生き残るために落としてきた女がヤンデレになって襲いかかってくる! 作:はえー
俺はただ、死にたくなかった。
転生という経験を経て、一度体験した死の恐怖は俺に生きたいという欲求を与えたのだ。
とはいえ、普通の世界に転生したならば、生存本能がそこまで刺激されることはなかっただろう。
転生者特有のチートが一つでももらえていたら、それで俺は安心を得られたはずだ。
でも、そうはならなかった。
俺の生まれた世界は一言で言えば地獄だ。
一般人はまるで塵芥のように魔族に殺され、力あるものですら生存のために命を
はっきり言って、生まれてきたことを後悔するような世界だった。
少なくとも、俺はした、とびっきりの後悔を。
だが、転生してしまったものは仕方がない。
何一つチートといえるものはなかったが、それでも幸いなことに俺には原作知識があった。
この世界は、とあるハードエロゲーの世界だ。
エロとグロが同時に襲いかかり、時にはメインキャラすら尊厳と貞操を凌辱され殺される。
そんな世界である。
はっきり言って、モブである俺が生き残るにはあまりに厳しい世界だが、幸いにも一般人にも使える特別な力――聖遺物と呼ばれるものの存在を俺は知っていた。
特に、原作で敵が回収するはずだった聖遺物を先回りして手に入れれば、自分の生存と人類の安全を同時に確保できる。
それくらいなら、俺みたいなモブがやってもゆるされるだろう。
そう思って実行し――しかし俺は、とんでもないことを知ることに成る。
いないのだ、原作主人公が。
そいつがいないと世界が滅ぶと確定してしまうキーパーソンが。
どこにも、影も形も、何も無い。
は? ふざけんなよ? 勘弁してくれ。
結果として、俺が生き残るためには――世界が救われなくては行けないということが判明した。
だとしたら、俺はどうすればいい? 生きるために、原作知識を利用して何をすればいい?
考えて、考えて、考えて――思いついた手段を片っ端から試した。
結果、世界は救われた。
死ぬほど大変だけど、なんとか。
原作のトゥルーエンドを、死にものぐるいで駆け抜けて。
俺はなんとか、明日を迎えることができたのだ。
だが、その代償は重かった。
具体的に言えば――俺が利用したものの中には、
□
――室内を照らす月明かりに、白磁のような肌が艶やかに映し出される。
生まれたままの姿を晒し、少女は俺に体重を預けてきた。
寝台の軋む音だけが響く。
小柄な背丈で、俺の体を包み込もうとする彼女。
豊満な双丘がそれを邪魔し、少女の吐息が妖しくこぼれた。
「――セレ、ナ」
少女の名を呼びかける。
俺の体は、聖女としてのセレナの膂力に押さえつけられ、動かない。
普段から戦闘力を聖遺物に依存していたツケ、とも言えるが、そもそも俺みたいな元モブの一般人に聖遺物以外で戦闘に参加する手段がないのだから仕方ないだろう。
何にしても、この状況で言えることは唯一つ。
「やめて、くれ」
俺に、彼女を止める術はないということだ。
俺の言葉に、一瞬だけセレナの手が止まる。
ああ、けれどもわかる。
セレナは決して、俺の言葉に止まってくれたわけではない、ということが。
「――――御主人様」
鈴を転がすような声が響く。
俺の上で、セレナの体が揺れる。
腰を動かし、少しでも俺に自分を擦り付けるような動き。
同時に、押さえつけた手に自分の手を絡ませ、絶対に逃さないという意思を明らかにした。
そして――
「どうして、御主人様は私を一人にしようとするのですか?」
少女の顔が、俺を覗き込む。
つややかな金の髪は腰のあたりまで伸び、垂れ目気味の愛らしい顔は多くの人を魅了するだろう。
普段であれば、どこか大人しく楚々とした雰囲気の少女である。
しかし今は、頬を赤らめて目をうるませ、発情したとしか言いようのない吐息を零して俺を見ているのだ。
「もう、嫌です。一人になるのは。母様が、私を捨てた時。協会が私に聖女という枷を与えた時。――貴方に置いていかれた時。私は多くの孤独を経験しました。でも、もう嫌なのです」
セレナは、俺を強く抱きしめてきた。
ともすれば只人の俺を、そのまま絞め殺してしまいそうな力で、けれども俺を絶対に傷つけることの無いように加減された力で。
ただ離すまいと、セレナは俺に迫っている。
「もう、一人にしないでください。私を貴方の側においてください。聖女という肩書など、もう私には必要ありません。貴方の奴隷という立場さえアレば、私はそれで十分なのです」
「……」
「お望みであれば、私を自由に犯してください。このみだらな乳房を、多くの羨望と嫉妬を集めたこの肢体を。――私の心を、好きなだけ踏みにじってください」
だから、とセレナは続ける。
「だからどうか、どうか一緒にいてください。もう、私を捨てないで……お願いですから、私を見てください」
涙を流しながら、艶やかな吐息を零しながら、セレナは懇願する。
「わがままであることは、わかっています。勝手なことを言っていることは、承知しています。それでも、我慢ならないのです。あんなにも私を大切だと言ってくださったのに、どうして私を置いていくのですか?
それが、世界のためだったということは解ります。必要なことだったと、理解しています。でも――」
セレナが、俺の体をまさぐる。
服の奥から目当てのものを見つけ出した彼女の喉が、ごくりとなった。
そして――
「私は貴方が欲しくて、欲しくて、欲しくて欲しくて欲しくて――たまらないのです」
セレナは腰を浮かせると、俺達は――
□
――やってしまった。
朝、独特な匂いが広がる俺の寝室で、隣に裸のセレナが寝ている状態で俺は目を覚ます。
はっきり言って、気分はいいものではなかった。
寝不足と、後悔と、それから倦怠感によるものだ。
まぁ、うん。
最終的に、俺はセレナを拒否できなかった。
もともと聖女故に人並みはずれた身体能力を持つセレナに押し倒された時点で詰んでいたのだ。
そこに加えて、あんなふうに求められたら男として拒めるわけないじゃん?
絶対まずいと理性は警鐘を鳴らしていたが、拒めるものではなかった。
胸がでかいんだもの、身体は小柄なのに。
セレナ、俺が転生したゲーム『ヘルフレイム・サンクチュアリ』のメインヒロイン。
原作に置いては、聖女として自分を押し殺し、最後の最後まで自分の感情を主人公にすら隠しきった少女。
そのいじらしい姿は、多くのプレイヤーを魅了したものだ。
自分のルート以外の多くのルートで犠牲になり、トゥルールートですら無事とは言い難い結末になってしまった少女。
最後まで、誰かのために生き抜いた聖女を――俺は、必要のために自分の奴隷とした。
なんだってそんな事になったのかといえば、まぁ色々あったのだが。
結果として、セレナは自分の感情を我慢できず、俺を押し倒してしまった。
あそこまで感情を顕にするセレナなんて、原作では一度も見たことがなかったから、ある意味では良かったのかもしれないが。
でも、俺としては非常にまずい。
セレナは聖女なのだ。
少なくとも表向きには、未だ彼女はその立場を捨ててはいない。
どう考えても、貞操を捨てたらまずいのだ。
原作でも、セレナが主人公と結ばれたのは色々あって聖女としての立場を捨てることになってからだしな。
最悪、俺はセレナとヤった罪で殺される。
仮にも世界を救った英雄の一人なのに。
どころか、これまでやってきた諸々のことが、俺に牙を剥く可能性もある。
実際こうして、セレナと一線を越えてしまったのだ。
……どうしよう。
俺はただ、生き残りたかっただけなのに。
このクソみたいな世界で生き残るには、原作ヒロインの感情すら利用するしかなかっただけなのに。
いやだ、死にたくない。
どうしよう。
ほんっとうに、どうしよう……
諸々のアレやこれやが終わった後の転生者がヤってきたアレやこれやを精算するお話です。