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「二十三層から三十三層に掛けての攻略に関して少し話をしておきたい。知ってのとおり二十三層で何度も戦い、今では二十四層に進んで多少は戦ったこともある」
「モロクタウルスとブラックフロッグ。モンスターとしての格が完全に上でしたね」
「ルミの言うとおりだ。能力だけでなく動きも魔法陣の展開頻度も高くなる」
この日は祭の片付けもあり、半日戦って情報収集と相談に力を入れた。
昭信とルミが前もって話を作り内陣メンバーで相談を始めていく。その手前にはナーシャ二十三階層以降のモンスター名と、現在所持している装備のリストを簡単に記した木の板がある。誰もがそれを見て話し合う事が出来る。
ナーシャ第二迷宮中層。二十三、モロクタウルス。二十四、ブラックフロッグ。
二十五、グミスライム。二十六、ドライブドラゴン。二十七、ノンレムゴーレム。
二十八、サイクロプス。二十九、シザーリザード。三十、ロックバード。
三十一、ケープカープ。三十二、タルタートル。三十三、ハーフハーブ。
ナーシャ第一迷宮の傾向は序盤に食料系が集まり易く、中間に難関、終盤に薬品系となり易い。中層でもその傾向が反映されており、二十五層のグミスライムに二十六層のドライブドラゴンと食料品かつ難敵が並んでおり、おかげで人気度の高い二十七層のノンレムゴーレムが他の迷宮と比べて閑古鳥が鳴いている有様だった。
「現状で可能な十分な修練を積み装備も中層に挑むだけなら問題のない物を整えている。だが、俺たちはその先を進むし苦戦などしてはいられない。少しずつ装備を更新し、途中でまた修練を積む必要が出てくるだろう。逆に対処さえできるならば必ずや乗り越えられると信じている」
「御屋形さま。やれと御命令ください。必ずや成し遂げるでしょう」
「旦那さまの御指示に従います」
昭信の話をシモーヌとグレースがそれぞれ肯定した。
自分の目的の無いグレースはいつも通りだが、シモーヌの方は最近になって意見が減ってきたような気がする。戦闘では多少女らしい言葉が出てきた程度であまり差はないのだが……。やはり昭信が百獣王になったことで従うべきだという思いが強くなったのかもしれない。
「二人もそう言ってくれると信じていたぞ。では改めて説明するが……訓練相手に狙うべき場所は二十七層ボスのノンレムゴーレムという定石は変わらない。戦い易くダマスカス鋼も落とすからな」
「難敵である二十五層のグミスライムと二十六層のドライブドラゴンが問題です」
「確か祭の時に御屋形様さまからグミスライムには対処手段があると聞いたな」
昭信が目標を告げるとルミが問題点を指摘しシモーヌが対抗して口を開いた。
こういうところは変わらないが伝聞情報ながら意見としては正しい。その情報が正しいという意味ではなく、話の筋として対策が分かっているならばそれを焦点にすべきだからだ。
二十五、グミスライム。二十六、ドライブドラゴン。●二十七、ノンレムゴーレム。
昭信はモンスターの配置表のうち二列目に居るノンレムゴーレムに目印のサインを付けた。
「そうだ。シモーヌの言う通りグミスライムには対処手段があるはずだ。でなければ魔法使いの居ない全てのパーティーがグミスライムを避ける必要がある。それどころか魔法使いが居てもなお数十発の魔法を放ちながら突き進むことになるだろうな」
「地方ではあり得る話だと思いましたが確かに不自然な話ですね。マスター」
昭信の話に事前に相談しているルミが合わせてくる。
根回しと言えばそうだが、こうすることで話がスムーズに進むし、第三者が話を混ぜることで適度に相談が出来るだろう。やり過ぎればワンマン会議になるが今のところは順調に進んでいた。
「そこで考えた最初の方法は知られている弱点をそのまま突くこと。旋風剣のような装備を複数揃えて異なる者が所持しておくことだな。グミスライムは魔法に弱いというのもあるが、呑み込まれたら焼き払うしかないというのもある。トカゲか人魚の結晶をオークションで探して残りをシュナイドラーに頼むのが分かり易い対処法だろう」
「詠唱共鳴もありますからシモーヌさんが呑まれた時に合わせてもう一人ですね」
「聖銀の短剣が安ければ御館さまが三本目を所持されても良いかもしれません」
まずは妥当な案であり、魔法ダメージを与える装備を複数本揃える案。
ルミが鋼鉄の剣に付けても良いし六人目担当になる探索者役が所持していても良いだろう。盗賊たちが持っていた剣はスロットがなかったので外陣メンバーが使っているが、改めてスロット付きを購入して付与しても良いだろう。シモーヌが言うように聖銀製の短剣を昭信が持つのもアリだが金額と使用頻度を考えたら、ひもろぎを付けて鋼鉄の短剣で十分であろう。
「次に試してから正しい仮説であったならば導入する案になる。それはグミスライムの能力はクラムシェルの殻みたいな『防御的な行動』と考える説だ。防御削減の能力に加えて『魔法防御が下がる代わりに物理に強くなる』という技を使っていると考える訳だ。もしこの仮説が当たっているならば、防御無視や眠りの付与が効くだろう」
「そこで一時的に二十五層で試し、有効であればシュナイドラー様に発注しながら二十四層で鍛えるわけですね」
昭信の説に基づいてルミがプランを簡単に構築する。
根回しの段階で考え始めていたのだろうがこういう部分も含めて案が進むのは良いことだ。もちろん特定の方向に固まって抜け出せなくなることもあるので注意が必要だが、ひとまず今は考える余地が少ないので問題ないだろう。
(考え方としてはゼリーの中にタピオカやナタデココが入っているようなものだな。大部分が急所じゃないから攻撃が通じない……。いや、核なんてあるのか? それを考えたら油みたいな本体が水主体のゼリーの中に混ざっていると考える方がそれらしいのか。そして大部分は捨てても変形しても良いが、本体である油部分が出てしまったり揮発するとマズイわけだ)
昭信はTRPGの知識で補完しようとしたがゲームとは違う。
原作でも核とか重要器官が描かれたことはなく、それを考えたならば核などという都合の良いものがあるとは考えない方がいい。あくまでデュランダルのような防御無視攻撃で高い攻撃力をもって斬り割けば倒せるという程度なのだろう。説明用に料理かなにかで使える材料で想像しながら適当に中継ぎの話を入れることにした。
「ルミの言う通りだ。我が尊師は聖剣でグミスライムを倒したので可能だとは思う」
「そのお話も祭で聞きましたが素晴らしいお方だったのですね御屋形さま」
(誰だソイツと言ったのは忘れてないんだが……だいぶ都合が良いというか……。やはり人間の性格というのは完全じゃないんだろうな。俺の性格にも難があるしみんなそれぞれの良い部分を見て補い合うように暮らしてるわけだ。シモーヌのこういう面も可愛いと思えば可愛く思えてくる。ベッドで躾けるネタにだけしておくか)
適当に口にした話にシモーヌが相槌を打ってくる。
剣の試合をした時に原作主人公の名前に懸けて勝負をしたわけだが、その時にシモーヌが売り言葉に買い言葉でバッサリ切り捨てたことは忘れていなかった。とはいえ自分も性格が悪いと言われることには自覚がある。それゆえに怒ったりなどはせず、エッチの最中に焦らせたり焦らしたりするための言葉攻めに使おうと我慢することにした。
「どうしてグミスライムに通じないのかは『卵』を思い出してもらえば分かり易いと思う。殻も卵黄も卵白も同じ色で分かり難いとして卵黄だけを切らねば通じない。卵と違って殻もブヨブヨとしているし殻座で繋がっていないから、好き勝手に移動して卵黄だけを切り難い訳だ。それとも卵白と卵黄をそれぞれスライムスターチを混ぜた物と言えば分かるか?」
「唐突な例えですがマスターのおっしゃることはなんとなくは分かります」
「スライムスターチもあったはずです。持ってまいりましょうか?」
「そこまでは良い。今は分かり難い急所があると考えてくれればな」
トロミを付けるスライムスターチはグミスライムのドロップ品だ。
そしてグミスライムが落とすスライムの結晶は物理ダメージ削減の効果がある。それらの合わせ技だと思えばなんとなく分かるのだろう。ルミは根回し段階でその事を先に言ってくれと苦笑するが、グレースがキッチンに行こうとしたので昭信が止めたことで話が終わってしまった。
「以上が俺の腹案になる。他に何か案は有るか? 有ったら遠慮なく話してくれ」
「では私から。この機に毒の付与を行いたいと思います。理由としては以前からの案でもありスライム対策になることですね。それとこの間のT字路での挟撃時に、マスター頼りであった我々の弱さを思い知らされました。毒を受ければ眠りは解除されますが我々も弾みで攻撃してしまいますし、眠らせ続ければいつか倒せますので」
昭信が促すと自分の案をルミが出してきた。
前々から昭信が毒付与の可能性を試したがっていたこともある。それとは別に左右から挟まれた時に三人娘だけでは守り続けるしかないことに着目したらしい。確かにその点で言えば毒を付与した後は防御を固めて詠唱を中断させれば、いつか勝てるというのは安心感に繋がるだろう。
「一理ある。ただ防御無視の効果を試してから、そちらという考えもあるが?」
「それは役割が散らかりますし、どうしてもと言うならばダマスカス鋼製以上の武器で試せば良いかと思います。その際に防御無視を付けるのかそれとも石化も付けるのかで判断すれば良いでしょう」
念の為に昭信が別意見を述べるとルミは考えていた案を補強した。
防御無視は火力に繋がるスキル付与で役目が敵を倒すことになる。だから相手の動きを眠りや麻痺で次々止めて、ついでに毒を付与することだとするならば『もう少しで倒せそうだから攻撃し続ける』と欲張ってしまうのだ。もちろんグレースならば性格的に次の敵を狙ってもう少しであろうとも次の敵を狙う可能性はあった。しかしあくまで可能性であり、武器も更新時に他の者へ渡すのだからなおさら役目は絞るべきだろう。
「なるほど。理解した。ではルミの槍はどうする? 現時点では外陣メンバーに譲ることになるが、何かを付与して残せば眠りの剣とどちらかが余ることになる。俺の武器も残すだろうしな」
「外陣メンバーに回すなら多重の付与はやり過ぎでしょう。妨害でも十分です」
「スキルスロットがあると信じられるようになりましたし、妨害は惜しいんですよね」
「悩ましい所だな」
強権の鋼鉄槍はそのままでも有用なのでずっとルミが使っている。
だがシモーヌの言うように外陣メンバー行きにするなら多重付与はやり過ぎなのだ。強権装備と言えばそれだけで騎士家ならば家宝レベルの代物であり、貴族家でも次男三男が家に残る場合はそのまま使うレベルである。それを貸し出すのだから『お前たちには騎士団として期待している』という言葉に他ならず、これが多重付与と成ればやり過ぎなのは間違いがない。
「考え方としては強権武器が余ったので試したとか、間違えて眠りや防御無視を付与したと言ってオークションに掛ける事ですかね」
「論外だ。それは貴族家の誉れを知らなさ過ぎる言葉だぞルミ」
「有用過ぎて手放す筈がないからな。やるとしても同等品との交換あたりかな」
「伝世の品同士の交換ですか? それこそ貴族家の婚姻レベルですよ御館さま」
オークションに赴くことのあるルミが案を出すとシモーヌが否定した。
ならばと昭信が別案を口にしても同様だ。言われてみれば詠唱中断と眠りのついた武器(防御無視でもいい)があれば有能な獣戦士ならばそれだけで大成するだろう。実際に昭信は詠唱中断・MP吸収・防御無視のついた武器でビーストアタックを連打している。このランクの武器を手放すのは論外だし、交換するとしたら昭信とエレーヌに子供が数人出来たら持参金に持たせるくらいだろう。
「柵というものが改めて面倒くさいものだと理解したよ。では今の鋼鉄の槍は別にして良い槍が手に入ったら考えるとしよう」
「旦那様の思し召しのままに」
「「同じく」」
最終的に昭信が仮決定を下すとこれまで口を挟まなかったグレースが頷く。
口論していたルミとシモーヌもこれに追随してこの場は先送りになったのである。
●リザルト
アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士50レベル。
活性枠。入替枠。不要枠。
獣戦士50/英雄47/ソードマスター44/剣豪14/百獣王4
薬草採取士27/神官27/料理人30/剣士50/探索43(四人の時は上記と入れ替え)
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1
更新順(古 → 新)
キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65
獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。
/装備
・強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、防御無視40%)
・鋼鉄の鉢金(空き、空き、空き)
・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、空き)
・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)
・駿馬のデミグリーヴ(移動力増強、跳躍力増強、精神二倍)
・よりしろのシルバーアクセサリー(身代わり、攻撃力二倍)
ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師35
/装備
・強権の鋼鉄槍(詠唱中断、空き、空き)
・鋼鉄のオープンヘルム(なし)
・鋼鉄の胸当て(なし)
・鋼鉄のグローブ(なし)、
・鋼鉄のデミグリーブ(空き、空き)
・身代わりのミサンガ(身代わり)
シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士32
/装備
・つむじかぜのシミター(旋風剣 、詠唱中断、HP吸収)、
・鋼鉄の盾(空き、空き)
・鋼鉄の額金(空き、空き)
・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、睡眠耐性)
・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)
・鋼鉄のデミグリーブ(空き、空き)
・身代わりのミサンガ(身代わり)
グレース。人族。♀。22歳。暗殺者25レベル
/装備
・睡眠の鋼鉄の片手剣(睡眠添付、麻痺添付、空き)
・鋼鉄の盾(詠唱中断、空き、空き)
・竜革の頭巾(空き)
・竜革のジャケット(空き、空き)
・竜革のグローブ(空き、空き)
・竜革のブーツ(なし)
・身代わりのミサンガ(身代わり)
資金。37万ナール
新技術の継続的譲渡契約(残り50万ナール分の代価)
スキル結晶。蝙蝠。蟻、はさみ式植物、ヤギ、コボルトx1、牛、貝。(コボルトx3枚・灌木・羊を入手予定)
スキルの発注予定。人魚かトカゲ(両方でも良い)・コボルト入荷したら入れ替えで再発注。蟻1~2(今回使う毒付与の補充)。後はオークション次第。
今回はこれからの攻略についての話です。
一応は装備が揃ったので、目先の強敵さえなんとかなれば、後は楽勝で進むという感じですね。ナーシャ十六層で麻痺対策すれば二十二層まで楽勝で進んだのと似ています。
●グミスライム強すぎ説
お祭りでは話した内容の補強です。
一度登場すると三層分出てくるわけですが、そのたびに毎回魔法を使うの?
魔法使いがいるパーティーでもそれは大変だし、居ないならばみんな諦めることになりますよね。もちろん原作でセリーが『レムゴーレムは魔法使いが居ないパーティーで倒し易い最後のボスです』と言ってますが、グミスライムもドライブドラゴンも出ない場所へ迂回しに行き、『レムゴーレムが比較的上に居る層だけ修行に倒しに行く』というのを全員がやるのかというと疑問に思う訳です。まあ「中層以降は魔法使いの居ないパーティーはお断り」前提なのでしょうけどね。
それはともかくとして、原作でデュランダル使って倒せてるなら、大火力ないし防御無視で行けるのでしょう。
1:物理ダメージ軽減(20%)
2:物理ダメージ削減(40%)
3:スライムの特殊性(60%)
4:上位スライムの特殊性(80%)
こういう感じで、防御無視が効くと考えれば整合性が採れるな。と思った次第ですね。
●装備枠と役目と処分問題
この辺は貴族家の勢力下というか柵問題ですね。
まあこのストーリーは最初からドワーフの奴隷を手に入れてお屋敷もあるという流れでした。多少のマイナスがないと嘘でしょう。
●レベル
半日の戦闘なので対して上がってません。
ルミはハッキリと停滞、シモーヌが若干上がるけど緩めに、グレースが妥当に上昇(そのうちルミ以外も止まる)という感じですね。二十七層でボス戦を繰り返せばまた上がると思いますが。ただし、エクセルで簡単な計算式つくって経験値と階層ごとの漸減率をいるだけなので、増え過ぎ・少な過ぎがあれば修正すると思います。