●
「やはりこっちの方が早いな。手間が掛かる分だけ面倒だが訓練には成る」
ある程度、戦い慣れたところで昭信は剣をフラガラッハに持ち替えた。
浮いた32pのボーナスポイントを経験値獲得十倍と必要経験値十分の一に置き換えれば、経験値効率が二十五倍率と百倍率の差もあって、あっと言う間に村人レベルが5へと達したのだ。原作主人公が安全マージンとしてデュランダルを使い続けたり、ジョブを増やして色々試していた分が浮いた形である。
(ここからは村人はお役御免として、暫くは獣戦士/英雄/剣士だな。レベルアップまでの記録を残さにゃならんから、経験値効率を少し考える必要があるな)
昭信はジョブの数で経験値が分割されるかを検証するつもりだった。
その為には必要経験値が同じであると思われる剣士と戦士で別々に計測する必要がある。3rdジョブでストップすることを前提にする今は良いが、戦士を入れて計測する時は最低でも5thにする必要があるだろう。その差は12p、流石に右から左に用意できる数値ではない。3レベルの探索者が6か7くらいに成った時に試すとしても、まるで足りてないのだ。その時は経験値十倍を五倍に落とす必要があり、また同じ階層で計測する必要もあるので、面倒なのである。
(ひとまずここから経験値効率を五十倍率に落とすとして、浮いたポイントは結晶化とMP回復にして順次比重を変えていくか。スキルの検証もしたいしな)
無事にジョブを解放した昭信だが、現時点ですることは地味な確認作業である。
奴隷を購入する話はエレーヌたちに投げてしまったし、そもそも奴隷を引き連れて経験を積ませるにしても、第一階層程度でウロウロしていては意味が無い。昭信自身がレベルを上げ、大言壮語ではなくちゃんと強い事を明示できるくらいまでレベルを上げなければならないのだ。またジョブで経験値を分割するかどうかの検証を終えるまでは、迂闊に他のジョブを育てられないのもあった。
(第一に白兵戦スキルの併用に関する確認。第二にビーストアタックの火力型に関する確認。第三にダメージ限界解除に関する確認の一部だな。それを確認していれば、3rdジョブ時点での経験値に関するデータは採れるだろうさ)
雑魚で適当にレベルを上げて、ボスも絡めて検証を始める予定だ。
一つ目は原作主人公が連続魔法を唱えていた事に対する検証である。オーバーホエルミングとラッシュ、あるいは攻撃魔法との組み合わせはあったと思うのでおそらく可能だろう。スキルであり使用タイミングに問題が無ければ併用できるに違いない。後は念じるだけで良いのか、動作も同様なのか、仮に念じるだけで良いならば素早いだけの牽制攻撃に乗せた後、間髪容れずに本命にも乗せることが可能なのかを検証したかった。
(それになにより、今後使っていくならビーストアタックのタイプは今のうちに検証したいからな。もし成長型なら最後の最後まで使い回せる)
次にスキル検証だが、原作でのビーストアタックは少し火力が高過ぎる。
ラッシュが『目に見える上昇』程度で、スラッシュともあまり使用感に差が無いと検証されていた。だが、獣戦士が20レベルを超えていたロクサーヌとはいえ、デュランダル一発から二発分の火力というのは差があり過ぎだと思うのだ。その上で今の昭信が使っても大ダメージが出せるならば固定値型ということになるだろう。仮にラッシュが50ダメージ程度なのにビーストアタックが100~150ダメージと凄い……と仮定した場合(デュランダル100とする)は、成長しても同じ程度ということになる。だが大したダメージが出ないならば、レベル又は能力値由来のダメージということになるだろう。
(理想的なのは白兵系スキルが固定値やレベル依存ではなく、能力値由来である場合かな。もしそうならばジョブを重ねつつ、きちんとレベルを上げれば相当な火力が出せるという事になる)
これらの検証は将来的に重要だった。
もしダメージ固定型ならばすぐに役立つ反面、どこかで火力が頭打ちになるので連発することが前提になるだろう。原作主人公も途中からラッシュを使わなくなったくらいなので、その可能性もあるが……。その場合はMPの上昇率に対して白兵戦系は消費が少ないという事だ。逆に能力値依存の場合は沢山のジョブを取得するのではなく、使用する技に合わせてジョブを重ねれば凄まじい威力が出せるだろう。その上で、レベル依存ではなく能力依存だと昭信が考えるのは、ビーストアタックだけ妙に威力が高かったことだ。普通は仲間に居ない英雄が居たことで、あり得ない敏捷値なり体力とのバランスになっていたならば、原作での描写に違和感が無くなるのである(ついでにサボーが強い理由にもなる)。
(後はダメージ限界解除だが……今は意味が無さそうだな)
最後にダメージ限界解除は原作でも追及されてなかった。
武器なりスキルの上限があるのだろうが、それが何のためなのか判っていないのだ。武器が壊れるから限界があるなら、現地産の武器でも一撃だけならば凄まじいダメージが出ることになる。スキルに体がついていけないならば、ダメージ出せるが使うだけで負傷しかねない。そして……最もあり得ないが、吸収できる条件を越えて『与えたダメージ分だけMPが回収できる』という限界の解除という意味ならば、MPの少ない低レベルモンスターからでも満タンを狙えるだろう。
「さて、方針も決まった所だし、まずは最初の確認をしておくか……っと! まず確殺だが、固定値ではないな!」
というわけで昭信は白兵戦系スキルを試していくことにした。
まずは獣戦士/英雄/剣士に入れ替え、スラッシュを使って一撃で倒し、威力が向上するのを確認した。そして使った結果として『確かに強く成るが、強力ではない』という事から幾つかのデータを得る。固定値だったら威力は高くなるはずだし、もっと強いビーストアタックなら7層くらいまではボスが楽勝になるわけだ。しかし、威力はそれなりレベル、どう考えても固定値型とは思えなかった。
(次は剣士のレベルアップ後だな。なら念の為にビーストアタックも使っておくか。MP回復のペースも見たいしな)
また、先ほどの一撃で判った事はもう一つある。
仮にレベル依存型であっても、レベルx1ダメージという低い倍率ではないという事だ。少なくとも能力依存か、レベル10のダメージを与えてないと確殺は出来ない。そして剣士レベルが2・3と上昇していく時に手ごたえを確認すれば、x20・x30となっているのか、計算式が別(おそらく能力依存)なのかが判るだろう。とはいえMP消費しないとMP回復速度を体感できないので、過剰とは知りつつもビーストアタックを使ってみることにした。
「悪いが検証のために消えてもらおう。……ん? さすがの威力ではあるが……少し物足らんな。当たり所が悪かったのか? それとも……」
そしてビーストアタックを念じてみたが昭信の顔が曇った。
確かに威力は向上したのだが、爆散と言う程では無かったのだ。あくまでスラッシュよりも手ごたえはあるという程度。固定値ではないのは当然のことながら、レベルx30とか40ほどのダメージが出ているとは思えない。となって来ると怪しいのは、やはりレベル依存型ではなく、能力値由来型ではないかという考えである。
(もう一発試してみるか。しかし、俺の為に消えてくれとか恥ずかしいな。誰にも聞こえてなければ良いんだが……せめて死ねとか肉を落とせと言っておけば良かったな。とはいえ残る可能性は能力値依存型だとは思うが……試すにしてもレベルを上げていかないとな)
MPが減ってきたのもあるが関心の高かったスキルだけにショックだ。
一瞬、原作の『ビーストアタック凄い』という表現が間違いだったのか? ナチュラル・クリティカルだったのかも……と思い始めたところで、単純に倍率の問題ではないかと思い出した。何しろまだまだレベルは低く、獣戦士1/英雄2/剣士1というところだ。能力値依存だとしても、基礎レベルが1ではどうにもならんと納得したのであった。
(レベルUPごとに誰もが全ての能力が1上昇し、ドープ薬を使うと上がらないと仮定して……ふむ。見えてきたな)
MP回復の必要性を感じた事と、検証自体は得意な方なので暫し休憩を取る。
最初のMP回復上昇の計測ともあって強壮丸は使わずに暫しデータ検算に耽った。仮にラッシュが体力分のダメージ、スラッシュが腕力のダメージ、ビーストアタックが敏捷のダメージと仮定しておこう(ジョブの成長能力にレアリティの差があるので、この三つに体力は半分など倍率係数差が存在する可能性はあるが、今は計測しようがないので省略)。
レベル1だから腕力も敏捷も基礎値は1とする。
ジョブに依る上昇は微増で1、小成長で2、中成長で3と仮定してみる。腕力は剣士が小の英雄が中なので、1+2+3=6。敏捷は1+3+3=7ということになる(獣戦士と英雄を入れ替えたら微増するが検証は省略)。
次に三つのジョブのレベルが一通り上がるとスラッシュが6x2=12。ビーストアタックが7x2=14ということになる。この段階では基礎値と英雄の中成長が大きい。
結構、当たっているのではないかと思えた。先に上がる剣士のレベルUP時にスラッシュが先ほどのビーストアタックくらい、経験値的に最後に上がる獣戦士が上がった時にビーストアタックが爆散するかしないかの手応えになっていれば、ほぼ断定できるのではないだろうか。
代入として獣戦士20レベルで英雄25レベルくらいになった時に、デュランダル一撃~二撃なのかを計算する必要もあるが、今はカルクが無いのでこの辺にしておこう(MPも回復してきたし)。
「ひとまずお前で最後の検証だ。さあ。重ね技を試させてくれよ!」
適当にレベルを上げてメモを取り、いよいよボス部屋へと突入。
出現したラピッドラビットに対して走りながらオーバーホエルミングを詠唱。敵が高速で向かってくるのに合わせてフラガラッハの刃を斜めに構えた。二歩・三歩と走る中で敵が跳躍、それに合わせてビーストアタック・スラッシュと念じたのである。
「やったか!? ああ、いや。お前を倒せていないのは判るんだ。まだレベルが低いからな。そうか、まだ火力が低いか……それは重畳。次はビーストアタック単体で試してみんとな!」
獣戦士も剣士も3レベルでしかない、ボスを一撃で倒せるはずはなかった。
だが、一撃では無かったということは、原作でロクサーヌが第八階層で見せたあのダメージに及ばないということである。レベル依存か能力依存かまだ判らないが、自分の技に成長の余地があると知って昭信は歓喜した。そして技を重ねることが出来たのか検証する為に、今度はビーストアタックのみを使うつもりであった。
「死して我が経験値と成るが良い!」
部屋の隅へ走り込むように斜めの疾走。そして半歩のターン。
相手の移動ルートを制限と予測を行いながら、昭信は再びフラガラッハを斜めに構えていた。ソレは昭信が倣った剣の振るい方の中で最も当て易い型の一つだ。無理に剛力を載せるのではなく、当てることに専念。火力はビーストアタックに期待して刃を振り抜いたのである。
「ふむ……今の感じからして、一撃目の攻撃にはちゃんとスラッシュが載っていたな。ちょうど人も居なかったし、動作の問題があるかも試したい。MPが回復したら、もう一度試すか」
果たして次なる攻撃でラピットラビットは倒れた。
僅か二撃でボスが倒せるはずもない。それを考えたらフラガラッハ + ビーストアタックが強いことに加えて、スラッシュも乗っていたのは間違いが無いだろう。昭信は木の板に計測情報を簡単に記すと、念のために強壮丸を飲んでから再び待機部屋に移動したのであった。
●BPメモ
1rdジョブ。村人5 → 獣戦士1(初期値に。下記はデュランダル分でやりくり)
武器6 → 5 (63→31)32余
↓
必要経験値五分の一 → 十分の一(15→31)16余
↓
獲得経験値五倍→ 十倍 → 五倍(15→31→15)±0。
↓
無し → 結晶化促進十六倍 → 結晶化促進(0→15→1)余0
無し → MP回復速度五倍 → 上昇(0→15→1)余0
(この2つは獲得経験値を削った後に取得、および入れ替え。また、次回に変更予定)
検証回というか、異世界ハーレムは検証ばかりなので、タメ回ですね。
探索者レベルが低いのでアイテムボックスも狭い事もあり今なら外せる。
獣戦士/英雄/剣士でレベルUPを確認し、探索者/戦士を後から追加。
これでジョブで経験値が分割されるか判る寸法です。
なお、2rdジョブ →4rdジョブならもっと経験値行けるだろ?
と言う気もしますが、ボーナスポイントは倍々消費なので残念ながら。
●戦闘スキルのダメージに関して
初期ドラクエの呪文みたいな固定値だった場合、いきなりボスへGO。
基礎能力の上昇次第で、スタートダッシュが出来ます。
ただし中盤から物足りなくなるので、ビーストアタックはともかくラッシュ・スラッシュはお蔵入りでしょう。
(後半だけど見ると正しい様に見えるけど、前半のボス楽勝になるのでおかしくなる)
次にレベル依存の場合、レベル1で+1だとしょぼ過ぎ。
じゃあx10だとレベルUPごとに凄まじく強く成り過ぎるという事ですね。
最終的にその中間にあたる能力値で計算だと仮定して、本来ならば英雄で高い成長値であるはずがないのに、ロクサーヌはミチオ君の分だけ凄かったという事になります。(ドリルお嬢もサボーの修正でそれ以上に出せる)
なお、能力値は1rdジョブだけ影響し、どのジョブであっても1UP。
ジョブの差はジョブ修正で得られるものと仮定しています。
(仮に0~2くらいの幅がある場合、獣戦士の敏捷、鍛冶師の力がおかしくなるので)
ただし、人が外見で人を判断する場合、1rdジョブのレベルで見て取るくらいはあるかもしれません。
後は技ごとに能力値のレア補正が合って、上げやすい体力は半分とか、上げにくい敏捷は20%増しとかあるかもしれませんね。これは禁欲攻撃で我慢すると、%比率がガンガン上がっていくみたいな感じなのを考慮しての事です。(単純にビーストアタックには敏捷以外にも体力の30%とか起用が乗るだけの可能性もあり)
最後にMPに関するダメージ限界解除ですが、これはやってみただけです。
流石にMP5しかない的にデュランダルで切ったら20も30も回復するとしたら、ミチオ君が使ってない訳はないですしね。