数学者レオニダス・ホイターに転生した大学生、彼の功績を再現しなければ人類史が変わるので必死に再発見します   作:紫 和春

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第17話 検索

 1時間ほどスマホで検索をしていると、ある練習問題を発見する。それは、水の比熱が4186J/kg・℃であることを利用して金属の比熱を求めるというものだ。

 

「あー、なんかこういう問題をやってた記憶があるなぁ……」

 

 しばらくの間、動画を視聴して内容を復習する。内容はなんとなく思い出したのだが、未だ確信に至るようなひらめきがない。

 

「うーん……」

『まだ悩んでいるのか?』

「喉元まで出かかっているんですけど、それ以上の物が見当たらないと言いますか……。今は銅の容器と銅の球体、水を用意すれば、水と銅の比熱の比が求まるところまでは来ているんですが……」

『ふむ。かなり具体的なところまで来ているな。そこまで来て、どうして躓いているんだ?』

「水の比熱はどうやって計測するのかとか、どうやって求めるのかってところに躓いています。」

 

 その時、雨宮はあることに興味が湧く。

 

「そういえば、水の比熱ってどうやって発見したんだろう……?」

『いい着眼点だな。それで調べてみるといい』

 

 雨宮が検索してみると、とある大学の講義資料がヒットする。そこには、水銀の比熱が水の比熱に対していくつであるかを計算した資料が記載されていた。どうやら過去の実験から引用しているようだ。ただ、過去とは言っても、雨宮がいる時代よりは遅い時期である。

 その中で、注釈が書かれていた。

 

『水の比熱は元来の定義により、1kcal/kg・℃である』

 

 それを目にした雨宮は、脳内で何かがカチッとハマったような感覚を得る。

 

「なるほど……。元来、重量や体積の基準は水だった……。そして比熱もそれに準じている……。つまり、今すぐに水の比熱を知らなくても問題はないということか……!」

『何か分かったようだな』

「はい。問題は幾分か解決しました」

『それで、比熱の概念を導入した人物は誰だったか分かるか?』

「えーと……」

 

 改めて講義資料を読み返すと、そこにはレオニダス・ホイターの文字があった。

 

「比熱の考えも、ホイターが考えたのか……?」

『今は主流ではないが、ホイターの出力方程式は比熱の概念を広めるのに大きな役割を担った。この功績が、今まさに君を助けているのだよ』

「なるほど……」

 

 しかし、そこに一つの問題が立ちふさがる。

 

(じゃあ、この問題の解法はどこから来たんだ?)

 

 今はホイターの中は雨宮であり、雨宮は未来からの知識で過去の問題を解決する。するとその知識は過去に発案されたものとして未来に流れていき、やがて未来の雨宮が情報を取得する。この解法を巡って、時間のループが発生することになるのだ。

 その問題を雨宮はどうしたかというと。

 

(まぁいっか!)

 

 放置した。今のところ何かしらの問題が発生しているわけではないため、今考えねばならない問題ではないからだ。

 とにかく、雨宮がやらなければならないことは次の二つ。一つ、水の比熱比を利用した複数種類の金属の比熱実験。二つ、水の比熱を1とした比熱比の導出。

 まずはこの二つをやる必要がある。

 

「なんとかなりそうです」

『それは良かった。ではスマホは回収しよう』

「え? 持ってたらいけないんですか?」

『持ってても過去の世界では使えないし、この空間の物は持ち出せないようになっている。それでも念のために、な』

「ぶっちゃけスマホあったほうが十大発見を再現しやすくなるんですけどねぇ……」

 

 雨宮はそんなことをブツクサと言いながらスマホを返す。

 

『これから辺境伯のご令嬢の教師になる人間の発言ではないな』

「それは他の人が勝手に決めたことでしょうよ……。自分がなりたくて手を挙げたわけじゃないのに……」

『教師という役柄に合う人間性をしなさいという話だ』

 

 老人は一つ咳を入れる。

 

『では、今日はこの辺りで。また何か困ったことがあった時に再び現れよう……』

 

 老人の姿が遠くなるのと同時に、視界がゆっくりと暗転していく。

 そして、気が付けば目の前に黒板が広がっていた。戻ってきたようである。時間はそんなに経過していない。

 

「よし、覚えていることをメモして実験を始めよう」

 

 こうして雨宮は、辺境伯ご令嬢が来るまでの間に実験を始めるのであった。

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