前のように考えられればいいのだがな。アラスカで多くの仲間を喪った」
バージルもまた、ルークの言葉を頭の中で意識する。
軍人として銃を取るのであれば、かくあるべしとは理解している。
かといって割り切ってしまうには……あまりにも多くの仲間を喪い過ぎた。
それに、先程ルークは第八艦隊にいたと聞いていた。
かのアークエンジェルを守って勇敢に戦った第八艦隊。
しかしかの艦は、アラスカへ辿り着いたもののサイクロプスの囮として……贄と捧げられた。
であるなら。
自分達が命を賭して守ってきた艦を捨て石とした軍に対し、思うところがあるのかもしれない。
「……別に赦す必要はないだろう。赦す事と忘れる事はまた別だ」
目を閉じたバージルは、アラスカで散っていた多くの戦友達を思い出す。
彼らを非道なやり方で葬った地球連合を赦す気はない。
赦せば戦友達を忘れそうになるのではないか……そう思えてならない。
かといって、ガルン達のように抱えた想い出を憎しみへと変えてしまうのも違うだろう。
「連合の中にも、あんたみたいに考えてるヤツがいるんだな」
それを知れただけでも、ここに来た意味はあったのだろうとバージルは感じる。
互いに抱えているモノも見てきたモノも異なるが。
自分もクラウスも……ルークもまた二度の大戦で多くを喪い、そして今ここにいる。
「なんにせよだ。これからよろしく頼む……隊長さん」
閲覧、ブックマーク等ありがとうございます。
感想等頂けましたら励みになります。何卒よろしくお願いします。
数年前なら普通に毎回コミケに行ってたのですが、ここ数年はさっぱりです。
物欲とか諸々薄れてるのがこわい。
夏が殺人的な暑さなのもあるんですけどね。