いやまさか一日で評価が9.00とかびっくりしすぎて朝一の眠気が吹き飛びました。ホントありがとうございます。この評価を糧に続きを描いていくので今後ともよろしくお願いします!
──月明かりが照らす町の中央。
魔女教大罪司教強欲担当レグルス・コルニアス。
対するはルグニカ王国騎士団所属歴代最強の剣聖、ラインハルト・ヴァン・アストレア。
世界最強格の力を持った超越者達の本日二度目の戦いが今、幕を開けようとしていた。
先程までとは違い全く隙の無いレグルスを見て、ラインハルトはスバル達へ避難することを促す。
「スバル、君はエミリア様を連れて今すぐこの場を離れるんだ」
スバル自身離れたい気持ちは山々だが、明らかに手札を隠しているレグルスを前に今自分が引くわけにはいかなかった。
「待てラインハルト、あいつは明らかに何か隠してる。俺が攻略法を見つけないとさっきみたいに……」
スバルが言葉を言い終わる前にラインハルトの声がそれを遮る。
「スバル!!」
「っ!」
いつもと違い顔に余裕の無い剣聖にスバルはようやく事の重大さを感じ取った。
「おそらく今の彼には龍剣が抜ける」
静かに伝えられたその一言はレグルスに対してここにいる全員の警戒度を一気に最大まで高めた。
それもそのはず彼の持つ龍剣レイドは、この世界に存在する20本の名刀の中でも群を抜いて強いとされる最強の剣。代々剣聖の加護を持つもののみが使用を許されこの剣自身が認めた相手にしか使うことの許されない代物であった。
それが抜けるということは龍剣がレグルスに対して自分を使うに相応しい相手と認めたということである。
はっきり言ってラインハルトは、スバルやエミリアを守りながら今の彼と戦える自信は無かった。
だがここでレグルスから思いもよらぬ提案をされる。
「あのさあ、その龍剣? とやらが僕を認めなかったら君達この決闘を観戦するつもりだったみたいだけど、これはあくまで僕と剣聖との戦いであって君達は部外者は本来邪魔でしか無い存在なんだよね、碌に力も無い奴らがこの戦いを見たからって普通目で追えすらしない、それくらい君達と僕とでは力の差が明確なわけであってさ、もしかしてさっき僕を倒せたから同じ土俵に立てたとでも勘違いしたのかな?」
「何が言いたい?」
説明の意図が分からず聞き返したスバルに対し、レグルスは心底呆れた顔をしながら話し始める。
「君達バカなの、頭に脳みそ詰まってるのかな? 君達は関係無いから邪魔にならない内に安全な所へ行けと言ってるんだけど、まったく相手への親切心も理解されなきゃ意味がないってことを身をもって知ったよ」
口調や言ってる内容は変わらないが先程までのレグルスでは絶対にしないであろうこちらが側への気遣いを感じ、スバル達はただならぬ違和感を感じていた。
「まあ君達くらいなら一緒に相手しても構わないけど、有象無象が少し増えたくらいで僕の勝利は揺るがないからさ」
レグルスの明らかにこちらを舐めた態度に口を出したのは思いの他エミリアだった。
「その有象無象のせいであなたは一度負けたじゃない」
普段とは違い棘のある言葉に驚いたスバルは「怒ったエミリアたんもギャップ萌えー」など意味のわからない言葉を吐いていたがエミリアは今、過去一番と言っていい程怒りに震えていた。
家族の仇ということもあるが、今のレグルスは自分のことを見ていなかった。
視界に入れていないというわけでは無い、彼の瞳の奥底はエミリアを映していなかった。
それは本気でエミリアのことが眼中に無く気にも留めていないそんな目をしている。
──笑うことすら許されず大切な人を奪われた花嫁達を知っている。
──愛する人を手にかけ結ばれることすら叶わなかった人達を知っている。
そのことに対して本気で何とも思っていないと言わんばかりの目にエミリアは怒りを隠せないでいたのだ。
実際中身が別人なので、今の彼からしたら知識としては知っているが全く身に覚えのないことなので当然なのだが……エミリアは知るよしも無い。
「ああわかっているとも……だからこそ今の僕は油断も慢心もしていない」
そしてレグルスはまるで幼子を宥める様に、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「無謀だとわかっていても尚、立ち向かってくる蛮勇に心の底から敬意を示そう」
相手を舐め腐っていた瞳は、揺るがない決意と共に彼らを敵として見据えている。
「力の差がハッキリしている程、無駄な抵抗は見苦しい……だが僕は、その無駄こそ楽しみたいと考えている」
ただ薄っぺらな権利を押し付けていた言葉には、偽りのない純粋な想いが確かに存在する。
「それでも抗うと決めたなら、手加減はしない」
そこにいるのは、先程までの"道化"ではなく、獲物を前にした一匹の"獅子"であり一切の油断も隙を感じさせない。
「君達を僕の敵として、全力で叩き潰そうじゃないか」
越えるべき壁を前に覚悟を決めたようなその姿は、奇しくも、物語の主人公そのものであった。
一方当の本人はというと
「(あーあ言っちまったよ、これで負けたらただ大口叩いて負けた奴じゃん。いや、それがレグルスか……って違うわボケ! ここは何としても強キャラとして地位を守るためにも負ける訳にはいかんな。目指せ打倒剣聖、打倒チート、打倒主人公! ……やばいやっぱ自信無いかも、あっ緊張で尿意が、トイレートイレはどこー!?)」
やはりアホであった。
***
「さて、長話もここまでにして決着をつけようじゃないか最強」
「最強だなんて周りは言うけれど僕からしたらまだまだ荷が重いよ」
「違いない」
ラインハルトの謙遜に対しレグルスは悪びれることなく嫌味を返す。
ただの軽口の言い合いだというのに、空気が歪んだと錯覚する程、凄まじい威圧を放っている。
「最強の名は、この僕にこそ相応しい」
レグルスは、勝敗が決したかのように、自信に満ち溢れた声で高らかに宣言する。
まだ戦いは始まってすらいないのに……
「なるほど……その自信だけは確かに最強みたいだね」
いつもの彼であればブチギレていたであろう嫌味に対して、全く動じることも声を荒げることもない。
むしろ既に臨戦体制に入っておりその駆け引きは、一流の戦士そのものである。
「(やはり、先程までの彼とは明らかに違う。ここは早めに勝負をつけた方が良さそうだ)」
一瞬、あるいは数刻の時間が流れたと錯覚する程の静けさの中、先に動いたのは
まるで世界が揺れているかの様な振動とともに彼は龍剣を抜き取った刹那、レグルスに対して数えきれない斬撃を繰り出す。
──次の瞬間、凄まじいし衝撃破と無数の斬撃がレグルスを襲った。
山一つ簡単に消し炭にする威力の攻撃を幾千にも受けたレグルスは、その身の一片すら残さずこの世から姿を消した。
──筈だった。
そこには、先程からの余裕な表情を崩さないまま、男が傷一つ無い姿で立っている。
──それは本来あり得ない光景であった。
彼が新しく手に入れた巻き戻しの権能は破格の性能を誇る。あらゆる事象を無かったことにし、その気になれば死者すらも蘇らせることができるだろう。
攻撃に使えば触れた相手の時間を際限なく巻き戻し、存在自体を無かったことにもできるまさに破格の権能。
要するに触れさえすれば勝利が確定するのだ。
触れることができたらの話であるが……
確かにレグルスはラインハルトと互角であった。しかしそれは、もう一つの権能、獅子の心臓を十分に使えた場合である。
ナツキ・スバルにより擬似心臓を破壊された今、彼の無敵時間はおよそ5秒程度。
いくら新たな権能が強かろうとレグルスが勝利する確率は0に等しい。
だが事実、確実に息の根を止めに行ったであろう斬撃を彼は容易く防いで見せた。
ラインハルトは、とっさに次の攻撃を繰り出す。
その一歩で、大地が弾けた。
その一閃で、空が震えた。
もはやそれは攻撃と呼ぶには生易しく災害そのものであった。
だが、目の前の強欲は揺らぐこと無く次々と対処していく。
まるで新たなおもちゃを与えられた子供の様な無邪気な笑みを浮かべながら。
***
スバルは目の前の光景に、本日何回目かもわからない驚愕の表情を浮かべながら声を荒げる。
「どう言うことだ、確かに擬似心臓は破壊した筈だ、まさかまたエミリアの中に?」
直後、その疑問はエミリア自身から否定される。
「いえ、私の中にレグルスの心臓は無いわ」
「じゃあ何でレグルスの無敵化が発動してる、まさか新たな権能が!?」
見破ったと思った権能が自分の知らない形で行使されている。新たな攻略法を見つけようとするが、情報も時間も何もかもが足りない。
まるで別人のように変わったレグルスも相まって、彼の思考は混乱の最中に立たされていた。
「その通りだよ、ナツキ・スバル」
どうにかしようと必死に頭を回していたスバルだったが、その思考は声を挟んできた第三者によって遮られる。
そこにはあれ程の攻撃を受けて尚、かすり傷一つ無いレグルスが堂々と立っていた。
「レグ……ルス」
絶賛悩みの種である本人を前に、苦虫を潰したような顔をするスバル。それの姿を見て哀れにでも思ったのか、レグルスは不敵に笑い、あろうことか自身の力について意気揚々と語り出した。
「なんだがずっと悩んでるみたいだけど、君がいくら考えても結果は変わらないからさ、特別に僕自身が少しヒントをあげよう」
その言葉と態度にイラッとしたスバルだが、レグルスの能力の秘密を知るまたとない機会。非常に癪だが、今彼の機嫌を損ねるわけにはいかない。ここはおとなしく話を聞くしかなかった。
「僕の権能の能力は巻き戻し、文字通り時間を巻き戻すことができる。そして巻き戻す時間に制限は無いまず君達が一番疑問に思ったであろう蘇生もこの力のおかげさ」
「なら、何でお前の無敵化が解けていない。擬似心臓は全て破壊した筈……」
「人の話は最後まで聞くものだよ……だが君の気持ちも理解できる。あれほど命がけで破った権能が当たり前の様にまた使われているんだ。その焦り具合も当然さ」
やれやれと困ったような、大袈裟なジェスチャーと共に、彼は今一度呼吸を整えてゆっくりと話だす。
「まず、僕のこの無敵化は【獅子の心臓】という権能によるもの、そこは君の知るところだろう。本来この権能の持つ無敵化には時間制限がある。そしてその弱点を補うもう一つの権能が【小さな王】という訳だ」
「さっき僕は新たな権能といったが厳密には違う。これは僕が蘇った際に【小さな王】が変質したもの……これからは【王の星】とでも呼ぼうか。そしてその能力は対象に選んだ物質への制限のない時間の巻き戻し……さあここまでヒントを出したんだ。賢い君なら答えを導けるんじゃない?」
レグルスの言葉を聞いたスバルは少し考えた後、はっと顔を上げみるみる内にその顔を青くした。
同時にレグルスは、まるでその表情が見たかったと言わんばかりにレグルスは満足気な笑みを浮かべる。
「どうやら気がついたみたいだね、本来僕の無敵化は発動後5秒で解除される。それ以上は体が持たないからね」
「だから僕は能力解除と同時に肉体時間を5秒前に戻している」
それは攻略法が存在しないことを意味していた。以前は心臓の替えとして花嫁の存在が必要だったからこそ付け入る隙があったが、今回は違う。
彼自身でその身の弱点を補うことにより弱点という物自体が事実上消滅したからである。
「さあ答えは教えた筈だ。君はこの理不尽、この圧倒的な力をどう攻略する?」
それはスバルが出会ってきた中でもトップクラスの理不尽。人が超えるにはあまりにも高い壁、レグルスの何気ない一言はスバル達を絶望の淵に叩き落とす。
戦いはまだ始まったばかりだというのに……
「(それそれそれっ! それだよ! その顔が見たかったんだ(^○^)いかん気を抜いたら笑いそうだ耐えろ俺、今この場でニヤニヤしたらせっかく稼いだ俺の強キャラ感がシリアスな場面で急に気色悪い笑みを浮かべる変態レグルスになっちまう。それだけはなんとかしなければ、平常心、平常心……こういう時は素数を数えるんだ2.3.5.7.11.13.17.19.23.29……)」
愉悦もタグに追加しようかな……
ちょっと明日から夏休みの宿題を進めていこうと思ってるので何日か投稿できないかもしれませんが、なんとかして完結まで持って行くつもりですので心配しないでください