TSヤサグレVTuberは輝きたい   作:恋狸

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本性

「お、煽り厨が来たな。じゃあ圧倒的な力でボコボコにしてやろうじゃねーの」

 

コメント

・煽り厨キター!!

・実際上手いし煽り返さないから好感度高い

・口ではめちゃくちゃ言うけどな

・夏休みシーズンの昼間っから格ゲーを嗜む無職合法ロリである

 

「誰が無職だ誰が。VTuberになったからには配信さえ付けてりゃ何でも仕事になんだよ。……たとえあたしが今現在、冷ややかな目の母親が後ろから見てきててもな!!」

 

コメント

・草

・こどおじ系VTuber。三食昼寝、母親付き

・地獄みたいな空間で草

・いい加減金渡せよwww

 

 ちなみに母親が後ろからあたしを見ているのはマジで本当のことである。

 

「あんたの仕事ぶり見せて」

 

 とのことだが、授業参観する年齢じゃねぇ……。

 まあ、口ではいつも憎まれ口を叩いている母親だが、母親として娘が変な仕事に就いていないのか何だかんだ気になってんだろう──

 

「おい聞いてないぞ【ばーちかる】!! 給与が2ヶ月スパンだなんて聞いてねぇぞ!!」

 

 ──というのは建前で、実際はいつまでも家に金を入れないあたしに業を煮やしていると見える。

 まさか税金その他諸々を事務所がやってくれる代わりに、2ヶ月ごとの給料だなんて知らなかったんだよ……。

 ちなみにこの話は他のライバーもしているので内部漏洩とかではない。

 

コメント

・事前に調べておけよ

・これだから社会人経験のないロリは……

・働こうね♡

 

「──同接数15000人。この数字が何を指すか分かってるか?」

 

 あたしはリスナーの程度の低い煽りに青筋を立てつつ、ニヤリと笑いながら言う。

 

コメント

・同接すげー、ってこと?

・実際昼間に一万人集めるのすごいよな

・アッ、察し……はよ抜けねぇと……!

 

 困惑が広がる中、賢いヤツは気づいたようだ。

 だがもう遅い!!

 

「平日の……それもお盆でもねぇ真っ昼間からあたしの配信を見ながら管を巻いてるクソ野郎どもの人数だよ!! 働けカス!!!」

 

コメント

・ぎゃぁぁぁぁあ!!!

・うわぁぁぁあああ!!!

・やめろレイナ、その技は俺たちに効く

・は、仕事休憩中だが???

・仕事休憩中ですが何か???

 

「あ? 仕事休憩中にVTuberの配信なんて見んじゃねーよ。さっさと飯食って仕事戻れ」

 

コメント

・ド正論でワロタw

・本当に仕事休憩中なのか人狼やろうぜ

・実際のところ学生リスナーは多そう

・夏休みシーズンは稼ぎ時だもんなぁ、金も数字も

 

「お前らが金に見えてくる」

 

コメント

・ドクズで草

・そう言う割に200円スパチャも拾ってくれるよな

 

「金は金だろ。てめぇら200円あったらアイス買えるんだぜ??」

 

コメント

・急にロリ要素出してくるな

・なんか可愛く見えてきた

・金=アイス=ワイらはアイス=ワイらを舐めてもらえるってこと?

 

「きしょ。今きしょコメントしたヤツ名前控えたから覚えておけよ、◯◯」

 

コメント

・この界隈において推しに認知されたヤツはどういう経緯であってもご褒美なんだよな……

・これがキショコメントを加速させる要因になることを今のレイナは知る由もなかった……

・草

 

 ちなみに働けカス、って言った瞬間すげぇ形相で母親があたしのことを見てきた件について。

 いや……今まさに勤務中だから……。

 

 ごめんよマザー、歌唱レッスンの費用も払わせて。ちゃんと返すから……二週間後に……。

 

☆☆☆

 

 歌唱レッスンは週に三回あるが、今日で八回目を迎えようとしていた。

 

「ふぅ……わたくしが教えられる基礎技術は全て教えました。と、言うわけで、身につけた技能を使ってレイナさんの全力の歌を聴きたいと思います〜」

「ついにこの時が来たか」

 

 あたしはいつものようにニコニコと柔和な笑みを見せる銀髪ボブの美少女……クロエに獰猛な笑みを見せる。

 技術の習得は基本的には地味だ。

 覚えるためには反復試行が物を言うし、上手くなっている実感があまり湧きづらい。

 

 とはいえ、あたしの才能はなかなかのもので、実際に前よりも歌いやすさが段違いになっていることが自分でも理解できた。

 ……ふはは、ついにあたしの天下への道が開かれたってわけだな。

 

 ついつい口元がニヤけてしまう。

 もうあたしの頭の中ではクロエに、

 

「すごいですレイナさん!! これはもうわたくしが教えられるレベルでは無いですねぇ……」

 

 と言われる準備は万端だった。

 これは予測ではない。決定事項である。

 

「曲はどうしましょうかぁ〜?」

「じゃああたしの自信のある曲で」

「分かりましたぁ〜、いやぁ、楽しみですねぇ」

 

 ニコニコと笑うクロエ。

 多分、講師である楽しみの一つに生徒の歌を聞く、というのもあるに違いない。

 

 あたしはふっ、と笑うと曲をかける。

 すぐにポップなイントロが流れ、溢れる自信と情動に身を任せて声を発し始めた。

 

「〜〜♪」

 

 ……すげぇ、全然今までと違う。

 学んだことを意識するだけでスイスイ綺麗な音が出せるし、今までに拾いきれなかった細かなミスがどんどん修正できていることを実感できていた。

 

 ふはっ、こんな気持ちいいのか。

 好きに歌って、技術を見せびらかすことは。

 

 あたしは酷く自分に酔いしれていた。

 レッスンの成果に浸りながら。

 

「──ふぅ」

 

 2分半後、あたしは無事に曲を完走した。

 完璧だった。完璧と言わざるを得なかった。

 

 さてさて、これは流石に褒めてくれるだろう──と、画面越しにクロエの表情を伺った瞬間──、

 

 

 ──彼女は鬼の形相をしていた。

 

 そして徐ろに右手を上げてサムズアップを取ると──高速で親指を下に向けて言った。

 

 

「Fu◯k off!!! 自己満足に浸りたいだけでしたら◯◯◯◯(ピーーー)でもしなさい◯◯◯(ピーーー)野郎ッッ!!」

「はぇ……………??」

 

 綺麗な顔面から放たれた怒涛の口汚い罵倒に、あたしは完全に頭の中がスペースキャット(宇宙猫)だった。

 

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