異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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ドラゴンスレイヤー

「予定を変えて一日早く二十六層のドライブドラゴンに挑む。得られた経験を元に次のスキル結晶を発注する予定だ。ルミ、明日はオークションの後でシュナイドラーのところへ行き次の発注と第二迷宮の情報を渡してきてくれ。俺はペルマスクに細工物を届けた後であちこちの町に寄って武具を見て回る」

 

「お任せくださいマスター」

 

 幾つかの理由があって予定より早く二十五層を切り上げた。

 

口にした通りルミがスキル結晶を買いに向かうのに丁度良い日程になっていることが挙げられる。今日のうちにドライブドラゴンと戦ってみればおおよその戦闘力とパターンが判るから参照にし易いからな。そして木工職人に頼んでいたペルマスクに届ける予定の覗き窓の新作と言うかプロジェクターもどきが完成したのである。代価は既にもらっているが、それはそれとして開発した鏡製品の現品は継続して渡すべきだろう。何だったら色ガラスの破片で作ったオマケを十万ナールくらいで売っても良かった。

 

「さて、ドライブドラゴンの特徴は翼と四肢のある蛇という具合だ。ただし翼で飛ぶのではなく浮遊型でゆったりとしているが、攻撃に移ってからの速度は早い。グミスライムに似ている部分があるから想像は付き易いだろう」

 

「お任せください御屋形さま! どのような強敵であろうとも打倒してみせます!」

 

 シモーヌはよほどグミスライムが苦手らしい。満面の笑みを浮かべていた。

 

ドライブドラゴンは二十三層以降のモンスターで最大の脅威だというのに気楽なものだ。まあ原作のように三十三層ではなく二十六層と浅い段階なのでそれほど苦戦しないと考えているのかもしれない。実際にそうなるかはともかく攻撃したはずなのに六割から七割のダメージが減衰するのは徒労に感じるのかもしれない。とはいえ予想外のことは起きるもの、まさかあんなことになるとは昭信は思ってすらいなかったのである。

 

「御屋形さま! この臭いは!」

 

「ああ。三種混合型の構成だ! 動きが違うからグミスライムを見逃すなよ!」

 

「「「はい!」」」

 

 二十六層に挑んで最初の敵は複雑な臭いであった。

 

この数日で何度も嗅いだグミスライムの臭いと新しく嗅ぐドライブドラゴンらしき臭い。それとはべつにもっと以前に嗅いだ臭いはモロクタウルスだろう。ロクサーヌほど臭いを覚えていない昭信たちも、連日で臭いを嗅いだことでグミスライムの臭いだけは個別に識別できるようになったのかもしれない。

 

「モロクタウルスから近い奴を潰す。その間に皆を頼むぞシモーヌ!」

 

「はい! 魔法陣の片方は私がやる、ルミとアメリアで確実に当てろ」

 

「問題ありません。ドラゴンには少し当て難いですけどね!」

 

「ならアタシがカバーするさ。なんとかなるだろうよ」

 

 まずはそれぞれが得意な分野で行動を割り振っていく。

 

昭信が最も素早いモロクタウルスを始末し、その後に近い奴を狙うと宣言。ここで全体を守るシモーヌが前に出つつグミスライムの一体を斬りつけて魔法陣を破壊し、盾を掲げて迫るドライブドラゴンから仲間を守る。そしてルミとアメリアが二人一組でドライブドラゴンに槍と盾で魔法陣を潰しにいったのである。最後の一人は……。

 

「旦那さま。スライムに毒が入りました」

 

「よくやった! そのまま抑えていろ! ドライブドラゴンは俺が倒す!」

 

 コミュニケーション不足だったグレースも経過を報告するようになっていた。

 

もちろん原作のミリアが行う石化ほど場持ちするわけではない。だが昭信に行動の確認をとるようになっただけマシだし、パーティーの連携がもっと進めばルミなりシモーヌにも確認するようになるかもしれない。今はそれで良いとして、昭信は切り捨てたモロクタウルスに続いてドライブドラゴンを相手取ったのである。ただ、その先の展開は彼が思うような戦いとはかけ離れていたというのが意外ではあった。

 

「……スマッシュ! む……まさか……これは……そういうことなのか?」

 

「気が付かれましたか御屋形さま! ドライブドラゴンは魔法に耐性があり力強くとも遅いのです。このようなものども、もはや恐れるに足らず!」

 

 うねる体を見て思わずスマッシュを放った昭信であるが即死した敵に唖然とした。

 

昨日までグミスライムと悪戦苦闘し、どうやって効率的に倒そうか悩んでいたのが嘘のような流れである。なんというか浮遊しているからこそ動きはゆっくりめで胴体が長いからスマッシュを直撃させ易いのだ。もっとも一番強力なモータルストライクは細い体ゆえに威力が抜けていきそうだが、スマッシュの方が相性が良いと分かれば何の問題もない。唯一の懸念は火力が足りずに倒しきれない場合だが、もしそうであったとしてもビーストアタックを併用すれば倒せてしまうであろう(MP消費を気にしなければの話)。

 

「もしかしなくても位置が低いグミスライムよりも倒し易いのか?」

 

「向いていると思った方向以外には今のところ攻撃してきません。実に戦い易いです。御屋形さま、いっそ全てこいつと戦いませんか?」

 

 思いもしなかったことだが、ドライブドラゴンの方が相当に戦い易いらしい。

 

あるいはシモーヌの神経をそれだけ苛んでいたのかもしれない。ただし、それは勘違いかもしれない。グミスライムを苦手とするばかりにシモーヌがドライブドラゴンと戦いたがっているだけなのだろうか? 昭信はそう疑いつつも、気が付いたら三体いたはずのドライブドラゴンを全て惨殺。残るグミスライムを冷めた目でみている己を自覚するのであった。

 

「一応はドラゴンだ。次は攻撃の脅威度を確認するために残して様子をみよう。魔法陣だけは気をつけてな」

 

「そうですね。私も提案するつもりでした。マスターが切り捨てなければ……」

 

「そうか。では気を付けるとしよう」

 

 こういったことは第三者の方が気が付き易いようでルミの指摘が痛い。

 

グミスライムは連携訓練するにはちょうど良いサンドバックだと思っていたのだが、全員の心に少なくない疵を残していたのかもしれない。原作でロクサーヌが恐れる程ではないと言った理由も分かる気がするし、そのロクサーヌでさえグミスライムに対して連戦しようと言わなかったのも理解できる気がした昭信である。

 

「アタシは受けだけで攻めないなら何とかだねえ」

 

「そうですね。私もですが下がり続けても良いなら、ドライブドラゴンの攻撃はなんとかなると思います。マスター」

 

 それから昼食を挟んで午後も戦ってみて攻撃に関する脅威は観測された。

 

アメリアはお手上げだが盾を掲げて防御に徹すればなんとかできると言い、ルミの方は槍で牽制しながら狙われたら下がるしかないという。浮かんでいる間はのんびりしているように見えるが、攻撃に回るとやはり強烈なのだろう。

 

「なるほどな。グレースとシモーヌはどうだ?」

 

「何も効かなかった時にハッとする事はあります」

 

「私は守るのが仕事ですので問題はありません。それにイザとなれば物理ダメージ削減の鎧もありますから」

 

 付与担当であるグレースは即座に反撃を受ける時が危険だという。

 

シモーヌは防御を受け続ける立場だから一人だけ傾向が違うのだが、やはり装備の用意と心構えがあるかどうかが大きいと聞けた。要するに攻撃担当で物理ダメージ削減が無ければ危険だとは認識しているのだろう。

 

「おおよそ理解した。もう少し戦ってみるつもりだが、グレースの装備にも物理ダメージ削減があった方がいいな。それとルミの装備に移動増強を付ければ安定するだろう。アメリアや交代で入る者にはあくまで強権の盾での体当たりを前提として攻撃は考慮しないでおく」

 

「それなのですがマスター。移動力強化で十分だと思うので、その予算でグレースさんにもいかがでしょうか? 敵を倒して他の相手に回ることもありえます」

 

「確かに無理に下がりまくる必要は無いか。ならその方向で戦いを見てみよう」

 

「はい。必要に合わせて牛のスキル結晶を注文いたしますね」

 

 こうしてドライブドラゴンに対する結論が付いた。

 

待機状態や防御状態では昭信が超火力で一体ずつ倒せる現状では何の問題もない。だがいったん受けに回ると危険なので、付与が出来なかったり一人が集中攻撃を受けて回避しきれない可能性を考慮するというものだ。ルミ・アメリアは下がる事を前提として戦い方を考え、グレースは物理ダメージ削減で守りはするが攻撃のために移動力を付与するという案である。

 

(これでドライブドラゴンは何とかなりそうだな。原作を見る限りおそらくノンレムゴーレムやサイクロプスにも通じる筈だ。それに今日一日戦って勇者のジョブも得られた。やはり冒険者は要らなくなっていたんだな。もう一つ中位ジョブがあれば良いのか、それとも本来は複数ジョブがないから最初から不要なのかは分からんが……どちらにせよこれからを支えてくれる力になるだろう)

 

 階層を上げて適正レベルが変わったからか、ライバルがいない状態でドライブドラゴンを倒し続けたからか分からないが、昭信は勇者のジョブを得ていた。現時点では獣戦士を外すか6thジョブにするか結論が出ていないが、これからの力になってくれるのは間違いがないだろう。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。獣戦士51レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

獣戦士51/英雄50/ソードマスター47/剣豪22/百獣王17

 

薬草採取士27/神官27/料理人30/剣士50/探索43/勇者1

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65

 

獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師37

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士35

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者31レベル

 

資金。21万2000ナール

 

●特筆すべき内容

・スライムの結晶、牛の結晶x2の発注。薬の材料が採れるエリアの伝達




 という訳で『警戒していたのにドラゴン倒し易かったんだが!?』の件。

原作でも仲間たちはあまり強敵と思って居なかったですしね。
あとは魔法連発のメイジビルドよりも、超火力の武人ビルドなら相性が良いのもあります。何しろ全ての魔法が効きにくい(効かない訳ではない?)ドライブドラゴンに対して何発も魔法使ってから剣でトドメ刺すよりも、一発で倒せる大技を五連射する方が敵が減るのが早いというのもあります。まあその分だけグミスライムとは相性が悪かったわけで、下の階層で連携訓練をしていた分だけ、ドライブドラゴンが倒し易くなった感じですね。

なお、これだけ言い訳しておいて何ですが……。
原作で二十五層から三十三層はサクっと本一冊で終わっています。
やはり魔法連打で戦う方が強いのは確実でしょう。弱点突いて範囲攻撃できますし、ロクサーヌとベスタという二枚盾には安心感がありますからね。

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