異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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グミスライム

 コボルトの結晶が三個になり予備の属性剣用の結晶も手に入った。

 

そこで真鉄の槍に詠唱中断を付与して持ち替え、強権の鋼鉄槍は外陣メンバーへ貸し出しを行う。トカゲの結晶は鋼鉄の短剣に付与し火葬剣とした(聖銀のサーベルは名前を強権にしたいのでまた今度)。最後に毒牙を催眠の片手剣に付与すればグミスライム用の対策装備はひとまず完成である。

 

「毒牙もかなりの付与率だな」

 

「そうですね。これで御屋形さまの不在時でも何とかなりそうです」

 

 まず二十四層のブラックフロッグで毒牙の実験。

 

付与率が高い事を確認し、その力で敵を倒すまでどの程度の時間が掛かるかを確認しておいた。まずは昭信が数を減らして後はシモーヌが守るだけで良いので実験は簡単である。やろうと思えば三人娘と探索者担当のドワーフが攻撃し続けることで一体ずつ順番に倒せるだろう。

 

「問題はせっかく眠ってる敵を起こしてしまう可能性がある事ですが……我々で攻撃し続けてますので、咄嗟に手を止める方が難しいのでこんなものでしょう」

 

 ルミが現時点の問題点を挙げた。

 

催眠と麻痺だけの付与ならば眠ったら攻撃するまで眠りっぱなしだが、毒牙を付けたことで毒のダメージが生じるたびに目を覚ましてしまうのだ。人間ならば混乱して何をしてよいか分からない状態でもモンスターは近くの相手を殴るので油断は禁物であった。

 

「アタシらを鍛えてもらってなきゃそうでもないんでしょうが……すみませんね」

 

「アメリアが謝る必要はない。たまたま複数付与できた幸運と引き替えでもある。それを考えたら大したことではないさ」

 

 ドワーフたちは順番に鍛えることで全体的にレベルを上げている。

 

一人に絞り過ぎると不自然な成長を齎すからというのもあるだろう。こうなってくると連携も難しいわけで、色々な理由もあって眠りを与えた状態で誰かが殴ってしまい、『眠らせ続けて隔離』なんて咄嗟の連携は難しいのだ。考えないものとして扱われた(そういう意味でも石化は優秀であり、それだけに付与率が低くはある)。

 

(毒の付与率はやはり眠りと同じかそれ以上というところだな。暗殺者以外でも付与し易いからダメージを与えておけるが、与え過ぎないのも良い。生き残ってるところに俺がトドメを刺せば獲得経験値を増やせるからな。程よくHPが減っていればビーストアタック無しでも倒せるのも都合が良い。グミスライムにも効くか次第だが、ルミの槍にも付与するのが良いかもしれんな)

 

 継続ダメージは割合固定なので即死はしないが時間経過でダメージが入る。

 

これは倒す手段としてはいささか遅いと言えるが、昭信が倒さないと獲得経験値や結晶促進へのボーナスがないという状態には丁度良いとも言えるのだ。このため真鉄の槍に付与して詠唱中断のついでに付与を狙えるのも都合が良かった。相手が抵抗する問題で三割前後の突破率であろうとも攻撃技を持たない鍛冶師が詠唱中断しながら付与できるならば問題ないからだ。

 

「……? 旦那さま。コレを」

 

「スキル結晶か。自力で落としたのは幸運だが……あれだけ戦ったモロクタウルスではなく偶々通りがかったブラックフロッグが落とすとは奇妙なものだな。スライムや牛人の結晶なら高額だったのだろうが……まあこれも物欲センサーというものか。このままボス部屋を経て次の階層に向かうぞ」

 

 そして実験戦闘のついでに思わぬ拾い物をグレースが渡してくれた。

 

跳躍力二倍を付与できる蛙のスキル結晶である。そのうちにダマスカス以上の足防具が手に入ったら更新する予定だったので損にはならない。だが購入希望者が少ないから安くなりがちな蛙ではなく、物理ダメージ削減のスライムであったり、腕力が上がると聞いた牛人ではなかったことが少しだけ残念であった。とはいえ二千ナール程度の差でしかなく結晶を拾うこと自体が得なので気にしても仕方あるまいと割り切ることにした昭信である。

 

「できるだけグミスライムの数が居ない場所を探す。グレースは一体ほどのグミスライムに眠りや毒を付与してみろ。他の者は倒すというよりも飛びついてくるのを防いでいれば良い。俺はいつも通り数を減らした後で無傷のグミスライムに切りつけてみる」

 

「承知しました旦那さま。思し召しのままに」

 

「承知しました御館さま。そのように手配します」

 

 最初は簡単な実験から始める事にする。

 

グレースが攻撃して眠りや毒が付与できるのか、昭信が全力で攻撃して倒せるのかの確認である。その為にもまずは邪魔者を倒すことが先決で、昭信は曲がり角を使って、あまり嗅いだことのないグミスライムの臭いが少ない場所を選んだ。後は無関係な雑魚を倒してから計測の予定だ。シモーヌたちはその間に余計なダメージを受けないようにガードするだけである。

 

「四体だが近くに別グループが居ないタイミングか……こんなものだろう。手筈通りに頼んだぞ」

 

「承知しました旦那さま。思し召しのままに」

 

「攻撃は私が防ぐ。お前たちは下がりながら受けろ」

 

「「了解」」

 

 都合よくグミスライムの数が三体以下などということはない。

 

だが迷宮の構造上、どうしても囲まれ易かった後続のモンスターと出会い易い場所はあるものだ。まして不人気の階層となればこうなるのは当然と言える。昭信の嗅覚はあくまで『嗅いだことのない臭いが少ない方』としか考慮していないので、その通路にグミスライムが他所より少なければ数が少ないと判断してしまうのだ。この辺りはロクサーヌほど知覚力が高くないためだろう。

 

(まずはオーバーホエルミング! そしてビーストアタック! 次……本命のグミスライムだ!)

 

 後から考えたら滑稽な程に入念なほどに昭信は戦いをし掛け始めた。

 

突っ込んでくるモロクタウルスを即座に切り捨てるのではなく、回り込むように視界を確保。間違ってもグミスライムの奇襲を受けないようにしつつ魔法陣を展開している個体を確認した。そして仲間たちが飛びつく前衛のスライムに対処する中、後衛として留まっている個体に向かったのである。いつもであればそいつを切って魔法陣を止めたら楽勝で戦闘終了の筈であった。

 

「っ!? この手応えは効いてないのか? それとも……悪の獣のもののふの、百煉の力を解き放つ。致命! モータルストライク!」

 

 牽制で放った攻撃は魔法陣こそキャンセルしたが効いている感じがしない。

 

ゲル状のナニカを両断しはしたが通り抜けただけという感触だったのだ。それでいて衝撃によって少し後退していたので多少は通じたのかもしれない。そこでいつものビーストアタックではなくモータルストライクに切り替えて攻撃してみたのだ。咄嗟の判断で技を切り替えることが出来たのはグミスライムの動きが鈍く移動しながらの攻撃ではなかったためである。

 

「流石に効いた……が、これでも倒しきれんとは……いよいよ物理攻撃に対して防御力があるな。次の段階にいってみるか」

 

 攻撃の威力を全て与えられる位置だったがそれでも倒しきれていない。

 

この事には二つの意味があった。物理攻撃の大半が削減されているという事、それでも倒し切れるだけの過剰な火力があれば普通に倒せる相手だという事である。これは『物理攻撃が通じない』のではなく『物理攻撃の何割かを削減する』という能力をグミスライムが持つからだろう。その事を確認した昭信は一体目のグミスライムにトドメを刺して二体目に向かう。

 

(オーバーホエルミング。……ビーストアタック、スマッシュ!)

 

 今度はビーストアタックにスマッシュを追加してみた。

 

ベースとなる能力値的にモータルストライクの方が威力が高いのだが、相手がグミスライムならばこちらの方が当て易い。またスマッシュとモータルストライクの組み合わせで放つことは今までやったことがないのもあって、複数のスキルを組み合わせでもこちらを選んでおいた。その結果は真っ二つではあるがあまりの威力に体勢が崩れてしまっている。攻撃力も上がるが体感時間を早めるために使用したオーバーホエルミングの効果もあって、斬り割いたグミスライムの動きをスローモーションのように眺めている昭信であったという。

 

(……爆散という感じじゃないな。これはオーバーホエルミング分も併せてようやく倒せた感じかな? 原作の描写も合わせて物理ダメージの60%から70%を削減されている感じだろうな。防御無視が効いているなら60%削減で防御も有効、効いていないなら70%削減という辺りが怪しいな)

 

 スキルを二つ併用する必要のなかった昭信が大技を組み合わせても足りない。

 

この時点で大幅に物理ダメージを削減されているのは間違いがなかった。原作主人公は低レベル時とはいえデュランダル(防御無視100%・攻撃力五倍)を使っても三回攻撃している。60%削減されて40%の攻撃を三回繰り返したと思えば何となく納得できる部分はあった。昭信が一回で済んだのは、火力の高いビーストアタックとスマッシュを使っていたりレベルが高くなっているからだろう。

 

(ビーストアタックもだがスマッシュやモータルストライクはかなりのMPを消費する。このままだとあまりにコストが悪いな。剣豪と百獣王のレベルをもっと上げるとして暫く剣士を戻すか? ……おっと。もう二体いて片方は眠りと毒の実験中だったな)

 

 これまで過剰火力だと思っていた複数スキルでの攻撃が妥当になっている。

 

それで倒せるならば倒すべきだと判断する一方で、それが可能なのはあくまでグミスライムの動きが鈍いからだ。不可思議な挙動をされたら戸惑うだろうし、毎回このペースではMP回復用にボーナススキルを振り分ける必要が出てくるだろう。異世界転移して迷宮へ挑み始めた頃の気分を思い出す昭信であった。ともあれ今は実験中なのだ。気を抜かずに見守らなければなるまい。

 

「グレース。そっちの塩梅はどうだ? 毒と眠りは効いているか?」

 

「こちらはこのように順調です、旦那様。間もなく倒せるかと存じます」

 

 眠りと毒の実験をしているグレースに尋ねると順調に効いているらしい。

 

見守ってこそいるが攻撃していないのを見ると、どうやら一緒に付けている麻痺が効いているから監視に留めているのだろう。命令に従って状態の確認だけしておりもう一体をシモーヌに任せて見守り続けている。彼女の性格を知らない者が見れば『どうして麻痺させているのにもう一体に向かわないのだ?』と怒る者もいるかもしれない。だが昭信の命令は実験して確認しろという事だし、モンスターが麻痺から回復する可能性を考えればそのまま監視するグレースの行動は決して間違いでは無かった。

 

「シモーヌ。数体のグミスライムを抑えさせてすまんな。どうだった?」

 

「人と違い動きが読めないのですが、ゆっくりなので何とか守れています」

 

「その解釈で正しい。こいつはモンスターの中でも意味不明な行動をする。突然繰り出す動きが特殊動作であるとか強烈な攻撃である可能性もある。油断せずに当たってくれ。こいつらを倒したら次は属性剣を試すからな」

 

 次は昭信が一体ずつ倒している間に場を維持したシモーヌに確認を取る。

 

すると彼女もグミスライムの動き自体は鈍く感じていたようだ。不定形の体を動かしているからこそ物理的に鈍く感じるが、不定形だからこそその挙動が読めないのだろう。正直な話、最初に倒したモロクタウルスなど何度も戦ったおかげでオーバーホエルミングで余裕を作ったことが余計だと思えたくらいである。

 

「みんな御苦労。あとは通常攻撃で倒してみるか。ルミも攻撃してくれ」

 

「はい。この槍を試してみます、マスター」

 

 MPの節約もあって昭信はルミを誘って最後の一体に攻撃を始めた。

 

動きを観察するためでもあるので多少は時間が掛かっても構わない。臭いは先ほどと変わらないし旋風剣を使えるシモーヌが待機しているならば取り付かれてもなんとかなる可能性は高かったからである。ここで見るべきポイントは今までの繰り返しなのかそれとも特殊な動きなのか。そして大技を組み合わせて一撃で葬るための位置取りができるかどうかであろう。

 

「こんなものかな? 次は俺が火葬剣で切り込んでからいつもの剣に持ち替える。シモーヌはその動きを見て旋風剣で異なる個体へ次々と攻撃を繰り返してくれ。他の者は暫くシモーヌを守るくらいで構わない。その戦いで属性剣の効き具合を確かめたら、火葬剣と旋風剣を同じ目標に使ってどこまで追い込めるかを見る」

 

「承知しました御屋形さま。今回は私の両脇に頼む」

 

「「「了解」」」

 

 最後のグミスライムを倒した後で次の実験を始める。

 

属性剣で一撃与えた後でどれほど倒し易くなっているかを確認するプランだ。魔法使いが居る場合にストーム系で一回削ったくらいの塩梅になるだろう。グミスライムは魔法が苦手なので普通の魔法使い一発分でもかなり体力が削れるはずだ。昭信としてはそれでオーバーホエルミングを使わないでも一撃で倒せると期待しているし、ひもろぎの代用に二つの属性剣を連続で用いることで計算しようとしていた。

 

「近道なく真っ直ぐなその道を、現るはもののふの意志。吟我、火葬剣!」

 

「始まったか。行くぞ……牙無きものの啼く声に……現るは……」

 

「「「っ」」」

 

 次の敵集団を探しつつ昭信は強壮剤を飲み下した。

 

消耗したMPはそれで補いつつ予備の武器である鋼鉄の短剣を引き抜き詠唱を始める。そして発生した炎のブレードでグミスライムを切りつけてから、いつもの強権の鋼鉄剣に持ち替え。その頃にはシモーヌが呪文を唱え終わり風のブレードで隣の個体へ切りつけていたのだ。その様子を見て満足した昭信はビーストアタックとスマッシュを組み合わせる態勢へと移行して一体目にトドメを刺したのであった。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士50レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

獣戦士50/英雄48/ソードマスター46/剣豪17/百獣王9

 

薬草採取士27/神官27/料理人30/剣士50/探索43(四人の時は上記と入れ替え)

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65

 

獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。

 

/装備

・強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、防御無視40%)

・かがほの鋼鉄短剣(火葬剣、空き)

・鋼鉄の鉢金(空き、空き、空き)

・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、空き)

・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)

・駿馬のデミグリーヴ(移動力増強、跳躍力増強、精神二倍)

・よりしろのシルバーアクセサリー(身代わり、攻撃力二倍)

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師36

/装備

・強権の真鉄槍(詠唱中断、空き、空き、空き、空き)

・鋼鉄のオープンヘルム(なし)

・鋼鉄の胸当て(なし)

・鋼鉄のグローブ(なし)、

・鋼鉄のデミグリーブ(空き、空き)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士33

/装備

・つむじかぜのシミター(旋風剣 、詠唱中断、HP吸収)、

・鋼鉄の盾(空き、空き)

・鋼鉄の額金(空き、空き)

・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、睡眠耐性)

・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)

・鋼鉄のデミグリーブ(空き、空き)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者28レベル

/装備

・睡眠の鋼鉄の片手剣(睡眠添付、麻痺添付、毒牙)

・鋼鉄の盾(詠唱中断、空き、空き)

・竜革の頭巾(空き)

・竜革のジャケット(空き、空き)

・竜革のグローブ(空き、空き)

・竜革のブーツ(なし)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

資金。16万5000ナール

 

小口現金。3000ナール(常時調整)

 

●特記するべき事項

スキル結晶。蝙蝠。蟻、はさみ式植物、ヤギ、貝、牛・芋虫、蛙。(コボルトx3枚・灌木・羊・トロール・人魚x2・蟻x2・つぼ式食虫植物x2・兎。を入手予定)




 というわけで早速に実験です。

●足りないコボルト
 そしていきなり使い果たすコボルトx3。
ひもろぎがあればもっとマシでしたし、聖銀の剣だったら猶更。
どうにかしないといけないと思いつつ、コボルトケンプファーに凸するのはまだ先ですね。

●毒と眠り
 他のお話と違った組み合わせにしたいのもありますが、成功率の差もあります。この二つは原作でも成功し易いので、暗殺者でなくとも成功できるのと、相手の強さとかあんまり関係なくなるので「追加ダメージ」「守りながら強敵にダメージ」という目的で使っています。もう一人タッカーが居るとか、主人公が攻撃魔法使うなら話は別なのでしょうけどね。(1ターンだけ攻撃止まればいい、継続ダメージで少し倒し易く成れば良いくらい)。

●グミスライム
1:物理攻撃60%マイナスで適用(効かない訳ではない)
2:レベルに比例する防御値は存在する(1との合わせ技が凄い)
3:石化しても麻痺しても、1の特殊能力は効いている
4:動きが鈍いというか行動半径が狭いので、大技を当て易い
5:最終的に攻撃魔法を一発・二発当て、後は強引に押し切るのが常連の手口(主人公は大技でダブルスキル)
6:主人公の見出した回答は次回

だいたいこんな感じの解釈ですね。
これまで活躍しなかったダブルスキルがようやく日の目を浴びるチャンス。でもMP消費は増大して大変。そこで属性剣で削ることに意味が出て、ようやくパーティープレイらしい戦いになります。まあエレーヌちゃんが合流してストーム系放てば終わりなのですが。

●火葬剣
「近道なく真っ直ぐなその道を、現るはもののふの意志。吟我、火葬剣!」

科捜研の女の主題歌の一つがモチーフ。
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