異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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素通り

「二十七層のノンレムゴーレムは眠っている個体もいるくらい動き出しが遅い。この階層で覚えるべきなのは見え難い相手や臭いの薄い相手を正確に把握すること。そして攻撃が当たる位置のコントロールだ」

 

 昭信はドライブドラゴンとの戦いを切り上げ二十七層での戦いにシフトした。

 

理由としてはシュナイドラーとの提携話をしたことで、第一迷宮・第二迷宮ともに攻略層を増やしておく理由が出来たこと。そしてルミのレベルがまた動かなくなってきたことに加えてシモーヌやグレースも目に見えて鈍化してきたことによる。

 

「俺は視界を塞ぐドライブドラゴンを優先して倒す。シモーヌは前に出て状況把握を優先しろ。グレースは少し待って動くつもりでグミスライムがいる場合はグミスライムを優先、後はいつもと同じで良い」

 

「承知しました。御屋形さまからいただいたこの装備を活かしてみせます」

 

「承知しました。あまり出遅れないように戦わせていただきます。旦那さま」

 

 昭信は足装備を入れ替えてスキル付与に苦心した。

 

自身はダマスカス鋼製のデミグリーブに履き替えて牛・コボルトの結晶で移動力増強。今まで使っていた鋼鉄のデミグリーブをシモーヌに渡して戦場中央への移動をスムーズにさせた。そして牛単独で竜革のブーツに使用してグレースがワンテンポ遅れて動いても問題ないように工夫したのである。蛙は一時的に使わずにコボルトを残したのは、スマッシュやモータルストライクを有効に使うには飛び掛かって体勢が崩れては使えないからというのもあった。

 

「ルミとヒューゴーは魔法陣が見えたらキャンセルの為に前に出て、基本は下がるくらいで構わない。状況が変化したら数人で一体を囲む感じだな」

 

「問題ありません。攻撃は可能な範囲でやらせていただきます」

 

「こちらも問題ないですぞ主殿。その方が助かりますからな」

 

 ルミと探索者のヒュ-ゴーは詠唱中断するのが前提なので無理はしない。

 

状況把握を手伝い『●●がそこにいる』と仲間に伝達するのを覚えつつ、敵が攻撃してきたら下がることで時間稼ぎをおこなう役目である。もう少し装備が良くなればもっと他の役目もあるのだろうが、今のところは牽制メインである。

 

「では行くぞ! 混戦だからグミスライムを見落とすなよ!」

 

「「「はい!」」」

 

 しばらく歩いて竜が空を飛び岩人形が動き出すのが見えた。

 

パっと見た目には四体に見えるが何処かにグミスライムが隠れているのだろう。真っ先に昭信が走り出し、次いでシモーヌがジャンプして敵の前に飛んでいくのが見えた。残り三人はワンテンポ遅れて動き出し、その中からグレースが頭一つ抜け出していく。

 

(ドライブドラゴンだけではなくノンレムゴーレムも問題ないな。確かに堅いがスマッシュで問題なく倒せる。ボス部屋では眠っている事も多いらしいしな、ボスであるレムゴーレムもこのまま倒せるだろう。さて……この階層に何処まで時間をかけるかな?)

 

 戦っていく中で昭信は獣戦士を外しても問題なく戦えていることを自覚した。

 

5thジョブで経験値効率四百倍を維持するためだが、腕力ベースであるスマッシュを使い易い相手なので、腕力の上がらない獣戦士を外したのだ。勇者が10レベル以上になって百獣王が20レベル以上になればモータルストライクの方も悪くないダメージまで戻るだろう。ボス部屋であるレムゴーレムの部屋は本来人気なのだが、グミスライムが出るためにこの迷宮ではあまり人気がないのだ。レベル上げだけならば問題なく可能だろう。

 

「ルミ。ノンレムゴーレムたちが落とす岩は何に使うんだ?」

 

「扱い易い形に加工して建材に使うほか、砕いて砂や水と混ぜ合わせることで遮蔽セメントを作る主材料になります。上層で落ちる別のドロップ品を使う事でフィールドウォークやダンジョンウォークを阻害するそうですが、壁の補強に使う場合はそのままで使えるそうですね」

 

 ここで昭信はルミにドロップ品の使い方を確認することにした。

 

ドライブドラゴンが落す竜革は防具用の罪で、竜皮はコラーゲンの塊なので捨てるところがない。しかし岩の使い道がいまいち思いつかなかったので『どの程度この階層で戦うか』の基準にするために確認したのだ。

 

「セメントに使うということは石灰なのか。……確認するが街道を平坦にして敷き詰めるということはやっても問題無いのか? もちろんエレーヌの許可を取ってだが」

 

「お止めになった方がよろしいかと思います。庭に使うならまだしも『誰の物でもない』扱いになるため、自分の家の建材に使われても文句は言えません。村と村を繋ぐ橋に使う場合でも村人の誰かが見張ってないと、旅人や行商人などが野営用の石釜に使うために持っていくこともあるそうです」

 

 勝手にやるなとか、壊れるから止めろと言われると昭信は思っていた。

 

だがルミの話を聞く限り『誰かの者に対する窃盗罪は厳しく、即奴隷落ち』なのだが。『誰の者でもない物は、何をしても良い』扱いなのだとう。無意味に壊すような馬鹿はいないそうだが、それでも『必要なのだから使って何が悪いの?』と平然と使う人はいるそうなのだ。改めてこの世界の民度に関する基準が分からなくなった昭信である。

 

「そうか……。なら作りたいセメント製品の分だけあれば良いな。このまま戦ってグミスライムを見つけることに慣れたらボスに挑んでそのまま二十八層に向かおう。サイクロプスもパワー型なので動きは普通だから、モンスターのスピードが急に変わって戸惑うことはない筈だ。手応え次第で二十九層に挑みつつ、二十七層のボス戦を繰り返す」

 

「御屋形さまの方針でよろしいかと思います。この程度の相手では敵になりません」

 

「レムゴーレムはダマスカス鋼を落としますからね。効率的だと思います、マスター」

 

 昭信はセメントを使って大々的に何かしたいわけではない。

 

そこで修業用として少人数でも戦い易いレムゴーレム戦に絞って、さっさと二十八層へと向かう事にした。段々とスピードが上がっていけば戸惑う事はないだろうと告げる。強くなるための訓練の意義としてシモーヌは反対せず、ルミの方も効率が良いボス戦に絞るほうが良いと賛成したのである(もちろんグレースやヒューゴーは頷くだけなので割愛している)。

 

「やはり動かないと駄目だな。起きれば強いと分かっていてもあえて待つ気にはなれん。本当を言えばルミの槍に眠りや毒を付与する意義について相談したかったんだが」

 

「それだけの強さを身に着けた御屋形さまが気になさることはないかと」

 

「普通の探索者はただ倒すだけで苦闘すると聞きますからね。マスター」

 

 反動の強い大技を重ねるのは大変だが、眠っていたら簡単に実行できる。

 

昭信にとってレムゴーレムは据物斬りで剣の威力を試すようなものだった。気分よく切ることはできるがそれ以上のことではない。もっと良い武器を手にいれたら技を減らして試そうとか思いつつアッサリと二十七層のボス戦を終える。

 

「サイクロプスのドロップ品はなんだ? シルバーサイクロプスが銀貨を落とすくらいしか知らないんだが」

 

「マスターが知らないのも当然かと。サイクロプスからは壊れた金属を補修する薬の材料が、シルバーサイクロプスからは駄作を破壊するための薬の材料が採れます。どちらも目に悪いそうなので扱いには注意が必要とのことです。ちなみに製鉄にも使えるので扱いはお任せください!」

 

 気分を切り替えて二十八層でのドロップ品を尋ねるとルミが笑顔で答えた。

 

どうやら彼女の家族が鉱山を経営していたころから見知っているらしい。どうやら金属溶剤が作れる層なのだが、ここで昭信には気になることがあった。

 

「どちらも金属を溶かす液体に混ぜる物なんだろうが……駄作?」

 

「なんでも装備品に使って武器製造や防具製造を行うと、まるでスキル結晶を融合しようとして失敗した時のように材料の一部が戻ってくるそうです。ただし材料が失敗した時より増えることもなく、当然ですがスキル結晶が戻ってくることもない。そして補助として使った予備の材料……革などは完全に失なわれるそうですね。ですので基本的には急な注文時に材料を戻したり、よほど自信がない時にしか使わないそうです。そのため私どもの家などで使っておりました」

 

 昭信は頑固な職人が不出な作品を地面に叩きつける姿を思い描いた。

 

その考えは当らずといえども遠からずと言ったところで、どうやら製造した武具を分解するための存在らしい。何に使うのか良く判らないと行ったルミだが、昭信には心当たりがあったのである。

 

「あー、なんだ。それはな……俺はスキルを融合する時に『スキルスロットが必要だ』という説を信じている。だが、そんなモノがあるなどと証明されていないから、分かるとしても隻眼まで至った鍛冶師だけだろう。だから隻眼から見て『スキルを付与する自信が持てる品』以外を駄作として材料に戻すための薬だと思うぞ」

 

「え? あー。なるほど……そういう考えもありますねマスター」

 

「「……」」

 

「……?」

 

 昭信がスロットの無い装備分解用だと言及すると、ルミはそのことに気が付いた。

 

とはいえ大ぴらに口に出すことでもなく言いあぐねているようだ。情報を知らされているシモーヌとグレースは知らないふりを貫いており、ヒューゴーだけが首を傾げている状態だった。

 

「ヒューゴー。今のスキルスロット説はヨタ話として知られている。あまり俺がそういうネタを信じているとは口にしないようにな。それに本当にスキルスロットなどあっても証明のしようがない。おそらくその節を信じている隻眼も殆ど直感でやってるはずだからな」

 

「へえ。そういうことですか。まあワシは鍛冶師でもないので問題ないですよ」

 

 昭信はこの機にヒューゴーの様子をみておくことにした。

 

自分で口にしたスキルスロット説を自分で否定しておく。その上で勝手に周囲に吹聴するならば問題だし、仮に『ルミか、他のドワーフが鍛冶師なのでは?』と疑っていても話さないならば信用できるということだ。疑うとか試すというよりは、こういうことを重ねていっていずれ信用が置けると判断できた時に話せる範囲で告げるつもりであったのだ。

 

「せっかくだからこのままシルバーサイクロプスを倒していってみよう。その後は二十七層の待機部屋に戻って、レムゴーレムを倒してもう一度シルバーサイクロプスを目指す」

 

「「「はい」」」

 

 こうして昭信たちは二つのボス部屋を中心に回し、修練を重ねたということである。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。英雄50レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

英雄50/ソードマスター48/剣豪24/百獣王20/勇者9

 

薬草採取士27/神官27/料理人30/剣士50/探索43/獣戦士51

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65

 

獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。

 

/装備

・強権の鋼鉄の剣(詠唱中断、MP吸収、防御無視40%)

・かがほの鋼鉄短剣(火葬剣、空き)

・鋼鉄の鉢金(空き、空き、空き)

・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、空き)

・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)

・駿馬のダマスカス・デミグリーブ(移動力増強、空き、空き、空き)

・よりしろのシルバーアクセサリー(身代わり、攻撃力二倍)

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師38

/装備

・強権の真鉄槍(詠唱中断、空き、空き、空き、空き)

・鋼鉄のオープンヘルム(なし)

・鋼鉄の胸当て(なし)

・鋼鉄のグローブ(なし)、

・ダマスカス鋼製のデミグリーブ(空き、空き、空き、空き)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士36

/装備

・つむじかぜのシミター(旋風剣 、詠唱中断、HP吸収)

・鋼鉄の盾(空き、空き)

・鋼鉄の額金(空き、空き)

・不畏のチェインメイル(麻痺耐性、物理ダメージ削減、睡眠耐性)

・鋼鉄のガントレット(空き、空き、空き)

・駿馬のデミグリーヴ(移動力増強、跳躍力増強、精神二倍)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者33レベル

/装備

・睡眠の鋼鉄の片手剣(睡眠添付、麻痺添付、毒牙)

・強権の鋼鉄盾(詠唱中断、空き、空き)

・竜革の頭巾(空き)

・竜革のジャケット(空き、空き)

・竜革のグローブ(空き、空き)

・竜革のブーツ(移動強化、空き、空き、空き)

・身代わりのミサンガ(身代わり)

 

資金。26万ナール

 

小口現金。3000ナール(常時調整)

 

●特記するべき事項

スキル結晶。蝙蝠。はさみ式植物、ヤギ、貝、芋虫、蛙、トカゲ、蟻、コボルト。(コボルトx5枚・灌木・羊・トロール・兎・人魚x2・蟻x2・つぼ式食虫植物・スライム・牛を入手予定。割高注文中)

 

装備関連。装備再編計画の途中(ダマスカス鋼製・オリハルコン製・聖銀製・竜革の買い直しなど)

 

・緑魔結晶売却

 

・ダマスカス鋼や竜革を貯蓄開始。




 という訳でノンレムゴーレムの層をほぼスルー(戦わない訳ではない)。

そのままサイクロプス・シルバーサクロプスと戦います。
むしろ迷宮産の素材に関する話ですね。まあ動き出しが鈍い相手は超火力の主人公の相手ではないので、こんなものかと。

●状況把握の訓練
 ゲームのように『相手は●●だ!』『見え難いから気を付けろ!』
みたな配置を管理し、同時にFPSみたく『射線が通らず、届かないなら当たらない』という体験をする為の戦闘ですね。誰もがロクサーヌみたいな天才ではないので、凡人なりに少しずつ訓練する必要があります。

●岩と遮蔽セメント
 原作では特に出てきませんが、岩は石灰岩であるとしました。
そのまま使っても良いけど、砕けばセメントの材料。でも遮蔽セメントには少し材料が足らない感じ。

この岩が遮蔽セメントの材料としたのは、単純に出てくる階層と入手頻度です。中層で手に入るならば『研究者・鍛冶師でも手に入れられるレベル』となりますし、五十層以降にすると金持ちでも手に入れるのが難しくなるからです。なのでセメントの材料であり、混ぜる品は少量で済む……としておきました。

●サイクロプスとシルバーサイクロプスのドロップ品
 捏造ですが現実にある溶剤をモデルにしています。
サイクロプスの方は車の塗装と小さな傷を溶かしてて、まるで傷がついてないように見せる溶剤。シルバーサイクロプスの方は製鉄に使う溶剤ですね。一つ目になってしまうのも、まああり得るか的な素材になります。

なお、この素材を使って『駄作を破壊する』 = スロットがない品を戻す。というのはネタ的に茶器を破壊する陶芸家のイメージとか、ウルティマオンラインとかで素材に戻すコマンドのイメージになります。あっても良い行動だけど特に言及されてないし、「そうだ。ドロップ品が存在することにしよう』とか『せっかくなのでスキルスロット説も混ぜれば良いんじゃね?』となった感じですね。

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