数学者レオニダス・ホイターに転生した大学生、彼の功績を再現しなければ人類史が変わるので必死に再発見します 作:紫 和春
雨宮はアリーを椅子に座らせて、話を聞くことにした。
「それで……、カタリナお嬢様は何故当主様から見捨てられたように感じているのでしょうか?」
「もともとお嬢様は四女という立場であるが故に、愛情を注がれていないように感じていたのでしょう。長女であるシルビアお嬢様はすでに公爵家に嫁いでおり、次女、三女も嫁ぎ先が決まっています。姉たちが嫁げば辺境伯の地位は守られるということは、お嬢様も十分理解されていることでしょう。そのため、お嬢様は自身の存在意義を感じられずにいるとお思いなのです」
「それはまたなんとも……」
雨宮が言葉を探していると、イリナが先に口を開く。
「そんなことはありません! 自分の子供がかわいくないなんて思う親などいないからです!」
「いえ。そのようなことは貴族の間では良くある話なのですよ、イリナ様」
アリーは明確に否定する。
「貴族というものは、時に自分の地位を守るために子供を利用することがあります。残酷な話ではありますが、それが貴族というものなのです」
「そんな……」
イリナは思わず顔を手で覆う。自分の価値観で計れない現実を直視したくないのだろう。
「それで、僕にお願いしたいのは、その誤解を解いてほしいということですか?」
「その通りです。私からも何度かお嬢様にお話させてはいるのですが、お嬢様は聞く耳を持ちませんでした。なので、ホイター様からもお嬢様に働きかけをしていただきたいのです」
「うーん……。とはいえ僕も現状一般市民のようなものなので、カタリナお嬢様が聞いてくれるかどうか分かりませんが……」
「先生であるホイター様なら、いつか心を開いてくれるはずです。どうかお願いします」
そういってアリーは頭を下げた。
「頭を上げてください……! 分かりました。僕にできるかどうか分かりませんが、最善を尽くしてみます」
「ありがとうございます」
「ですが、当主様がどう思っているのかは、僕には推察することができません。何か証拠となるものがあればいいのですが……」
「現在当主様は、ドゥリッヒ王国の王都にて国王陛下主催の国家方針所信表明演説懇談会に出席なされています。こちらへ出発された時には、すでに懇談会が始まっておりましたので、残念ながら言付けの類いはいただいておりません」
「そうなると、今からでも手紙を使って何かしらの指示をいただかない限りは、手の施しようがありませんが……」
「すでに屋敷を出る際に手紙を出しております。時間はかかるでしょうが、何かしらのお言葉はこちらに届くでしょう」
「分かりました。では、手紙が届くまでの間は、きちんとした教育をさせていただきます。カタリナお嬢様の誤解はその後に行うことにします」
「よろしくお願いします」
こうして、カタリナ嬢の問題を解決すべく、雨宮は奔走することになった。