異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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計画の到達

「今のところ無事に湯を入れておるのう」

 

「問題は繰り返したら壊れるかどうかじゃな」

 

 ドワーフのうち、ブラヒム語をそこそこ覚えていた者が戻ってきた。

 

共に四十代で注文やら指示書の為に覚えていた二人だ。グスタフとヒューゴーと言い、彼らは昭信の求めに応じて銅管を作り上げ、貯蔵用の銅窯込みで製作し、ボイラーによる風呂を完成させていたのだ。

 

「わー。ほんとにお風呂ができたんですね~。うちにもないです」

 

「しかも石鹸まで用意しているだと? 贅沢に過ぎる」

 

 こうして居住計画の方も一段階目が過ぎ、昭信はエレーヌたちを呼んでいた。

 

二人はお呼ばれしただけでこのまま入浴したりはしないだろうが、交流が続けばそんな未来もあるかもしれないし、彼女たちの発注で領主館にも風呂が作られるというのもありえるだろう。

 

「何を言ってるんだ。風呂は文明の極みだぞ。これを産業の一環として広めれば村が発展するかもしれんだろうに。まあ石鹸は自作でしかないし、香り付けは微妙だ。薬用に至っては実験段階に過ぎんがな」

 

「産業……だと? こんなものがか?」

 

「そうだ。特産品というやつだな」

 

 シモーヌは温泉地でもないから風呂を多用する気が無いのだろう。

 

目くじらを立てて贅沢だと言っていたが、自作石鹸であるとか商売をすれば良いと言われて目をパチクリさせていた。やはり武官タイプの騎士であって文官ではないからだろう。そもそも迷宮に追い込まれてるこの世界で産業を育てるとか、贅沢をするような文化が育ってないというのもあるかもしれない。

 

「湯を沸かして汚れを落とすよりも体を休める効果がある。風呂に入り続ければ病にも掛からないかもしれない。石鹸で清潔にすれば猶更に健康かもしれない。そうなればこの村で石鹸を買っていくかもしれん」

 

「なるほど。そういう事もあるんですねえ~」

 

 ダンジョンで領地が崩壊し、貴族が廃れることも少なくない。

 

だから教育されてなかったエレーヌでも、強い騎士団が必要だとか、巡回の必要性は分かる。だが、産業育成なんか思いもしないのはシモーヌと変わりはしなかった。この世界の税金は人頭税だけだし、一部の商人が自主的に寄付金を納めて街道や橋を整備するのが精々だから仕方あるまい。昭信のようにいわゆる『小説家なんだろう』式チート経営術を考えているような者とは違うのである。

 

「この家を紹介した商人はコレを参考に別荘を用立てて貸し出すそうだぞ。薬用の石鹸は薬師の一族出身の商人に話をしたら、やはり関心を持っていた。要するに金になるかは使い方次第だということだな。街道だって商人が通り易くなるし、兵士が移動し易くなれば安全になる」

 

「なるほど……覚えておきますね」

 

 エレーヌは分からないなりに、昭信が自分の為に行なってくれている事を理解した。

 

それほど勉強は好きな方ではないが、自分の為に色々してくれるというものは楽しいことだ。それが自分の領地の為だとなれば不快な訳がない。これがシモーヌだと『この領地を狙っているのかもしれない』と警戒するのだろうが、エレーヌからみれば告白も打診もされてないが、憎からず思っている相手だ。悪い気はしないし、生臭い政争の想像など及びもしないのだろう。

 

「こんな物を用意した。細かい話を始める前に食べてみてくれ」

 

「スっとして面白いですよ。ほんのり甘いのも良いです」

 

「ほんとですね。ほろほろと崩れて、じんわり甘いのが良いです」

 

「菓子だと? 迷宮に挑むのではなくこんな物など……」

 

 昭信がルミに持ってこさせたのは、白っぽいお菓子だった。

 

元の世界で言うラムネを参考にしたもので、クエン酸が無いから大きな爽快感はない。だが果実の汁やスライムスターチで代用したことで、重曹であるシェルパウダーを固めることには成功していた。本当はプリンやクッキーなどにも挑戦したかったのだが、火加減をうまく調整出来なかったのか、今のところは試作段階である。

 

「それで、迷宮の方はどうなんだ?」

 

「三人を少しずつ鍛えて探索者としてなんとか、戦士ギルドに連れて行けばジョブも変えられる段階というところだ。適性も確認した上で下位層を巡回するチームを準備する予定だ」

 

 昭信はグスタフとヒューゴーを一人ずつ時間調整して鍛えていた。

 

一層目で片手剣と盾、槍、棍棒とローテーションで色々と戦わせている。それとは別にルミにも伝えた『貴族の手法』として、昭信が一人で六層に行き、彼らをメンバーに残したままにして潜っている。そして順当に村人5レベルに探索者も5レベル、戦士と剣士を派生させるところまでは鍛えていたのである(なお、探索者は村にギルドがあるので転職できた)。

 

「ルミはもう仕上がっているからパーティーリーダーとしての経験はともかく戦える。残りのメンバーが戻ってくるところまでに、三人の資質を見極めたいところだな。薬草採取士や僧侶の資質を見るのは残りのメンバーも確認後になるだろう」

 

「そうですね。どうしてもそれらは若い方に任せたいですし」

 

「そりゃワシらは若くないがのう」

 

 順当に戦力を増やしていき、搦手系スキルを喰らう可能性を減らす。

 

その為にも三人は必須だろう。そうすれば二人のどちらかは対外的に探索者だと言い張れる。もっとも重要なのは探索者がパーティーに一人は必須な事だろう。居ないとパーティ編成が出来ないし、階層移動も出来ないからだ。ワープは使ってみせなければ話さないでおく事は出来るが、パーティー編成だけは必要なのだから。

 

(深い層まで行くなら鍛冶師になったルミを信用して話すとしても、やはりもう一人必要だな。二人居れば、どちらかが探索者だと思うだろう。問題はグスタフとヒューゴー、どちらがより信用できそうか? あるいは残りのドワーフが信用できるのか? それとも新たな奴隷か……)

 

 問題なのはやはり、ルミを信用するとしても人数が足りない事だ。

 

当面は執事役として冒険者まで育てるという理由でパーティーに入れる意味はあるし、ダンジョンウォークの専任も必要なので二人くらいを順繰りに育てる期間は存在するのだ。その間にドワーフたちの性格を確認し、駄目ならば新しい奴隷を探す必要はあるだろう。本当の意味で信じられるならば昭信のジョブ構成から探索者を外して、より戦闘向きの中位ジョブを優先することもできるので必ずしも悪い話ではなかった(そもそも原作主人公は奴隷を信じているのだからおかしいというわけでもない)。

 

「その辺りが見えたところで実際に低層を周回させて、何年か後には自分を買い戻す準備もさせる。来年には引き渡すつもりだが、暫くすれば平民に戻り、貴族が抱えても外聞的に問題の無い従士隊になるだろうさ。八人のうち一人か二人は俺が抱えて、代わりに成れる探索者にする。そうなれば俺も獣戦士に戻せるからな」

 

「ふん。そこまで都合よく行けば良いがな。どれほどの腕か確かめてやろう」

 

「別に構わないが他所で挑まれても賭けないようにな。物語なら良くない男に捕まる流れだ」

 

「どういう意味だ? ちゃんと修業した私が貴様に敗れることなど無かろう」

 

 昭信は本気で言っているのだが、シモーヌからすればフカシに聞こえるらしい。

 

だがシモーヌの言動から態度は、物語でいえば酒場で気易い男と賭けをして、侮って戦ったらボロ負けしてエロイ目にあわされ、泣きを見る流れそのままである。もちろん経験値系ボーナススキルとか複数ジョブというものが無ければシモーヌの言う事の方が正しく、昭信の言葉はむしろキモい男の大言壮語に過ぎないのだが……。

 

(冗談はここまでにしておいて、俺の計画もそろそろ第二段階に突入するな。その頃には剣士と探索者が30に到達する。無理をする必要は無いが、そろそろ装備も整えないとな。奴隷たちのジョブ構成が大まかに決まったら、幾つかの町を巡ってみるか)

 

 一週間ほど経過しているが、成長は鈍化していた。

 

獣戦士は20から23、ドワーフを鍛えながら25と、時間を掛けた割りに伸びが悪い。むしろ遅れ気味だった英雄が同じペースで上がってきており、伸び率の良かった剣士と探索者も同じくらいになっている。二人が戻った頃に獣戦士23/英雄18/剣士と探索者27、育て始めて獣戦士25/英雄20/剣士と探索者29というところだが、やはり適正レベル的な問題があるのと、経験値倍率を下げて結晶化を進めている事が影響しているだろう。一日に少しずつである奴隷たちとの訓練も、三人分行なっているのでかなりのものだった。

 

(第六層では限界だな。派生職が出た辺りでルミを連れて七層に行ってみるか。問題が無ければ八層以降と、三人目を連れてのフォーメーション戦闘を考察するとしよう)

 

 こうして昭信自身の目的も第二段階へ。

 

探索者の派生である料理人と、存在するかどうか分からない剣士の派生職。そこに至ったことで、新たな成長計画……パーティー全体としてのモノを必要としていた。

 

●リザルト

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士26レベル。

 

 活性枠。入替枠。

 

獣戦士23/英雄18/剣士27/探索27/神官20。村人5/戦士3/薬草採取士19/錬金術師1。

獣戦士25/英雄20/剣士29/探索29/神官23。村人5/戦士3/薬草採取士22/錬金術師1。

獣戦士26/英雄21/剣士30/探索30/神官25。

村人5/戦士3/薬草採取士24/錬金術師1/料理人1/ソードマスター1(アンケート次第)。

 

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定1、鑑定1、詠唱省略3、ワープ1、必要経験値十分の一(31)、5thジョブ(15)。

 

獲得経験値二十倍(63)もしくはデュランダル(63)もしくは獲得経験値十倍(31)と結晶促進三十二倍(31)。端数はいずれもMP回復速度上昇。

 

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師15

 

資金。3万ナール

 

小口現金。3000ナール(常時調整)

 

スキル装備。加速の皮鎧。強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、空き)

 

スロットのある装備。鉄の剣(空き)、ウッドステッキ(空き)、

 

特筆すべき項目。大量の皮。皮防具増産中。緑魔結晶

 

現代品の代用レシピ。石鹸・ラムネ菓子




 と言う訳で、公私ともに次の段階に移ることになるでしょう。
地味な訓練と考察、女の子たちとのキャッキャウフフのサイクルも。
(単純にひたすら戦闘しても、能力上がらなくなる時期ですが)

●やってみた!
『なろうチート』をやってみた! → 「そうなんですね」と関心薄い。
まあ窮地を救てもらって、ようやく平常運転に戻ってきたところ。
そしてピンチはいつでも転がっている世界なので止む無し。
ケーキなりプリンでも作ってれば話は別だったのでしょうけど。

●シモーヌ塩過ぎない?
 エレーヌが甘過ぎなのと、従妹姫を守るために奮戦中だからです。
助けられたし良い人だよねとエレーヌが無邪気なので、疑う担当というわけですね。実際に都合が良すぎる状態で加勢に来ましたし。ただクッコロ系姫騎士にならないうちに、主人公が何とかすると思います。

●成長と資金計画
 一週間経ってる割りに強く成ってません。いいかげんレベル上がってますしね。そこに結晶促進32倍も詰めて、奴隷を育ててたらこんなもの。ただそれだけに魔結晶が緑になったので、次のスキル結晶なり装備を用意できるようになり、奴隷の加入で階層も深く成る予定です。

なお、レベル30到達を記念して、本日はもう一本、軽めの話が入る予定です。

剣士30レベル時の派生職があるとして、何の条件が必要だと思いますか?(使えるとも覚えるとも限らない)

  • 一意専心。剣だけでトドメを刺し続ける
  • 武芸百般。多数の手段を使ってトドメを刺す
  • 常在戦場。船の甲板や高地で戦う
  • 人間の殺害数が重要。迷宮では無理
  • 最初の文明設定が重要だから無理
  • 剣士自体が派生職。50レベルだけ
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