数学者レオニダス・ホイターに転生した大学生、彼の功績を再現しなければ人類史が変わるので必死に再発見します   作:紫 和春

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第30話 拘束

 コラオル暦1710年12月30日。

 もう年末である。ここ数ヶ月は学会発表に論文査読、マーリンとの手紙のやり取りなど、研究以外のことに精を出していた。

 マーリンは年が明けた1711年の1月中にカラーニンへと赴任することになった。それにあたり、雨宮とヌルベーイがカラーニン科学学院への所属する推薦状を一筆書いたのだ。これがあれば、カラーニン科学学院に入ることができ、諸々の手続きを進めることができる。

 そしてマーリンとは手紙を通じていろんな話をした。とはいっても、ここ半年の話を長々と綴っただけだが。

 そんな中、雨宮はマーリンの席を確保するべく、研究室の掃除に勤しんでいた。掃除と言っているが、その大半は埃をかぶったヌルベーイの研究資料の断捨離である。

 

「ヌルベーイ先生、この辺の資料は捨てちゃっても大丈夫ですか?」

「あぁ、ちょっと待ってて。この辺は数論で使った大事な資料が残っているはずなんだ」

 

 そういってヌルベーイは埃まみれの紙をペラペラとめくる。

 

「あぁ、懐かしい……。この時は一緒にやっていた同僚からのアイディアをパクッてたんだよな」

「思い出に浸るのは良いですけど、ちゃんと掃除進めますよ」

「分かってるよ」

 

 雨宮の後ろで、イリナも一緒に掃除している。棚にしまってある本の埃を落としていた。

 

(やっぱり年末になると、掃除したくなるのが世の常だよなぁ)

 

 そんなことを思いながら、雨宮は研究室のテーブルの上を片付けていく。

 その時、研究室の扉がノックされる。

 

「おや、来客かな? 今日は誰か来る予定はなかったけど……」

 

 ヌルベーイが資料の山から顔を上げる。

 

「自分が出ます」

 

 雨宮が研究室の扉を開ける。するとそこには、赤色の軍服を着た二人の男性が立っていた。憲兵だ。

 

「レオニダス・ホイターはいるか?」

「はい、自分ですけど……」

 

 二人の憲兵は目配せして、とある紙を雨宮に提示する。

 

「レオニダス・ホイター。貴様をレリゴレム辺境伯次期当主、ランガード・アランド・フィードリヒの暗殺首謀者として拘束する」

 

 突然の宣告に、雨宮は何を言っているのか理解できなかった。

 

「え……、暗殺の首謀者……?」

「そうだ。貴様の身柄を拘束させてもらう」

 

 そういって二人の憲兵は雨宮の肩を無理やり掴み、持っていたロープでがんじがらめにする。

 

「ちょ、まっ、えっ?」

 

 突然のことで雨宮は一瞬抵抗することができなかった。その間にロープが巻かれる。

 慌ててヌルベーイやイリナが弁明をするために、二人の憲兵に近寄った。

 

「ちょっと待ってください! ホイター君がそのようなことをするはずがありません!」

「そうです! レオは私たちとずっと一緒に研究室にいたんですから!」

「えぇい、うるさい! こっちは命令されて動いているんだ!」

 

 ヌルベーイとイリナの抗議も空しく、ホイターの身柄が拘束された。無論、雨宮も抵抗はしていたものの、屈強な憲兵二人には敵わなかった。

 ホイターの上半身はロープでグルグルに拘束される。そして憲兵二人は雨宮のことを引きずるように連行した。

 

「ホイター君!」

「レオ!」

 

 コラオル暦1710年12月31日。レオニダス・ホイターは逮捕された。

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