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「シルバーサイクロプスから採れたドロップ品を使ってみたいと思う。ただし現時点で装備を分解する意味はないので、武具の製造可能な段階を確認するためだな。特訓を繰り返しているので鍛冶師ギルドで聞いた年数はあてにならん」
「目的自体はおおむね理解が出来ました。具体的に何をやるかをご説明ください」
昭信たちは二十八層を中心に戦いを繰り広げ、ボス部屋には何度も挑んだ。
二十七層のレムゴーレムなどはダマスカス鋼の最終と特訓目的で一日に何度も何度も、二十八層のシルバーサイクロプスはドロップ品目的で何回かという頻度である。そしてシルバーサイクロプスのレアドロップである、装備を分解するための薬(の素)が採取できたことで昭信はちょっとした実験をしてみることにした。
「製造に使う素材だが鉄、硬革、鋼鉄、竜革、ダマスカス鋼の順で難易度が上がっていると思われる。その一方で分解する時はそこまでの難易度ではないが、それに準じた難易度である可能性が高い。つまり鋼鉄製の装備分解、鋼鉄の装備の製造、竜革の装備の分解、竜革の装備の作成……という具合の流れではないかと思っているんだ」
「そうですね……当たり前の鉄製品と比べてですが……。分解だけなら全て簡単という場合や、分解も製造と同じでない限りはその可能性が高いと思います」
昭信の考え方を聞いて、ルミは自分の経験に照らし合わせて返答した。
鉄製品を壊すだけならばハンマーでたたけばそれで済むので簡単だ。だが、複雑に組み合った物を作っている場合に、混ざらないようにする時は確かに難しかったような気がする。
「ルミ。まずは鋼鉄のグローブを作ってみるんだ。それで途中段階が分かる。その後に竜革のブーツを分解してみてくれ、それでどんな変化が起きるのかが分かる。鍛冶師ギルドにも何度か行っているようだし、レシピは確認しているな?」
「はい。基本的な装備は調べてますので必要数に関しては分かります」
昭信はまず問題の無い部分を済ませておくことにした。
鍛冶師のレベル的に鋼鉄装備ならば問題なく作れるだろう。そこで鋼鉄装備の中で素材の少ないグローブを製作させることにした。その期に盗賊の頭が付けていたスロットの存在しない竜革のブーツを解体させることで、その変化がどんなものかを確認するつもりだったルミの鍛冶師レベルは38なので、原作のセリーの言葉からして竜革の装備はまだ作れなさそうではある。
「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造」
「うむ。確かに鋼鉄のグローブだな。一つだけだがスロットも存在している。これで素材次第で鋼鉄製装備が騎士団に配布できることが判った。見事だぞ、ルミ」
防具製造は呪文名以外が同じ詠唱である。
そのためにルミが詠唱した呪文で問題なく防具が製造可能であった。昭信が鑑定したところ『鋼鉄のグリーブ(空き)』と表示されており、問題なく使用できるのは間違いがない。
「ナーシャ第二迷宮ではまだロートルトロールの層が見つかってません。ボス部屋でロールトロールを倒し続ければ、騎士団の装備が充実しますね御屋形さま!」
「そうだな。薬と同じで材料の買取金と製造料を調整するようにしようか」
「奴隷としての売値の60万ならともかく買値の15万なら届く気がしてきました」
昭信の屋敷では奴隷のやる気を出すために管理をちゃんとやっていた。
たとえば奴隷たちのみのパーティーが薬の材料を拾ってきた場合、探索者ギルドよりも高く買い取って分配する。その価格で薬草採取士の奴隷であるミアが買い取り製造すると、やはり探索者ギルドより高い価格で薬を買い取って屋敷にプールするのだ。今度はその薬を奴隷たちが自分の金であったり、分配予定の金から購入できるようにしているので、少しずつ手元に資金が貯まるように調整していたのだ(もちろん薬草採取士のミアばかりが得しないように、別の部分で調整するが)。
「これは竜革のブーツのうちスロットが無い物だが解体を頼む」
「分かりました。……今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造」
ルミはドロップ品を溶かした薬品を慎重に振りかけると呪文を唱えた。
あくまで最終工程から初期工程に戻すだけなので、こちらも同じ呪文であり詠唱なのだろう。すると竜革が数枚残りほかには何も無かった。だが、実証実験の第二段階としては十分な成功だろう。
「お疲れさま、ルミ。まずは強壮丸を呑んで少し休んでおくれ。次は竜革のブーツを作り直す作業になるからな」
「そうさせていただきます。これからが本番ですからね」
誰でも簡単に分解できる可能性はあるが、それを検証する必要はない。
昭信はここまで強くなり知識を積み上げたルミの努力をねぎらった。そうそう竜革の装備やダマスカス鋼製の装備を分解することはないだろうが、将来的に自給自足できるようになれば話が変わってくる。スロットが存在しないか少ない物は片っ端から分解し、再製造する可能性もあり得たのだ。すくなくともナーシャ二十六層や二十七層が不人気な間は何度でも素材を求めて戦えるのだから。
「いきます! 今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造……ダメでした」
「いや。普通は鋼鉄ですら何年も掛かる物だ。流石にそう都合よくはあるまいよ。だが、三十三層を越えて戦い続ければ可能だと信じている。まずは今の段階の成功と、まだ無理だということが判った事実を喜ぼう。次の段階に進めばよいだけだからな」
残念ながら竜革のブーツが製造されることは無かった。
ちゃんとレシピを調べて必要な皮などの素材も集めてあるのにかかわらずだ。だが鋼鉄製の装備が製造できることには変わりない。昭信としてはルミのレベルが上がり難くなっていることを踏まえても、三十三層以降で戦うころには可能であろうと励ましたのである。
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「申し訳ありません。負傷いたしました」
「気にするな。これまで無傷という方が珍しかったわけだからな。他の者はもっと多く怪我をしている」
やがて二十九層でシザーリザードとの戦闘中にグレースが怪我をした。
昭信としては『このくらい大丈夫』と無申告の方が困るのだ。笑ってジョブを入れ替えて神官の全体手当を施すのであった。
「シモーヌ。以前と比べて負傷が増えたのはやはり速度の認識誤差だと思うか?」
「はい、御屋形さま。サイクロプスはノンレムゴーレムよりマシとはいえ遅かったのでしょう。シザーリザードの背が低いことも考えれば、怪我人が増えるのも止む無しと思われます」
防御・指揮担当のシモーヌに尋ねるがやはりいきなり速度が上がったからだろう。
サイクロプスも楽勝だった時点で少しおかしな話だったが、全体的にスピードが遅く攻撃に移ってから速度が上がるタイプばかりと戦ってきたのだ。今までのイメージと違って『まだ大丈夫』と思ってしまって負傷し易くなったということだろう。
「では二十九層で戦うペースを落として、速度差に慣れる戦いに切り替える。午後も第二迷宮で踏破に充てる時間としてロートルトロールの層を探すとしよう。スライムの結晶が手に入ったら残しているコボルトを使ってグレースの防御上げだな」
「承知しました。ルミとヒューゴーたちは防御重視で対応ですね」
こうして昭信たちは時間をかけて二十九層で戦う事になった。
二十八層でサイクロプスと戦うのは無くして、二十七層のレムゴーレムと戦った後は二十九層で戦うのと反省会の繰り返しである。ともあれその結果は出るだろうし、やがて第一迷宮は三十層、第二迷宮も十八層や十九層と攻略できるだろう。
●リザルト
アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。英雄50レベル。
活性枠。入替枠。不要枠。
英雄50/ソードマスター49/剣豪26/百獣王23/勇者14
薬草採取士27/神官27/料理人30/剣士50/探索43/獣戦士51
村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1
更新順(古 → 新)
キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65
獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。
ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師38
シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士36
グレース。人族。♀。22歳。暗殺者34レベル
資金。29万ナール
という訳で防具の解体をしました。
現在の鍛冶師レベルは、鋼鉄製作可能 → 竜革分解可能 → 竜革政策無理な段階です(誰でも分解できる可能性を検証してないけど)。そのうちにレベルが上がったら、竜革のグローブやチュニックが作れるようになるでしょう。
●苦戦?
苦労してる感じはないですが、負傷者続出です。
とはいえ原作の主人公たちはもっと怪我して手当て繰り返している筈なので、怪我人は断然少ないですね。これはルミを始めとしたドワーフチームが基本的に防御してることも大きいです。三十二層以降で再調整が必要になるでしょう。