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「防毒のチェインメイルは今のところ順調なようです。下位層での周回は盾役が抑える役目なのも大きな影響があるとは思いますが」
「そこは判る。スキルをあまり使わないし蟻に気を付けておけば良いからな」
得られたカードで装備を作って感想戦。これは重要な事だ。
昭信は元の世界の知識もあるし、タンク役の重要性を知っている。だが殆どの者は『どうして貧乏籤を引く必要があるのか?』『なぜ捨て石を大事にする必要があるのか?』が分かっていない。だが、会議で説明することにより、タンク役が毒防御を持ち鎧を良くすることで、パーティー全体を守っている事に周知が出来るのだ。全員役目を知っていればタンク役の装備充実を重視するのは当然なのである。今は昭信とルミだけだが、似たことを他の奴隷にも考えさせていたのだ。
「彼らも率いている時はともかく、何で前に立つ者が良い装備を預かるのか知り得なかったからな。しかし、今では理解しているだろう」
「小遣いの割増しも受け入れられ始めているようですからね」
年嵩の男ドワーフ二人はリーダー役ゆえ装備を優遇されていた。
しかしタンク役を若い者に任せるようになると、装備を預けることや報酬が増えることが、他の若い者から文句が出たのは確かだ。二人はまだ『若い者を指導しろ』と命じられているから良いが、『どうしてオレより倒してない奴が優遇されるんだ』と思う者が出るのは当然なのだから。そして防毒の装備を付けた者が盾役となり、残りの者が安全に攻撃する戦術の成果が、不満を抑える事に成功していた。そしてデータを共有することで作戦の有用さも周知できたわけだ。
「新調した旋風剣の評価が良いのは分かる。だが鋼鉄の槍にも強権を付ける事より優先した理由はなんだ?」
「現状では一つあれば足ります。その上で有用性を知る必要がありました」
「別に旋風剣と強権を分けても良かったのではないか?」
「それは……完成品に近い物を用意しておきたかったのがあります」
ここにきてスムーズに語っていたルミの歯切れが悪くなった。
手持ちのコボルトは二枚。そこで昭信は蝶の付与と強権を分けようかと思ったのだが、あえてルミは一つに絞るべきだと主張したのだ。それでHP吸収用の結晶とコボルトも入荷したならデザイナーの気分も判らないでもないが、まだまだ未完成なのに属性剣と詠唱中断の組み合わせを見たかった理由が不明だったのだ。ルミの事を信頼し始めていたからこそ、この事は謎であった。
「失礼します、シモーヌ様がお見えになりました。それと冒険者がお手紙を」
「何? エレーヌと一緒にではなくシモーヌだけ? 何の用事だと思う?」
「あの……私の勘違いでなければ、彼女の用件があるからこそ、完成品が必要だったのです。筋違いだとは思いますが、私の方で勝手に気を回しました。申し訳ありません」
そして不意の来訪が話し合いを中断させた。
その説明が行われ、対応が決まる前ではなのが不運ではある。だが、ルミの進言を聞いて旋風剣に強権を追加した事が、後に重要になるなどとは思いもしない昭信であった。
「どういうことだ? 説明を……」
「おい! 他家に強権装備を売ったそうだな! お前は本当にやる気があるのか!」
「その……こうなると……思ったんですよね」
以前にも言ったが昭信にはデリカシーはあるが空気は読めない。
また異世界転移した彼にとってスキル付与とは条件さえ整えば出来て当然の行為である。ルミが技術者枠だったために即座に理解したので勘違いし易いが、この世界の人間にとってスキルの付与とは確実性が無く、特に強権装備の価値は迷宮攻略する者にとても有用なのだ。そして運の悪い事に、ナーシャ家は領主と後継者の全滅によって装備の殆どを失っている。様々な要因がこの事態を引き起こしたと言っても良いだろう。
「どういうことだ? 俺が用意した装備を売ってその金で重視する装備を整えたことに何の問題がある? 奴隷たちを育てるという意味では、扱い難い強権の鋼鉄剣よりも防具やスキル結晶の方が何倍も重要だぞ?」
「貴様は! 私が何を言いたいか本当に分かっていないようだな!」
「すれ違いだと思うんですよね……互いに遠慮した結果、筋違いになってます」
ハッキリ言うと、三人全員に問題があった。妙な遠慮をし合っていたのだ。
ルミはこの事態が起きている背景を予想しながらも、自分が口を出すべきではないからまだ喋ってはいなかった。昭信から見れば告白どころか迷宮討伐の目途も立っていないのに、あれこれと贈り物以外でナーシャ家に関与する気は薄かった。今はドワーフたちを育てて引き渡す段階という認識であった。そしてシモ-ヌから見れば……エレーヌだってアキノブの事を憎からずに思っているのに、どうして持参金の一部に成り得る強権の装備を手放すのかが理解できない。もはや遠慮しているというよりは、その気が無いというか何処かのボンボンが遊んでいるようにしか見えないのだ。
「他にも所要がないのに色々な街に行っているようだな。何を企んでいる! 家を追い出され代わりにこの領地を奪う為か? 以前に言ったな、勝負してやると。もし私が勝ったら何もかも洗いざらい喋ってもらうぞ!」
「別に構わんが……。可愛い奴だな。企んでいる奴は素直に喋らんというのに」
「マスター……その指摘は逆効果です」
「き、貴様ら! 私を馬鹿にしているのか!」
こう言うとなんだがシモーヌはクッコロ系ではないがポンコツではある。
そのことを指摘すると顔を真っ赤にして上記でも吹き出さんばかりであった。ルミの指摘も煽りにしか聞こえないくらいであるが、仕方がない事なのかもしれない。ここまでこじれてしまったら、簡単には元に戻らないものである。
「馬鹿にして悪かった。俺が負けた場合、我らが尊師”内密”のミチオ・カガの名に懸けて質問は全て応えよう」
「何だそいつは。何処の馬の骨なのかは知らんが……」
「それ以上は止めておけ。偉大な先駆者を馬鹿にされたくはない」
昭信は真の英雄に成れるとは思ってはいないが、好漢には成りたかった。
気に入っている奴が困っていたら助けたいし、勇者のパーティーには参加できずとも、荒くれ集団の中で自分達が求めるモノの為に力を振るってみたかった。その意味で、異世界転移することで暴れられる事に満足していたと言える。シモーヌが言うように真剣味が足りないというのも否定はできまい。
「何という速さだ……。今のがアキノブの実力だというのか」
「味方相手に使う物じゃないがな。安心しろ人間相手に許される範囲で……。いや、違うな。俺は俺の実力だけでお前と戦ってみたい」
オーバーホエルミングでシモーヌを止めた。
原作主人公を馬鹿にされたくはなかったというのもあるが、激昂している彼女に冷静さを取り戻させるには有効だからだ。そのために英雄の力を使い、そして勝負には英雄の力を使うつもりは無かった。ファーストジョブ以外をすべて解除し、獣戦士38レベルのみで戦う事にしたのだ。シモーヌは騎士であり、戦士としての下積みを考えれば似たような経験レベルだと思ったからである。
「あの……宝剣などは使われないお心算ですか? 全力で叩き潰す方がシモーヌさんも納得できると思うのですが……」
「違うな。これは俺のこだわりだ。借り物の力ではなく俺がシモーヌに勝ちたい」
「……貴様ら。私を侮るのもいい加減にしろよ」
ルミと昭信はそれぞれ別の意味で暖かい視線をシモーヌに向けた。
前者は迷宮における戦闘力を知っているからこそであり、装備調達だけでなく先進的な戦闘方法も含めての強さだと知っているからだ。そして後者は主君の為に必死になって不埒者を遠ざけようとする凛々しい女騎士に対する憧れであった。二人がその事を口にすれば直ぐに解決する問題であるが、ある意味で二人にもこだわりがあるからこそ口に出来ないのだ。
(これってそーいう事だよね。シモーヌちゃん
ルミにはルミの思惑というか不満も存在していた。
何しろ盗賊から助けてもらったのは、シモーヌも同じだったのだから彼女自身も昭信の事を好ましく考えていたのだ。貴族の価値観では行儀見習いに来た女子に手を付ける代わりに引き揚げたり、妾の中でも優遇するのはよくある話である。また心労が著しいのも確かな訳で、ちゃっかり自分の心労を昭信に押し付け、親しくなろうとしていたシモーヌに物申したかった。というか、売り払った『強権装備は自分が使わせてもらえる』と思っていたから怒っているのだろうし、妾にするならばそのくらいの甲斐性を見せてもらおうとしていたのだろう。奴隷ゆえに選択肢の無いルミからみれば、自己主張できるだけ羨ましいし呆れているというのもある。だが『自分の時は奴隷になるまで誰も助けてくれなかったのに!』という不満を思うくらいは許されるだろう。
(いい加減、疑われるのにも飽きたしな。それに奴隷を調達するのも面倒だ。ここで一気に決めて押し切るか)
また昭信は善意を疑われることに慣れておらず、苛立っていた。
デリカシーが無いわけではないから口説いてはいなかったが、シモーヌの事もエレーヌを守ろうとする凛々しい姿や、ナーシャ家を守ろうと必死になって背伸びする姿込みで気に入っている。そんな人物を助けたいのに当の相手から疑われて、ましてや嫌われる事を好んでいなかったのだ。だから勝負を挑んで、エレーヌもシモーヌも一緒に手にしてしまおうと考えたという事である。好感触を感じてなければキモい妄想ではあるが、そこは貴族的な価値観もあるから実の問題もない。その上で、秘密を喋っても良いなら勝算が無いわけでもなかった。
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「ルミ。第三者は居ない方が気晴らしになるだろう。構わんから残っている者を連れてシュナイドラーの所に取りに行ってくれ。それと揃ってない分は、今回に限り全て上限を二百引き上げるとな」
「承知しました。揃っていたら完成品をお持ちいたしますね」
昭信は鈍感系難聴主人公では無いので、ルミの配慮を理解した。
きっと彼女はシモーヌに脈がある事を理解すると同時に、強権装備を手放す危険性に気が付いて、手元にもう一つ……それも伝世の装備級の存在を用意していると演出したかったのだ。だから口説き落とすというか、秘密を話しても問題無いように持参金として申し分ない武器を用意させることにした。何処かの騎士王が持つ聖剣には及ばないが、騎士に与える剣としては破格であろう。
「という訳だ。邪魔者は居ないから本気を出しても問題ないぞ。少々の傷は滋養丸もタップリある」
「吐いた唾は呑めぬからな。騎士の技を見せてやろう!」
「口は良い。気に入らんなら掛かってこい」
シモーヌはベタ足で横に剣を構えていた。
動かずに相手の攻撃を裁き、自らは走らずに相手の動きを抑えながら優位を確保するための戦いである。重心を下に維持し、鎧や盾も含めた構えであると言えるだろう。騎士の立ち姿と言って過言ではない。
「いや、先手を取らせるカウンター狙いの流派なのだろう? つまりは、技盗人だ。もっとも戦場であれば最後まで立っていた者の勝利だから文句はないよ」
大して昭信はつま先立ちも使い、半身に構えて剣を縦にする。
踏み込みを重視して走り回る動きであり、半身のみを晒しているのは被弾面積を下げる為であり加速用。少しでも優位を維持しながら立ち合い移動することでその差を拡げる為の構えである。そして獣戦士の動きと言えなくもなかった。
「侮るなと言ったぞ!」
「侮っていないさ。これも技、いや業だ。対人戦のな」
昭信が持つ自信の一つは対人経験の差であった。
シモーヌはあくまで鍛えるために先達が教え、モンスターとの戦いの中で導く方法である。対して昭信は人間同士の戦いが積み上げた、歴史そのものが違う。剣道と剣術の差……あるいは柔道や空手を含めて様々な技術が人間と戦うために積み上げられていたのだ。言葉で圧倒する心理戦だけなら貴族の世界に無い事もない。だから口撃が己に有効な事に関してシモーヌは否定できないでいた。
「ならば攻めてやろう。こちらからな!」
「悪くはない。だが、それだけだ!」
ここでシモーヌは内線の利を活かして攻撃を行なった。
昭信が外回りに攻めてくるのに対し、内側から小さく動けばスピードの差や移動力の差を補えるのだ。スイングスピードも歩幅も十分ならば、格上に対して十分戦い抜けると教わった流れである。そして肘から手首にあたる部分を昭信の腕にぶつけ、膝からふくらはぎを内側に入れて鍔迫り合いからの至近戦を挑む。
「やはりお前は経験が足りてない。今のは盾と鎧の重量さを活かすための技だろう? 練習用に使えるだけでな!」
「くっ! だが有効なのは確かだ! 倒しきれなかっただけでな!」
重量をぶつけて相手をはじき出す動き。この世界に対人技が無いわけではない。
だが、今の行動をするには盾を使ったシールドバッシュや、胴鎧・腕鎧・足鎧といった重量を使って圧迫する必要があった。事実、昭信の動きを制しはしたがそれだけ。そこから即座に続けることも、むしろ剣を手放して格闘戦を挑む方が確実だったと言えなくもない。常に機先を制するならば有用な動きなのだから。それに昭信とシモーヌの関係性を考えれば、『女は殴りたくない』と遠慮してそのまま勝利する可能性もあったかもしれない。
「本命はこの戦いでは無くその次なのでな。そろそろ決めるとしよう。ルミ達が帰ってくる前にな」
「ぬかせ!」
昭信は終わらせに掛かった。正しくはその前動作である。
連撃では無く、それも含めての組み立て。時に単発の技でシモーヌの剣を外へ弾き、彼女が戻しつつ攻撃しようと薙ぎ払いを掛けたところで切り落とした。受け流すのではなく切り落とし、ダンダンと攻撃を繰り返すたびに外へ重く弾いていく。そして堪らず至近戦を再び仕掛けたところで、今度は足払いを行い、驚いて体勢を整えようとしたところで腰を入れ片手を回して投げ技もあるのだと驚かしてみせた。
「シモーヌ! エレーヌの神殿を知っているか? そして『エレーヌの神殿の辺りでジョブを変えました』という慣用句が何を意味しているか知っているか!?」
「は? 今その事に何の関係がある! 勝負の最中だぞ!」
「あるさ。俺が国元に居られなくなった理由でもある」
「はっ?」
昭信はここでルミに説明する為に用意したエピソードを披露することにした。
勝負には関係ないが、勝負する理由の一つであり、もし勝ったら聴こうと思っていた内容だけにシモーヌの意識が逸れた。いや、正しくは怒涛の攻めで圧迫され、不利を悟っていただけに飛びついてしまったのかもしれない。無意識にガード中心の動きへ切り替えたことで、至極読みやすく、そして回り込んで圧倒し易い単調な動きになってしまったのだ。
「一つはそのままエレーヌの神殿で。二つ目は貴族たちが秘かに管理するギルド神殿を使わせてもらったという意味。最後は固定やそれに近い前渡しの特訓で得られたスキルを使ってもらったという三つの意味がある」
「あ、ああ……確かに。確かにそうなるな……」
昭信は全体を把握して、建物の壁側に追い詰めながら鍔迫り合いを行なった。
回り込みに対処しようと内側への移動をしたところで、タイミングを合わせて体当たりに近い動き。弾き飛ばされそうになって腰を据えようとし、足技や投げ技を意識してしまって動きに迷いが出る。結果としてはそれがいけなかった。これまでにない強引な攻めを繰り返され、剣を弾き飛ばされて決着が付いたのだ。
「今なら誰も見ていない。だからインテリジェンスカードをオープンしろ」
「え? あ……」
昭信はそのまま壁に圧迫し、剣を捨てた右手でシモーヌに壁ドンを行なった。
そして左手を彼女の顔の前に出しながら、キャラクター再設定でファーストジョブを獣戦士から入れ替える。いい加減、色々と誤魔化すのが面倒になってきており、これ以上は奴隷たちを成長させ過ぎるのも問題に成りそうだったのだ。だから、ここですべての決着を付けるつもりでいた。シモーヌが彼のパーティーになれば無理に奴隷を増やす理由もなくなるのだから。
「滔々流るる……霊の意思、脈々息づく知の調べ……インテリジェンスカード、オープン……え? えええ!? えい……ゆ……う……。そんな……伝説のジョブの筈……」
「存在するなら神でも斬れる。なら伝説だろうと条件を調べるだろうよ」
勝負に負け、疲れ果て、そして憎からず思う相手が唇さえ届く場所に居る。
そんな状況ゆえに流され、言われるがままに呪文を唱えたシモーヌの目が驚愕に見開かれたのだ。何しろ英雄というのは伝説であり、何処の国でも『建国王が就いたとされるジョブ』であると言われていたのである。
「俺は我儘でな。家族を色々と困らせたものだ。どうやらその行動の中で英雄の条件を叶えていたらしい。そして本来ならば知らぬままに終わる筈だったわけだが、余計な事をした奴がいる」
「エレーヌの神殿と同じ能力を誰かが……それで知られて……」
「英雄のジョブを得る条件とは何だと思う?」
「判り……ません」
ここで昭信は真実ではないが嘘でもない事を口にした。
我儘なのも本当だし、英雄の条件を叶えたのも本当だ。そして仮に異世界転移したとしても、知らぬままに過ごせたが余計な事をしたのも同じ。それはエレーヌの神殿と同じ力を持つ者である。単にそれが第三者では無く、昭信自身であっただけの話だ。必ずしも嘘では無いがゆえに、そして目の前に英雄が居るというショックにシモーヌは頭が回らない己を自覚していた。
「初陣で盗賊を退治する。それが英雄になる条件だ。俺には我慢できなかったわけだが、どうすれば良かったんだろうな?」
「それは……」
今度こそシモーヌには二の句が継げなかった。
初陣なのに盗賊を退治する勇敢な人物。その事に心を揺さぶられたというのもあるが、その行為が自分たちと重なったからだ。ソレを否定したくは無かったのである。そしてここでも昭信は史実ではないが嘘でもない事を口にし続けている。そう、彼が英雄になったのはほかならぬ、エレーヌやシモーヌを助けたその日である。
「固定すれば英雄に戻せない。幸いにも俺は獣戦士に成れたから英雄を捨てれば良い。だが……そうもいかなかったんだ。さっきエレーヌの神殿と同じ力と言っただろう? アレには幾つか条件がある。俺には判らないがその人物の最適なジョブを理解する能力とかな。その上で、俺が持ちえた条件は、複数のジョブがあるということ。それを迷宮で使えば強いが、逆に言えば固定出来るのか判らないという事だ。まあジョブを外せば問題ないと知ったのは、こっちに来てからだがな」
「複数ジョブ……本当に存在して……でもエレーヌの神殿の……ああ……そう」
エレーヌの神殿は天職に転職させてくれるらしい。
そんな力を昭信が持っていないのは当然だし、キャラクター再設定を持っていたり、複数ジョブがあるというのも本当であった。少なくとも昭信がジョブを変えることが出来る理由は、キャラクター再設定であり、そして固定する意味が無いのは複数ジョブがあるからでもある。そしてここで重要なのは、シモーヌにとんでもない秘密を教えているという事実であった。
「複数のジョブはまだ良い。だが英雄のジョブ。そしてジョブを入れ替える力。もし俺が気に入らないならその事を言いふらせば良い。そうすれば俺は出ていくだろう。好きな女たちに砂を掛けられてまで居たくはないからな」
「ごめんなさい……ごめんなさい……私……そんなつもりじゃ……」
これもまた嘘では無かった。いや、これこそが真実であると言っても良い。
英雄を見つけたと王宮に通報すれば、あるいはエレーヌの神殿と同じ力の持ち主と知られたらどうなるだろうか? きっと処刑されるか、さもなければ一生監禁同然の状態で幽閉されるだろう。そして国のピンチが訪れた時、戦闘奴隷として危険な場所に放り込まれるのだ。誰がそんな事をしたいものか。だからシモーヌが気に入らなければ昭信を破滅させて追い出させるカード足り得るのである。
「ごめんなさいごめんなさい。行ってほしくない。恩人に……あの日助けてくれた、私たちの英雄……貴方に行って欲しくないの。でも、そんなの我儘で……失礼なことして……私……グチャグチャ。いっぱいいっぱいで分からない……」
「シモーヌ。泣くな。女が啼くのは此処じゃない」
「は……い。でもそんなの無理です……」
「仕方のない奴だな……」
それは仕方のない事だった。親世代が全滅し残っていたのは数名。
領主はもちろん両親も、頼れる存在だった執事も陳情の途中で盗賊に殺されてしまい、全てがシモーヌの肩に圧し掛かっているのだ。昭信が奴隷たちをいまいち信用できないように、シモーヌも文官たちの生き残りを全て信じられているわけではない。経験のない当主や側近を騙すのは定番だし……そもそも昭信だって出自の怪しい存在だったのだから。せめてお家を立て直せるなら認めよう、そう思っていたところで『強権装備を手放したらしい』という話を聞いてしまえばこうなるのも仕方がない事だったのだ。
「俺のモノに成れ。そうすれば俺が解決してやる。お前もエレーヌも、ナーシャ家も全て俺が背負ってやる。だから泣くな」
「はい! でもそんなの無理です……」
昭信の言葉にシモーヌは先ほどと逆の意味で応えた。
先ほどは混乱が収まらないから、恩人を蔑ろにしてしまって申し訳ないという気持ちから。だが、今回は違う。自分の事を背負ってやる、苦労も何もかも呑み込んでやるという男の出現に、シモーヌは嬉しくて、ホっとして泣いたのだ。
「でも、これでエレーヌ様もお喜びに成られます。ずっと出て行かれるか心配されておられましたので」
「……そうか。なら、お前は主君の男を先に口説こうというのだな」
「え? あ、はい。そうなりますね……よろしくお願いします」
「では尋ねるが、優しくしてほしいか? それとも激しくか?」
驚きの連続で腰砕けになったシモーヌを昭信は優しく抱き上げた。
お姫様抱っこされて顔を赤らめる彼女に、昭信は耳元で『イケナイ子にはお仕置きだ』と囁いたという。
●リザルト
アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士41レベル。
活性枠。入替枠。不要枠。
獣戦士39/英雄37/剣士40
薬草採取士24/神官25/探索30/ソードマスター23/料理人23
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1
更新順(古 → 新)
キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一、ワープ、詠唱省略。69
獲得経験値二十倍・結晶促進六十四倍・3rdジョブ~6thジョブの組合わせ。66
ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師25
資金。21万5000ナール
小口現金。3000ナール(常時調整)
スキル装備。加速の皮鎧。駿馬のデミグリーヴ(移動力増強、跳躍力増強、空き)、強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、空き)、防毒のチェインメイル(毒防御)、つむじかぜのシミター(旋風剣 、詠唱中断、空き)
スキル結晶。蝙蝠。サイクロプス。蟻、兎、芋虫、コボルト、はさみ式植物(入手予定。つぼ式植物、コボルトx2、ヤギ)
スロットのある装備。ウッドステッキ(空き)、鉄の鎧(空き、空き)、
特筆すべき項目。緑魔結晶。青魔結晶に貯蓄中。皮の防具一式多数(スロットなし)。銅貨はルミがまとめ、奴隷たちの小遣い銭に。
現代品の代用レシピ。石鹸・薬用石鹸・ラムネ菓子
装備を売る事のマイナス面の会です。
というか、そろそろサブヒロインをメンバーに加えて、正規メンツx3にしたかったので。
●強権装備を売ったと聞かされた駄犬の反応を50文字以内で応えよ
最初の状況を現実の会社で例えると
「みんな死んだ? 私が営業部長? 無理無理無理カタツムリ!」
↓
「コネある人が入ってくれて、潰れた工場で現地法人作ってくれてる!?」
↓
「そっかー。良い車を営業車にしてるのかー。私も乗れるかな~。オフィスラブとかしたりして。えへへ」
↓
「車売った? 全然聞いてないし! もしかして会社乗っ取って外資に売る気?」
こんな感じのイメージだと思えば判る気はするのです。
なお、パワハラ・セクハラが当たり前の同族企業の一族OLと、コンプラのある世界から流れて来た体育会系という差があるものとする。
●我らが尊師
”内密”のミチオ・カガ。こう書くと超人アニメの幹部ですよね。
でも原作を知って居れば、こう言いたくなるのも仕方がないでしょう。
●今なら誰も見て居ないから
卍解! と言う訳で英雄であるとか、ジョブを変えられる秘密を開示。
本来ならば絶対に喋る筈がない、追放のためにも使える情報を説明。
壁ドンは脈のある女の子にしか意味が無い口説き方ですが、今回は通じるので問題なし。いっぱいいっぱいで頭真っ白な女の子に「全部俺がやってやるよ」という口説き方の合わせ技でメンバーゲットだぜ。