異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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装備に関する段階

「御屋形さまが料理をなさるのは知っていましたが……」

 

「まさか堅くなったパンを揚げてしまうとは思いませんでした」

 

「油と砂糖の問題で高額になるからあまりやらんのだろうが、似た料理が何処かにあると思うぞ」

 

 有りそうで無さそうな料理という物もある。

 

装備の話をする前に簡単な料理で腹ごしらえをすることにしたのだが、パンの残りが堅くなっていたのでこれを利用することにした。細く長くスティック状にするか、あるいは平たい薄切りにして揚げ焼きにしていく。それらは全て同じ味付けにするのではなく、砂糖ベースのものと塩・香辛料ベースのものに分ける。後はお茶を用意すれば食べ易くて、やろうと思えば会議しながらでも食べられる軽食の完成である。

 

「シンプルな味付けですが噛み応えもあって面白いですね。エレーヌ様にお出ししてもよろしいでしょうか?」

 

「シモーヌの好きにしろ。さっきも言ったが作られていてもおかしくはない」

 

「出来るからやるか、もったいないからやらないかですしね」

 

 カリカリとした触感とまぶされた砂糖の甘さを楽しむ女性陣。

 

感想を語るシモーヌの目線はお嬢様に対する思いであり、ルミの方は経営者目線だ。パンの耳やラスクは、コボルトケンプファーのレアドロップであるコボルトスクロースを必要とする料理である。ボスモンスターから手に入れたレアな品は売れば金になる。またデザートを作るにしても美味しいお菓子はこの世界にあるだろう。わざわざ堅くなったパンを使うというイメージが湧かなかっただけだと思われる。この世界を探せば似た料理は存在する可能性は高い。

 

「この料理そのものは意外というだけでしかないが、『原型』として見ると面白いぞ。塩と香辛料の方はそのままでも酒のつまみになるが、ハーブなり野菜を粉にして混ぜれば別の味が作れる。パンを切るのではなく、もっと食べ易くて薄い土台を小麦から作っても良いだろう」

 

「なるほど。味付けの組み合わせ、土台の組み合わせですか」

 

「家計を預かる私としては、砂糖や香辛料以外を使いたいですけどね」

 

 シモーヌの方は素直に受け取ったが、ルミの方は苦笑している。

 

騎士修行も兼ねて何度も迷宮に潜ったシモーヌは、必要になったら迷宮にまた赴けば良いと思えるのだろう。自分が食べる為なら『そんなことをするくらいなら売却してしまうべきだ』というかもしれないが、エレーヌには甘い所がある。主君に甘味を届ける為なら許容する可能性は高かった。ルミの方が庶民の感覚としてなら正しい。この料理が周囲でメジャーになっていないのはレアドロップ品を売るのではなく、そのまま使うというのは贅沢というイメージが定着している影響と思われた。

 

「さっきも話に出たが『やるかやらないか』の話だしな。帝都やペルマスクで探せばこんな料理も普通にあるかもしれん。まあ、俺が探すのは別のモノだが……四人目は正式に暗殺者にする事にした」

 

 食事をして落ち着いてきたところで昭信は話を今日の議題に戻した。

 

残る議題は四人目の話込みで装備品に関してのものである。どうせ議論するのであれば、大前提としての四人目の話をしてからの方が楽ではある。後はそのメンバーに何処まで秘密を話すのかの問題だと思われる。

 

「それなりの戦士がペルマスクで雇えるなら雇うし、無理せず手元のメンバーを育てても良い。その場合はもうルミを手放す気は無いから、嫁に寄こせと言わない者が前提になるが……ゲオルグで問題は無いか? 今のところは暴走もせず臆病でもないそうだが」

 

「あ、ありがとうございます。ゲオルグで問題ないかと思います。彼は年の離れた弟の為に奴隷になったので、将来に呼び寄せるか援助を許せば言う事を聞いてくれると思いますよ。他にも家族がいる者が居ますが、同じように目を掛ければ良いでしょう」

 

 同種族の男に渡さないと言われてルミは顔を赤らめた。

 

昭信との距離は信頼こそあるがどこか距離を感じたが、今では一緒に居る家族として寄り添おうとしているのが分かる。独占欲とか言葉を掛ける掛けない以前に、努力する態度が出てきたことで互いに分かり合えるような気がしてきたのだ。

 

「ではゲオルグに話をするかどうかは、ペルマスクに行ってみてからだな。どちらにせよ秘密に関してはそれなりに守れる者を選ぶことになるが、それでも段階的に様子を見て話していく。それこそ信用できるまでは探索者として育てている誰かを内陣メンバーに仮決定しておいて、装備は完成品を渡していけばいいだけだからな」

 

「御屋形さまのおっしゃる通りかと。貴族も重要な秘密は後継者のみにしか話さないものです。それゆえにお嬢様は苦労しておられますが……」

 

 昭信は秘密に関する問題を段階的に開示する事にした。

 

最初から最後まで疑っていては話が始まらない。それこそ奴隷を購入してもそいつが誰かに喋らないとも限らないのだ。だから人格的に問題無ければパーティーに加えて様子を見て、このくらいなら問題無いと分かってから教えていくつもりだった。とはいえスキルスロット説をルミやシモーヌ以外に話す必要は無いし、それこそ勘違いしている間はルミが鍛冶師であることすら説明する必要は無い。考慮している秘密としては、『複数ジョブがあるので探索者が不要な事』だけなら話しても問題無いと分かってから機を見て話せば良いのである。もちろん仮メンバーとして探索者のドワーフを選び続ければそれも話さなくて済むのはあるが、少しずつ互いを知り相手が裏切りそうにないならば問題の無い部分から話してみる気ではいた。

 

「土産でも持って話に行くさ。俺に話すかは別にして愚痴くらいは言えるだろう」

 

「御屋形様……お嬢様をお願いします」

 

「言っただろう。お前の苦労も背負ってやると」

 

「はい……」

 

 昭信はシモーヌの顔を見つめた。エレーヌに似ているが違う所も多い。

 

年齢差もあるが髪型はシャギーの金髪で緩やかな傾斜があり、エレーヌの方は切りそろえた亜麻色のオカッパを維持している時点で違う。性格の方はシモーヌが思いつめるところがあり視野が狭いが、そこはエレーヌを守ろうとしていたり基本的には戦う者として鍛えられたのだから仕方がないだろう。ただどちらも真面目で重荷を背負っているからこそ、昭信は代わりに背負ってやりたいと思うのだ。

 

「さて、本格的に装備について話すとしようか。まず段階的に目の前の優先段階、次に持続的に目指す段階、理想的な最終段階に分ける。たとえとして麻痺に関する灌木のスキル結晶で言えば、俺とシモーヌが最優先、暗殺者の武器は継続的に購入していく段階で入手してから。ルミも含めた全員に防具に付与するのは、ダマスカス鋼や聖銀製の入手も考えれば最終段階だな」

 

「そうですね。御屋形様と私が持てば問題なく戦えるかと」

 

「より良い装備が手に入れば、一新することになりますしね」

 

 昭信が例えとして麻痺を挙げたことで、シモーヌとルミも頷いた。

 

十六層以降を後回しにしているのは敵の数以前に麻痺が怖いからだ。単純な人数問題であれば立ち止まって迎撃すれば済む話である。数が増えることと特殊能力で麻痺する可能性、この二つが同時に起きるからこそ恐ろしいのである。よって今直ぐ必要なのは昭信とシモーヌに麻痺耐性のある装備を用意する事。暗殺者は現時点で影も形もないので、レベリングにより成長してからの話であろう。

 

「ルミ。この三段階による形こそ俺たちの装備に対する『原型』となる。石化の脅威が存在するならばサンゴのスキル結晶を二つ用意して、眠りの能力が存在するならばやはり羊のスキル結晶を二つ優先的に用意するし、これは毒も同様だな。暗殺者の武器はその後、申し訳ないがルミを始めとした者はおさがり前提で、最後になるだろう」

 

「問題ありません。そのお話は以前にも聞いておりました」

 

 これは麻痺だけではなく、考え方の申し送りである。

 

石化と眠りを次のたとえに使ったが、他の要素にも言えてくる。手持ちの結晶であったり、今発注している結晶。今回の会議の後にスキル付与を行ったり、シュナイドラーから連絡が入った後に、次に何を発注するかも変わって来るのだ。全員分の装備品は後回しにする話は聞いているし、ルミは次なる話を尋ねておくことにする。

 

「では他の結晶はいかがなさいますか?」

 

「俺のアクセサリーに付ける攻撃力二倍は欲しいな。申し訳ないがエレーヌ用の装備は後になる。これは探索者の枠を俺が担う場合、今はともかく威力に不足する可能性がある。今後を考えればトロールの防御無視も欲しいが、どちらにせよ手持ちのコボルトは使う事になるだろうな。片方が優先段階、もう片方が継続段階だ。スライム二枚もそのくらい……やはり十六階層に照準を合わせることになるか」

 

 スキル結晶と装備があっても、今必要とは限らない。

 

現時点でルミの成長が停滞し、昭信の成長も同じようになったところだ。経験からして階層に対する適正問題が出たのだろう。十五層に移ったらまた上がるとしても同様に停滞すると思われる。すると攻撃力が頭打ちになり、経験値効率を二十倍と二十分の一の累計四百倍率から落として複数ジョブを増やすか、探索者を加えて昭信が攻撃に使えるジョブを入れるしかないのである。それを考えれば、攻撃力二倍か防御無視(40%)は欲しい所であろう。

 

「その辺りで手持ちの結晶は使い切る物と、後に残す物になると思う。そこから先ほどの継続段階の話を再開。暗殺者用の灌木と羊にコボルトまでは優先に移し、次の継続的強化に関しては三案あって、問題なく強い詠唱中断の兎か、その後に来る敵を見据えてのお試しで毒だな。足止め狙いで石化を入れるのも考慮している」

 

「マスター。石化よりも麻痺と眠りを優先される理由は何でしょうか?」

 

「成功率と俺たちの戦い方との相性だな。暫く攻撃を止めてくれればいい」

 

「そういえば石化は確率が低いのでしたか。なるほど」

 

 ある程度は以前に聞いている話だが、昭信は考えと言葉を整理した。

 

状態異常の付与率は低いが、眠り・麻痺・石化の順に難しくなるそうだ。毒は眠りと同じか、やや高い気がするものの効果が低いイメージがある。目の前の敵を止めることを優先するならば、眠りと麻痺を優先し、石化に躊躇う理由も判った。鋼鉄の剣は最大で三つスロットがある可能性があると聞いているので(実際作ったし)、どの程度の成功率があるか分からない状態で、行動停止を三種類付けるか悩むのは分からなくもない。

 

「話を聞く限り、状態異常はこちらが付与に成功するかどうかの動きをした後、相手が耐えきるかどうかの順番になるようだ。仮に腕の良い暗殺者に育てたとして二回か三回の攻撃のうち一回ほど成功したとしても、相手が耐えたらまた再挑戦になる。だが毒・眠りが与え易く麻痺がそれに準じるならば付与自体は成功するとして、相手が失敗するかどうかの勝負になると思う」

 

 原作でもあった事だが、スキルが無いと何十回も攻撃が必要である。

 

これはそもそも発動せず、発動判定の後に相手が耐えてしまうかどうかの順番になっているからだろう。暗殺者の付与率が上がっても、なかなか石化に成功しないのはその為だ。逆に状態異常耐性ダウンは、相手の抵抗判定率そのものを下げてしまうがゼロにはなり難いのだと思われた(攻撃側が防御側の抵抗値を突破する計算である場合、上回る実力があるなら確実に成功してしまうがそうなってはいない為)。

 

「では麻痺と眠りを先行して試し、足りなければ石化、魔法陣を止められないならば詠唱中断、間に合うならば毒としましょうか。その結果を最終的に、ダマスカス鋼以上の装備にまとめれば良いと思います」

 

「そうだな。コボルトは順次注文するとして、後は先ほどの基準で判断してくれ」

 

 こうして装備に関しての申し送りをいったん終えておく。

 

探せば言っておくべきことはあるかもしれないが、四人目の追加メンバーを育て、十六層を越え二十層に至るまでに考えに整理がつくだろう。こうして昭信は見据えた自分の限界を少しずつ越えていく事にした。そこにはルミとシモーヌ、そしてエレーヌの姿もあるだろう。願わくは四人目とも同じように信頼関係を築ければと思うのであった。

 

 

●スキル結晶に関して。

・手元の結晶。

蝙蝠。サイクロプス。蟻、芋虫、はさみ式植物、コボルト、ヤギ

 

・入手予定。

コボルトx3、トロール、スライムx2、灌木x2

 

・優先段階で付与。

 サイクロプスとコボルトでの攻撃力二倍、+の芋虫はいったん据え置き(ここまでは現段階で作成可能。次回テスト)

 

・継続的な強化。

1:コボルトx2と灌木x2で麻痺耐性

2:トロールとコボルトで防御無視(40%)

(手紙が届き次第に回収。作成)

 

3:スライムx2とコボルトで物理耐性。コボルトが二枚足りないので発注。

 

4:麻痺付与と眠り付与、それぞれにコボルトが必要なので二枚発注予定。

(暗殺者が居ないので、急がないが発注計画に入れる)

 

・次回発注予定。

・コボルトx4(うちx2は少し高めで、残りは相場で)

・灌木と羊を一枚ずつ追加。どっちも成功しなければ頼むと伝達

 

・将来的な計画

・エレーヌへの吸精のスタッフ、ひもろぎのアクセサリーないし武器、身代わりのミサンガ

 

 

 




 と言う訳で装備の話をまとめ直しました。
ついでに料理の話を付け加え、四人目の話を確定しておきました。
次回から丁寧に書く部分の様子を見て、バランスも見ます。自分では丁寧に書いてるつもりでもそうでない可能性もありますし、逆にクドイ場合もあるので。

●装備段階
 トリアージ的な三つの段階を用意することにしました。
「●●が必要だが、今直ぐは要らんな。急がないので頼む」
みたいな感じで伝達できるようにしておきます。

以前にも書いた事があある内容ですが、改めて整理した感じですね。

●四人目とドワーフたちの個性付け
 アンケートの結果、暗殺者に。
現実を見据えてペルマスクの伝手で雇えるならそれで、無理なら手元喉ワーフで。どちらにせよ、ドワーフたちの詳細は少しずつ付けて行きます。

まあ今回話の出たゲオルグも弟が居て、家族の為に奴隷になったというのは良くある話なので、詳細でも何でもないのですが、今回の主題では無いので。

●状態異常付与に関して
 途中で計算しているのは、原作を見て思った事で、確定の話ではありません。

石化10%くらいと仮定して、十回から二十回切っても石化しないのは、成功はしてるけど、相手が抵抗していて、また次の機会で成功したとかいう計算になります。

・状態異常の基礎成功率。
 眠りで50%、麻痺で30%、石化で10%と改定して
これに状態異常付与能力を加算、または割増しで計算。

・状態異常耐性
 付与発動の後に、相手が抵抗判定を行う。
足し引きの結果で突破する型だと高レベルの暗殺者が成功すると100%になってしまうが、そうではないため。

また、状態異常ダウンをかけても成功率があんまり下がらないのは、やはり耐性も割引的な扱いなので、50%の低効率に30レベルの博徒がダウンを懸けても、50%-30%ではなく、50%の70%で35%が残る為と思われる。
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