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「今日はいつもと戦術を変える。全員の行動が魔法陣を潰すのは最優先という所までは変わらない。シモーヌ、お前が旋風剣を唱えた相手を俺が片付ける。皆を守りながら戦うことを主とし、旋風剣は余裕があれば使うくらいでいい。俺はその後、他の者が傷つけた敵を始末していく」
「その流れならば問題なく指揮できると思います」
昭信は昨日出た問題に対処する事にした。
指揮と防御担当のシモーヌが役割を抱え過ぎるという問題を、彼女の負担を軽くするように動くと宣言したのだ。これで新たな課題である属性剣に関しては目の前で魔法陣が展開されておらず仲間がピンチでもなかったら使うという流れで良くなる。昭信が援護に回る以上はピンチになることもない筈なので、実質的にシモーヌは目の前の敵が魔法陣を展開しているかを確認するだけで良い。
「グレースはアメリアに強権の盾を渡して、お前自身は付与に専念しろ。俺が倒したら次を狙うくらいで攻撃を続行。アメリアは強権の盾で魔法陣を潰し、かがほの鋼鉄短剣による火葬剣の呪文はシモーヌと同じく余裕があれば無傷の奴に唱えろ」
「承知しました。旦那さまの思し召しのままに」
「大任だけどまずはやってみようかねえ」
次にグレースの負担を軽くするために魔法陣のキャンセルは他の者に任せた。
連携訓練の補強もあるので、探索者役のドワーフも暫くはアメリアになる。彼女は料理人のジョブにつかせるつもりなのでもう少し鍛えておきたいからだ。彼女が仕上がっても暫くは料理人のレベル上げになるだろう。
「一週間ほどは午前中にグミスライムで連携訓練。食事を摂って午後から第二迷宮で階層攻略という流れを続ける。連携訓練には集中力を使うし、第二迷宮はようやく美味しいエリアに辿り着いたからな」
「十五層のラブシュラブを越えたら十六層がフライトラップですからね。これで十七層がサラセニアでしたら、第一迷宮は暫く中断してマスターには暫くボス部屋に籠るだけにしていただきたいくらいです」
原作主人公が二日で越えた道のりに一週間というのは長く感じる。
だが本来の探索者はもっと時間をかけて自分達を鍛えるものである。それゆえに原作主人公など知らぬ仲間達に意見などはないし、家計を預かるルミに至っては暫く第一迷宮は放置でもよいとすら思っていた。何しろ自分たち以外は手付かずだった第二迷宮の探索で、薬の材料を落とすエリアに辿り着いたのである。ライバルが居ない状態でここの探索は非常に美味しく、薬は自分達でも使う事から他の探索者に公開するまで潜り続けても利益が出そうなほどである。
「ルミの意見も正しいんだがな。二十三層からのドロップ品の方が高額な物があるのも確かだぞ」
「……そうですね。ピッグホッグやマーブリームの層でまた稼ぎましょう」
ルミがここまでこだわるのはナーシャのギルドで薬の買取があるからだ。
本来は探索者ギルドがリーフのような材料のまま買い取って薬草採取士のギルドへ販売し、そこから探索者ギルドに毒消し丸が戻ってくるという流れである。しかしナーシャでは薬草採取士は居てもギルドはないので、『必要分に限り』と釘は刺されたが薬そのものを買い取ってくれる。リーフの場合は80ナールで買い取りが基本なのに、10個で生産した毒消し丸を一つあたり25ナールで買い取ってくれるという感じになる。一日にあまり数が売れない毒消し丸を前提にしているからバランスが取れているが、滋養丸や強壮丸はたくさん売れるのでルミがガッポリ稼ぎたくなる理由も分かるだろう(附子で作る滋養丸は3個しか作れないが、二グループで十体倒して作った30個450ナールが簡単に売れる)。
「次にシュナイドラーの所へ行った時、一週間は『手つかずだからコボルトの結晶数個で情報を融通する』とでも伝えておいてくれ。薬師の一族経由でも買えるならその方が助かる」
「そうですね。現時点ではコボルトがまるで足りてませんからそういたしましょう」
儲かると言っても所詮は数百ナールの話なのでちゃんと話せば冷静に戻せる。
ここで昭信はルミに冷静さを取り戻すだけではなく情報を有効活用することにした。薬師の一族であるシュナイドラー経由で情報を流せば、少しくらいはコボルトの入手が容易になるのではないかと思ったのだ。現状ではコボルトの結晶は使い道が決まっており、頼んでいる五つが手に入ってもまだ足りなくなるのは予想が出来ていたからである。
「……ゴホン。その辺で良いかルミ? 金策の話はまた今度にしてほしい」
「失礼しましたシモーヌさん」
「よし。そろそろ二十五層に向かうぞ」
「「はい」」」
散歩前のワンコ状態だったシモーヌがジト目を向けると話は終了。
昭信が号令をかけるとそのまま第一迷宮でグミスライムとの戦いに移行することになった。
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「……現るはもののふの意志。吟我、旋風剣!」
「悪の獣のもののふの、百煉の力を解き放つ。致命! モータルストライク!!!」
それなら何度も戦うことでおおよそのペースが分かってきた。
シモーヌが自分の攻撃が届く位置に魔法陣があればそれ出しているモンスターと戦い、そうでなければ旋風剣を使う。もし一回目の攻撃で魔法陣で二回目に旋風剣の場合はシモーヌに任せて昭信は普通に殴ったり、逆に昭信が殴って止める代わりに旋風剣で攻撃したり。どちらにするかは合図できる余裕があるとか、旋風剣で2mのブレードを作ってから複数のグミスライムを狙えるかなどで変わってくる。そういったことも繰り返さねばできるかどうかすら分からなかったことだ。また昭信が使う技もビーストアタックでは駄目だがモータルストライクが直撃させられるなら二つのスキルを重ねなくても良いと分かってきた。それだけ属性剣が通用しているという事であり、グミスライムが魔法に弱いということなのだろう。
「どうだ? 戦う途中で相手を代える方は慣れてきたか?」
「アタシの方は呪文を使わないことすらあるくらいですから問題ないですよ」
「問題は……私の方ですね御屋形さま。まだ慣れない感じがします」
「私は……旦那さまの指示ならなんとか相手を代えることも可能でしょうか」
その上で属性剣や毒付与に関しての感触も判ってきた。
アメリカは強権の盾で殴ることが前提で火葬剣での攻撃は無くても良いから可能。グレースは誰の指示を聞けば分からなくなるので昭信が直接『隣りの敵を斬れ』というならば可能。シモーヌはやはり考えることが多過ぎて判断できないとの事である。
「なるほど。だいたい同時に行う作業次第という事か。シモーヌは気にしなくても良いぞ、エマーロ族じゃあるまいし同時に考えろとか全力で戦えとかは難しいだろう。逆に言えば……だが、ボス戦やそれに似た状況ならどうだ?」
「そうですね。グミスライムが少なければ何とかできるかもしれません」
昭信は全体作業を少なくすることでどこまで可能かを見極めようとしていた。
無理に複雑なシークエンスをやらせる必要はない。その一方で将来的に似たようなことに陥ることありえた。ならば最初からそういう事態は避けるべきだし、訓練で可能ならばその準備をするべきだろうと考えたのだ。
(やはりゲームのようにはいかんな。だが連携訓練の意義はありそうだ。今はまだルミの槍が完成していないが、結晶が到着すれば今の局面はなんとかなる。ここは次のドライブドラゴン戦を見据えて動くべきか……なら、ひもろぎは不要だな。防御用か移動用の結晶を充実させてもよいかもしれん)
仲間たちの感想を聞きながらパーティーアタックの可能性を昭信は感じた。
これまでは超攻撃力に任せておざなりにしてきた連携であるが、互いに共同で事態にあたる意義は大きい。昭信が敵の数を積極的に減らすことにも意義はあるが、シモーヌと役割を分け合って対処することも重要だろう。またルミや探索者役のドワーフのどちらかが一度攻撃をせず、回りこんだり防御に専念することで危険な状況にも対処できるようになるかもしれないと思うのであった。
(次の……といえば勇者もそろそろか。探索者が必要なのかは分からんが、どちらにせよ獣戦士を外すべきなのかそれとも6thジョブにして経験値効率を捨てるべきなのか。悩みどころだな。今の内から考えておこう)
思案と言えばもう一つ、今度は良い悩みがある。
英雄が49レベルに到達して勇者の条件である50レベル目前に迫ったのだ。書籍版ではアイテムボックスのスキルが消えたことから『冒険者が不要になった』という声もあれば『いや冒険者は必要だ』という声もある。あるいは単純に『中位ジョブが複数必要』という考えもあるだろう。冒険者が必要ならば育てるべきだし、仮に不要であっても5thジョブのままでは外せそうなジョブが主力の獣戦士しかないという外すに困る状況に陥るのは目に見えていた。グミスライムと戦う日々の中で答えを出す必要があるだろう。
●リザルト
アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士51レベル。
活性枠。入替枠。不要枠。
獣戦士51/英雄49/ソードマスター47/剣豪20/百獣王14
料理人30/剣士50/薬草採取士30/神官30/探索45(四人の時は上記と入れ替え)
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1
更新順(古 → 新)
キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65
獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。
ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師36
シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士34
グレース。人族。♀。22歳。暗殺者30レベル
資金。20万ナール
という訳で連携訓練が少しずつ形になってきた感じです。
これまでは主人公一人で別のパーティー。もう一つをシモーヌが率いてきました。それを二人で考え方と対処を分担して、一番良い流れで敵を倒すチームプレイに変化していきます。
感覚的にはAI戦闘の条件が分かってきたというよりは、バスケとかサッカーみたいな球技のスポーツで、『誰に何を任せるか』が分かって来たようなものですかね。
●薬の材料ではなく、薬そのものの買い取り
ナーシャのギルドでは探索者ギルドと冒険者ギルドが同じ酒場で、薬草採取士のギルドが存在しないため、『必要分に限り』ギルドで『薬草採取士』から薬の売却を受け付けてくれます。
通常:
1:リーフを80ナールで買い取り(無源)。
2:100ナール~120ナールで薬草採取士ギルドに売却(手間賃・移動費・管理費)
3:毒消し丸を25ナールで薬草採取士ギルドから購入(250ナール)
4:毒消し丸を100ナールで販売(1000ナール)
ナーシャ領など緊急措置:
1:リーフを80ナールで買い取る(無限)
2B:薬草採取士にリーフは売らない。足りなければ依頼を出す。
3B:毒消し丸を25ナールで薬草採取士から買い取る(在庫が減った必要数のみ)
4:毒消し丸を100ナールで販売(1000ナール)
こういう感じになっている扱いです。
で、薬の値段が……。
(売値/買値)
・毒消し丸25/100(ボスだと確定x10個生産。無限には買い取らない)
・滋養丸・強壮丸15/60(雑魚。x3。1日100個あっても良い)
・滋養剤・強壮剤150/600(ボスx3。1日10個あると良いな)
この値段と買取量なので、無傷で倒せる主人公たちは薬だけで何千ナールも儲かり、午前中のドロップ品合わせてかなり儲かってるはずです。とはいえ、あまり荒稼ぎしても他の町の薬草採取士ギルドに目をつけられるし、第二迷宮の情報も順次公開しているので、儲けは一週間くらいでしょう。
●勇者
web版では冒険者必須でアイテムボックス有でしたが、書籍版ではアイテムボックスが無かったとだけ記載されて居ました。これはアイテムボックスまであると強すぎるからなのか、単純に『勇者の条件に冒険者があるのはどうなの? 剣の上手勇者や魔法の上手い勇者が居ても良いよね?」となったのではないかと思います(RPG思考なら冒険者で良いのでしょうが)。
そこで拙作においては『他の中位ジョブが必要』としております。