数学者レオニダス・ホイターに転生した大学生、彼の功績を再現しなければ人類史が変わるので必死に再発見します   作:紫 和春

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第25話 返答

 数日で出力方程式に関する論文の予稿まで仕上げた雨宮。以前までとは比べ物にならない程に、思考能力が向上している。

 

(これもレオニダス・ホイターの記憶や知識と融合したからなのだろうか……)

 

 だが、それを確かめる術は存在しない。今は、この状況になってラッキーと考えるしかないだろう。

 

「さて、出力方程式の論文は一度寝かせて、次は和公式や円陣倍数定理の質問に答えるか」

 

 そういってホイター宛てに送られてきた手紙を開く。

 その手紙には、和公式と円陣倍数定理に関する質問がいくつか記載されていた。論文自体はそのまま学会へと提出されるが、それとは別に補助的な質問がここに載せられている。

 内容としては、個数以外にも円陣の大きさが複数存在する場合はどうなのか、円陣を際限なく増やした場合はどうか、円陣以外の形についてはどうなるか、といった内容が書かれていた。

 

「これ今後の展望に書かなかったっけ? それもやる必要があるのかなぁ?」

 

 とにかく、実験をしてみる他ないだろう。円陣以外の形について、まずは五芒星を書いた紙を用意し、それで水を温めてみる。以前と同じ100℃で5分、3万ホッツになるように調整した。

 最初の結果は27℃。円陣に比べて効率が良い可能性が出てきた。

 中の水を取り替えて、同じ実験を繰り返す。10回やった結果、平均の温度は26.8℃となった。

 

「円に比べたら複雑な形状しているからかなぁ?」

 

 そんなことを呑気に考えながら、今度は五芒星を2個書いた紙を用意する。そして同じように水を温める。

 その結果、なんと水の温度はほとんど上昇しなかった。10回繰り返した結果、平均して2.2℃しか上昇しなかったのだ。

 

「五芒星が複数個存在する時は、効率がこんなにも下がるものなのか……?」

 

 ひとまず、この結果を速報をして返信用の手紙に書くことにした。

 次に、円陣を際限なく増やした場合について書かれていたが、これは雨宮の記憶から引っ張ってこれた。

 

「魔法陣の中に図形を書き込めば書き込むほど、元の図形が分からなくなる。個人にもよるが、魔法陣を使用する人間が図形として認識出来ないと、魔法陣として使用することができなくなる」

 

 これは現代の魔法学では常識となっているものだ。だがこれは近代になって印刷の性能が向上したことによって実証された実験である。

 だからここでは、和公式と円陣倍数定理から導き出せる結果を速報として記すことにする。

 

「円陣倍数定理により、20個より多くなると性能は低下していくものと考えられる。そして和公式により、図形や文字が小さくなったり重なったりすれば、性能は落ちていくものと考えられる。そして図形や文字が認識できなくなれば、魔法陣として使用することができなくなる」

 

 これは思考実験の一種として結論を導き出したことにした。

 

「さて……。最後は円陣の大きさが複数あった時にどうなるかだな」

 

 雨宮は、これに関しても曖昧ながら記憶を有していた。

 例えば二つの大きさの異なる円陣が存在していたとする。片方の円の大きさを固定したままもう一方の円の大きさを変えても、実は出力に大きな違いは存在しない。これは新世界暦に移行する際に実験で確かめられたものだと記憶している。

 その時、ある言葉が雨宮の脳裏をよぎる。

 

『ホイターの定関数』

 

 それを認識した雨宮は、妙に納得する。

 

「なるほど。定関数は階段関数の一種であり、円陣の個数が同じ場合は大きさに関係なく出力は同じというわけか……」

 

 ここまで理解した所で、すでに日は沈んでいた。研究室の中は暗くなり、イリナが帰宅の準備をしている。

 

「明日ちょっとした実験をしてみるか」

 

 翌日。雨宮は実験を行う。2個の円陣を書いた紙を複数用意する。2個の円陣の大きさが同じのものと、片方が小さいもの、それよりもさらに小さいものの3つを準備した。

 これらを以前と同じように、水温の推移実験を行ってみる。

 するとどうだろうか。数が一緒で異なる大きさの円陣の温度上昇は、ほぼ一緒であるという結果が出たではないか。

 

「ほう。円の大きさに関係なく、円陣の個数によって決まるのか。これがホイターの定関数……」

 

 これは新しい論文として書かなくては。

 

「それには実験が必要か。また魔法陣を書かなければ……」

 

 面倒だなという感情が最初に出てくるが、これも人類史を救うためである。雨宮は我慢して実験の準備を進めるのだった。

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