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「駿馬のデミグリーヴと鉄鎧は俺が付ける。グスタフたちは交代で加速の皮鎧と強権の鋼鉄剣を持って追随してくれ」
「は、はい。注意して扱わせてもらいます」
手に入れた三枚のコボルトのうち二枚は牛と兎に使った。
前線に突撃する昭信がコボルト付きで高速化した駿馬のデミグリーブ、その後ろから加速の皮鎧で遅れてドワーフが駆けてくる。もちろん少しずつ離されていくので、『赤兎馬の関羽に追いつけない名馬の周倉』みたいな状態になるだろう。だが援護としてはそれで良い、そもそもがデータ収集に過ぎないし、援護も出来ないならばそちらも駿馬にするなり、ドワーフ以外のメンバーを考慮すべきなのだから。
「どうせ今着てる鎧も対毒を付けて渡すことになる。あまり気にするな。ただし、強権の鋼鉄剣は場合によって売り飛ばし、同じ効果の槍に入れ替えるから、あって当然とは思うな。槍だったら……と考えるのは構わんがな」
「奴隷はスキル付きの武器を使わぬものですがなあ」
「迷宮を討伐するには必要なものさ」
これでひとまず昭信の目的とする体制と、そのデータ検証は可能になった。
後は蛙が手に入ればコボルト付きでデミグリーヴに入れることになるだろう。同じく注文している兎は鋼鉄の槍を購入して付与するだろうがコボルト待ち、はさみ式食虫植物は何に入れるか迷い処だが、ウッドステッキではなく新しく購入するステッキになるかもしれない。
「今は九層に挑んでいるが、ボスを撃破し次第に十層に挑んでみる。その手応え次第で十一層を目指したいところだが、金稼ぎに第二迷宮も進めておきたい。ルミ?」
「はい。現在、第四層がミノであると確認できています」
「なんじゃと? 誰じゃこんな迷宮を用意したのは」
「がはは。主殿が言うておったろう。好都合じゃと思え」
不人気であることを逆用する事にした第二迷宮は実にクソだった。
第三層が拘束のグリーンキャタピラーで、第四層が火力の高めなミノ。この時は知る由もなかったが、第五層は堅めのコーラルコラージュ。そして第七層が逃げるエスケープゴートにボスが危険なパーンと、訓練にすら向かない魔の攻勢が続くのだ。だが、ピンチはチャンスとも言う。他の迷宮でレベルを上げてしまえば、危険度の高いモンスターは六層までに固まっていると言える。第八層のチープシープもボスが眠りのビープシープというのが厄介であるが、第九層がニードルッドに十層がスローラビットと中々に悪くない構成が周回予定の場所に続いていたのである(十一層はナイーブオリーブ)。
「そういう事だ。勝負はグリーンキャタピラーの出現頻度が減る七層以降、出来ればモンスターが増える八層から十層でがっつり稼ぎたいところだな。一人ずつ鍛えるローテーションをしながら進めていくぞ」
「「「はい」」」
このようにナーシャの第一迷宮・第二迷宮で順調な攻略を始めていた。
昭信率いる三人組で上の層を狙い、残り六人で三層までを巡るルーティーンの完成である。そしてルミと探索者の誰かを連れて上層を巡っているわけだが、順繰り何巡かすることで少人数での探索の効率化と危険性を教えつつ、獲得経験値のおかしさを隠していた。
「ルミ。そろそろ良いレベルになっているから、適性に合わせて振り分けを決める。鍛冶師も希望者が居れば一度だけ連れていってやれ。その上で、例の仕込みを始める」
「承知しました。町で先方の都合を聞きながら時節を待ちます」
このころからルミが奴隷を伴って町へ行くことが多くなっていった。
奴隷のジョブを変更する為だが、シュナイドラーの下へ赴き兎の結晶を受け取ったり、適度に時間を空けて強権の鋼鉄剣をオークションないし希望者へ売る交渉を行う為である。そのスケジュール管理をルミに任せつつ、昭信自身は他の街へと赴いて迷宮の情報や商店の位置情報を確認していた。いずれ装備の吟味を使う為であり、昭信自身がソロでの特訓の為に向かう場所を探す為でもあった。
(俺にとっては迷宮を知ることで特訓のチャンスでもあるが……ルミにとってもチャンスではある。金は持たせてあるしシュナイドラーに頼んで結晶を手に入れることも出来るからな。他の装備はともかく皮系の防具は適当に置いてある。動くならそこだろう。鑑定についての説明をすべてやってないから邪心を抱いていれば直ぐに判る。逆に言えばここで問題がないならもう大丈夫だろう)
昭信はいい加減、ルミを疑うのに飽きていた。
疑り深い性格でもないし、原作におけるロクサーヌやセリーを考えれば、ルミが真面目で邪心を抱くタイプではないと何となく確信していた。もちろん思い込みに過ぎないのだが、情報を封鎖していると面倒なのも確かだ。それにソロないし二人のみで活動するには、ワープ・複数ジョブ・ジョブを変える力……この三つのどれか一つだけでも説明しておかないとスムーズに特訓が出来ないのである。
(ここを乗り越えたら段階を踏まえていくらか話すことにしよう。そして俺も、次に向けた特訓を始めないとな)
町と迷宮を巡る過程で、昭信は新たな特訓を思いついていた。
経験値倍率を二百倍に保ったまま6thジョブが付けられるようになって暫くワープを外していたのだが、この調査で戻したり戦士のレベル上げをしている最中に気が付いたのだ。効率的にレベルを上げるには四百倍にした上で、3rd・詠唱省略・ワープが必須であると思いこんでいた。だからもっと先であり、36から37レベルまで上げなければならないと思い込んでいたのだ。
(効率的にレベルを上げるために、効率を捨てる! ならば今からでも十分に四百倍は可能だ! レベルを上げてしまえば端数の経験値など考えなくて良いのだからな!)
昭信はポイントが倍々になる事から3rdジョブ以上が効率的だと思っていた。
だが効率と気楽な戦闘を捨てるならば、今からでも十分に可能だと気が付いてしまったのである。詠唱短縮は詠唱省略で構わないし、何だったら3pの3rdではなく1pの2rdでも十分問題ないではないかと気が付いたのである。良く考えれば30レベル以上というのは十分に強者なのである。獣戦士と英雄だけ、あるいは獣戦士と剣士なりソードマスターだけなら今直ぐにでも四百倍でレベルアップに励めるのである。そして二つ目のジョブがレベルUP直後に入れ替えてしまえば、付け替えに寄る必要経験値にマイナス効果があっても問題ないのだから。
(特訓の狙い目はソロがやり易いボスが七層以降に居る迷宮。それとは別に金を稼ぐだけなら、スローラビットとニードルウッドが四層以降でグリーンキャタピラーがもっと上の層で結晶促進に戻して料理人を付ければ良い。やってはいけないのは中途半端に攻めることだ)
どうしても稼ぎが悪い層はあるので、特訓するならそこが向いていた。
ワープでボスの周回をすれば、比較的簡単にレベルを上げることが出来る。逆に金を稼ぐならば獲得経験値二十倍を切って結晶促進六十四倍に戻して料理人へ入れ替えれば良いのだ。兎の肉は百三十ナール以上である為(原作で兎の皮を二割り増しで購入している高級店で肉を百六十で購入している記述がある)、雑魚の数が増える四層以降であり拘束が恐ろしいグリーンキャタピラーがもっと後の迷宮(クラータルの迷宮とか)で割り切って稼げばよいのである。
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「醜の獣のもののふの、八十の力を解き放つ。奪命! ビーストアタック!!!」
疾走しながら詠唱し、そこから天井ギリギリまで跳躍。
着地と同時に繰り出す一撃は間に居たニードルウッドも阻むことはできなかった。奥で魔法陣を展開していたニートアントを切裂き、返す刀で近くに居た別のニードルウッドを斬りつける余裕がある。それは敵の配置を完全に把握しており、優先順位を付けて戦っているに他ならぬ行動であろう。
「いや、見事なんじゃがの……全然追いつけんわ。足ゆうか見とる世界がワシらと違い過ぎる」
「ルミはどうだ?」
「無理ですマスター」
何度目かの訓練戦闘であるが、躍進著しい昭信と他のメンバーでは違い過ぎた。
牛の結晶や蛙の結晶をコボルト付きで入れたことも大きくはあるだろう。最初から戦場を俯瞰して格闘ゲームやシミュレーション・ゲームの様に優先順位を考えることが出来る昭信と、付いていくのがやっとであるドワーフたちで まるで世界が違って当然であろう。移動力を強化された皮鎧を着ているドワーフも同様であり、仮に装備を逆転させてもその経験則と発想の前には埋めようのない差があったとも言える。
「そうか。装備が整ってきたのは良いが、こういう戦い方をする時のメンバーを見繕う必要があるな」
「そうですね。足を止めて盾で両脇を守る戦いはまだ問題ないんですけど」
昭信は三つのパターンで連携戦闘を作っていた。
一つ目は昭信が突出して一体を潰しに行き、その後ろから背中を守るように追い掛けていくパターン。二つ目が昭信の両脇に二人配置し、回り込まれないようにしつつ、やはり昭信がひたすら前の敵を倒していくパターンである。そして三つ目が直接に敵後方へ昭信が移動し、他の仲間が挟み撃ちを掛けるパターンであった。この戦いには明らかに移動力と咄嗟の判断力が重要であり、一つ目や二つ目と違って明らかにドワーフとは違った能力が重要であると思われた。
「まあ良い。なら装備に関する所感はどうだ?」
「うむ。そちらに関しては、やはり槍の方が良いじゃろ。盾を構える場合も兼ねて、片手剣もあれば安心ではあると思うが、そこまでは要求せんでええじゃろ。ワシらなら槍、足の速い者なら片手剣というのが良いと思うぞい」
第一迷宮の第十一層までの間に様々な戦闘データを蓄積していた。
ドワーフたちも戦えるようになっており、装備さえ揃えばもっと深い階層でも挑めるだろうと意見が出ていた。もちろん主人である昭信あってのこそであり、ドワーフだけの場合はまだ六人でも難しいだろうとも言う意見が出ていた。
「なるほど。ならば予定通り鋼鉄剣は売り払い、代わりに鋼鉄の槍と片手剣を用意しよう。ルミ、その流れで最終調整を」
「その旨を先方にお伝えしておきます。追加発注はございますか? 」
「蟻や灌木と言いたいところだが、ダマスカスを手に入れてからだな」
「承知しました。次の休日にでも行って参ります」
発注していた結晶も揃い始め、人気の結晶のみがまだであった。
そこで昭信は『自分達に合わなかった』という態でシュナイドラー経由で交渉し、15万ナールから20万の値で他家に売りつける算段をしていたのである。もちろん一部は間に入ったシュナイドラーが持っていくだろうが、資金繰りが大きく改善するだろう。そうなればダマスカス製でも比較的安価な鉢金なりグローブを探す予定であった。
「ルミ。せっかくなので宿題を出しておこう。実際にそこまで作るか怪しいが、片手剣で鋼鉄製ないしダマスカス製を手に入れることが可能だったと仮定して設計してみろ。スキル結晶は揃ったものとする」
「……マスターがお使いにならない、という前提でしょうか」
「その可能性が高いな。ドワーフや猫人族以外だろう」
「では盾も含めて考察してみますね」
この頃には昭信もルミを信用し始めており、こんな問答をするようになった。
まだ全てを話しているわけではないが、予算や装備の一部を渡して、ルミ自身の要望を入れられるところからスタートである。いずれは複数ジョブを持てるとか、変更可能という事も含めて話す予定であった。だが、そうと決まれば焦る事もあるまい。ゆっくり不自然ではないように信頼関係を築こうとしていたのである。
●リザルト
アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士33→35レベル。
活性枠。入替枠。不要枠。
獣戦士33/英雄30
薬草採取士24/神官25/探索30/ソードマスター18/料理人18/戦士10/剣士35
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1
↓
獣戦士35/英雄32/剣士36
薬草採取士24/神官25/探索31/ソードマスター20/料理人20/戦士15
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1
更新順(古 → 新)
キャラクター再設定1、鑑定1、必要経験値二十分の一(63)、ワープ1。
詠唱短縮1、獲得経験値二十倍(63)もしくは結晶促進六十四倍(63)。
6thジョブ(31)もしくは2rdジョブ(1)。 → 3rdジョブ(3)
ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師22
資金。1万2000ナール
小口現金。3000ナール(常時調整)
スキル装備。加速の皮鎧。駿馬のデミグリーヴ(移動力増強、跳躍増強、空き)、強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、空き)、強権の鋼鉄剣(詠唱中断)
スキル結晶。蝙蝠。サイクロプス、兎、牛。(入手予定。はさみ式植物、コボルト2)
スロットのある装備。鉄の剣(空き)、ウッドステッキ(空き)、鉄の鎧(空き、空き)
特筆すべき項目。青魔結晶に貯蓄中。皮の防具一式多数(スロットなし)。銅貨はルミがまとめ、奴隷たちの小遣い銭に。強権の鋼鉄剣は売却予定。
現代品の代用レシピ。石鹸・薬用石鹸・ラムネ菓子
UP先を間違えたので、あとがきは省略します。
また、誤字報告ありがとうございます。何時も助かっております。