異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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盗賊退治のリザルト

「第二迷宮で盗賊を倒し一応の節目を迎えた。よって明日は意味ある半休とする」

 

「エレーヌ様への報告ですな? ご一緒させていただきます」

 

「ああ。グスタフには付いてきてもらおう」

 

 盗賊たちを倒した日の夜、昭信は食事の時にドワーフたちに予定を伝えた。

 

以前にも領主の館に同行したグスタフを伴い、エレーヌへ『盗賊が何とかなった』と仮報告としてではあるが成果を伝えるためである。

 

「ゲオルグは弟と、アメリアは子供たちと逢ってこい。援助するにせよ、いずれこの館に迎えるにせよ、今の内から話をしておけば向こうも予定の立てようがあるだろう」

 

「おお! 主殿、ありがとうございます!」

 

「うちの子もよろこんでくれますよ」

 

 昭信は以前から打診している話を此処ですることにした。

 

どうせ臨時休暇を与えることになるなら意味のある事をさせる。それがこの家での半休であり、基本的には本人の意向に添っているが昭信やルミが主導する(自分達だけでダンジョンに潜る事は、疲労度を見て決める必要があるので)。

 

「他の者にも伝えておくが、もし将来を誓った相手がいたとか、憎からず思っている者がいるとか、親族が困っていたり縁者が面白そうな仕事をしているから手伝いたいなら遠慮なく言え。ゲオルグとアメリアだけ贔屓する気はないし、俺の役に立つかもしれんからな。俺好みの服を仕立て、俺好みの酒を仕込む。どうだ? ありがちな話だろう」

 

「そいつは助かりやす。酒が手にはいりゃあ肉は自前で何とかなるんで」

 

「アウグストてめえ、関係なけりゃ酒屋に援助なんかしねえだろ。調子にのんな」

 

「がはは。言ってやるなよヒューゴー。こいつあそこの未亡人にホの字なんさ」

 

 テーブルを見回して他のドワーフたちに声を掛けるが全体的に好評だった。

 

三十代の中でも若いアウグストという男は酒飲みだったが、ドワーフなのでいつもの事だと思っていた。小遣いを酒に費やす飲兵衛というだけではなく、酒屋の未亡人に惚れているという話など初めて聞いた。そんな彼をいさめる程度には年嵩でリーダー格のヒューゴーが、この屋敷に愛着を持ってくれているとは思っていなかったし、年上の彼がしらない情報を普段は目立たないビヨルンが知っているとも思わなかった。打ち解けて話してみないと分からないものである。

 

「ルミはグレースを連れて帝都のギルド神殿に行ってくれ。帰りは急がなくて良いから、シュナイドラーの所に行って芋虫のスキル結晶を三つばかり注文してきてくれ。何か手に入っていた場合は適当な追加も含めて頼む。グレースは帰りに伝えた例の件だ。憶えているな?」

 

「お任せください。必要な内容を伝えて参りますね」

 

「役目を果たして参ります」

 

 今度は右の席に居るルミと、左後ろで給仕をしているグレースに声を掛けた。

 

彼女たちの行動は意味深さを残すものであり、特に此処では詳しく公表しない事に意味がある。ルミにはかなりの裁量権を任せており一番奴隷として篤く扱っていると見せるためで分かり易い。複雑なのはグレースの方で、帝都の騎士の詰め所や賞金稼ぎのギルドでインテリジェンスカードを賞金に替えるついでに盗賊たちの話を詳しく尋ねさせつつ……『暗殺者ギルドに行ってジョブチェンジした可能性』を示唆しておくためだ。もしアメリアが眠りの鋼鉄剣が付与率高めになっていくことを知った時、『あの時だ』と思わせるためである。

 

「さあ。今日はダンジョン産の肉をたらふく食え。もちろんドロップ品として俺が購入した扱いにする。乾杯!」

 

「そいつは景気が良いや! 流石は大将! 酒も頼んます! 乾杯!」

 

「アウグストはいつも調子に乗ってやがんなあ。まあいいけどよ。乾杯!」

 

「そう言ってやるなヒューゴー。ダンジョンの中では勝手を許さんがな」

 

 昭信は肉の串を右手に、左手に杯を持って乾杯の音頭をとった。

 

今晩の料理は肉を定型のサイズに刺して火を通し易くし、野菜と交互に刺したバーベキューである。分かり易くて料理は簡単。この家に設置したサラマンドラという大型鉄板(銅製)は上下から火で焙り、次々に串を焼いて行った。元の世界から持ち込んだ技術など肉のサイズを一定にして焼いた程度である。食レポをする余裕もなく次から次に肉串が消えていったという。

 

 

「良い装備ですのに、思ったよりもスキルスロットというものは無い物なのですね」

 

「確率的に『有るか無いか』を繰り返した果てだろうからな。それぞれが十分の一くらいで、質の高い装備ならそれぞれの格に応じた回数だけ抽選があるんじゃないか? だから最終的に十分の三か四くらいに収束されると広まっているんだろうよ」

 

 そして夜も更けていき、宴会が終わった後で戦利品のリザルトだ。

 

賞金は帝都の詰め所なり賞金稼ぎのギルドで行うが、装備品のスロットや持ち物確認は屋敷でもできる。洗って血の汚れを落して確認してみるが本当に少ない。フルでスロットが存在するものは無い(1つしかない皮は例外とする)。スロットが二つある装備など、頭目の付けていた竜革のグローブとジャケット、よりにもよって探索者の付けていた鋼鉄のデミグリーブにしかない。昭信の付けているデミグリーブを使い回す気だったので、別の装備に欲しかったところである。

 

「手元の金は合わせて一万も無いというのは予想通りだが……ドロップ品も大したことは無いな。樹木のスキル結晶が一つあるのは良いとして……何の効果なんだ?」

 

「精神強化ですね。コボルトを使えば精神二倍で魔法使い以外の呪文使い用です」

 

「これはまた微妙な……コボルトを使えば悪くないが、使うほどか悩むな」

 

 戦利品の中にパピルスでメモを貼られたスキル結晶があった。

 

換金役だった探索者が何処で見つけた物かを忘れないための備忘録だろう。昭信自身は鑑定があるから分かるのだが、ルミに尋ねるためには中身が分からないと駄目なのでこのメモは意外と助かった。とはいえスキル結晶が即座に意味のある有益な効果とも限らないのだが。

 

「考え方は取り置きを含めて三つあると思います。二つ目はマスターのデミグリーブにコボルト付きで付与し、状態異常の耐性向上やMPの補填に充てるものです。マスターが全力で戦い続けることにはそれだけの意味がありますしね。ダマスカス鋼製以上の装備が見つかった場合でも、シモーヌさんのお役に立つかと思います」

 

「なるほど。将来の使い道もあるなら悪くはないな。最後の一つは?」

 

「牛の結晶と共にそのまま付与してシモーヌさんが、後に我々が使います」

 

 精神の能力値には幾つかの効果がある。

 

状態異常耐性を僅かながら向上させてくれ、MPがそれなりに増えてくれ、最後の魔法ダメージが微妙に増加する。昭信にとって魔法ダメージに意味はないが、少しでも耐性が上昇するなら意味のある事だ。そしてMPがどれだけ増えるのか分からないが、今よりも増えるならばスラッシュを併用する事を前提にしてもよいかもしれない。現状では不要であるが、剣士が50レベルになった時に得られるジョブのスキル次第ではビーストアタックと併用してボスも一撃で倒せるかもしれないかった。もっと良い装備が手に入った場合でも、シモーヌにとっては魔法ダメージ向上も含めて悪くない装備になるだろう。

 

「一つ目の考え方は二つ目に派生しますが、有用であるという前提でコボルトの余裕が出来るまでひとまず取っておきます。二つめは今のうちから備えておき少しでも危険が少なくなるように、技を使うのに躊躇が無くなるようにというためですね。最後の案はそこまでの価値と見なさず、今の改善に充ててしまう訳です。もちろん売ってしまっても構いませんが、我々以外にはあまり使わないかと思います」

 

「全てはコボルトの個数か。三つ目は無いとして二に近い一だな」

 

「ではコボルトに余裕が出るたびに考慮し直しますね」

 

 決断の決め手は『その後も含めた有用性』だろう。

 

状態異常に対する保険は幾らあっても良いし、MPは将来含めて無駄にならない。そして新しい装備で作り直した時、シモーヌが使えるならば魔法ダメージが上がる効果でも意味が出てくるだろう。対して牛込みで今直ぐつける案は、移動力が上がるしそれなりに精神も上がるのだろうが、どこまで効果があるのか不明なのだ。それに加えて将来はそれほど使わない可能があるならば、昭信が装備を更新する時用に取っておく方がマシだと思えたのである(自分たちで牛や樹木のスキル結晶を拾うなら話は別だが)。

 

「こんにちはエレーヌ。ご機嫌はいかがかな?」

 

「盗賊が退治されたそうで、ひとまず安堵しておりますわ」

 

 昭信が午前中に十七層から十八層を巡りつつ、訪問の予定を伝えていた。

 

エレーヌは戦闘に参加したシモーヌより話を聞いており、にこやかな笑みを浮かべた。心労の種が一つ減った上で、それを行なったのが昭信である。嬉しい事は嬉しいが、伝言で『とある懸念』を伝えられたことから憂いが完全に晴れたわけではない。

 

「それで、インテリジェンスカードはこちらに持ってきてないとの事ですが?」

 

「ええ。贈り物として的確だったか判らないのと、連中の戦い方が洗練しておりましてね。詳しい話を聞きに帝都へ赴かせております。今は倒したと言っても、様子見期間と考えていてください」

 

 そう言って昭信は木工職人に加工させた衣装棚を眺める。

 

万が一を考えて贈る予定だった中型サイズ鏡を早めに嵌め込ませたのだ。贈り物を活用していることを示すためか、エレーヌは軽く開いて扉の裏に張られた鏡を見せてくれている。その配慮に笑みを返すことで示したのだ。そして懐からパピルスを取り出して説明を始めた。

 

「出遭ったのは十二層。正面の盗賊は囮で、音の立て易い鋼鉄の鎧を悪徳の探索者が付けておりました。そして十二層の魔物など歯牙に掛けない屈強な盗賊が四名、後ろから奇襲を掛ける算段だったのです。仮に十字路であればそれぞれの方向から襲ってきたでしょう」

 

「まぁ……。乙女にする話ではございませんが、そのご懸念は伝わりましたわ」

 

 奇襲も挟み撃ちも定番の戦術だが、盗賊がやるには妙に洗練されていた。

 

頭目を始めとして強い方の盗賊は四人全員が30レベル以上。これが何十人も一家を構える盗賊団ならまだしも、地方の迷宮を巡って適当に稼いで歩いている連中にしては強過ぎるし連携が取れてい過ぎるのだ。何処かの雇われであったり、大商人と裏で手を組んでいても不思議はないほどである。

 

「他にも連中が持っていたスキル結晶にはブラヒム語で何の結晶なのかメモがついておりました。売るためだとは思いますが、もしかしたら誰か(・・)に送るためかもしれません。『当て物』のコツは傍証の当て推量が一つ二つでは話さぬもの、余人に説明する前にエレーヌ嬢にだけは伝えておこうと思いまして参上した次第です」

 

「……っ。……~!」

 

 昭信の説明にエレーヌは百面相をしていた。

 

最初は念のための話かと思っていたが、何かの陰謀の可能性もあるという。盗賊に襲われた彼女としては恐ろしく、昭信に慰めてほしいのだが直接に伝える訳にもいかない。すでに恋人であるとか、正式に婚約者となったならば縋りついてもよいのだが、今の状態でそれをやったら恥ずかしい行為だと自覚していたのもあるだろう。説明の途中で何となく察した昭信は、『これはエレーヌを心配して適当な理由を付けてやってきたんですよ』と付け加えたのである。

 

「エレーヌ嬢……いや、エレーヌ。もし何処かの大商人や他の派閥からの干渉であろうと、俺が何とかしてみせる。君は安心していてくれ」

 

「はい! シモーヌがお菓子を作っておりますのでお茶に致しましょう」

 

 以前も言ったが昭信はデリカシーは分かるが空気は読めない。

 

何を言えば良いのか分からないので『君の敵は全部俺が倒すから安心してほしい』と励ましたのだ。女の子が言われて嬉しい台詞の上位には入らないのだろうが『君の為に!』という言葉は刺さるものがあった。まして自分を盗賊から救ってくれた男の言葉である。励ましとしてはこれ以上ないであろう。

 

「失礼します。拙い腕前ですがどうぞ」

 

「まあシモーヌってば。前に散々練習したじゃないですの」

 

「ははは。いただきましょう」

 

 出てきたのは以前に昭信が作ったパンの耳やラスクだった。

 

あの時と違うのは貴族の館だからか、あるいは女の子向けの味付けだからか砂糖まみれであったことだ。それを食べた昭信は『酪があるともっと美味しくなるからいずれ取りに行こう』と文字通りお茶を濁したのである。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士44レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

獣戦士44/英雄40/剣士45/ソードマスター35

 

薬草採取士27/神官27/料理人25/探索34

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一、ワープ、詠唱省略。69

 

獲得経験値二十倍・4thジョブ。70。あまりは結晶促進。

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師32

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士27

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者15レベル

 

資金。10万7000ナール

 

小口現金。3000ナール(常時調整)

 

●特記するべき事項

・盗賊の戦利品。

竜革の頭巾(空き)、竜革のジャケット(空き、空き)、竜革のグローブ(空き、空き)、竜革のブーツ(なし)。鋼鉄のオープンヘルム(なし)、鋼鉄の胸当て(なし)、鋼鉄のグローブ(なし)、鋼鉄のデミグリーブ(空き、空き)。硬革装備一式x2、革装備と皮装備が無数。樹木のスキル結晶。

 

インテリジェンスカード。32万ナール(ルミが預かり中)。




という訳で盗賊退治後の話です。
半日しか戦ってないのでレベルUPは控えめ。グレースだけ顕著。
ドワーフの性格を少しずつ出しています。

●帝都のギルド神殿で
 換金するついでに話を聞きに行った感じですね。
傍目からは『あの時、転職のためにいったのね』に聞こえるようにしてるかんじ。ついでに言うと、換金した場所が入先に知られる仕様だったら困るからですな(傭兵団みたいな盗賊だとスポンサーにバレて困るので)。

●本日のスキル結晶
「樹木」
 精神強化、コボルトを使うと精神二倍。
なお、この場合の強化・二倍とは、ファーストジョブのレベルによる基礎能力値のこと。仲間のジョブによる影響は入らない(主人公なら精神+44/88)。

盗賊たちがナーシャ第二迷宮十一層を調べている間に落とした。
寄らば大樹の陰、大樹将軍。みたいなイメージ。

●盗賊たちの裏?
 今の所、ただの盗賊にしては怪しいレベルです。
ちなみに主人公が真っ先に探索者を悪即斬している影響もあります(二回目)。空気を読んで捕虜を取るとか思いもしないので。

懸賞金はハインツ一味よりもあまり多くないようにしています。
25万 + サイコロx2 で期待値出した感じですね。
竜革の装備一式が一番高い戦利品でしょう。

●次回『剣豪』
 ようやく最初のジョブが中位になります。
まあ能力値は他のみなさんとあんまり変わらないと思うのでスキルが多少違う程度ですね。
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