機動戦士ガンダムSEED VERTICAL   作:まりなーら

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寝る間際に鞄の中から存在を忘れ去られたアイスが出てきたので初投稿です。




PHASE-08 限りなく、遥かな高みへ手を伸ばす(ヴァーティカル・インフィニティ)(2)

 

 

 

 

『……それでは宜しく頼む』

「構いませんよ。あんな物騒なモノを向けられては、我々としても安心はできませんからね」

 

ホワイトハウスの執務室にて。

ディスプレイに映るオーブ代表、カガリ・ユラ・アスハの言葉にフォスターは頷いた。

互いにその顔には疲労の色が濃く浮かんでいる。

ファウンデーション王国による一連の恫喝に対する、国内外の対応に追われていれば無理もない。

 

「レクイエム……あの『ジブリールの遺産』は、今度こそ始末せねば」

 

デスティニープラン導入を迫るファウンデーション王国の宣言後。

フォスターはオーブのアスハ代表と極秘の会談をセッティングした。

一度はコンパスの是非を巡り先の会談は決裂したが、この事態ではそうも言っていられない。

互いにレクイエムの排除を目的としているのであれば足並みは揃えるに限る。

両者がその点において合意に至るには、然程時間が掛からなかった。

 

とはいえ表立ってレクイエムの攻略に乗り出せば狙われるのは間違いない。

エンデュミオン基地から出撃したユーラシア連邦軍の艦隊は、レクイエムの一射で壊滅したという報告がつい先程耳に入ったばかりだ。

断熱偽装シートで熱源を察知されないよう接近しつつ、タイミングを合わせて一気に仕掛けなければ各個撃破されてしまうだろう。

 

『ああ。あんなモノは二度と撃たせてはならないんだ』

 

そういえば……とフォスターは二度目の大戦を振り返る。

あの時にもデュランダル政権下でオーブはレクイエムの照準を向けられたのだ。

加えて、当時と同様にデスティニープランを巡って……である。

 

「それにしても。連中は随分と周到に準備をしていたようで」

『全くだ。ブルーコスモス残党と旧ザラ派残党……両者に支援をしていたとは』

 

この会談を行うにあたって、コンパスで残存している戦力からの情報を予め共有していた。

旧ザラ派残党の機体に仕込まれていたドラグーン・システムの受信装置。

それらがブルーコスモス残党のレムナント・ワンからにより外部操作されていたという事実。

更に、交戦直前に受けた強力な通信妨害はNJダズラーによる可能性が極めて高いと。

 

ニュートロンジャマーの通信阻害機能をより強力に特化させたNJダズラー。

現在、各国においても研究開発途上にある筈の技術だが、それを実用化して運用しているのだ。

しかもミレニアムも同様の通信妨害を受けたという。

状況を踏まえればファウンデーション王国によるもので間違いないと報告を受けている。

 

更には旧ザラ派残党の機体に搭載されていた最新鋭のOSという例もある。

ジャガンナート国防委員長が管理していたレクイエムの動力炉の件といい、全てはこの為にと各勢力に手を回して準備してきたのだろう。

そしてレクイエムを手にした今、チェックメイトを掛けたという訳だ。

……とはいえ。

 

「……さて」

 

一息ついたフォスターは手元のコーヒーカップに口を付けた。

香りと苦みとを飲み干し、改めてディスプレイへ……その向こうにいるカガリへと向き直る。

ここからが本題だ、と言わんばかりに。

 

「死んではいないのでしょう? アークエンジェルとヤマト准将は」

 

傍から見れば突拍子もない話でしかない。

なにせ彼らは生死を確認できず、だからこそ事態はここまで混迷を極めているのだから。

しかしディスプレイの向こうでカガリが息を飲むのを、確かにフォスターは感じ取る。

 

『……一体、何の事だ?』

「否定はしませんか……まあ、そうですね。彼らが簡単に死ぬとは思えませんから」

 

言葉を紡ぎながらフォスターは改めて、レクイエム攻略作戦の概要を呼び出す。

オーブ宇宙艦隊と第八艦隊による攻撃。

一見すると現状で取れる最善手のように思える。しかし……

 

「正直なところ彼等だけでの攻略は困難を極めるでしょう。にも拘らずアスハ代表は了承した」

 

対するファウンデーション王国の戦力は、ザフトのクーデター勢力を取り込んでいる。

これらを排除するだけなら現状の戦力でも十分可能だ。

しかし王国の本隊には親衛隊たる『ブラックナイトスコード』通称、ブラックナイツが存在する。

 

彼らが運用する親衛隊と同じ名を冠する『ブラックナイトスコード』シリーズは、そのいずれもが最新鋭のワンオフ機に匹敵する高性能機だ。

言うまでもなくレクイエムの攻略においては、これらの機体を対処する必要がある。

通常戦力でブラックナイツに挑んだところで徒に戦力を磨り潰すだけなのは明らかだ。

 

……であるならば。

ブラックナイツに対処できるだけの切り札がオーブにあるという事だ。

それこそ、アークエンジェルやヤマト准将のフリーダムのような。

或いは『オーブの獅子』の遺産も出張っているのかもしれない。

 

「我々はレクイエム攻略の為、あらゆる手を尽くす必要がある。その為にはいかなる協力を惜しまないつもりです」

 

フォスターとカガリの視線がディスプレイ越しに交錯し、沈黙が互いの執務室を支配する。

手を組む以上、互いの手札はオープンであれば相手の信用を得られる。

とばいえ、それはカガリにとって明かしたくない手札なのだろうと、沈黙が物語っていた。

 

「加えて。戦後の枠組みもまた考えていかねばなりません。コンパスの役割も今後は一段と重要なものとなるでしょう」

 

更にフォスターは、これが本旨と言わんばかりに一歩踏み込んだ。

此度の一件でファウンデーション王国が随分と暴れた以上、その反動でブルーコスモスが息を吹き返すのは間違いないと言える。

特に首都を焼かれたユーラシア連邦の動向は警戒する必要があるだろう。

更にはデスティニープランを掲げるコーディネイターの過激派勢力の台頭すらあり得る。

 

それら起こりうる諸問題を、自国が主導となって解決するのにコンパスという存在は必要だ。

戦後の国際秩序においてイニシアティブを握る為にも。

オーブはもとより、クーデターを起こされたプラントも同調せざるを得ないだろう。

 

「それに。彼らは亡きハルバートン提督の忘れ形見とも言えます。かつては私も彼の計画に関与していましたからね」

 

目を閉じたフォスターは過去を振り返る。

ザフトのモビルスーツに対抗する為にとハルバートン提督が立ち上げた『G計画』

一度は却下されたものの、フォスターをはじめとする一部の議員は実現の為に奔走した。

紆余曲折はあったもの計画は始動し、GATシリーズとアークエンジェルとして結実したのだ。

 

計画がザフトに嗅ぎ付けられ、ヘリオポリスが崩壊したと聞いた時はもう駄目かと考えていた。

しかし殆どの機体を奪われながらもストライクとアークエンジェルは生き延びたのだ。

その後も数々の苦難を乗り越え、二度の大戦を経て尚も生き残った。

流石に今回ばかりは……とは思ったが、たとえ艦を喪っても彼らが死んでいるとは思えない。

 

「だからこそ、私としても生きていてほしいと願うのですよ」

 

勿論大西洋連邦大統領としての打算もある。

しかしそれ以上に『そうあってほしい』という願いでもあるのだ。

フォスターの言葉に、カガリは逡巡しながらも、やがて何かを決意したように頷いた。

そして手元のディスプレイに新たなデータが複数表示される。

 

『……全く、そうまで言われてはな。確かに大統領の仰る通り、彼らは生きている』

 

 

 

 

 

『ライアンさんッ!!』

「……チッ!」

 

フェリクスが銃の引爪に指を掛けようとした時、それは起こった。

レンリの叫びと共にスカイグラスパーに備わる砲塔が動き、機関砲が火を噴いたのだ。

20mmの機関砲は人間を血煙に変えるには十分すぎる程の威力を持つ。

フェリクス達を牽制する目的で放たれたそれは、過剰なまでの威力を遺憾なく発揮し、取り囲んでいた保安部の兵士を諸共に消し飛ばした。

 

「やってくれますね……ッ!」

 

砲塔の挙動から機関砲による攻撃を察したフェリクスは、すんでのところで物陰へ身を隠した。

殆どの部下は一瞬で血煙と化してしまった上、下手に前へ出る事も敵わない。

 

……レンリ・アマサキ。

どうにか心を折れないかと思案を巡らせていたが、心が折れるどころか決して諦めようとしない。

それどころか、捨て置けばいいもののライアンを助けようとした。

 

「……気に入りません。実に気に入りませんねッ!」

 

その在りようは目に障る。気に障る。そして癪に障る。

とはいえ現状は如何ともし難いのも事実だ。

 

「俺の事は気にするなッ! こっちはこっちでなんとかするッ!」

 

先程の隙に逃げおおせたライアンはレンリへ向かって叫びながら駆け出す。

乗機のストライクEに向かおうとしているのだろうが、そうはさせない。

スカイグラスパーが発艦したタイミングを計り、フェリクスは前に出た。

各種資材搬入の為にハッチを空けていたのが仇となったが、無理矢理破壊して突破された方が更に事態はややこしくなっていただろう。

 

「今更格好つけないでくれますかッ!」

 

丁度ライアンはストライクEのコクピットに滑り込もうとしているところだった。

レンリはとにかく、彼は作戦の全容を把握している立場にある。

万が一、彼が投降するような事があれば支障をきたすのは間違いない。

それだけは決して阻止しなければならなかった。

 

「悪運の強い……ッ!」

 

放った銃弾の内、一発はライアンの脇腹を抉ったが、すんでのところで乗り込まれた。

こうなっては最早手を出しようもなく、フェリクスはストライクEを忌々しげに睨め付ける。

とはいえ機体そのものは整備中で、武装も調整中で使用不可なのが幸いと言えた。

もし格納庫内で暴れられれば全ての計画は水泡に帰してしまうのだから。

 

「ブリッジ、聞こえますか……システムの立ち上げを頼みます。すぐに向かいます」

 

少なくともライアンは脱出を優先しているのがせめてもの救いだ。

しかし。逃がしはしない。

つまらない感情に振り回される、実につまらない人間だとは思っていたが。

この土壇場で心を乱され、反旗を翻す程に愚鈍だとは思わなかった。

 

兎に角。今は状況を打開するのが最優先だ。

流石にこの事態にはユリエールもお冠だろう。

フェリクスからすればお飾りでしかないのだが、なるべくなら機嫌を損ねたくはない。

 

「全く。これだから……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のところ作戦は順調……と思いたいのですけどね」

 

ラグエルのメインブリッジにて、シエラは各方面における戦闘に注視していた。

レゾナンスと新型を中心とした部隊は順調に敵モビルアーマーを無力化している。

そしてゲルググもまた順当に敵機の数を減らし続けている。

通常戦力は敵の前衛を優先して排除した結果、こちらも終始優勢を保っていた。

 

優勢で……ある筈なのだ。

しかし基地の内部に陣取っているのか、肝心のレムナント・ワンの姿は見当たらない。

加えて彼らにとって最大戦力である筈のディアボロスも存在しない。

 

「ミケール大佐麾下の部隊が合流した割には数が少ないな」

「……まるで。誘い込まれているかのように、かな?」

 

エリアスもまた感じ取っていた懸念を、ディーンは面白がるように言語化する。

凡その見立てでは確証こそ持てないものの、シエラも同じ方向で推測はしていた。

新型の活躍で勢いづいているなら、あちらとしても誘い込みやすいだろう。

 

「それこそさ。基地の地下にサイクロプスでもあるんじゃないの?」

「……アズラエルCEO、悪い事は口にすれば本当になると、子供の頃に教わりませんでしたか?」

 

サイクロプス。

その名を聞いたディーン以外の一同は皆顔を顰める。

一度目の大戦において、旧エンデュミオン基地と旧アラスカ本部にて用いられた戦略兵器。

その実態は奥深くに誘い込んだ敵を諸共に巻き込む自爆兵器だ。

 

確かにこの状況で、敵が戦力を出し惜しみしているのであれば筋が通る。

現状でラグエルを含む大西洋連邦の戦力を葬るのであれば有効な手だろう。

更に言えば、ファウンデーション王国が一枚噛んでいるのであれば、この場で囮としてブルーコスモス残党そのものを使い潰す事すら躊躇わない筈だ。

 

「四時方向、八時方向に新たな熱源を確認ッ!」

「大型モビルスーツ……いえ、モビルアーマー? 熱紋照合なしッ!」

 

突然の増援は、ラグエルを後方から挟撃するように出現した。

ディーンが下手な事を口にした瞬間にこれだ。

当の本人は肩を竦めるが、状況は全く笑えない方向へと推移している。

 

「……デストロイ? 違う。これは一体?」

 

威容を誇る漆黒の巨体。

大きく張り出したドーム状のユニット。

機体の全長に匹敵するであろう大型のエネルギー砲。

 

その機体は確かにデストロイに酷似こそしていたが、よく観察すると細部が異なる。

新型だとしても残党に開発するだけの余裕があるとは思えない。

 

「あれはデヴァステイト……ジブリールの置き土産さ。まさか完成させていたとはね」

 

ディーンが語るには、デヴァステイトとやらはデストロイの後継機らしい。

ブルーコスモス盟主であったジブリール主導で、ザムザザーやゲルズゲー、デストロイを手掛けていたアドゥカーフ・メカノインダストリーが開発していたそうだ。

しかしジブリールの死亡と敗戦による混乱で開発は頓挫していた筈だと。

 

そんな機体が今こうして、ブルーコスモス残党の手によって立ちはだかっているという事は。

彼らが独力で開発を継続し、完成に漕ぎ着けたとは考えにくい。

背後にはやはりファウンデーション王国の影が見え隠れする。

 

更に言えば、これらが後方で待ち構えていて、今になって姿を見せたという事実。

しかもデヴァステイトは、後方の艦隊ではなくこちらに砲を向けている。

仮にデストロイ以上の性能であるならば、かの艦隊を屠る事など容易いというのに。

確信こそ持てないものの『こちらを逃がさない』というパズルのピースが揃いつつある。

 

「ウォルバーグ隊長。敵の新型を確認しました。排撃をお願いできますか?」

『了解。こちらでも確認した……とはいえ、骨が折れるぞ』

 

ディスプレイに映るルークの表情は険しい。

ただでさえデストロイはザムザザーやゲルズゲーとは段違いの脅威である。

陽電子リフレクターによる『盾』だけではなく、高い火力は『矛』としても猛威を振るう。

更に後継機ともあれば、まだ何かしらの奥の手があってもおかしくはない。

 

「敵新型より熱源反応ッ! 砲撃きますッ!」

「回避ッ!」

「もうやっていますッ!!」

 

後方左右のデヴァステイトの大型エネルギー砲から放たれた極彩色の砲撃。

暴力的なまでのビームの奔流は、先程までラグエルが存在していた空間を蹂躙する。

そしてヘブンズベースの大地へと禍々しいまでの深い傷痕を刻む。

言うまでもなく、ラグエルに直撃していれば一撃で撃沈していただろう。

 

「仮にサイクロプスがなくても、こちらを始末する心算でしょうね」

 

デヴァステイトの圧倒的火力に慄いた訳ではないだろうが、シエラの表情は硬い。

ないと分かっていても『もしも』を思い浮かべてしまう。

ヴァーティカルを動かせるのなら……と。

しかしこれではレンリの救出どころではない。

 

「だとしても……彼女が帰ってくる場所を、ここで失うわけにはいきません」

 

 

 

 

 

 

『ったく。火力の非常識さには磨きが掛かってやがるなッ!』

 

ラグエルからの報せを受けてルーク達はデヴァステイトの一機へと急行、接敵した。

デストロイの後継機だけあってその火力は圧巻の一言に尽きる。

ドーム状のユニット円周部に設置された無数のビーム砲が周囲を薙ぎ払う。

ジェサイアは自身を狙うビームを巧みに回避しながらも、反撃の糸口を掴もうとする。

 

『っとッ! 危ねえッ!』

 

しかも砲撃を加えているのはデヴァステイト本体だけではない。

デストロイ同様に本体から分離した腕部アームユニットが縦横無尽に飛翔する。

更には腰部からも同様の無線飛行ユニットが分離して計四基。

それらのユニットからの砲撃も掻い潜る必要があるのだ。

これでは陽電子リフレクター発生器を狙うどころではない。

 

『懐に飛び込んじまえばッ!!』

 

ケイトのフィアレスが加速してデヴァステイトへと斬り込みを目論む。

ゲシュマイディッヒ・シルトはビーム砲を弾くものの、やはりユニットが本体への攻撃を阻む。

デストロイもそうだが、やはり本体と独立して動くユニットは厄介極まりない。

しかも本体同様に陽電子リフレクターを装備しているときた。

 

「……ユニットの破壊を優先しろ。飛び回られると面倒だ」

『簡単に言ってくれるじゃねえ……かッ!!』

 

ルークのレゾナンスは左腕の《トリケロス・ドライ》に備わる超振動クラッシャーを展開する。

対ビームコーティングが施されており、陽電子リフレクター諸共に咬み砕けるだろう。

まずは手近な一基に狙いを定めて肉薄するが、敵も馬鹿ではない。

狙われたユニットは本体からのビーム砲が届く範囲内へと逃げ込む。

 

「邪魔を……するなッ!」

 

ユニット円周部からのビーム砲が次々とレゾナンスを狙い撃つ。

グライフストライカーは十分に高い機動性を誇るものの、十重二十重のビームを回避し続け、なおかつユニットを狙うのは並大抵のことではない。

……しかし、それならばそれで遣りようはある。

 

『その程度のビームならッ!』

 

レゾナンスへ向かうビームの雨嵐へとフィアレスが割り込む。

展開したゲシュマイディッヒ・シルトが向けられたビームを次々と逸らしていく。

狙いを定めたユニットへレゾナンスは追いすがるが、それを阻むように別のユニットが動いた。

ビームカッターを展開してレゾナンスへと突貫を試みる。

 

『おいおい。俺を忘れて貰っちゃあ困るなあッ!』

 

レゾナンスへ向かうユニットへエンガルフが狙いを定める。

しかし更に別のユニットが猛禽のように飛来し、エンガルフを執拗に狙う。

縦横無尽に飛び回りつつビームをバラ撒き攻撃の隙を与えない。

この状況では狙いを定める事すらままならない。

 

一方でルークは突貫してきたユニットに狙いを変える。

ギリギリのところで回避した上で、超振動クラッシャーがユニットを捕らえた。

そのまま力が加わり、勢いよく顎が閉じて一気に咬み砕く。

 

「……まずは一基か。随分と手間が掛かったな」

『されど一基だぜ。数を減らしゃあどうにかなるだろ』

 

ユニットをまずは一基撃破したがルークの表情は晴れない。

デヴァステイトの数的不利を補完する役目の無線飛行ユニット。

本体との連携によりトータルの戦闘能力を飛躍的に高めている。

 

デストロイもそうなのだが、本体と独立して動くユニットは厄介に尽きる。

古くはガンバレルに、最近ではドラグーン・システムに代表される機動端末。

これらは疑似的にはあるが数的優位を補完する役割を果たしている。

それこそ、デストロイが只のデカブツではなく脅威として存在する理由と言えるだろう。

 

「それよりも気付いたか?」

『ああ。これさ……連中もチームプレイだぜ』

 

先程の攻防の最中に感じた僅かな違和感。

確かデストロイであれば無線飛行ユニットも含め、一人のパイロットが統括して運用している。

しかしデヴァステイトのそれは、本体とユニットの動作が僅かに同期していない。

まるで、それぞれに別個の意思を持っているかのように思えた。

 

「開発が難航したのもその辺りかもしれんな」

 

恐らくは、それを解決する為に最低でも複座にしてあるのかもしれない。

ザムザザー同様に機長と操縦士、火器管制と役割を分担していると考えれば自然だ。

もしそれならばエクステンデットすら必要ないのかもしれない。

 

しかもデストロイと比べて無線飛行ユニットは四基に増えている。

それらを一人のパイロットで動かそうと思えば更なる負担が掛かるのは間違いない。

エクステンデットの強化ステージも、デストロイの時点で上限ギリギリだったと聞く。

 

であるならば。それは完全に統一された一つの意志ではない。

分担している数だけ人の意思があるという事だ。

もし付け入る隙があるとすればそこだろうか。

 

『それにドラグーン使うのも簡単じゃねえだろ』

 

そもそもドラグーン・システムを扱う為には高い空間認識能力を必要とする。

改良を施し、件の能力がなくても扱えるようになった第二世代型もあるにはあるのだが、それでもお手軽にとはいかないのが現実であった。

加えてその挙動も、能力を持つ者と比べればどうしても劣ってしまう。

 

「確かにな。こいつらはアラスカの時みたいな『キレ』が足りない」

 

アラスカでレムナント・ワンが運用してきた無線機動砲台。

あれもドラグーン・システムにより操作されていたのだが、極めて鋭い動作は今も憶えている。

更に片手間で旧ザラ派の機体を特攻させていたのだ。

あのレベルで軽々と扱える人間が早々いるとは思えない。

 

ならば泣き処は恐らくその辺りにあるだろうが、敵もそれは十分に承知している筈。

残りのユニットをどう減らしつつ本体を攻略するか。

ルークが思案しようとした時、唐突にそれは起こった。

 

『何の冗談だよ、こいつはさ……ッ!』

 

デヴァステイトを構成する上半身のリフター部分が、突如として分離したのだ。

分離したリフター部分に収納されていた両腕部が展開した様は、まるでザムザザーを思わせる。

併せて残された下半身部分も脚部を展開し、四脚の異形へと姿を変えた。

モビルスーツの胴体部と多脚はまるでゲルズゲーそのものと言えた。

 

複座であるからこそ、このような分離機能を実装できたという事か。

個々の脅威そのものは合体時に比べて低下しているだろうが、連携して動かれると面倒だ。

対処できない事もないだろうが、一手誤れば致命的なのは間違いないだろう。

 

「……やる事は変わらんが、向こうの手数がそれだけ増えているのは厄介だな」

 

 




閲覧、ブックマーク等ありがとうございます。
感想等頂けましたら励みになります。何卒よろしくお願いします。

次は例によって金曜日になります。

デヴァステイトの元ネタ……という程でもないんですが、福田監督が話に出していた分離合体式の新型デストロイというコンセプトを形にしています。
後になって公式からお出しされたら……その時はその時です。
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