異世界迷宮でロマンスを【完】   作:ノイラーテム

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寄り親

「このような物でいかがでしょうか?」

 

「うん。動き易いし良い作りだな。……この具合なら礼服には竜革を付けるか」

 

「鎧で良いかと思いますよマスター」

 

 婚約式に向けて昭信たちは戦闘以外でも準備を行なっている。

 

ナーシャの村から職人であったり、ドワーフが住んでる山の村落から服飾の心得のある者を呼んで服を調整。新調したと言ってよいのだが、礼服として持ち込まれた服を手持ちの布で修正しているという風情だ。他にも用意した下着などのデザインを見てもらい、こんな風に作ってくれと、ここぞとばかりに下半身の欲求を叶えている。

 

「しかし主殿。石で作った丸太は分かるのですがの、この銅の筒は何に?」

 

「ヒューゴー。セメントで作った方は見ての通り整地用だが、銅製の方は菓子用だよ。砂糖と酪をたっぷり使うから滅多に作れない代物だがね。凄まじい労力を簡単にしてくれるのはありがたい」

 

 特注といえば大活躍しているのはロードローラーだ。

 

セメントを円柱状にして、見た目は丸太のようにしている。これに馬車のような持ち手を付けて押していくと、地面が平らになるというものだ。事前に小石を取り除いておけば、轍がなくとも馬車の車輪が壊れない優れた街道になり得るのである。あとは道路脇に側溝を掘って雨水が流れるようにすれば一流の街道になるだろう。もっともセメントを使ってないのでローマの街道には及ばないのであるが。

 

「菓子用ねえ。中の空洞はそのためとは気が付きませんで」

 

「正確には火種ならぬ氷と薬品を詰めるんだがな。閉じてしまう事で食材と混ざらないようにできるし、閉じて棒を付けることで回転が簡単になる。お客人の中で信頼できる方が訪れたら、試作してもよいかもしれんな」

 

 金属製の筒はアイスクリーム用である。

 

氷が溶けない内にがんばって回転させる必要があるのだが、その時に下の入れ物と上に置く金属のボウルで管理するのが面倒くさい。さらに言えば冷却を促すのに回転させる必要があるのだが、これもまた非常に労力が掛かる。そこで予め円柱状に銅を薄く加工してもらい、回転できるようにレバーを取り付けたのだ。あとは中へ氷・硝石・塩を入れ、交代しながら回転させて円柱の中で混ぜることで冷却を促し、外側も回転するので酪と砂糖が混ざるという塩梅である。

 

「薬品と言えば、まさか使い終わった水から硝石も取り出せるとは思いませんでしたね、マスター。てっきり塩だけかと思ったのですが、これで温度の低い料理に再利用できます」

 

「割りと重要な情報だから、二人とも『内密』にな。秘密を売るだけで金になる」

 

「はいでさ」

 

 実は昭信も知らなかったのだが、水に溶かした硝石は再利用できる。

 

塩を取り出せるのは広く知られているので、食用には使えないだろうが何かに再利用しようと軽く茹でていた。その時に一緒に硝石も出てきたので、これも回収してまとめて冷却用にしたのだ。既に形が崩れているので、迷宮品としての効用の強さは失われているだろう。だが、冷たい飲み物を用意する井戸代わりとか、野菜を冷やす程度なら使えるだろうと検討中である。そして何より、『金にはなるが、家の運営的にはどうでも良い情報』だからこそヒューゴーの人格が信頼できるか確認するために彼に銅の筒を作ってもらったのである。

 

「後は何を作りやすかね?」

 

「そうだな。ロードローラーを引っ張ってる連中には交代で領主館まで道を作らせろ。他には庭に作っている露天温泉にセメントの道を作る。そうすれば館の中で着替えたりもできるからな。もし領主館や村の宿屋に収容できん程の人間が来たら、うちに泊まらせることもあるだろう」

 

 昭信が屋敷に用意した風呂は、山の上から水を引いて火を焚くだけだ。

 

そのために綺麗な水を用意出来て、ボイラーさえ設計できれば他の場所でも出来る。そこで昭信は村の木工職人に屋敷を借りた時、この方法を教えて温泉宿を作れるようにしておいたのだ。良い建物は別荘として貸し出すそうだが、石鹸の作り方を教えていることもあって、上手くいけばこの村の新しい産業になるだろう。温泉宿に宿泊してその足で石鹸を購入できるとなれば、行商人以外にも需要はあるのだから。

 

「この間のお菓子を簡略的に作るための物なんだが……。これは信用の出来るお客人が見えられるか、当日まで置いておいてくれ」

 

「分かりました。そろそろ何方かがいらっしゃるはずなのでその時にでもお呼びしますね」

 

 領主の館にアイスクリーム製造機を持ち込み他愛ない話をした。

 

いつも部屋の中ではなく、庭のテーブル席でお話をしたりもする。そんな時、昭信は風上に立って風下に向かう席に座るようにしている。理由としては風上の臭いをいち早く感じつつ、臭いの無い風下を自分で見張るためだ。盗賊問題とか粛清案件とかを考慮してから、こういう配慮をするようにしていた。だからこれは、その延長上にあるちょっとした出来事である。

 

『ガラリア・ガストラフェス・アンカディア。猫人族。♀。船長』

 

 見張る意味で偶に鑑定をするのだが、こんな言葉が表示された。

 

昭信は出来るだけ表情を変えないようにして、エレーヌに向けた笑顔のまま食器の一つに手を伸ばした。毒見用の銀スプーン……ではなく、砂糖塗れのラスクを突き刺すためのフォークである。

 

『ガレス伯。ガラリア・ガストラフェス・アンカディア。猫人族。♀。三十二歳。船長23レベル。オリハルコンのカトラス。竜革のトリコーンハット。竜革のジャケット。竜革のグローブ・竜革のブーツ』

 

 より詳しく情報を探ろうと意識して鑑定し直すと、細かい情報が見えてきた。

 

隠れているのに理解できてしまう鑑定が強力過ぎるのだが、分かってしまったデータを見て頭を抱えそうになった。なんというかどこかのお偉いさんが潜んでいるとしか思えないのだが、どう考えてもお偉いさんの行動ではない。察する腰の軽いとされた寄り親の貴族だろう。

 

「エレーヌ。その装置だが、早速に使う機会がやってきたようだぞ。お客人の随行員がギルドに来ているかもしれん。あと、ちょっとだけ失礼するな」

 

「え? でしたら出迎えの準備をした方がよさそうです……ね?」

 

「何処かの悪戯猫にお仕置きをしてからな。……ソニックブレード」

 

 昭信はフォークをまるで投擲ナイフのように構えてから技を使った。

 

詠唱省略によって言葉は必要ないのだが、何かの技を使ったと見せておくためだ。そして走り抜ける衝撃波が庭の中を駆け抜けて、茂みの奥に隠れた人物の方へ飛んでいった。傍目から見ればナイフか何かを投げたように見えるかもしれない。

 

「にゃっほーい!? や、やあ! 君たち~僕はガレス伯爵。ガラリアちゃんで~す。気軽に船長って呼んでも良いよ? なーんてにゃっ」

 

「は? は!? 伯爵さまああ!? 本物の伯爵さまなんですか?」

 

「とんだ失礼をいたしました。てっきり海賊が隠れ潜んだかと思いまして」

 

 慌てて飛び出てじゃじゃじゃじゃん。猫人族が現れた!

 

ギリースーツならぬ草色のオーバーコートを着ているが、その中身は装備に身を固めた冒険者風である。頭にかぶった三角帽子と腰に下げた小ぶりなカトラスが印象的ではある。その人物を迎えるためにエレーヌは慌てて飛び出し、昭信は手元に残したフォークをカトラリー入れ中に入れてから追随する。

 

「うーん。まさか見つかるとは……僕の隠れ身が下手だった?」

 

「いいえ。狼人族数名の鼻から逃れ、視界も隠しつつ話を聞こうとするにはあそこしか無かっただけです。察するに気になる言葉でもありましたか? それさえなければ見つけていなかったかもしれません」

 

 赤い舌を出してテテペロする伯爵さま。それがガラリアだった。

 

青くも見える黒い髪はショートカットにしており、全体的にボーイッシュなのだがどこか煽情的にも見える。あえて少年風の装束にしているのではなく、単に動き易いからこうしているだけだろう。その上で自分が魅力的な女性であること自覚しており、もしもの時は雌猫のポーズでもとって敵を魅了する気なのかもしれない。

 

「それそれ! お菓子を作るんだって? コレより美味しいの?」

 

「氷さえあれば割りと簡単に作れますよ。無ければ氷室で買いますが」

 

「ホント!? ならガエリオ君を呼んでくるね。連れてきてよかったー! パーティー編成したまんまだからさ、そのうちこっちに来ると思うよん。沢山ごちそうしてね♪」

 

 どうやら甘い物に弱いのは世の中の女性の常識なのかもしれない。

 

海賊ならぬ海女や漁師を統括する船長もその一人のようで、御付きの魔導師を呼んでこようとした。どうしてだろう……原作に登場するゴスラー並の苦労性を窺えたのである。

 

 

「大変、おいしゅうございますね。話に聞いたミンチ料理を出したら、『これが料理のつもりか?』と挑発するように命じられたのですが……流石にやりませんよね?」

 

「それはお祭り用の庶民向けですよ。竜肉と竜皮のスープを酒の宛てにでもします」

 

「にゃっははっはっは! いーねーこのお菓子いーねー。僕もっとほしーなー」

 

「たくさん食べると頭が痛くなるそうですので、ご注意くださいね伯爵さま」

 

 やがて現れた青年は本当に苦労性であるようだった。

 

伯爵さまの悪戯心で料理漫画の悪役みたいなやり方で忠告をさせられる可能性もあったらしい。ご本人は酒を掛けたアイスクリームやら、カラメルソースを掛けたアイスクリームを次から次へぱくりぱくり。最初は羨ましそうにしていたエレーヌも、途中からは腹を下さないかを心配していたという。

 

「そうだ。そういった礼儀に関する役回りを知っておられるならお尋ねしたかったことがあります。婚約に際して納める品は、MP吸収さえ付いていれば別に名前は吸精でなくとも構いませんよね?」

 

「ということは伝世品ですか? 試す必要がありますが構いませんよ」

 

「おっ! 伝世品を持ち込むわけ? 張り込んでるね―。もう一回くらい試した?」

 

「その品は聖銀製としか教えては……え? エッチなのはいけないと思います!?」

 

 昭信が複数スキルのスタッフを持ち込むと聞いて客人たちは顔色を変えなかった。

 

高額な品であるが派閥の重鎮をやっているならば固定品すら持っているだろう。ならば鍛冶師に作らせた伝世の品くらいは幾つもあるだろうし、また昭信が周囲に舐められまいとリアリティーの高い品を持ち込むのは、ある意味で予想できたことだからである。

 

「名前はなんと申されますか?」

 

蜂和(ほうわ)のスタッフと申します。後でお試しください」

 

「よーし! 僕はアキノブ君を試してくるからぁー、ガエリオ君はその杖試してきなよ~。あ、エレーヌちゃん。心配しなくても浮気じゃないからね? 戦いは本気かもだけどさ。にゃははは!」

 

 こうして翌日は予定を変更してお客人を連れることになった。

 

収穫は蜂和のスタッフにどんな能力が付属しているのか確かめてもらった事。そして『船長』というジョブが『対水生戦術』というスキルを持ち、パーティーに疑似的な水生生物特効を付与する事が出来ると分かった事である。伯爵たちの好感度? 猫のように気まぐれなのに信用できるはずもないではないか。

 

●リザルト

 

アキノブ・タケダ。狼人族。♂。24歳。英雄51レベル。

 

 活性枠。入替枠。不要枠。

 

英雄51/剣豪38/百獣王36/勇者31/剣術指南役27

 

剣士50/獣戦士51/ソードマスター50/料理人32/神官30/薬草採取士30/探索44

 

村人5/錬金術師1/僧侶1/魔法使い1/戦士30/賞金稼ぎ1/騎士1

 

 更新順(古 → 新)

 

キャラクター再設定、鑑定、必要経験値二十分の一。65

 

獲得経験値二十倍・5thジョブ。詠唱省略。79。余りは結晶促進。

 

ルミ。ドワーフ。♀。17歳。鍛冶師42

 

シモーヌ・ナーシャ。狼人族。♀。23歳。騎士41

 

グレース。人族。♀。22歳。暗殺者40レベル

 

資金。4万2000ナール

 

●特筆すべき内容。

・ナーシャ三十三層攻略

・兎の結晶入手

・万金丹と万能薬のお土産セットの充実

 

蜂和(ほうわ)の聖銀スタッフ。(ダメージ逓増、MP吸収、詠唱中断)

・よりしろのシルバーアクセサリー(身代わり、知力二倍)




 という訳で寄り親の出現です。
親? 母親? 本当に? という性格。多分良いヒト。
問題は真面目に考えているのか、そうでないのか不明な人格。
頼りたい時にその場に居ない可能性が高い人格。

『船長』
体力:大成長。HP:中成長。腕力:中成長。敏捷:微成長。精神:微成長。

スキル。対水生強化(※)対水生戦術。パーティ編成。

『対水生戦術』
 パーティー全体に水生生物へのダメージ補正が入る。
ただし、対水生強化の方がレベル%強化なのに対して、こちらは加算タイプ。(23レベルなので、123%の個人攻撃と、パーティー23pの集団補正が入る。
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